レビュー
「グランツーリスモ7」レビュー
2022年3月2日 20:01
これぞまさしく「グランツーリスモ」。そこには視覚・聴覚・触覚を刺激する超解像度のレースが!
レイトレーシングによる描写力に注目。PS5とPS4で映像表現はどう変わる?
キャンペーンモード本編は発売後楽しんでいただくこととして、ここでは映像表現やドライブフィールに焦点を当ててみたいと思います。
率直な感想ですが、PS5が圧倒的な描写力なのは想像通りで「4K HDR 60FPS レイトレーシング」の破壊力はすさまじいものがあります。ただし、これはリアルタイムのレース中ではなく、リプレイや「スケープス」(フォトモード)の時に効果を発揮するものです。そしてレイトレーシングに対応しないPS4ではどうなるでしょうか。まずはリプレイ動画から確認していきましょう。なお、これらの動画は実機でキャプチャーしたものをPCで編集してあります。
いかがでしょうか。画面サイズがPS5はPS4の4倍あり、HDRやレイトレーシングの処理がありながら常時60FPSを叩き出していることを考えると、とてつもないパワーだと感じます。
対してPS4では細かい描写を除けば同じような映像を映し出しているのではないでしょうか。雨の東京エクスプレスウェイなんてもう前が見えないくらいになっています。処理のことを考えるとこれはかなり重い処理ではないかと思いますが、両機とも難なく美麗な映像を出力しています。
ただし、違いがないわけではないようです。この2つの写真はミュージックラリーでのリプレイ画面ですが、ボディへの太陽光の反射が強い・弱いということがありました。これはHDRとレイトレーシングの影響や天候の関係、あるいは車体やコースによっても変わってくるかもしれません。
次にレースリプレイとスケープスの比較をしてみましょう。PS5は“レイトレーシング優先モード”にしてあります。PS4はレイトレーシングはありませんからそのままの状態ということになります。結果としては、レースよりもスケープスに大きな差が出ることがわかりました。レイトレーシングあり/なしでクルマへの映り込み、発生する影の出方が違うことがよくわかります。
“より深みが増した”ドライブフィール。DualSenseの効果は絶大!
続いてドライブフィールについて感じたことですが、一言で表すなら“より深みが増した”ということでしょうか。前作「グランツーリスモSPORT」よりさらに深みが増した印象があります。
実際にクルマでサーキットをスポーツ走行すると、限界領域というのはゲームより広く深く感じられるものです。ゲームとリアルでの速度差や感知できる情報に違いがあるにせよ、ある程度の状況は対処ができるといえばいいでしょうか。今作はとにかく深みが増したなぁ、というファーストインプレッションでした。
この深みについてはPS5コントローラー“DualSense”の効果が一番大きいと思います。ハプティックフィードバックは路面状況をつぶさに伝え、シフトチェンジのショックや東京エクスプレスウェイでの道路のつなぎ目を感じたり、コーナリングでのアンダーステアもすぐに感じて対処てきますし、なんといってもアダプティブトリガーの効果が絶大です。家庭用コンソール機のコントローラーになんてすごいものを搭載してるんだ!と感動しっぱなしです。
そのアダプティブトリガーですが、右のアクセルペダル、左のブレーキペダルの感触がこれまで味わったことがないフィーリングです。特に左のブレーキペダルが秀逸で、実際のスポーツ走行と同様にドカッと踏んで、グリップがあるかないかを探りながらコーナーを曲る! がこのコントローラーで体験できます。ブレーキは車速を落とすもの……ではなくコーナーを攻めるために使うというのがPS5版グランツーリスモ7でできることだと感じました。
具体的にはブレーキングポイントに来たらトリガーをぐっと目いっぱい引いて、ほんのちょっとだけ戻します。ABSが効いているとここで反動でトリガーが押し戻されてくるので指先で細かくぐいぐいとタイヤがロックするかしないかのポイントを探りながらコーナーのエイペックスポイント(頂点)を目指してステアリングをじんわり切ります。カンペキな速度だとブレーキ操作ですーっとキレイなラインでコーナーを曲っていきます。ブレーキでコーナー曲がれるんです!
