【特別企画】

「ロケリ」高校生最強はN高「NRLG Cats」! 3年生Tetu選手がスーパープレイで圧倒!

熱い戦いの連続となった全国高校eスポーツ選手権「ロケットリーグ」部門レポート

3月13日オンライン開催

 3月13日、全国高校eスポーツ選手権「ロケットリーグ」部門の決勝大会が開催された。今回で第3回目の開催となる本大会には過去最多となる121校、全178チームが参戦し、予選からレベルの高い戦いが繰り広げられてきた。この決勝大会は、熾烈な予選トーナメントを勝ち抜いてきた強豪4チームによる最終決戦だ。

 本決勝大会は全国高校eスポーツ選手権史上初のオンライン開催となる大会で、各校はそれぞれの地元の会場から大会に参加する。また、中継スタジオにはeスポーツキャスターのOooDa氏と現役ロケットリーグプロのValtaN氏に加え、タレントのケイン・コスギ氏も招かれ、配信に華を添えた。

中継スタジオの様子、左からOooDa氏、ケイン・コスギ氏、ValtaN氏

 回を重ねるにつれて年度末の風物詩になりつつある全国高校eスポーツ選手権。決勝大会に集ったのは青春をeスポーツに費やし、誰よりもゲームと真面目に向き合ってきた若者たちだ。情熱と情熱のぶつかり合いの末、どのチームが「全国1位」の称号を手にすることになるのか。

【第3回全国高校eスポーツ選手権】

第1試合、N高が強さを見せつける!

 準決勝第1試合はN高等学校「NRLG Cats」対、釧路工業高等専門学校「Mirage Virtual Calimba」の対戦となった。NRLG Catsは3年生のTetu選手を筆頭に、Arinko選手、SK:D選手の1年生コンビを擁するチームだ。

 この中でも特筆すべきはTetu選手で、彼は前回大会でもTOP4の舞台を経験しており、破格の実力で予選では頭一つ抜けたプレーを見せていた。予選まではオンラインで集まって練習をしていた「NRLG Cats」だが、彼らは今回の大会に備えてオフラインブートキャンプをしてきたとのこと。圧倒的な実力で勝ち抜いた予選からまた更に強くなっていると考えると、彼らが優勝争いに絡んでくるのは確実だ。

NRLG Catsの面々、左から、Arinko選手、Tetu選手、SK:D選手、Nekota選手

 対するMirage Virtual Calimbaは全員が3年生のチームで、バランスのとれた連携プレイが強み。中でもLambchan選手とYotsubq選手は前回大会でもTOP4の舞台を経験しているプレイヤーで、予選では息の合った二人のコンビプレイが多くの得点を生んでいた。前回大会では惜しくも優勝に手が届かなかったが、悔しい経験を経て彼らも強くなっているはずだ。メンバー全員が3年生のため彼らにとっては本大会が最後の大会となるが、その分試合に対する思い入れも強いだろう。

Mirage Virtual Calimbaの面々、左から、Nano選手、Lambchan選手、Yotsubq選手

 両校とも前回大会ベスト4まで進出した実力校であり、試合は拮抗した戦いになることが予想されていたが、蓋を開けてみるとNRLG Catsが圧倒的な強さを見せる展開となった。第1ゲーム開始から10秒も経たない内にTetu選手のセンタリングからArinko選手がゴールを決め、その後SK:D選手、Tetu選手も次々と得点し、相手には一切攻めの機会を与えず、第1ゲームは5-0という圧倒的な得点差でNRLG Catsが勝利する。

Arinko選手の先制ゴール

 彼らの持ち味は何といってもチーム一体となった攻撃力で、3人が一斉にボールにアプローチするのではなく、それぞれがタイミングをずらして入れ替わるようにプレッシャーをかけていくことで一切攻めの手を緩ませない。これはローテーションと言われる戦術で、ブースト管理が重要な「ロケットリーグ」では大変有効な戦法だ。対するMirage Virtual Calimbaは自陣で防御に徹することを強いられるため、ブーストを回収しにいくこともままならず、ジリ貧な状況が続いていた。予選では決して彼らの防御が弱いという印象は無かったが、それだけNRLG Catsの攻撃が強いということだろう。インターバルの間もMirage Virtual Calimba陣営からはあまり会話が聞こえず、実力差に圧倒されているような印象だった。

