★ PCゲームレビュー ★

一度プレイしたらもう戻れない
豪壮華麗に生まれ変わったPC版

ハンドレッドソード

  • ジャンル:リアルタイムストラテジー
  • 発売元:セガ
  • 価格:7,800円
  • 対応OS:Windows 95/98/Me/2000
  • 発売日:5月31日


 「セガラリー2」を始めとして、「プロ野球チームをつくろう!」「ジェット セット ラジオ」「The Typing of The Dead」など、実に多彩なラインナップを誇るスマイルビット。その同社が手がけた国内初の本格リアルタイムストラテジー(RTS)が「ハンドレッドソード」だ。2月15日のDC版の発売からわずか4カ月足らずでPC版を発売するという、スピード移植にも驚きだが、その移植具合も十分満足できるものに仕上がっている。さっそく充実した内容をご紹介していこう。


■ マウス対応を始めとした新要素をたっぷり搭載したPC版

ゲームモード選択画面。プラクティスモードが新しく追加されている
 ゲーム内容を紹介する前に、まずはDC版とPC版の仕様の違いから簡単におさらいしておこう。

 一番の違いは、DC版で十字キーのみだったユニット操作が、PC版ではマウス+キーボードショートカットで行なえるようになったことだ。マウスによるユニット操作は、PCプラットフォームのリアルタイムストラテジーではごくごく当たり前のことだが、コンシューマからPCへの移植でこういった手間の掛かる改良措置がまともに行なわれたケースはごくまれといっていい。加えて、PC版ではミニマップをクリックするとその場所に瞬時に画面移動が行なえるようになっている。
 そのほかインターフェイス周りでは、視点変更が3段階で自由に行なえるようになったほか、キーボード入力による漢字チャット、ワンキーで簡単にアクセスできるショートカットキーの充実などが挙げられる。

 そのほかの拡張ポイントとしては、DC版のチュートリアルモードを拡張した「プラクティスモード」、ハンドルネーム数の増加(3→8)、セーブ数の増加(8→32)など、PCの利点を活かした拡張が目立つ。ネットワーク対戦もゲームサーバーを介さない、TCP/IP接続によるインターネット対戦に対応。あとファンサービスとして、最終面のBGMが新しくなっている。なお、PC版の拡張要素は実はこれだけではなく、解像度の変更やウィンドウ表示でのプレイも可能になっている。ただし、これらの拡張要素は、ユーザーサポート対象外になるため、やり方は記事の最後に掲載した。興味のある方は参照いただきたい。

ミッションモード。難易度別に初級、中級、上級の3種類が用意され、それぞれアドベンチャーモードのサイドストーリー的な内容になっている。クリア後にプレイするとより楽しめるだろう

■ 馴染みやすい和製ファンタジーをベースにしたシミュレーションRPGの雰囲気

彼が第1章から第3章までの主役を演じる少年王ラーフ・ナルアヴァル。陣営は騎馬民族ナルアヴァルだ
 海外産のRTSは、古代から近世までの世界史をベースにするか、あるいは近未来の設定で思い切ったSF世界を展開するかのいずれかに該当し、オリジナルストーリーはそこそこに、あとはマルチプレイで遊ばせまくるといった感じのタイトルが大勢を占める。ハンドレッドソードは、この点、日本独自の感性でじっくり磨き上げてきた和製ファンタジー世界をベースとし、キャラクタをしっかり立てた重厚なストーリーを描いている。

 主人公はやや内気な性格の少年と可憐な乙女。脇を固めるキャラクタは、姉さん肌の気の強い美女や剛腕一直線の青年といった具合で、非常に理解しやすい。まず最初にキャラを立てる構成からして、海外産RTSにはほぼ皆無の要素だが、ストーリーを進めていくと次第にキャラが育ってくる。しかし、育つといっても国産RPGのように主人公が魔王並みの強さまで成長するわけではなく、戦術を間違えば簡単に撃破される程度で、このあたりの仕様は完全に「ひとりは皆のために、皆はひとりのために」式のシミュレーションRPGだ。そのため、各キャラにはもちろんだが、4つ用意された各陣営への感情移入度の高さは、海外産RTSとは比べものにならない。

