レビュー

「戦場のフーガ」レビュー

バトルの魅力はヒーロー効果!サポート効果や協力必殺技を活用してバトルを突破

 本作のメインでもあり、一番のポイントとなるのが超巨大戦車「タラニス」による敵とのバトルだ。ここで重要となるのがやはりスキルや子供たちのサポート効果やヒーロー効果の活用だ。

 サポート効果はどの子供たちも有用な能力を持つが、特に有用するのがハンナの「通常攻撃でHP回復」と、後半仲間に加わるシーナの「通常攻撃でSP回復」だろう。回復アイテムに限りのある本作において、通常攻撃で回復が行なえるのは非常にありがたい。一方でスキル使用時にはこの効果は影響がないため、スキルを多用する後半になると、あまり効果が発揮できなくて悲しい。

 また、ボロンの「ケガ耐性」や、後半に仲間に加わるジンの「おびえと落ち込み耐性」といったサポート効果は物語の後半、敵との戦闘が激しくなってくるとそのありがたみが実感できる。

 そしてヒーロー効果も強力なものが多いので、重宝するスペシャルなパワーだ。1度発動すると以後数ターン効果が継続するため、一発ドカンと発動する「協力必殺技」と比べてもメリットが大きい。発動のタイミングがコントロールできないのがもどかしい面もあるが、タイミングよく発動してくれると、そのスカッと感は半端ない。

 どれも強力なヒーロー効果だが特に感動するのは前述したボロンの「通常攻撃で弱点と装甲をすべて破壊」だろう。通常だと装甲は1~2、特殊なスキルでは1度に5剥がせるものもあるが、比較的コツコツと削る必要があるため、メンバー編成などを考えて、効率よく剥がす方法を模索する。ところが、SPも不足してきて、活動可能な子供たちが少なくなり、いよいよピンチというタイミングで、このボロンのヒーロー効果が発動!一撃で敵の装甲を無効化できた時は思わず、おぉと声が漏れてしまったほどだ。

ボロンのヒーロー効果は「通常攻撃で弱点と装甲をすべて破壊」は目に見えてはっきりと分かる、かなり有用なヒーロー効果といえる

 ヒーロー効果は他にも、途中から仲間に加わるチックの、「SP消費なしでスキル使用可」や、シーナの「スキル使用後すぐに行動可」などもありがたい。「スキル使用後すぐに行動可」は攻撃系のスキルでも有効なため、ターンが進行することなく、SP切れやヒーロー効果が切れるまで延々と敵を一方的に攻撃し続けられるので、正に「ずっと俺のターン!」を具現化した能力ともいえる。試しにSP消費1の「ピアスショット」を連続で使ってみたところ、5連続で敵の装甲を削ることができた。

SP回復の効果も持つシーナを複座に置いた状態での協力必殺技「スピリットショック」はかなり重宝する

 本作のバトルで気持ちいいのは敵の反撃を極力食らわずにすべての敵を殲滅することだ。そのためにはいかにして敵の攻撃をかわしていくかという話になるが、弱点攻撃による遅延化だけではどうしても何度か敵に行動順が回ってきてしまう。そこで活用するとナイスなのが「スモークグレネード」による煙幕効果だ。成功率は敵の種類によっても異なるが、これが意外と高確率で付与できるのがうれしいポイントだ。煙幕効果が付与された敵は攻撃が当たりにくくなるため、生存率が格段に向上する。

 本作の状態異常には他にも感電効果を付与できる「スタングレネード」もある。感電効果は付与されたターンは行動ができずにスキップされるので、完全に行動を先送りにできる点が魅力だが、成功率が低いことも多いため、過信は禁物だ。また、炎上効果で毎ターンごとに一定ダメージを与える「フレイムグレネード」もあり、こちらも炎上のダメージが意外と高いので、成功率が高い場合は試してみてもいいだろう。

 これら状態異常付与の攻撃については、グレネードのスキルに多く含まれるが、単体攻撃のほかにも、フィールド内の敵全体に効果を発揮する「スモークゾーン」や「フレイムゾーン」、地上の敵にのみ発動する「エレクトロマイン」といったスキルもある。

