【特別企画】

「ダライアス外伝」30周年! 元攻略ライターが振り返る、90年代を代表する名作シューティング

【ダライアス外伝】

1994年9月 稼働開始

 タイトーのアーケードゲーム「ダライアス外伝」が、2024年9月で稼働30周年を迎えた。

 本作は、「ダライアス」「ダライアスII」に続くシリーズ第3弾にあたる横スクロールシューティングゲーム。自機のプロコ(2Pはティアット)を操作して、ショットとブラックホールボンバーで敵を倒していく。各ゾーン(ステージ)の最後には、海洋生物をモチーフとした巨大戦艦が出現するのが特徴だ。

 以下、本稿では、かつて本作の攻略記事を執筆していた筆者の経験もふまえ、本作の素晴らしさや当時のゲーセンの状況などを、記憶の範囲で振り返ってみた。

【ダライアス外伝】
※写真は「イーグレットツー ミニ」版で撮影(以下同)

1画面とは思えない、大迫力の演出の数々に感激

 筆者が本作の存在を最初に知ったのは、「『ダライアス』の新作がロケテストをやっていたぞ」との先輩ライターからの情報だった。元々シューティングゲームの記事が書きたくてライターになった筆者は、久々の新作の登場に大いに喜んだが、かの有名な3画面ボディソニック筐体ではなく、本作は1画面の「普通の」筐体だったと聞き「何ソレ!? 3画面筐体を使ってこその『ダライアス』でしょ……」と、がっかりしてしまった。

「ダライアス」3画面ボディソニック筐体。画像は「ダライアスバースト アナザークロニクル」公式サイトより

 しかし後日、タイトーへプレイ取材に出掛けた先輩方が持ち帰ったビデオテープの映像を見たら、ひっくり返るほど驚かされた。

 パワーアップした自機が放つショットの軌道も、きめ細かく描かれた敵キャラや背景も、その美しさとカッコよさは際立っていた。グレートシング(クジラ)やキングフォスル(シーラカンス)など、シリーズ名物の巨大戦艦のデザインもすさまじくカッコよく、攻撃のバリエーションが実に豊富で、とても1画面とは思えないほどの迫力に満ちていた。画面内の敵を渦に巻き込んで一掃する、新システムの「ブラックホールボンバー」のとびきり派手な演出も秀逸で、筆者はまだ1回も遊んでいないにもかかわらず、あっという間に魅了されてしまった。

 本作の稼働開始後、筆者は早速地元のゲーセンで遊んだらすぐに気に入り、以後毎日やり込むようになった。過去のシリーズ作品と同様に、本作は各ゾーンをクリア後に上下2ルートに分岐し、全7クリアするとエンディングに到達するシステムだったが、やがて筆者は全ゾーンを1コインクリアできるようになった。全ゾーン制覇後も「また、あの敵を倒したい!」「ハイスコアを更新したい!」「ショットを撃ちまくりたい!」「あのゾーンの演出が見たい!」などなど、本作は繰り返し遊びたいと思わせる魅力にあふれていて飽きることがなかった。

 女声のボイスを取り入れるなど、過去のシリーズ作品とはまた違った美しいBGMが聞けるのも、本作をプレイする大きなモチベーションのひとつだった。またV~Z’の各最終ゾーン(7面)は、いずれもBGMがちょうど1ループしたところでボス戦に移行するよう、曲が流れ始めるタイミングを調整した演出も大いに感動した。

ブラックホールボンバーを放ち、敵を一掃したときの爽快感は格別
シリーズ名物の巨大戦艦。写真はCゾーンのボス、キングフォスル
こちらは7体存在するラスボスのうちの1体、Z’ゾーンに出現するグレートシング

 筆者は当初、本作の記事の執筆を任されていなかった。そこで、ゲーセンで1コインクリアできるようになるまでやり込んだうえで、編集部に「攻略を記事を書かせて下さい」と直訴し、半ば強引に仕事をいただいた。

 後日、編集部がメーカーから拝借した基板を利用して、時には泊まり込みで本作をやり込んだこともあったが、やがて生半可なやり込みではシューティングゲームの攻略記事を書き上げることはできないことを、イヤというほど思い知らされた。しかも本作は、ハイスコアを目指すには意図的に難易度を高くする必要があるため、原稿の締め切り間際は地獄を見ることになったのは今となっては良い思い出であり、後々のライター活動にも大いに役立った。

 また、インターネットが普及した現在とは異なり、ゲームメーカーの社員、あるいは経営者がメディアにあまり出ない時代にあって、本作の仕事を通じて開発者インタビューの仕事を初めて体験し、攻略のヒントを直接教えていただけたことも、今なお忘れ難い思い出である。

中ボスはボールを狙い撃ちして本体から分離させ、分離後のボールを取ると味方になる。写真は2面(B、Cゾーン)に出現するナメクジウオを捕まえたところ
どのボスも攻撃パターンが多彩で、攻略パターンを編み出すのは容易ではない。写真はHゾーンのネオンライトイリュージョン(イカ)

「格ゲーブーム」絶頂期でも際立っていた存在感

 本作が登場した1994年当時のゲーセンは、対戦格闘ゲームブームの真っ盛り。「スーパーストリートファイターIIX」「バーチャファイター」「THE KING OF FIGHTERS'94」など、どこの店に行ってもビデオゲームコーナーには格ゲー用の通信対戦台がズラリと並んでいた。そんな時代にあって本作は、たとえ人通りの多い都心の店であっても、必ずしも置いてあるとは限らなかった。

 だが、本作が稼働している店に筆者が足を運ぶと、どの店でも順番待ちになる頻度が、ほかのシューティングゲームに比べて明らかに多かった。特に、ショットの連射ボタンを用意していた店にはシューティング好きが集まり、1コインクリアを達成するプレイヤーをしばしば目撃した。普段は格ゲーばかり遊んでいるのに、本作だけは「試しに遊んだらハマってしまった」と、筆者に話してくれた友人や店の常連も少なからずいたように記憶している。

 これも筆者の私見になるが、連射ボタンのない店では1コインクリアまでやり込んだプレイヤーはかなり少なく、難関のタイタニックランス(ベレムナイト)が出現するMゾーンと、クラスティハンマー(シャコ)が出現するP、R、Tゾーンは、たとえ連射ボタンがある店であっても、誰もが苦戦していた印象がある。しかし、格ゲーブームが絶頂期を迎え、シューティングの新作のリリースが激減した時期にあって、ゲーセンでしばしば順番待ちになり、後にプレイステーションとセガサターンの両方に移植されたのは、本作が多くのプレイヤーに支持されていた何よりの証拠だろう。

ゾーンMは、全長が数画面分にもおよぶ超巨大戦艦、タイタニックランス(ベレムナイト)との戦いになる
凄まじい攻撃を次々と繰り出すクラスティハンマー。きちんとパターンを作らないと、連射装置があっても倒すのは難しい

 本作は、タイトーの復刻ゲーム機「イーグレットツー ミニ」に収録され、しかもショット連射ボタンが標準搭載されているので、この機会にぜひプレイしていただきたい。初めのうちは何回ミスしても構わないので、コンティニューを繰り返して好きなゾーンを選んでエンディングまで進み、ショットやボンバーで敵を倒す爽快感の高さと、美しいビジュアルやサウンドの数々をぜひご堪能あれ!