アドベンチャーモードは、吹き出し式の会話でストーリーが展開していく。バックにゲーム映像が流され、途中、イベントスチルが挿入される

彼女が彼の後を次いで第6章までの主役となる少女王ファルス=ル・グラン。陣営は魔術民族グラン
 さらにもうひとつ、本作の大きな魅力として指摘できるのが、各キャラのイラストやイベントイラストなどを担当している杉浦善夫氏の油彩画のような濃度の高いイラスト群だ。個人的には全体の色味が濃すぎて全力で好きにはなれなかったが、氏のイラストは、各キャラクタのわずかな表情の変化を撃ち抜くような的確さで表現しており、またイベントの衝撃性をいやが上にも高める効果をもたらしている。とにかく氏のイラストが発する圧力はもの凄く、イラストによっては子供が見たら泣き出すのではないかとさえ本気で思ってしまうほどである。

 ストーリーの紹介は長くなるので割愛させていただくが、予想外に光明の見えない重っ苦しい話の展開に、ぐいぐい引き込まれてしまった。ともあれ本作は、コンシューマからの移植タイトルにはあまり興味を示さない、海外ゲーム志向のPCゲームファンも飛びきりの新鮮さを味わえるRTSに仕上がっている。

時代の流れの逆を行く静止画で魅せる数々のイベントシーンにはただただ脱帽。これでキャラクター別に音声が吹き込まれていれば完璧だったと思う

■ 単純ながら奥深い速攻重視の戦闘スタイル

 本作の基本的なゲームシステムは、資源を集めて建物を建て、建物でユニットを生産し、戦力を集中して敵を叩くという、RTSの本則に従ったものになっている。ただし、ユニットの生産は独立しては行なえず、リーダーユニットを軸にしてその配下ユニットを生産するという極めて斬新なスタイルを採用している。ワンクリックで10以上の部隊を一度に選択でき、初心者にも部隊を率いやすい利点があるが、その反面、複数のリーダーユニットは一度に選択できないという、何とも理解しがたい制限がある。このあたりは慣れるしかないだろう。

速攻で兵舎を建て、敵より先に多くの資源を確保するのが鉄則。資源近くの乱戦がどうしようもなくアツい。防御塔の要素は外して大正解だろう

 マップ上で獲得できる資源は「龍骨」「龍水」の2種類。それぞれユニットの生産や兵舎の建設、リーダーユニットの出陣・復活などに使用される。このゲームにおいても資源は、勝敗を左右する優先度第一位の要素で、しかもひとつの埋蔵場所から採れる資源の量は、かなり限られているため、その獲得には文字どおり全軍を挙げて行なう必要がある。
 少し余談になるが、本作は1回の対戦時間を短くする工夫がいろいろなされている。資源の埋蔵量が意外と限られているという点もそのひとつだが、海外のRTSでごく一般的な、建てさえすればあとは無コスト無制限で自動的に攻撃してくれる「防御塔」の要素がないため、「決定力不足で勝負が付かない」「双方の戦術ミスで、2時間あまり延々と血みどろの死闘を繰り広げる」ようなことがない。これはこれで本作の大きな魅力のひとつだが、逆に言うと少しでも戦力バランスが崩れると、そのまま一気に畳み込まれてしまうという、後味の悪さを感じた。

 「負け戦を戦術で押し返して勝つ」のがRTSの醍醐味でもあるので、このあたりの仕様はもう少し練り込んで欲しかった気がする。とはいえ、資源に余裕があればリーダーを替えて防御用の兵科に入れ替えたり、防御系のシェル(特殊技能)を備えたリーダーを中心とした布陣に変えたりすることもできるので、要は海外産RTSと細かい戦術部分でプレイスタイルが異なるという点を頭に入れて戦う必要がある、ということだろう。

むろん、終盤戦はさらにアツい。画面上に100を越えるユニットが激突するさまは本作最大の醍醐味といっていい。狙えるようであれば敵将から討て

 あと、戦闘部分で気づいた点としては、ユニットの大きさの割には戦場が狭いため、AI任せで行軍させると配下ユニットがたびたび妙なところに行ってしまうケースがあった。これを防ぐには、Shiftを押しながら移動先を指定する中継移動が非常に有効。というより日常的に使うクセを付けた方がいい。あと、マップの広さの割には1画面の表示領域が狭いため、長距離の視点移動は、画面をスライドさせるより、ミニマップを直接クリックするか、リーダーアイコンをクリックした方が圧倒的に早い。この2点は、DC版ユーザー、新規ユーザーとも覚えておいて損はないと思う。