 その他にも有効なアイテムの1つが特殊弾だ。状態異常を付与できる特殊な弾丸を拾える場合があるが、これがかなり有効に使える。状態異常の付与率や命中率が通常の攻撃と比べて高く設定されているため、ここぞというところで、状態異常を付与させたい場合や、命中率の低い敵に当てるために使うのも有効だ。当然こちらも有限のため、使いどころには注意が必要だ。村や町では弾丸同士の交換が行なえるので、好みの状態異常の弾丸と交換しておくこともできる。

回復アイテム以外にも特殊弾を使うことでいくつものメリットがある。1つはSP消費を抑えられること。また命中率や状態異常の付与率がスキルと比べて高いこと、そして「落ち込み」状態であってもその効果が有効なことだ

 個人的に使ってみた感触では、ピアス弾は敵の装甲を1削る効果なので問答無用で使いやすい。またその他の状態異常では、「煙幕」の効果はかなり大きい。そして「感電」による敵の行動の一時停止もうまく付与できればかなり役に立つ。また、「炎上」によるごとターンのダメージも比較的高く、うまく付与できるとこれだけでうまく撃退できる場合がある。逆に「虚弱」と「不運」については、有効に働いているのかもしれないが、プレイしていて実感できる場面は少なかった。

戦闘後にはリザルトが表示されるが、敵からのダメージが0でクリアすればオールSが獲得できる

 またスキルだけでなく、オーソドックスな防御コマンドでダメージを軽減するのも有効な手法だ。特にチャージして攻撃する溜め系の攻撃はダメージやこちらに与える付与効果も大きく、できることなら発射前に集中攻撃して倒しておきたいところだが、いよいよのところで倒しきれないと判断した時は防御で防ぐ手も有効な1手だ。ただし、本作の防御状態は1度敵の攻撃を受けると解除されてしまう。そのため、タイムライン上に複数の敵の行動が並んでしまうと、最初の攻撃は防御できても、次の攻撃はそのまま食らってしまう点には注意が必要だ。

 こうした戦術を駆使して、敵の猛攻を回避できた時の達成感はかなり気持ちいい。バトルの数は1本のシナリオの中でもかなり多い。前述のようにスキルを存分に使える場面ばかりではないため、時にはSPを温存して通常攻撃を駆使して戦闘に勝利する必要もある。ところが想定外の「落ち込み」や「ケガ」の発生も多発するため、戦場の理不尽なリアリティを感じるところも面白い。しかも回復アイテムには限りがあり、むやみやたらには使えないため、どうしても使いどころを考慮する必要が出てくる。フィールドの次のマス目などもチェックした上で、どこに回復のポイントがあるかをチェックしておくのも重要だ。

シンプルなストーリーと斬新なシステムは幅広い層におススメ

 以上ざっくりと「戦場のフーガ」のプレイフィールについて触れてみたが、本作で気になる点といえば、やはり戦闘でこちらの仲間たちに発生する「状態異常」の頻度の高さだ。特に唐突な「落ち込み」は何の前触れもなく突然発症し、一応通常攻撃は行なえるものの、協力必殺技やスキルが使えないのでは、実際の現場ではほぼ役に立たなくなる。またケガについても同様で、ケガ自体のペナルティがないとはいえ、戦闘不能のリーチがかかった状態での戦闘が続くのは非常に厳しい。

 そしてこれらの回復手段がインターミッションしかないというのは、ちょっと厳しすぎるようにも感じる。本作では「タラニス」のアイテムなど自由にならない要素が非常に多いため、どうしても道中の戦闘では物資の利用を抑えた節約の戦いが多くなる。するとどうしても被弾率が上がってしまい、特に後半になるにつれ、被弾率が上がるとともに子供たちの状態異常発生率は高くなっているように感じた。こうなるとインターミッションまでの間に車内の子供たちは全員がズタボロの状態になってしまう。

