【特別企画】
「リッジレーサー」今月で稼働30周年! あまりのリアルさに度肝を抜かれたプレーヤーが続出した、傑作レースゲームの軌跡を振り返る
2023年10月7日 00:00
- 【リッジレーサー】
- 1993年10月 稼働開始
1993年10月にナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)が発売したアーケード用レースゲーム「リッジレーサー」が、今月でちょうど30周年を迎えた。
本作は大型の専用筐体を使用し、ハンドル、シフトレバー(6速ギア)のほかアクセル、ブレーキ、クラッチの各ペダルを使用してマイカーを操作する1人プレイ専用のレースゲーム。まるで実車を運転してサーキットを走っているかのような気分にさせてくれる、ポリゴンを使用した3DCGで描かれたリアルで美しい画面は、当時のプレーヤーを大いに驚かせた。
かつて、一世を風靡した本作だが、今となっては読者の皆さんの中でもプレイ経験のある人はあまりいないと思われる。そこで、記念すべき30周年を迎えたタイミングで、レースゲームに限らずビデオゲームの歴史に残る、本作の魅力と存在意義を改めて振り返ってみよう。
当時最新鋭の技術を導入、他の追随を許さないリアルさを実現
本作の最大の特徴は、何といっても当時の最先端の技術を導入した基板「システム22」を使用したグラフィックスのリアルさにある。本作は単なるポリゴンではなく、業界初となるテクスチャーマッピングとグーローシェーディングを導入したことで、車体や路面だけでなく、車体に描かれたロゴやスリップ跡、岩肌の質感もくっきりと描かれ、トンネル内を走行中はライトの反射をも再現した、そのリアルさはズバ抜けていた。
「ウイニングラン」や「バーチャレーシング」など、本作よりも先にポリゴンを使用したレースゲームはいくつもか出ていたが、いずれも今の目で見れば車のデザインはおもちゃのブロックのようなカクカクした形状で、発色数もかなり少なく、テクスチャーマッピングはまだ導入されていなかった。だからこそ、本作が初めてお披露目されたときの衝撃は特大だった。
筆者は1993年8月に開催された、業界団体が主催する最新アーケードゲームの展示イベント、アミューズメントマシンショー(※現在のJAEPO)で本作を初めてプレイしたが、あまりのリアルさに度肝を抜かれた思い出は今なお忘れることができない。また、設置店舗はごく一部に限られたが、本物のユーノスロードスターに乗り込み、大型プロジェクターを見ながらプレイできる特別バージョン「リッジレーサーフルスケール」が登場したことでも多くのプレーヤーを驚愕させた。
ハンドル操作に合わせて、マイカーが滑らかに動くだけでなく、急カーブではいわゆるドリフト走行を繰り出し、CPUの車をパスしたり、走行タイムを短縮できたるするのも本作ならはでの面白いところ。ドリフト中は、これまたリアルなタイヤやブレーキの音が鳴り響くことも相まって、一度体験するとついついやみつきになってしまう。シフト操作はAT(オートマティック)に設定することも可能なので、初心者でも簡単にドリフト走行が繰り出せるのも嬉しいところだ。
個性あふれるBGMも秀逸、移植版も歴史に残る作品
本作をさらに面白くしている要素のひとつに、BGMの存在が挙げられる。本作では、レース開始時に6種類のBGMが選択可能で、いずれもプレーヤーのテンションを大いに高める、テクノ系のアップテンポで独創的な曲がズラリとそろっている。「FEELING OVER」や「RHYTHM SHIFT」など、当時は極めて珍しかったボーカルを使用したものもあり、クラブミュージックをほうふつとさせるこれらの曲は、当時のゲームミュージックではほかに類を見ないものであった。
中でも強烈なインパクトを放っていたのが「ROTTERDAM NATION」だ。その名のとおりロッテルダムテクノを取り入れた本曲は、作中に使用されているボイスを逆再生したボーカルを流す驚愕のアイデアを取り入れたこともあり、良い意味でプレーヤーを狂気に誘う、一度聴いたら容易に忘れないものであった。
筆者は本稿の執筆にあたり、超久々に本作(PS版)をプレイしたが、レース中はコースマップをすっかり忘れていて運転がメチャクチャになったものの(苦笑)、ノリノリのBGMのおかげでストレスがたまることなく存分に楽しむことができた。今聴いてもまったく古さを感じない、本作BGMの素晴らしさを改めて実感した。
ちなみに「リッジレーサー」のBGMは、「太鼓の達人」シリーズの楽曲としてもたびたび使用されている。なので、本作をプレイしたことがなくても「太鼓の達人」を通じて、その存在を知ったという人も少なくないだろう。
本作は、1994年12月3日に発売されたプレイステーション(PS)のローンチタイトルの1つとして移植されたことも、ゲーム史上に残る出来事である。
その答えは単純明快。本作の移植を、元祖アーケード版にまったく見劣りしないクオリティで実現させたことにより、当時「次世代機」と呼ばれたPSのハード性能の高さを、これ以上ないほどわかりやすい形でプレーヤーに示してくれたからだ。本作を通じて、ゲーセンの最新ゲームがそっくりそのまま自宅で遊べることを証明したインパクトは、ことのほか大きかった。
PS版では、アーケード版には存在しなかった数々の追加要素を導入していたことも見逃せないポイントだ。
性能がそれぞれ異なる、複数の車種を選んでプレイできるだけでなく、ロード中の待ち時間に遊べる、懐かしのシューティングゲーム「ギャラクシアン」を模したミニゲームで、敵を全滅させると車種が増えるユニークな裏技も仕込まれていた。さらにTTモードで1位を獲得すると、次回プレイ時から最強の隠し車体「デビルカー」がコース上に突如出現する演出に驚かされたプレーヤーも少なくないだろう。
これらの新たなアイデアを豊富に盛り込むことで、本作は単なるベタ移植ではない、プレーヤーがより楽しくかつ長く遊べるようにする、アーケードからの移植におけるひとつの手本を示したことも特筆に値するだろう。
本作は、1994年に稼働を開始した「リッジレーサー2」を皮切りにアーケード、家庭用で何度もシリーズ作品が登場したが、2017年に発売されたニンテンドー3DS用ソフト「リッジレーサー3D」(※ウェルカムプライスおよびダウンロード版。オリジナル版は2011年に発売)を最後に、現在まで久しく新作がリリースされていない。とはいえソフト、ハード両面で最新の技術を取り入れ、プレーヤーに新時代の到来を実感させてくれた本作は、間違いなくビデオゲーム史上に残る逸品である。
RIDGE RACER[TM]&(C)Bandai Namco Entertainment Inc.