レビュー
「戦場のフーガ」レビュー
2021年7月28日 00:00
シンプルなルールながらもシビアな戦略が要求される戦車バトル!
本作は移動などの操作が必要なく、マスを進んでいくだけのシンプルなシステムとなっているが、バトルについても非常にシンプルなシステムだ。画面上部には時間を示すタイムラインが表示されており、原則はこのタイムラインに並べられたキャラクターたちのアイコンの順に行動することになる。タイムライン上の配置はキャラクターたちの行動速度や、状態異常などにより初期位置や行動後の位置が変化する。筆者の知る限りだと、スクウェア・エニックスの「オクトパストラベラー」などと同じ仕組みだ。
「タラニス」の武装は「キャノン」、「マシンガン」、「グレネード」の3種類。特徴としては、キャノンはダメージが最も大きいが、再装填に時間がかかるため、ターン辺りの行動速度は遅めだし、命中率も小さな敵に対してはかなり低くなる。マシンガンはターン辺りの行動速度がかなり高いため、回転率は最もよく、どんな敵に対しても命中率は高いが、攻撃力は低め。グレネードはこの中間といったところだ。
装備の一長一短に加えて、本作にて登場する敵の戦車やヘリなどはいずれも装備に対しての弱点を持っており、弱点とマッチする攻撃を与えることで行動ターンを遅らせることが可能だ。そのため、何も考えずに適当な装備でプレイするのと、意識してターンごとに敵に最適な装備に切り替えて的確に行動を遅らせながらプレイするのとでは、バトル後の「タラニス」の消耗に大きな差が出る。
各種装備については「タラニス」に搭乗する子供たちにそれぞれ担当する砲塔が設定されており、砲座ごとに2人ずつメンバーが搭乗することで1セットとなる。2人搭乗するうち、フロントに搭乗した子供の該当する砲塔が自動でセットされる。例えば主人公っぽい長男担当のマルトはキャノンだが、妹のメイはマシンガン、クールなカイルもマシンガンだが、お姉さんキャラのハンナはグレネードといった感じで、キャラクターの個性に合わせた砲塔が設定されている。
フロントが攻撃担当なら複座の仕事はサポートだ。すべての子供たちにそれぞれサポート効果が設定されており、これが戦闘中に役に立つ。前述のマルトが複座なら攻撃力が上がり、ハンナなら通常攻撃後にHPが少し回復する。また、ボロンが複座にいるとケガ耐性が付くのでケガをしにくくなったりと、どの子供たちにも有用な効果が設定されている。
敵の搭乗兵器は実に豊富だ。回復専門のヘリや、装甲が分厚くダメージが全然通らないガッチガチの戦車や武装ヘリなど、多種多様な兵器がこちらの行く手を阻む。敵ながらどの兵器も世界観を意識したデザイン揃いでかなりカッコいい。少なくとも「リトルテイルブロンクス」の世界観が好きな人向けに丁寧に作られたものだというのは分かる。
こうした強敵相手に通常兵器だけでは歯が立たないが、「タラニス」は子供たちのスキル能力も活用できる。レベルが上がるほど解放されるスキルはキャラクターごとに各8種類。「タラニス」全体のSPを消費して発動できる。スキルの種類は子供たちの担当する砲塔とも関連があるようで、同じスキルでも複数の子供たちが使えるものもあれば、中には特定の固有スキルも用意されている。
例えばマシンガンを担当するカイルやメイはどちらも敵の装甲を1削る「ピアスショット」が使えるが、装甲を1度に2削れる「ピアスショット2」はカイルしか使えない。カイルは空中の敵に対する特性が高いのか、空中の敵全体に攻撃できる「エアストライク」や空中の敵全体の装甲を2削れる「ピアスレイン」といったスキルも使える。
同じマシンガンでもメイは空中の敵に特化したスキルを使えないが、その代わりに全体攻撃ですべての敵の装甲を1削れる「マルチピアスショット」が使えたり、HP回復の「ララバイ」が使えるなど、優しい子供であるメイの性格がスキルに現れているのが面白いところ。
本作には子供たち同士の親愛レベルが設定されている。いずれも2以上になると、このパーティ編成時にメンバー情報下部にパーセンテージが表示されるようになり、行動などでこれが100%になると「協力必殺技」が使えるようになる。この必殺技の特殊効果においても複座の子供の効果が適用されるため、効果に応じて位置を変更するなどの工夫が必要だ。