 これはもちろんサポート効果や戦い方次第である程度回避できる面もある。例えばこれは筆者の個人的な感覚だが、このような時は「タラニス」のHPをなるべく高く維持しておくことで、こうした「落ち込み」など状態異常の発生率が低くなっているような気がした。

 だが、こうした対策が常に万全にできるわけではない。特にHPを高く維持するのは、SP残量やアイテム残量を考えるとなかなか厳しい。そのため、HP以外はせめて対策を頑張ろうと敵の攻撃前に防御で「タラニス」のダメージを最小限に抑えているような場面で僅かなダメージしかない敵の攻撃がきっかけで子供たちの1人に「落ち込み」が発生した時のショックはプレイしているこちらも“落ち込み”たくなるレベルだ。

 そしてインターミッションについてだが、後半になるにつれて利用可能なAPが少ないと感じる。インターミッションでは状態異常の子供たちの回復に加えて「タラニス」の強化や船内の子供たちの強化、素材集めなど、通常のRPGでいうところの回復の時間でもあり、稼ぎの時間でもあり、街などで武器や防具を購入したりといったステータス強化のタイミングでもある。そのため、APをどのように割り当てるかの管理が非常にシビアであり、本作における非常に重要なポイントの1つとなっている。

 ところが1度のインターミッションで利用できるAPは20で、これが終始同じ最大値のまま進行するため、最初のうちは余ったAPで子供同士の会話を楽しむなどのゆとりがあったが、後半になるにつれ、インターミッションでAPが全く足らなくなる。ここは後半になるほどAP最大値が増えるなどの救済処置があればよかったところだ。後半のAP不足は本作において、実に様々な気になる点を生み出しているからだ。

 具体的には「タラニス」内で行なう装備強化や料理などに「成功率」がある点だ。しかも失敗すると何も得られずただ無駄にAPだけが消費されてしまうのは厳しい。成功率アップなどのフォローもあるが、運の要素が強く、APにゆとりがあればこそ納得できる仕組みだが、現状の仕組みだとプレイしていて手厳しく感じた。またテンションを底上げする「みんなの連絡ノート」もAPにゆとりがない現状だと、ノート埋めにかかりっきりになってしまうため、重荷の1つになっている。

改造には成功確率が存在する
同じく夜釣りにも成功確率があり失敗することもある

 そして前述の「落ち込み」についても、会話の選択肢によって回復の可否が変わるのは面白い仕組みだし、子供たちの性格を把握してくると、初めて見る選択肢でも比較的容易にAP1消費のみで回復させられるが、やはり現状だと失敗した際のAP消費が重くのしかかる。例えば親愛度の上昇はなくてもいいので、落ち込みから復帰した時のみ親愛度を上昇させ、APを消費するといった作りなら不要なAP消費が抑えられてよかった。

 本作のインターミッションでは、限られた「タラニス」車内のレイアウトに、実に豊富な仕掛けが用意されている。にも関わらず、後半はAP不足からこうした仕掛けを楽しめず、戦場に向かうための体制維持にのみ注力する必要が出てきてしまうのは非常に残念なポイントだ。

 あともう1つ、街や村でのアイテム交換についてだが、仕組み自体はシンプルでいいのだが、こちらも現在の「タラニス」内の施設や装備強化に必要なアイテムが何か、という情報が村にいる間は参照できないため、何が不要で何が必要かを手動で管理する必要が出てしまっている点が気になった。交換中に何かのボタンを押すことで、次に強化できる施設や装備では何が必要か、といった情報が見えれば、交換がスムーズに行なえただろう。

 システム的な気になる点を列挙してみたが、本作には実はクリア後にレベルや親愛レベルをそのまま最初からプレイできる、強くてニューゲームが用意されている。正直なところ、本作は初回プレイで真のエンディングを見るのは非常に難しい。これ以上はネタバレになってしまうため、理由についての言及は避けるが、強い状態を維持したままの2周目は前述のような気になる点もあまり感じることなく、心置きなく親愛レベルを上げたり、思うように楽しむことができる。冒険の途中でどんなに厳しいことがあっても、挫けずに最後までプレイして2周目を楽しんでみてほしい。