インターバル中のMirage Virtual Calimba

 第2ゲーム、Mirage Virtual Calimbaとしてはまず流れを変えたいところだったが、今度は開幕1秒後にTetu選手がスーパープレイを見せるーーなんとキックオフの瞬間のファーストタッチでゴールを決めて見せたのだ。「ロケットリーグ」のキックオフは両チームともボールから同じだけ離れた位置から開始し、また各選手の車の加速度は同じに設定されているため、両チームの選手が同時にボールに衝突しボールが高く打ちあがるのが常である。しかしTetu選手は高等テクニックであるスピードフリップを習得しており、これによりMirage Virtual Calimbaよりも早くボールに触り、そのままゴールを決めることができたのだ。Tetu選手は簡単に見せているが、これはフリップをマニュアル制御する高い操作技術が要求されるテクニックであり、キックオフでゴールを決めるともなれば並大抵のプレイヤーはできることではない。本大会に出場している選手でいえば、こんな芸当ができるのは彼だけだろう。

Tetu選手のスピードフリップ

 その後Lambchan選手のアシストからYotsubq選手がシュートを決めなんとか初得点とするも、これが流れを変えるまでには至らず。第2ゲームは1-9という大差でNRLG Catsが勝利する。第2ゲームでもTetu選手の存在感はやはり大きかったが、Arinko選手とSK:D選手の1年生コンビの活躍も目覚ましい。中でもArinko選手は第2ゲームでチーム中最多の4得点を決めていて、そのストライカーとしての才能を遺憾なく発揮していた。彼はTetu選手が上げたセンタリングにいち早く飛びつく嗅覚の持ち主で、また個人技のレベルも非常に高く、相手の隙をつく絶妙な角度でシュートを打ってくる。

 続く第3ゲーム、後がないMirage Virtual Calimbaは少しづつ相手の攻めのペースが掴めて来たのか、NRLG Catsの攻撃を返す場面も見られてきた。しかしNRLG Catsはここでもう一段回ギアを入れた攻めを展開し、相手の守りに確実に穴を見つけていく。中でも印象的だったのはSK:D選手が見せた天井を使ったピンチショットだ。空中から予測しづらい軌道で飛んでくるシュートにはさすがのMirage Virtual Calimbaも対応できず、失点してしまう。第3ゲームの最終的な点差は3-1で、準決勝第1試合はNRLG Catsがストレートで勝利。圧倒的な力の差を見せつけて決勝の舞台へ駒を進めた。

SK:D選手のエリアルショット

 敗戦したMirage Virtual Calimbaはインタビューに対し、NRLG Catsの強さは圧倒的で手も足も出なかったと話した。また、メンバー全員は今年度で高校を卒業してしまうが、今後も「ロケットリーグ」はプレイし続けていきたいと語った。悔しい一戦になったが、強敵を相手に最後まで戦い抜いたMirage Virtual Calimba、彼らの最後まで諦めなかった姿勢を称えたい。

インタビューに答えるMirage Virtual Calimba

第2試合、hogehogeが念願の決勝戦へ!

 準決勝第2試合は大阪府立大学工業高等専門学校「hogehoge」対、東海大学付属札幌高等学校「FSC」の対戦となった。hogehogeはメンバー全員が3年生のチームで、同じメンバーで2年連続の出場になる。昨年の大会では惜しくもTOP8で敗れてしまっていたが今回はTOP4進出を決めており、非常に勢いのあるチームであるといえる。彼らは本大会出場校の中でもメンバー間の雰囲気が特によく、連携のとれたプレイからは仲の良さが伝わってくるようだ。中でもリーダーのKazuryu選手の存在感は大きく、彼がどこまで機能するかが勝利のカギになってくるだろう。

hogehogeの面々、左から、たんく選手、Kazuryu選手、Shiromani選手

 対する「FSC」の東海大付属札幌高校はeスポーツ活動が盛んなことで知られており、本大会に向けても相当練習を積んできたことだろう。同校は第1回大会から本大会に出場しているが、TOP4進出は今年が初。リーダーで唯一の3年生であるジェネシス選手は、先輩たちの背中を見てきたために高い実力を持つ。また、1年生のGR_Sukegin選手も以前から「ロケットリーグ」をプレイしていた選手のようで、大型新人として注目されている。試合前インタビューでは「まだ調整が足りないかも」と弱気な姿勢も見られたが、全力が発揮できれば良い成績を残せるはずだ。

