【特別企画】

「ウィザードリィ #I」国内デビューから38年! 寝ても覚めてもダンジョンをさまよいレアアイテムを願ったあの興奮

【ウィザードリィ #I PROVING GROUNDS OF THE MAD OVERLORD】

1985年11月15日 日本発売

 日本上陸を果たし今日に至るまで、大勢のゲーマーを虜にしてきた正統派RPGの「ウィザードリィ #I PROVING GROUNDS OF THE MAD OVERLORD」(以下、ウィザードリィ #I)が、2023年11月15日で国内デビューから38周年を迎えた。

 「ウィザードリィ #I」は、地下10階層にわたるダンジョンを探索し、最終的には地下10階に潜む魔術師ワードナから魔除けを奪い地上に戻るのが目標となるRPG。しかし、最終目的よりも未入手の貴重なアイテムを捜しまわったり、飽くなきまでのレベルアップを目指すなど、プレイヤーごとに自由なプレイスタイルを取れたことが大きな魅力であり、ヒットした要因の一つといえる。本作以前にも数々のRPGが登場していたが、「ウィザードリィ #I」ほど数多くのプレイヤーの心を鷲づかみにした作品はなかったといえるのではないだろうか。

 そんな同作品が移植された時の話と、パソコン版ならではの魅力を振り返ってみよう。なお、今回掲載した写真はPC-8801版をPC-8801FE2実機でプレイし、その映像をHDMIキャプチャした動画から切り出している。

【Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord | Early Access Launch Trailer】
※フル3Dリメイク版トレーラー

「ウィザードリィ #I」移植のきっかけは「ソースコードを見たかった」

 世界初のパーティ制を導入したRPGであるオリジナル版「ウィザードリィ #I」が誕生したのは、1981年9月のこと。当時Apple II向けにリリースされた本作は人気を博し、その後もナンバリングタイトルを重ねていくこととなる。

 ちなみに、1981年に国内で発売されたパソコンは、日立のベーシックマスターレベル3やシャープのMZ-80B、富士通がFM-8、そしてNECはPC-6001とPC-8801。この時代にパソコンでプレイされていたゲームジャンルのメインは、アクションやシューティング、そしてシミュレーションだった。翌年にアドベンチャーゲームというジャンルが登場したものの、国内でRPGがメジャーになるにはもうしばし時を要することになる。

 その後、国内では1983年末に、敵と戦いながら3Dダンジョンを探索し、目的のアイテムを探し出すという王道RPG「THE BLACK ONYX」がBPSから誕生。翌年の84年末には、戦闘にコマンド入力を必要とせず体当たりというアクション要素で戦う名作アクティブRPG「ハイドライド」も、T&E SOFTよりデビューする。

 こうした流れの中、1985年11月15日に満を持して国産パソコンでの発売となったのが、日本語版「ウィザードリィ #I」だった。発売元は当時のアスキーで、開発を担当したのはフォア・チューン社。移植を行ったのは、フォア・チューン社の社長(当時)で22歳の学生だった鈴木茂哉氏だ。

 鈴木氏は1984年の12月にアメリカに行く用事があり、そのときにソフト関係の仕事をしている人の家に泊めてもらったところ、その人が「ウィザードリィ」原作者のロバート・ウッドヘッドにコネがあるということで、早速彼の元へ出向くことになったという。実際に会って話をしたところ、日本のソフト会社に対してもプッシュしてくれるということになり、日本語版発売の話が軌道に乗る。

 そもそもの移植の動機だが、「仕事柄、ソースコードの中身を見るのが楽しみだったことと、発売されればハマる人が大量に出ると思った」と、当時の雑誌インタビューでは答えていた。

 こうして1985年11月15日に国内版が発売となったが、この日に登場したのはPC-9801版だけのようで、他機種版は若干遅れて12月にリリースされた模様だ。

発売前にはパッケージイラストを使った広告で期待感を盛りあげ、直前には発売日を打ちだしたバージョンでアピールしていた。国産パソコンで発売されたのは、この広告に掲載されている機種以外にMSX2版とMZ-2500版がある
これは、PC-8801版のパッケージと同梱物。10ページにわたるマッピング用のシートや、“チートはしないで!”と書かれたペーパーなどが収録されていた。チートペーパーに関しては、Apple II版が発売された当時に「ウィズプラス」という、キャラクターのパラメータや装備を自由自在にできてしまうチートソフトなどがあったため、それを受けてのものではないかと思われる

 そんな「ウィザードリィ #I」のマニュアルには、ストーリーではなく“The MISSION(使命)”と書かれた項目が用意されている。

 そこには、当時雑誌などに掲載されていたストーリーである「ワードナは、トレボーの元から魔法の魔除けを盗み出し、城外にある洞窟の中に大量のモンスターとワナと共に身を隠した。冒険者たちは、ワードナを倒して魔除けを持ち帰れるか?」という話とは少々毛色の違った内容が書かれていた。

 狂気の大君主、Trebor(トレボー)は、紛れもなく狂っていますが、決して愚かではありません。彼は自分の世界制覇への主要計画を実行するにあたり、2つのことを必要としています。1番目は各クラスで最良の精鋭護衛兵です。2番目は、悪の魔法使い、Werdna(ワードナ)によって盗まれた魔法の魔除けです。Werdnaは極悪人なので、老婆を道の半分までしか渡してやりません。それから、彼女の財布を盗むのです。Werdnaは迷路のどこかに住み、魔除けを肌身離さず持ってることが知られています。

 Treborは、迷路を試練の場として使っています。彼は迷路を、彼の必要とする冒険者たちの精鋭グループをレベル13以上になるまで鍛え、何とかして同時に魔除けを奪還するのに最適の場所だと考えています。言うまでもなく、魔除けを奪還したいかなる冒険者たちも、直ちに彼の精鋭護衛兵に徴兵されるでしょう。もし必要ならば、力づくでも……。

 そして、以上があなたのキャラクタが押しつけられている状況なのです。乏しい幸運を元に彼らは、迷路の地図を作り、魔物どもを打ちのめし、獲物を持って逃げ、魔除けを見つけ、そしてそれらを行ううちに何度か殺されるだけなのでしょう。

 しかし、やらねばならないのです。それが運命なのですから……。

 つまり、プレイヤーが作成したキャラクターたちは狂気の大君主トレボーの元、レベル13以上になるよう迷路で鍛錬を積みワードナから魔除けを奪取すると、あとはトレボーの世界制覇のためのコマとして使われるという、そんなバックグラウンドストーリーが掲載されていたのだ。

 とはいえ、ゲーム中に登場するイベントといえば、地下1階と地下2階を歩き回ってKEY OF GOLDを手に入れ、それを使い地下4階でBLUE RIBBONを入手。そして、地下10階でワードナを倒すことのみ。しかし、このシンプルさこそが、さまざまなプレイ方法を際立たせ、そして数多くの派生作品を生むことになったといえるだろう。

マニュアルには、ゲームの舞台となる町のイラストが掲載されている。この地上は、後に「ウィザードリィ #IV」にて、歩き回ることに