初見での難易度はかなりシビアだが作りとしては周回プレイが前提。周回に応じてタイトル画面の演出も変化していく

 今回本作をプレイしてみて改めて感じたのは「日本のRPGに対するアンチテーゼ」だ。ストーリーを主軸に楽しむゲームにおいて、はたしてフィールドの移動が本当に必要なのか。

 本作ではフィールド移動を廃して、経験値やお金稼ぎなどを行なわない仕組みとした。代わりにアイテムの取得方法や経験値の取得方法などに工夫を凝らしたり、フィールドの移動を簡略化した図で見せたり、地方の風景を1枚絵のビジュアルで見せるなどして、成長要素や世界を旅する雰囲気を演出して見せている。

 その結果、フィールドでの稼ぎがなくても「タラニス」や搭乗する子供たちの成長要素は問題なく楽しめたし、より純粋に緊迫した戦闘を楽しめるようになっており、この辺りの工夫については文句なく成功しているといっていいだろう。

 そして本作をプレイし終えた後に筆者の心に今なお残っているのは「タラニス」による激しいバトルの日々とストーリー、さらに不思議なことにフィールドを移動していないにも関わらず「ガスコ」各地を実際に歩いて巡ってきたかのような各地の印象も色濃く残っているのだ。この辺りは特にストーリーでの演出表現がシンプルな静止画ベースだった点もポイントの1つなのかもしれない。

 本作では子供たちが親と離れ、自らの意思で「タラニス」に搭乗して、さらわれた両親を救う旅に出る。個人的にはもう少しだけ全ての子供たちの成長が感じられる内容もほしかった面もあるが、全12章のストーリーでは物語の骨子を語るだけで精一杯の分量である上に、本作の仕組み上、最大12人もの子供たちが搭乗するため、エピソードが分散してしまった面もあり、致し方ないところもあるだろう。一方で本作では子供たち同士の会話で親愛レベルを上げる事により発生する絆イベントがその代わりになっているとも言える。そのため、好みのキャラクターをより深く掘り下げるためには、1人に集中して他の仲間との親愛レベルを高くする事でより多くの絆イベントを確認したり、何度もプレイして全てのキャラクターとの絆イベントを確認する事で、各キャラクターのより深い掘り下げが行なえる。

 それでも「戦場のフーガ」は斬新なゲームシステムと同社の構築したユニークなケモノ
の世界観など、様々な挑戦を感じさせる意欲作に仕上がっている。難易度の点には思うところがあるものの、仕組みそのものはシンプルなので、普段あまりゲームをやらない層であっても手軽にプレイできる点は高く評価したい。

 また、冒頭ではやたらとケモノの話や「リトルテイルブロンクス」の世界観について触れたが、ストーリー自体は非常にオーソドックスなので、ケモノ愛好家ではなくても幅広い層が楽しめる内容になっている点も魅力の1つだ。普段あまりゲームはプレイしないが、昔のアニメなどが好きな人であっても是非プレイして子供たちのハツラツとした戦いぶりをともに楽しんでみてほしい。

本作はとにかくイベントで使われる静止画のカットシーンが素晴らしい。ちょっと色褪せたノスタルジックなテイストが本作の雰囲気にマッチするのだ。また、本稿では触れなかったが、各所のBGMも非常にグレイトで、プレイしながら全く飽きることなく聴いていられた。サントラなどがあったらほしくなるレベルだ。幸い限定版にはミニサントラが付属するようなので、ゲーム音楽好きな人はこちらを購入する方が幸せになれそうだ
各章のラストには各方面のイラストレーターさんの手による個性的なエンドカードが挿入される
「タラニス」最大の謎であり、最凶の武器でもある「ソウルキャノン」は筆者のプレイでは最後まで自分の意思では封印したままだった。本来レビューを書くにあたってソウルキャノンを毎回ボス戦で使うくらいの勢いでのプレイも試してみたかったが、禍々しい雰囲気からそこまでの冒険に出られず申し訳ない。その答えは是非みなさんのプレイで確かめてみてほしい