コーナーの先が見えてきたらアクセルトリガーをホイールスピンしないようにじんわり引き込み加速していくと、とてもたのしい操作感が味わえます! アクセルトリガーでも反力が感じられますが、これはトラクションのかかり具合が反映されているようです。アクセルを開けていき路面に伝わる駆動力が大きくなるにつれて反力は強まり、アクセルを開け過ぎてホイールスピンしトラクションが抜けると反力は消失します。クルマによってブレーキトリガーの重さも変わるようです。
この感触は一般に販売されている10万円くらいするハイエンドハンコンにもなかなかないもので、今回のレビューで筆者も悩ましい状況になってしまいました……。グランツーリスモ7のためにハンコン「Thrustmaster T-GT II」を購入して待ち構えていたのですが、こんな高価なハンコンでさえDualSenseのアダプティブトリガーの効果を得ることができません。
ヒューマンインターフェースとしてはステアリングとペダルはDNAに刻まれているといっていいほど理にかなっているデザインなはずですが、この手の中に納まるコントローラーでできることができないなんて……。
とはいっても、DualSenseは確かに素晴らしいのですがPS4では使えません。そこでPS5でもPS4でも使えるハンコンもお勧めしたい理由があります。
先ほどの動画にある雨の東京エクスプレスウェイですが、コース上に“川”と呼ばれる水たまりが何カ所かあり、そこをアクセル全開で通ってしまうと“ハイドロプレーニング”と呼ばれる現象によりステアリングが持っていかれそうになります。これこそハンコンのフォースフィードバックならではの感触であり、それがなんともリアルでたまらない緊張感が襲います。これはDualSenseには表現できないことですね。“GT7のコントローラーどれがいいか選手権”勃発の予感です!
「Thrustmaster T-GT シリーズ」には“T-DFB”というグランツーリスモ専用の振動モードがあり、横滑りやグリップ抜けした時のインフォメーションをとてもわかりやすくもたらしてくれ、PS5のハプティックフィードバックにも似た感触が得られます。
最後にPS5とPS4共に純正の状態としたとき、データのロード時間にどれくらいの差があるのかを測ってみました。サンプルとしてワールドサーキット内でアンロックした「鈴鹿サーキット」のアーケードレースを選択、時間帯と難易度を選んでそこからレースがスタートできるまでの時間を図ります。
結果はPS5は約5秒、PS4が約30秒とここはPS5の圧勝でした。発売アナウンス時から「PS5の超高速SSDによるデータのロードは時間を感じさせない」という言葉を実証した結果となりました。PS4のストレージをSSDに交換したらまた結果が変わってくる可能性があります。
レビューを終えてナンバリングタイトルとしての完成度は?
とにかく“リアルドライビングシミュレーター”としての完成度がかなり高くなった!というのが最初の感想です。ナンバリングタイトルとして正常進化を遂げ最新ハードウェアのパワーを余すところなくドライブフィールや映像、システムの操作感にいたるまで注ぎ込み、全てが洗練され研ぎ澄まされていると感じます。
一番肝心なドライブフィールは25年感の積み重ねを感じますし、シングルプレイはもとより今回は試せませんでしたが、マルチプレイやeスポーツにおいてもゲームチェンジャーとなるような要素、つまりより実際のクルマの挙動に近づいたドライブモデルはこれまでどうにもなじめなかったプレーヤーを掘り起こす可能性があるのではないか?と思います。
山内氏が今回この作品に込めた思い「自動車の文化を次世代のクルマ好きに伝える」というのも、わずか20時間のゲームプレイからでも感じることができました。いかに速く走るだけがクルマ文化ではないということもこのグランツーリスモ7は教えてくれるように感じます。現実世界ではそれこそレースに出たり、チューニングしたり、愛車の写真を撮ったり、仲間を作ってツーリングするなどクルマの文化は多岐にわたります。このゲームのどこからかカーライフが始まり、現実世界でもそうなってクルマ好きが増えることを筆者も願っています。
なんてちょっとマジメな話になってしまいましたが、なにはともあれPS4でもPS5でもいいので「グランツーリスモ7」を一緒に楽しみましょう! まずは中古車を買って話はそこからです。たった20時間プレイしたくらいではこのゲームのエンディングははるか彼方のようです。今後もたくさんのアップデート……AIエージェント「グランツーリスモ・ソフィー」の実装も予定されていますので、数年は楽しめるのではないかと思います!
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