★ PS2ゲームレビュー ★
弊誌「三国志」番長の中村いわく、「三国志」の世界はもはや語るまでもなく奥深い、らしい。なぜこんな書き出しなのか? と問われるのはごもっともだが、筆者はあいにくまだこの世界の入り口すら触れてはいない「三国志ビギナー」である。膨大な物語、といわれると「ああ奥深いんだな」と脊髄反射のような反応しかできず、つい敬遠してしまっている世界である。そんな不勉強な筆者でも、前作=PS2「真・三國無双」は楽しいアクションゲームとして記憶に新しく、もっといえばPS版「三國無双」も対戦格闘ゲームとして楽しんだクチである。その続編が早くも登場するとあらば「遊ばずにはいられない!」というわけで、アクションゲーム好きとしての「真・三國無双2」レビューをお届けしよう。
■ よりアクションゲームとして完成度を高めたシステム 対戦格闘ゲームではおなじみとも言える“コンボ”。それがこのゲームにおいては、多数の敵を相手に、豪快に決められるというのがウリのひとつ。バッタバッタと斬り倒し、とはいったものだが、本当にこのゲームでは10人ほどの相手を同時になぎ倒すように斬り刻む、一種のサディスティックな魔力が秘められている。しかもそのテンポは2人同時プレイが可能となった今作でもほとんど変わらず堪能できる。 実際には、通常攻撃(□)に続いてチャージ攻撃(△)を繰り出すというボタンの組み合わせに応じて、さまざまな特性のコンボを叩き込めるように仕掛けられており、例えばチャージ2(□△)では敵を空中に浮かせ、追撃を可能にする浮かせ技が、チャージ3(□□△)では敵を一定時間行動不能にする気絶技が、チャージ4(□□□△)では吹き飛ばし技がラストに発動する。このコンボを状況において組み合わせ、敵を一網打尽にするという戦略性、そして追撃を含めたコンボの組み立てがテクニカルで、かつ爽快感を伴っているところがミソ。というのが前作までの話。画面下の「無双ゲージ」がフルチャージ状態の時発動可能な強力な攻撃「無双乱舞攻撃」が通常およびチャージ攻撃をキャンセルして発動できるのも前作同様だ。 今作では、装備武器によってさらに、チャージ5(浮かせ技)、6(キャラごとに異なる)と最大6連撃までが可能になり、より突進力が増しているのがうれしい。さらに浮かせた相手に空中でキャラごとの独特な追い討ちが可能になっており、チャージ2の浮かせ技ともども、地上では緻密に相手を浮かせることを考え、浮いたら豪快に追い討ちが可能という1粒で2粒以上のおいしさが含まれたシステムになっている。前作に比べると攻撃モーションが改良されており、とくにチャージ攻撃のスキは連係技に組み込むことでかなり減らされている。これが前作以上にキビキビした操作感と、ストレスの少ないプレイ感覚を生んでいる。 特定の敵を撃破すると、アイテムが落ちていることがある。これを回収することにより、キャラクタを強化したり、各種ゲージの回復が可能。また、アイテムが武器の場合は、シナリオクリア後、武器を持ち替えることが可能となっているのも興味深い。持ち替えはどちらか一方の武器を捨てねばならないので悩みどころだが、基本的には数値の高いものに乗り換えれば問題ない。アイテムによって連撃可能の回数が増加(チャージ5、6)したり、攻撃力、防御力などが一時的に向上するなどの効果があるものもある。 また、体力ゲージが赤の時にはより威力が増した「真・無双乱舞」が発動可能。敵に押されてたまったストレスはこれで一気に解消できるパワーと実力を秘めた技群となっている。無双乱舞発動時は、ガード硬直や攻撃モーションをキャンセルして発動できる。また、基本的に、無双乱舞は相手にガードされても最後の一撃だけはガード崩しの効果をもっているので、敵将クラスと戦っているときは必ずガードさせるようにするとスキを減らせる。 ガードは基本的に正面からの攻撃のみになっているが、ガード後に□ボタンを押すことで相手の攻撃を押し返して間合いをとる「パワーガード」、そして、敵に飛ばされた場合にL1を押すことによって体制を立て直す「受け身」もできる。敵も当然チャージ攻撃などを使ってくるわけで、そんなときにうまく対処すればとっさの反撃も十分可能になっている。
ここまで紹介してお気づきの方も多いと思うが、このシステムは昨今の対戦格闘ゲームのシステムをうまく1対多のアクションゲームに取り入れて昇華しているといえる。しかも、戦う相手が増えている分、より豪快にそして爽快に戦えるという相乗効果も生み出しているある意味“夢のゲーム”なのである。
■ ただやみくもに敵に向かっていけばいいわけではない戦略性を持つ無双モード このゲームは敵を斬りまくっておしまい、というただのアクションゲームではない。メインとなるストーリーモード=「無双モード」において、各シナリオには制限時間と勝利条件、敗北条件と同社がお家芸としているシミュレーションのようにあらかじめ設定がなされており、つまりは時間内に勝利条件さえ満たせれば何をしてもかまわない。ということは、ある程度戦況を読んで適切にプレーヤーキャラを移動させ、戦場を渡り歩く必要が出てくるということになる。 「ガンガン戦って勝利すればいいんじゃないの?」というのは早計すぎる。なぜかといえば、戦闘中にはイベントが起こり、戦況は刻々と変化するからだ。ときには優勢だった自軍があっというまに劣勢に追い込まれることもある。「三国志」をテーマにしているこの作品では、そのストーリーに則ってイベントが発生するようになっている。テーマに造詣が深い人はもちろんだが、このリアルタイムの戦況の変化は非常にやる気を起こさせてくれるカンフル材としての役割を果たしている。腕っぷしだけではなく、戦況に応じた知略も重要というわけだ。 