【特別企画】

「ウィザードリィ #I」国内デビューから38年! 寝ても覚めてもダンジョンをさまよいレアアイテムを願ったあの興奮

リセットボタンに手を添えながら幾多の宝箱に仕掛けられたワナを解除してきた

 戦いが終われば、待っているのはお楽しみの宝箱。扉を開けたときに出現した敵を倒すと、その後には宝箱が出現するのだが、そう素直に開けさせてくれないのはお約束だ。

 基本的には地下深くに潜るほど、中身は“美味しく”、仕掛けられているワナは“より危険な”ものになっていく。しかも、何のワナが仕掛けられているかを調査したあとは、解除するために正しいスペルを打ち込まなければならない。これは“文字の入力=ワナを解除している一連の作業”であり、入力ミスは例えるなら“鍵穴に入れていた針金を違う方向に動かしてワナを誤作動させてしまった”ということだ。

 これが“POISON NEEDLE”や“ALARM”であれば被害は少ないが、通路と部屋以外は石で埋められている地下10階で“TELEPORTER”を発動させてしまったら、目も当てられない。どこかに飛ばされるだけならまだしも、あの有名なフレーズ「いしのなかにいる」となってしまえば、これまた育てたパーティが一瞬で全滅……ここにもまた、選択式では味わえない緊張感があるのだ。なので、この機会にぜひともパソコン版でプレイして欲しいと、当時夢中になった人間の一人としてはどうしても思ってしまう。

宝箱に仕掛けられた罠の解除シーンは、今の時代ならばライトノベルなどでもよく目にするだろう。あの工程一つ一つが、文字を1文字1文字入力することに対応していると考えれば、選択式にはない緊張感が味わえる文字入力方式が「ウィザードリィ」にはマッチしていることがわかるだろう
地下10階でのワナ解除時は、常に左手の親指や人差し指がリセット(IPL)ボタンに添えられていたのではないだろうか。どんな高レベルのTHIEFやNINJAであろうとも、解除に失敗することはある。「おっと! TELEPORTER」のメッセージが見えた瞬間にリセットするのは「ウィザードリィ」プレイヤーの間では常識であり、ながらプレイや酒を飲みながら遊んでいたりすると間に合わずに「いしのなかにいる!」のメッセージが表示され、何百時間とかけて育ててきたパーティ全滅の憂き目に遭うことも……

 苦労して開けた宝箱の中には、いくらでも出てくる通常装備品だけでなく、滅多にお目にかかれないレアアイテムも眠っている。なかでも有名なのが、“MURAMASA BLADE!”や“SHURIKENS”、そして“GARB OF LORDS”などの超貴重品。「ウィザードリィ」プレイヤーなら、それらを是が非にでも手に入れて、愛着沸いたキャラクターたちに装備させたいと思ったはずだ。

 それまでの通常装備品とは違い、“MURAMASA BLADE!”は破格のダメージを相手に与え、“GARB OF LORDS”なら歩くごとにキャラクターのHPが回復していく。それらの突出した能力を体験した時の衝撃は、未だに忘れられない人も多いだろう。

 しかも、それらの激レアアイテムをボルタックの取引所に売れば、次からは店の商品として陳列されるというシステムも、また嬉しいところ。自己満足の領域を出ないものの、商品一覧の中に“MURAMASA BLADE!”などが並べば、何かの機会に同じ「ウィザードリィ」仲間に自慢したくなるのは当たり前のことだ。

地下10階を探索する目的の一つが、激レアアイテムを発見するため。アイテムは、宝箱から出てきた直後は“?SWORD”のように不確定名といわれる未鑑定の状態だ。これをボルタックの取引所、またはBISHOPが鑑定することで詳細が判明する。このときに名前が“BLADE CUSINART'”や“MURAMASA BLADE!”に変わった時は、歓喜の声が出たものだ。今回は、たまたま不確定名“?STARS”を発見して小躍りすることに。この不確定名は“SHURIKENS”にのみ与えられているので、鑑定しなくても判別が可能だ
ダンジョンに何度も通えば、数多くの貴重品を見つけるだろう。その数だけパーティは強くなるのだが、余ったとしてもボルタックの取引所に売ることで、次回から商品として陳列されるため見る楽しみも出る。えげつない販売価格には、ドン引きするが……

RPGの基本にして最高傑作なのは、21世紀の現在も変わらず

 目的達成のためだけであれば謎解きや探索をする必要はほとんどないシステム、プレイ中にはまったく流れないBGM、回転床やワープに怯えながら方眼紙に書き込むマッピング作業……それらが、プレイヤーの想像をさまざまにかき立ててくれた「ウィザードリィ #I」。本作は、日本のRPGが立ち上がる時期に登場したということもあり、大勢のユーザーから多大なる時間を奪うことに成功している(笑)。そして、“経験値を稼いでレベルを上げる”というシステムが日本人にマッチしたことで、現在までシリーズが続いている超大作RPGと呼ばれる作品だけでなく、数多くのタイトルに多大な影響を与えたのも間違いない。

 本作はその後、数多くのパソコン雑誌でファンページが設けられ、長期にわたり人気となった。そのため、プレイヤーによって“自分の中での「ウィザードリィ」熱”が盛り上がった対象も異なってくるはず。筆者はパソコン版でのプレイにハマったが、他にもJICC出版局から発売されたベニー松山氏の小説「小説ウィザードリィ 隣り合わせの灰と青春」に夢中になったユーザー、雑誌・月刊「ログイン」の「WIZでござるよ」や月刊「テクノポリス」の「OOPS!ウィザードリィ」を楽しみにしていたプレイヤーなど、熱中の仕方はさまざまだっただろう。そんなところも「ウィザードリィ」の魅力の一つと言えるかもしれない。

 現在はSteamプラットフォームにて、本作のフルリメイク版が“早期アクセスゲーム”として公開されている。しかし敷居は高いが、できれば当時のパソコン版を実機でプレイしてほしいもの。何かに夢中になるという、あの頃に感じた楽しさや熱量を、きっと思い出すことができるはずだ。

■「Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord」Steamページ