FSCの面々、左から、GR_sukegin選手、リーダーのジェネシス選手、YUUGAKUNN選手、0831tadasu選手

 試合が始まると、まずはhogehogeがそのチームワークを活かした猛攻を見せる。hogehogeはどの選手もシュートに対して積極的で、打ちあがったルーズボールがあればすかさず誰かが飛び込んでいた印象だ。対するFSCは緊張もあってか中々うまいように連携がとれておらず、攻めに集中するあまり自陣を空けてしまっていたり、二人の選手が同時に飛び上がって隙を作ってしまっていたりと、チーム間のコミュニケーションが課題となっているようだった。第1ゲームは6-0でhogehogeが勝ち、hogehogeが一層勢いを増すかたちとなった。

FSCのディフェンス、二人同時に飛び上がると隙を作ってしまう

 続く第2ゲームもやはりhogehogeの攻めが強い。卓越したボールの制御能力と見事なパス回しで、継続して敵陣でボールを保持していた。印象的だったのはhogehogeの先制点、敵陣深くまでボールを持って行ったたんく選手が相手のディフェンスを揺さぶる見事なフェイクを決め、バックボードから落ちたボールにKazuryu選手が見事なシュートを決めた。彼らの連携力が良く表れた得点といえよう。対するFSCも一矢報いまいとSukegin選手がなんとか1得点を決めるも、依然として流れは変わらず、第2ゲームは3-1でhogehogeが勝利した。

Kazuryu選手の見事な先制点

 そして第3ゲーム、FSCは何とか1ゲーム取り返したい場面だが、hogehogeが華麗な攻めの連続を見せ、なんと9-0という大差でFSCを下す。この試合で印象的だったのはやはりhogehogeのシュートセンス、そして各選手のポジショニングだ。hogehogeは選手間の信頼関係がしっかり構築されているようで、攻めにしても守りにしても、下手に動きすぎるということをしていない印象だった。それぞれが自分の役割をしっかり把握しているためどこかが手薄になるということがなく、それでいて味方のパスやルーズボールへの働きかけが速いのだろう。

 負けてしまったFSCはインタビューにて「連携不足が敗因、声が出ていなかった」と悔しさを滲ませた。リーダーのジェネシス選手は今年で高校を卒業してしまうが、第2ゲームで得点をきめたSukegin選手はこれからも「ロケットリーグ」をプレイしていくとのこと。今大会でも目を見張る活躍を見せていたSukegin選手は練習を積めば手強い選手になるだろう。彼らの今後の活躍に期待したい。

インタビューに答えるFSCメンバー

最強NRLG Catsにhogehogeはどこまで食らいつけるのか?

 本大会グランドファイナルは予選から圧倒的な強さを見せる精鋭集団NRLG Cats対、華麗な連携で勝ち抜いてきたhogehogeという構図になった。準決勝を見る限りではNRLG Catsがやはり圧倒的なようにも思えるが、hogehogeも準決勝の相手をストレートで下しており、どちらが勝ってもおかしくないカードである。また、事前インタビューでKazuryu選手は「Tetu選手をライバルだと思っている」と語っており、まさに「全国1位」の名をかけて戦うに相応しい両者であるといえよう。

 第1ゲームが始まると、試合は両者とも一歩も譲らない拮抗した展開となった。実力伯仲の両チームのボール保持率はおよそ同程度で、攻撃のターンが目まぐるしく変わっていく。まず最初に点を決めたのはArinko選手だったが、その後すぐにKazuryu選手が点を返し、1-1のまま試合は残り時間1分を切る。緊迫した状況の中、勝負を決する1点を決めたのはTetu選手だった。Arinko選手が左サイドからあげたセンタリングボールにいち早く反応し、コートを半分ほど滑空して見事にボールにミート、非の打ちどころのないエリアルシュートを決めた。第1ゲームはNRLG Catsが2-1で勝利する。

Tetu選手の見事なシュート

 第1ゲームこそ落としてしまったものの、hogehogeは全く折れていない様子だった。ボイスチャットには「勝てるよ」「まだあるよ」といった声が飛び交い、メンバー同士で励まし合う様子も見られた。実際NRLG Cats相手にここまで善戦したのは彼らが初めてであり、NRLG Catsとしても油断ならない相手である。

