【特別企画】

「スーパーストリートファイターIIX」30周年! 今なお愛される対戦格闘ゲームの王道中の王道。当時の熱狂ぶりを振り返る

【スーパーストリートファイターIIX】

1994年3月 稼働開始

 1994年3月にカプコンが発売した、アーケードゲーム「スーパーストリートファイターIIX」が、今月で稼働30周年を迎えた。

 本作は、1991年に登場した大ヒット作「ストリートファイターII」シリーズの第5弾にあたる対戦格闘ゲーム。すでに人気を確立して久しい「ストII」シリーズの続編としてさらなる進化を遂げた本作には、いったいどんな特徴や出来事があったのか? 以下、筆者の独断と偏見による、本作の軌跡を改めて振り返ってみよう。

※写真はNintendo Switch版「カプコンアーケードスタジアム」にて撮影(以下同)

前作「スパII」から、さらに進化を遂げてサプライズ登場

 筆者が本作の存在を最初に知ったのは、確か1993年の12月前後だったと記憶しているが「エッ、もう続編が出るの?」と率直に思った。なぜなら、本作の前作にあたる「スーパーストリートファイターII」が登場したのは1993年10月、つまり稼働を始めたばかりのタイミングだったからだ。

 当時からアーケードゲーム専門誌「ゲーメスト」でライターとして活動を始めていた筆者は、カプコンの東京オフィスで本作のプレイ取材に出掛ける機会に恵まれた。初見では、ビジュアルも登場するキャラクターも前作とまったく一緒のように思えたが、いざプレイすると、あるいは他のライター仲間がプレイしているところを見ていると、しゃがみガードができない中段攻撃や受け身(投げ抜け)のほか、キャラごとに新しい技も追加されていることが次々と判明。「こんなに変わっていたのか……」とびっくりさせられた。

 とりわけ大きなインパクトがあったのが、ゲージが満タンになると各キャラが使用できる、超強力な必殺技「スーパーコンボ」が初めて導入されたことだ。すでにSNKの対戦格闘ゲームではおなじみになっていた「超必殺技」とは少し違った形で、本作にも当たれば一発大逆転の要素が追加されたことで、一段と完成度が増したように思われる。

 あくまで筆者の主観だが、本作もゲーセンでたいへんな人気を博し、どこの店でも乱入対戦台が盛り上がっていた印象を受けている。前作の「スパII」が登場したときも、旧シリーズからビジュアルやサウンドが一新され、新キャラ(※キャミィ、ディージェイ、T・ホーク、フェイロンの4人)の追加、コンボ(連続技)表示機能の導入などかなりのインパクトがあったが、「スパIIX」がもたらした衝撃はそれ以上であり、各地のゲーセンで長らく稼働を続けることとなった。

新技が多数登場。上の写真はケンの中段攻撃となる鉈落とし蹴り、下は相手の飛び道具を消す、ザンギエフのバニシングフラット
スーパーコンボの登場で、対戦がさらに白熱。写真はブランカのスーパーコンボ「グランドシェイブローリング」が決まったところ

 稼働開始時にその存在は隠されていたが、後にプレイヤーたちに特大のインパクトを残したのが、本作でシリーズ初登場となったキャラクター「豪鬼」だ。

 豪鬼は、本作のデモ画面でほんの少しだけ登場するシーンがあるが、CPU戦で特定の条件を満たすと、本来のラスボスであるベガが登場するステージで、豪鬼が乱入してくるようになる。こんな演出があったとは、多くの人がびっくりさせられたことだろう。

 筆者も初めて豪鬼に遭遇したときは、その俊敏な動きと極めて高い攻撃力に加え、隙あらばどんどん連続技を決めてくるあまりの強さに面食らい、あっという間にKOされたことをよく覚えている。さらに隠しコマンドを入力することで、豪鬼が使用できる裏技が後に明らかになったことでも、いったいどれだけのプレイヤーを驚かせたことだろうか。

 豪鬼の登場以外にも、ゲーム開始時にゲームスピードを選べる機能(※基板の設定で、スピードを固定することも可能)が新たに実装されたほか、前作と同等の性能でキャラクターが使用できる隠しコマンドがわざわざ用意されていたことも特筆に値するだろう。

多くのプレイヤーに衝撃を与えた、シリーズ初登場となる豪鬼の乱入シーン
ゲーム開始、または乱入時にゲームスピードの選択も可能になった

全国大会イベントも大盛況。今なお愛され続ける人気ぶりは驚異的

 本作の登場からわずか約2カ月後、1994年5月3日に本作の全国最強プレイヤー決定戦「第6回ゲーメスト杯争奪 スーパーストリートファイターIIX全国大会」が都内で開催された。本大会は地方予選、および一部のゲーセンで実施されたロケーション予選を勝ち抜いた代表選手が一堂に集まり、文字どおり実力日本一を決める対戦イベントだ。

 前述したように、筆者はプレイ取材にこそ出掛けたものの、その後は本作に仕事で関わることは一切なかった。だが、当時の編集部は人手不足のせいもあったのだろう、筆者は本大会の地方予選ではMCおよび審判係を、東京予選と決勝大会でも審判係を任され、その一部始終を目撃することになった。いずれも会場内はたいへんな盛況で、昨今のeスポーツ大会にもけっして劣らない熱気に満ちていたと記憶している。ちなみに地方予選は、第2回の「ストリートファイターII'チャンピオンシップ」から実施されており、「ストII」シリーズの人気の高さ改めてうかがえる。

 そして、稼働開始から30年を迎えた現在でも、しかも最新作「ストリートファイター6」が発売されて間もないタイミングであるにもかかわらず、いまだにeスポーツ大会で本作が時おり使用されているのは本当にすごいことだ。本作の人気がいかに根強く、ゲーム自体の完成度が高かったかの何よりの証明だろう。

 余談になるが「ゲーメスト杯」の模様は、後に新声社が発売したVHSビデオ「ゲーメストビデオ スーパーストリートファイターIIX」に攻略プレイ動画とともに収録されている。本作に限らないが、当時は1タイトルのゲーム大会だけを収録したビデオが商品化されていたことも、今振り返ると対戦格闘ゲームブームのすごさを裏付けるものであったように思える。

 本作は過去に何度も移植されているが、今でもプレイステーション 4/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Steam)でそれぞれ配信中の「カプコンアーケードスタジアム」に収録されているので手軽に遊ぶことができる。かつて対戦プレイに明け暮れたプレイヤーはもちろん、「カプコンアーケードスタジアム」では便利な有料コンテンツ「無敵プレイ」も販売されているので、かつてCPUの豪鬼を倒せなかった人は、この機会にリベンジを目指すのも一興だろう。

「カプコンアーケードスタジアム」版「スパIIX」は、失敗してもすぐに直前の状態に戻せる「巻き戻し」を搭載
さらに有料の「無敵プレイ」をセットすると、どんな攻撃を受けても一切体力が減らなくなる