【特別企画】
「影の伝説」が今月で稼働38周年! 迫力満点の忍者アクションゲームをプレイバック
2023年10月26日 00:00
- 【影の伝説】
- 1985年10月 稼働開始
タイトーが開発、発売したアーケードゲーム「影の伝説」が、1985年10月の稼働開始から今月で38周年を迎えた。
本作は主人公の伊賀忍者「影」を操作して、手裏剣と刀の2種類の武器で敵の忍者を倒していくアクションゲーム。江戸時代末期を舞台に、魔界の軍団にさらわれた霧姫を助けるべく、影が敵の忍者たちと戦うというストーリーで、全4ステージ(森、水路、城壁、城内)をクリアし、最後に出現するボス敵を倒すと1周クリアとなる。
以下、懐かしの忍者アクションゲームの特徴、魅力を改めて振り返ってみよう。
リアルなビジュアルと和風サウンドがプレーヤーをアツくする
本作の最大の特徴は、既存の忍者ゲームとは比較にならないほどの、当時として極めてリアルなグラフィックスである。忍者ゲームに限らず、人間のキャラクターでも2頭身のコミカルサイズで描かれるのが当たり前の時代にあって、本作は主人公の影も敵の忍者も、すべて本物の人間に近い5~6頭身の体格で描かれていたのは非常に珍しかった。木々のグラデーションや城壁、襖などの背景のほか、忍者服のデザインや模様までもがきめ細かく描かれており、江戸時代の日本らしい世界を見事に表現していた。
筆者が本作の存在を初めて知ったのは、確かゲーム雑誌の「Beep」か「マイコンBASICマガジン」の記事で、いくつか載っていた画面写真をひと目見て「何てカッコイイ画面なんだ!」と、あまりのリアルさにびっくりさせられた記憶がある。その後、ゲーセンで現物を初めて見たときには、敵の妖坊が口から吹き出す炎のリアルさと、流れるようなアニメーションの綺麗さには、子供心にとても感動したことを今でもよく覚えている。
影は、自身の身長の数倍の高さまでジャンプできる跳躍力を持ち、木や柱を素早く登り降りができたり、水中を移動したりすることも可能。人間離れした能力を持つ影を自在に操れることで、プレーヤーはまるで忍者映画やマンガの主人公になったかのような気分にさせてくれる。ステージマップは単純な固定画面や横スクロールではなく、1面や3面のように、縦方向にもマップが広がるステージも存在する。影の優れたジャンプ力を実感できるのも本作ならではの面白さだ。
ゲームの面白さをさらに引き立てているのがBGMとSE(効果音)だ。FM音源を使用し(※)、琴や三味線の音色を忠実に再現したメロディと、ベースやドラム音が融合した「和風ロック」とも形容できるであろうBGMは、軽快かつ斬新。影が刀を振ったり、影と敵の刀がぶつかり合ったときなどのSEも実にリアルで、特に刀がぶつかり合った際は影がノックバックする演出もあり、プレーヤーのテンションを大いに高めてくれるのだ。
※筆者注:FM音源を搭載したのは新バージョンの基板で、旧バージョンには使用されていなかった。
忍術とエンディングの演出も秀逸
1面では、特定の木の枝に置かれた「魔笛」を取ると影が数秒間だけ忍術を唱えるのも、プレーヤーが忍者になった感がさらに増す面白いアイデアだ。魔笛はサイズが非常に小さいので見付けにくい欠点はあるが、忍術を唱えている間は画面内に出現した敵が瞬時にバタバタと倒れていく、つまり無敵状態になるのでとにかく快感だ。
4面の最終地点で、柱に縛られた状態で出現する霧姫を救出する際は、プレーヤーが刀を振って縄を切ることが必要だ。さらに救出後のデモ画面では、影が直後に出現するザコ忍者を自動で斬り倒したり、ボス戦の直前で突然出現した敵に霧姫が再びさらわれるシーンが登場したりするなど、実に芸が細かい演出が盛り込まれている。
最終ステージに出現するボスキャラが、1周目と2周目とではそれぞれ異なるのも本作ならではの面白いところ。1周目は二刀流の使い手である霧雪之助が、2周目には真のラスボスにあたる、同じく長刀の二刀流を使う雪草妖四郎が登場する。いずれもザコ敵とは比較にならないほど手強く、特に妖四郎は空中でも自在に動き回る神出鬼没の動きでプレーヤーを大いに苦しめ、同時に楽しませてくれた。
妖四郎を倒すと、当時のアーケードゲームでは極めて珍しい、霧姫の救出に成功したことを示すエンディングシーン、およびエンディング曲を用意していたことも特筆に値する。古い時代のアーケード用アクションゲームは、決まったステージをひたすら繰り返しプレイするものがほとんどだったからだ。エンディングに到達したプレーヤーの感動を2倍にも3倍にも高める、これらの凝った演出を作り込んでいたことは高く評価されてしかるべきであろう。
本作は、今でもPS4およびNintendo Switchで配信中のアーケードアーカイブス版、または「EGRETII mini(イーグレットツー ミニ)」で遊ぶことができる。和風の世界観を見事に体現したビジュアルと忍者アクション、そしてサウンドの妙なる調べが織り成す本作独特の面白さを、まだプレイしたことがない人はこの機会にぜひ体験していただきたい。
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