他にも子供たちにはテンションが設定されており、これが行動などでMAXになると一定時間“ヒーロー効果”が発動する。これは個々に設定されている特殊な能力で、マルトなら「通常攻撃のダメージが2倍」など普通にナイスな効果を発揮するが、普段のんびりした雰囲気の大柄なボロンの場合は「通常攻撃で弱点と装甲をすべて破壊」という凶悪な効果を発揮する。
「タラニス」には最大3本の砲塔が装備できるので、実際に参加するのは子供たちのうち6人までとなる。戦闘中であっても、こちらのコマンド入力が可能なタイミングでいつでもメンバーの入れ替えが行なえる。入れ替え時に戦闘でのラグは特に発生しないが、1度入れ替えると一通り全員攻撃するまでは再度入れ替えが行なえない点には注意が必要だ。
なお、交換画面を出して、何も変えずに戻る場合にはこの制限は発生しないため、敵の弱点などをチェックしてから再度交換画面を開く、といった操作も行なえる。これにより、敵の状態やタイミング、相性などをチェックして最適な装備をターンごとに考え、切り替えていくことになる。
ここまでこちらの攻撃についての話をしてきたが、敵からの砲撃を受けてしまうと「タラニス」がダメージを受け、HPがなくなると「タラニス」は爆破して最後のセーブポイントからやり直しとなる。そして敵の攻撃を受けた際に「タラニス」自身は搭乗者たちのスキルや回復アイテムなどで戦闘中ならいくらでも回復ができるが、中にいる子供たちが無事とは限らないのが本作の最大の肝といえる。
ダメージを受けたタイミングで、搭乗中の子供たちは“ケガ”をしたり“おびえ”てしまったりする。おびえてしまうと、3ターン命中率低下などのペナルティがあるが引き続き戦闘が続行できるし、ハンナの固有スキル「カームソング」を使うことで味方全員の“おびえ”を解除できる。
ケガはそれ自体は特にペナルティは発生しないが、2度同じ子供がケガをすると“戦闘不能”となり、以降の戦闘では戦線離脱を余儀なくされる。また唐突に発生する「落ち込み」も厄介だ。通常攻撃は行なえるのだが、スキル使用や必殺技が使えなくなるため、戦闘時はほぼ役に立たなくなる。
こうした状態異常については“おびえ”以外は戦闘中や移動中の回復手段がない点には注意が必要だ。そもそも移動中は、道中でゲットできるHP回復やSP回復のマスを通過する以外の回復手段がないため、これらの状態異常を回避するためには、なるべく敵の攻撃を受けないようにすることくらいしか方法はないのだ。
そして最後にもう1つ、本作には“最後の手段”が用意されている。忌まわしき最後の手段の名前は「ソウルキャノン」。名前からして不吉な名前だ。最後の手段というだけあって、これを発動すると目の前の敵は間違いなく倒すことができるが、「タラニス」のHPが一定以下まで落ちない限り「ソウルキャノン」は発動できない。そしてその圧倒的な破壊力の代償となるのが文字通り、子供たち1人の“命”で、発動時には子供たちの中から1人を選択し、発動後は二度とその子供は戦線に復帰できない。
本作ではチュートリアルのタイミングで強制的に1度発射することができるのだが、文字通り子供たちの1人が命を落とすことになる。一方でチュートリアルでの発射は強制的なものであり、その後ゲーム内でリセットされるため、チュートリアルでは遠慮なく、子供たちの1人の命を生贄にして発射して問題ないのだが、その禍々しい衝撃は、普通のプレーヤーなら使おうとは思えない凶悪なビジュアルだ。
最後まで「ソウルキャノン」を使うか使わないかで明らかに物語の展開は色々と変わっていくことになるのだろう。筆者は今回は自らの意思では一切使わずに物語を進めてきた が、使った場合と使わなかった場合とでどのように話が展開するのか。そうしたこ とを考えると、何度もプレイしてみたくなる作りになっている点も、本作の絶妙な 味付けの1つといえる。
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