このモードでうれしかったのはなんといっても、「中断」ができるようになったこと。メモリーカード1枚について1つのみだが、戦いが長引き翌日にプレイを持ち越したい人にはとてもありがたく、同じシナリオを途中で中断し、戦い方を変えてみるといった使い方もできる。 また、2人同時にこのモードに参加し、共同戦線を張ることも可能。一定距離内に2人がいて、無双乱舞を使用可能なとき、タイミングを合わせて無双乱舞を発動すれば、より強力な「激・無双乱舞」が発動可能。これを見るために協力プレイをしてもなかなかおもしろい。声を掛けあいながら一緒に戦う楽しみはなかなかのもの。次作ではぜひネットワークプレイにも対応してほしいと感じさせるおもしろさを持っている。途中に入る戦況報告はほとんどがボイス化され、リアルタイムで戦っているという実感をわかせてくれるが、これもネットワークプレイならよりいいな、と思わせるひとつの要因であったりもする。
また、細かいことだが、キャラクタが多数登場するこのゲーム、出現したアイテムには前作にはなかったエフェクトが付くようになったので、少し視認性が上がった。キャラクタの数が多数になると、近距離でいきなり敵が沸いて出てくるような感じなので、背後などには注意が必要。とくに弓を構えている兵士は戦場からやや離れた位置で攻撃しようとする行動パターンが組まれているようなので、わりと近くにいても見つけにくいのにはまいった。瀕死のときなどアイテムを捜し回っているときに、弓でプスッとやられたらひとたまりもない。このゲームだけの問題ではないと思うが、なんとか改善してほしいポイントではある。逆に、消えたキャラクタが出現する際にはボワーンと陽炎のようにゆるやかに描画されるので、前作みたいに乱戦で込み入った状況でカメラに入ってくるキャラクタがチカチカと表示されることがなくなったのはとても目に優しいと感じた。
■ 対戦も凝った作りで飽きさせないVSモード 「VSモード」は、画面上下分割による2人対戦プレイが楽しめる、この作品の最大の強化ポイントといえるモードで、キャラクタの能力はこのモード専用、かつ連続攻撃数は6になっている。8つのステージが用意され、それぞれ勝利条件が異なる。 この勝利条件、ステージ設定が非常に凝った造りになっており、それぞれ要求されるスキルが変わってくる。ステージによってはぶつかるとガードが解けてしまうところがあるなど、それぞれのルールに合わせて仕掛けが施されているのもミソ。 「無双モード」、もしくは「フリーモード」で使用可能なキャラクタを使っての対戦は、1対多での戦いとはまた違った視点でキャラクタの操作を見つめなおす必要がある。ガードされたらコンボは最後まで出し切らないようにし、無双ゲージの貯まり具合と相談しながら戦術を組み立てていく。ステージによってはNPCに攻撃してもらっている間に背後から攻撃したり、ガードされても押し切って、ガードを強制解除させるなどの新たな戦略を考えていく必要がある。当然うまくヒットしても、無双乱舞で割り込まれたりなど、対戦格闘ライクな駆け引きが楽しめる。
ただし、この上下分割は、視点の変更もあって少々視認性に辛いところがある。しかも当然ながらキャラクタは多数表示されることになり、無双モードの2人同時プレイもそうだが、かなり処理落ちすることがある。ゲームのテンポが乱れて操作に支障をきたすとまではいかないので、慣れてしまえばそれほど気にならないとは思うが……。ここまで作り込んであると、IEEE 1394によるリンクプレイなども見てみたかったな、と思う。
■ そつない作りで手堅い印象。まさに続編として目的意識のはっきりした作品 「真・三國無双2」は、前作よりもモーション、攻撃判定、システムをブラッシュアップし、より爽快感を高め、プレイアビリティを上げたという点においては、続編を待ち望んでいたファンにはまさに狙いどおりの作り。より細かい部分に気配りがなされ、穴はきちんとうめているな、と思わせ、このシリーズを初めてプレイする人にはぜひオススメしたい一本といえよう。シナリオや腕によっては、本当に長期戦になるため、セーブ機能がついたのはある意味必然かとも思うが、やはりうれしい。 ただ、対戦を考えると投げ技のようなガード崩しの要素など、いくつか新しい要素を追加してほしかったな、と思うことはあった。投げ技は乱舞に組み込んで、力の強そうなキャラクタで相手を捕まえて振り回すとまわりが吹き飛ぶなどの派手な演出も見てみたかったような気がする。登場人物の多い「三国志」ならではだが、キャラクタも数がかなり多いにも関わらず、それぞれの動きの違いなどはちゃんと作ってあるが、もう少し整理して男臭い世界でもよかったような気もする。 それから、前作から引き続いて登場する馬、そして今作では象も乗りこなせるのだが、鞍上ではあまりやることがなく、移動手段と割り切るのはちょっと惜しい気もした。ほかにも、アクション部分はどんどんハデになっていくのに、戦いの前後の戦況報告などの画面はあまり変わらないなど、多少演出に関する不満はなかったわけではない。いずれにしろ、メモリ容量などの問題も多々あるのは承知のうえで、次回作にもまた期待せずにはいられない作品であることには間違いない。戦況報告や一般兵の動き、各キャラクタのセリフもよりいっそう戦況に応じたものになれば、一人で遊んでいても覚めることなく盛り上がれるだろうし……とここまで考えるのはぜいたくなのか、それとも幸せなことなのだろうか?
(C) 2001 KOEI Co.,Ltd.
□コーエーのホームページ (2001年10月2日)
[Reported by 佐伯憲司] |
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