 結論として「ハンドレッドソード」はシングルプレイ、マルチプレイとも丁寧に作り込んだ意欲作といえる。「RTSは操作が忙しいから嫌い」という向きも、ひととおりシングルプレイで遊んだあとは、キャラクタの愛らしさにそんな考えは吹き飛んでしまうはずだ。RTS入門作として、また変化を求めるRTSファンにオススメしたい名作RTSである。

アドベンチャーモードでは、軍議のあと部隊編成となるが、軍議ではかなり重要な情報を事前に知ることができる。しっかりチェックしておこう

戦いに勝利すると戦績がA~Dの4ランクで判定される。結構美しく勝てたと思っていてもオールAは難しい。かなりやりごたえあり。あと、勝利後貰える戦利品も楽しみのひとつ

プラクティスモードでは、動かない敵に対して、自由に設定を変えていろいろ試せるネットワーク対戦練習用のモード。敵が動く練習モードがないのは残念


■ PC版「ハンドレッドソード」の隠しモード

ウィンドウ表示モードで起動したところ。といっても本作は休む暇がないほど忙しいゲームなので、あんまり役に立たないかも知れない
 さて、これから紹介する隠し要素は、これを用いた結果どんな問題が発生してもセガおよびスマイルビットは一切の責任を負えないのでご了承いただきたい。GAME Watch編集部でも、この件に関する問い合わせには一切お答えできないので、そのつもりでお試しいただきたい。

 PC版では、iniファイルやショートカットを直接書き換えることにより、解像度を変更したり、ウィンドウ表示モードでプレイできるようになる。これら魅惑の機能が隠し要素とされていることからもわかるように、これらのモードは動作チェックが万全ではなく、またPCに大きな負荷が掛かるネットワーク対戦では、突然ゲームが不正終了して対戦者に迷惑を掛ける可能性があるので、シングルプレイで試すことオススメしておきたい。やり方は以下のとおり。

・解像度の変更の仕方

「HUNDRED SWORDS」フォルダ内にあるh_swords.iniファイルを「メモ帳」等で開く

 [Unfinished]
 Resolution=640x480
 32bitFrameBuffer=0
 EnableReplay=0

 このResolutionの項目を変更すれば解像度の変更が可能になる。ちなみにEnableReplayを“1”にすることにより、マルチプレイのリプレイの記録が可能になる。

・ウィンドウ表示の仕方

 ゲーム起動ファイルのショートカットを作成し、ショートカットのプロパティを開く

 ショートカットのリンク先
 "C:\Program Files\SEGA\HUNDRED SWORDS\H_SWORDS.exe"

 この末尾に半角スペースを空けて“-windows”とオプションスイッチを入力すればウィンドウ表示が可能になる(例:"C:\Program Files\SEGA\HUNDRED SWORDS\H_SWORDS.exe" -windows)。

上段が640×480ドット、下段が1,600×1,200ドット表示の画像。サムネイル表示ではその違いがわかりにくいかもしれないが、ユニット、地表テクスチャなどの細かさは段違いだ。1,024×768ドット表示ぐらいで遊ぶのがいいかもしれない

(C)SEGA CORPORATION/Smilebit, Corporation,2001


【動作環境】
  • CPU:Pentium II 233MHz以上(Pentium II 450MHz以上)
  • メモリ:64MB以上(128MB以上を推奨)
  • HDD:600MB以上(1.3GB以上を推奨)
  • CD-ROMドライブ:8倍速以上 (起動時必須)
  • 解像度:640×480ドット固定


□セガPCのホームページ
http://www.sega.co.jp/sega/pc/
□「ハンドレッドソード」の公式ページ
http://hundred.dricas.ne.jp/pc/
□関連情報
【3月19日】セガ、PC版「ハンドレッド ソード」を5月31日に発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010319/sega.htm
【5月2日】本日到着! DEMO & PATCH~2001年5月2日版~
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010502/demo0502.htm

(2001年5月31日)

[Reported by 中村聖司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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