インターバル中のhogehoge

 諦めずに強敵に挑むhogehogeではあったが、第2ゲームになってもNRLG Catsの攻めの手は緩むことを知らない。むしろhogehogeの実力の高さを悟ってか、初戦よりも積極的に攻めの姿勢を作っていた様子だった。Arinko選手やSK:D選手が立て続けにゴールを決める中、やはり注目したいのはTetu選手の動きだ。Tetu選手は自分でシュートを決めることは少ないながらも、およそ全ての得点に絡んでいて、壁際から中央へのパスや、バックボードにボールをバウンスさせ味方にチャンスを作るフェイクシュート、そしてキックオフ時にボールにいち早く触るスピードフリップなどを駆使して、常に味方に有利なボール状況を作っている。

ファーストタッチでボールを敵陣にけり込むTetu選手、これが味方のチャンスボールとなる

 hogehogeも善戦し、隙あらばカウンターで攻めの機会を作っていたが、しかしNRLG Catsはディフェンスもずば抜けて堅かった。後にインタビューでKazuryu選手が「撃った時は決まったと思うようなシュートでも、NRLG Catsはなぜか止めてくる」と語っているように、どれだけ良いコースのシュートが飛んで来ようとも、NRLG Catsにはそれをクリアリングできてしまうだけの車体制御能力がある。そんな中でもKazuryu選手、たんく選手がそれぞれ1点を決め、チームの流れを作れるかとも思われたが、またしても1点差の壁に阻まれて第2試合は3-2でNRLG Catsが勝利、優勝に王手をかけた。

苦しい状況の中でたんく選手が決めたシュート

 そして第3ゲーム、hogehogeにとっては後がない試合だが、勢いづいたNRLG Catsは試合開始直後から容赦のない攻めを展開する。試合開始3秒後にはTetu選手得意のファーストタッチからSK:D選手が見事なシュートを決めてチームに流れを作り、その後Arinko選手が持ち前のシュートセンスで立て続けに2点を決める。もちろんhogehoge陣も諦めずに戦い、試合中盤にはShiromani選手が綺麗なエリアルシュートを決めるも、3-1の点差が縮まることはなく試合時間は残り1分を切る。

 hogehogeとしては何としてもまず1点をとり、そこからサドンデスへ持ち込みたいところだったが、焦って陣形に乱れができたhogehogeの隙をNRLG Catsは見逃さなかった。前傾姿勢になって自陣が手薄になったhogehoge陣に対しカウンターから立て続けにシュートを決め、1分の間にNRLG Catsが立て続けに3得点を奪取、点差を離してhogehogeをさらに突き放す詰将棋のようなプレイだ。hogehogeも最後まで諦めずに戦ったものの、この5点差は縮まることなく、第3試合は6-1でNRLG Catsの勝利となった。

残り時間5秒になってもNRLG Catsは攻め続ける

 この試合をもって、第3回全国高校eスポーツ選手権「ロケットリーグ」部門の優勝はN高等学校「NRLG Cats」に決まった。予選から圧倒的な強さを見せていたものの、彼らが準決勝、決勝を通して1ゲームも落とすことなく優勝してしまうなど誰が予想できたであろうか。もちろん他のチームが全く相手にならなかったほど弱かったわけではないが、NRLG Catsの面々はあらゆる面で高校生とは思えないほどの技術を持っている。特にTetu選手の実力はプロ顔負けといっても過言ではなく、これはひとえに彼の練習量とゲームに対する真摯な姿勢がもたらした賜物なのだろう。

喜びを爆発させるNRLG Cats

 優勝インタビューでTetu選手は「優勝して嬉しいという気持ちと、ホッとしているという気持ちがあります。今年は色んな方から優勝を期待されていて、その分プレッシャーも感じていましたが、この大会に出たことは自分の高校生活を語るうえで欠かせない経験になりました」と語った。そしてTetu選手は今年で高校を卒業してしまうが、1年生のArinko選手、SK:D選手はこれからも「ロケットリーグ」をプレイしていくとのこと。彼らがこれからも強くなっていくであろうことを考えると、史上初の2連覇もそう遠くはなさそうだ。

インタビューに答えるTetu選手

 初のオンライン大会となった第3回全国高校eスポーツ選手権だが、今年もeスポーツを通じて高校生たちの熱い情熱のぶつかり合いを見ることができた。hogehogeやMirage Virtual Calimbaの面々をはじめ、惜しくも優勝できずに高校を卒業してしまう選手も多いが、そういった悔しい経験もまた、彼らの糧となっていくことだろう。本大会はeスポーツがいかに「日本の文化」足り得るかを示してくれる貴重な大会だ。今後もeスポーツに打ち込む高校生の晴れ舞台として、本大会が開催され続けることを願う。