「ゲームソフトは頒布権の対象外」ARTS側の勝訴会見
3月27日 発売
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東京高裁の判決内容を説明する藤田弁護士 |
テレビゲームソフトウェア流通協会(ARTS)は都内で記者会見を行ない、、3月27日に東京高裁より判決が下された「中古ゲームソフト裁判」についての会見を行なった。
今回の裁判は、「株式会社エニックス」のゲームソフトを中古販売していたARTS加盟店「株式会社上昇」に対し、エニックスおよび社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)が上昇に中古販売の差し止め請求を行なっていたもの。
ACCS側の「ゲームソフトは“映画の著作物”であり、著作権法で認められた“頒布権”を持ち、制作側がソフトの流通を制限する権利がある」とする主張に対し、ARTS側は真っ向からこれを否定。'99年5月の東京地裁は、ゲームソフトは頒布権を持つ「映画の著作物」には当たらないとしてARTS側に勝利の判決を言い渡したが、ACCS側は判決を不服として直ちに控訴していた。
会見の冒頭、ARTS代表理事の新谷雄二氏は、「ゲームソフトは頒布権の対象にならない」とする東京高裁の判決趣旨に関する声明文を読み上げた。
高裁判決はARTS側の主張を全面的に認め、ゲームソフトの中古売買を合法と判断。頒布権は、音楽CD、書籍、ビデオなどの“著作物の複製品”の流通を強力に規制することが可能であることから、劇場映画の配給など少数の複製物に限定されるべきで、大量に製造・流通するパッケージ品には適用されるべきではないとしている。
ARTS弁護士代表の藤田康幸氏は、今回の判決の特色として「商品の性質、流通実態を裁判所が正しく踏まえた上で判断している。映画のように少数が製造されて配給制度の元に流通するものと、一般消費者を対象に大量に製造および流通する商品が明確に区別されている」ことを挙げている。
判決文によれば、裁判所は“著作権法の文面に従うならば、ゲームソフトにも頒布権が及ぶ”としながらも、頒布権は立法当時、少数しか生産されない劇場用映画プリントフィルムの経済的価値を保護するための配給制度を念頭において規定されたことは明らかで、頒布権は劇場用作品の配給権と同義であるとし、それ以外に複製物の流通をほぼ全面的に制限できる強力な権利を適用する実質的理由が見当たらないことに言及している。
つまり「映画の著作物」と同様であるとするACCS側の主張は、仮にそうであっても「立法趣旨」から判断すれば、大量に生産されてそのひとつひとつは少数の人間にしかプレイ(視聴)されないゲームソフトは「頒布権の適用対象外」ということになる。
制作に要する多大な費用の回収保護についても、映画やゲームソフトに限られたことではないとし、一度見てしまえば同じ人が繰り返し視聴することがない点も他の著作物である音楽CD、書籍などと同等で、ゆえにゲームソフトだけに頒布権を認める実質的根拠にはなり得ないとしている。
また、ARTS側が提出したユーザー250人のデータにもとづき、新品ゲームソフト購入代金の少なくとも一部が、以前購入したソフトを売った代金が新品ゲームソフトの需要を喚起している面があることを認め、単純に新品と中古の販売数の比較するだけで、製作者側が新品の販売のみで十分な対価が得られているかどうかを判断することはできないとしている。
藤田弁護士は、東京高裁の判断について、「大阪地裁と異なり、法律の文面に照らし合わせるだけの“分離解釈”ではなく、立法趣旨にもとづいた検討を行なうなど、法解釈のあるべき態度を示した。大阪地裁の判決に対するアンチテーゼにも等しい」とコメントしている。
□ARTSのホームページ
http://www.arts.or.jp/
□ニュースリリース
http://www.arts.or.jp/docs/coment010327.html
□関連情報
【3月27日】中古ゲームソフト訴訟、判決下る。エニックス「法律の解釈を越えた判決。最高裁に上告する」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010327/accs.htm
【1999年5月27日】「ゲームは“映画の著作物”ではない」エニックスが敗訴(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990527/accs.htm
(2001年3月27日)
[Reported by 北村孝和]
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