インタビュー

「SEGA AGES G-LOC AIR BATTLE」インタビュー

“ムービング筐体”の衝撃! 30年の時を経て、懐かしの3Dシューティングが今鮮やかに甦る

【SEGA AGES G-LOC】

3月26日配信開始

価格:999円(税込)

CEROレーティング:A(全年齢対象)

 セガの名作を“こだわり満載”で復刻する「SEGA AGES」。Nintendo Switch用ソフトとして配信するシリーズ第17弾は、1990年に登場したアーケード用シューティングゲームを移植した「SEGA AGES G-LOC AIR BATTLE」(以下、「G-LOC」)だ。

 本作は戦闘機を操作し、バルカンとミサイルの2種類の武器を駆使して、制限時間内に規定数の敵機を撃墜するとステージクリアとなる、3D視点のシューティングゲーム。1987年に登場した「アフターバーナー」よりもシミュレーター色が強く、いかに正確に、かつ素早く撃ち落とせるかが攻略の鍵となる。

 アーケード版を忠実に再現した「G-LOC」の移植版は、実は今回のNintendo Switch版が初めてとなる。およそ30年の時を経てよみがえった本作の魅力に迫るべく、今回もGAME Watchでは、配信に先駆けておなじみの「SEGA AGES」シリーズ開発スタッフインタビューを敢行。「SEGA AGES」スーパーバイザーの奥成洋輔氏、開発を担当したエムツーの堀井直樹氏に加え、本インタビューシリーズでは(Skypeでの参加をのぞいては)初登場となる、ディレクションを担当したエムツーの松岡毅氏も参戦。実に30年ぶりの登場となる、新生「G-LOC」の開発経緯や特長、魅力を余す所なくお伝えすべく、お話をタップリと伺ったので、ぜひ最後までご一読いただきたい。

【インタビュイーのみなさん】
左から順に、セガゲームスの奥成洋輔氏、エムツーの堀井直樹氏、松岡毅氏

【「SEGA AGES G-LOC」ゲーム画面】

基板の解析からコンバートまで、すべてやり直したうえでようやく完成

――本日もよろしくお願いします。まず真っ先にお尋ねしたいのが、「SEGA AGES」に「G-LOC」をラインナップした理由です。セガの3Dシューティングと言えば、その前に登場した「アフターバーナー」が特に有名だと思いますが、なぜ「G-LOC」を出そうと思ったのでしょうか?

奥成氏: 今回の「SEGA AGES」では全19タイトルを選びましたが、まずトッププライオリティとしてあったのが、今回はどのタイトルをチャレンジするかでした。限られた予算の中で、注力できるタイトルは限られていますので、そこで挙がったのが「バーチャレーシング」と「G-LOC」でした。

松岡氏: 「ゲイングランド」まで含めれば、全部で3タイトルになりますね。

奥成氏: そうでしたね。ただ、「ゲイングランド」はもう最初に作れる見込みはあったのですが、「バーチャレーシング」と「G-LOC」に関しては、エムツーさんから開発するのはかなり大変だろうというご意見を、最初の段階からいただいていました。そこで、3タイトルを移植するための時間を、別のタイトルをコンスタントに出すことによって確保するという形で進めていきました。ただし結果として、ほかのタイトルも予定以上にいろいろと作り込んでしまった結果、当初の予定から1年以上スケジュールが延びてしまいました(苦笑)。

――「G-LOC」の移植が当初から大変になると思われたのは、基板の解析が難しかったということですか?

奥成氏: Yボード(※1) 基板の移植は、PS2版の『SEGA AGES 2500 シリーズ Vol.30 ギャラクシーフォースII』で経験していたのですが、そのときはいわゆるエミュレーションをせずに、かなりデータを開いた状態で作っていたんです。そこで、3DSに「ギャラクシーフォースII」を移植する際に、作り方をもう一度見直すことにしました。そのおかげで、「パワードリフト」も移植をすることができましたので、今回はYボード移植タイトルの第3弾ということで「G-LOC」を選びました。

※1……Yボード:セガのアーケード用システム基板の一種。スプライトの回転、ズーム機能を備えていたのが特徴で、「G-LOC」「ギャラクシーフォースII」「パワードリフト」などに使用された。

松岡氏: 過去の移植の経験を生かしてはいるのですが、元のアセンブラのプログラムをC言語に全部置き換えるという作業が毎回発生するので、イチからそれをやるとなると、どうしても時間が掛かってしまうんです。

堀井氏: CPUをそのままエミュレーションすると、処理落ちしてしまうんですよね。

松岡氏: そうなんです。もう処理速度が全然足りなくなっちゃうんですよ。PS2版の「ギャラクシーフォースII」のときもハードのパワーが足りなかったですし、3DSで「パワードリフト」を作ったときも、極端にパワーが不足していました。「パワードリフト」のときは、これはもう移植が不可能じゃないかと思いながらも、1年半ぐらい掛けてプログラムの置き換えをやり続けて、ようやく発売することができました。で、今回はNintendo Switchならパワーは十分にあるから大丈夫だろうと思っていたら、実はこちらもパワー不足だったんですよ(苦笑)。ですから、またイチからプログラムをC言語にコンバートして作り直しました。

奥成氏: セガのハードのお話をしますと、 システム16(※2) は68000CPUを1個、 Xボード(※3) はそれを2個積んだハードだったのですが、Yボード基板は68000CPUを3個積んでいますから、単純に言えばSYSTEM16よりも移植が3倍大変になるという苦労があったんです。PS2版の「ギャラクシーフォースII」を作るときは、最初は「3カ月でやります!」と言っていたのが、結局2年近く掛かってしまいました。「パワードリフト」のときも、過去にYボードの移植経験があったのにかなり苦労しましたし、今回の「G-LOC」も、結局開発に2年近く掛かってしまいました。

 それから、もうひとつの目標と言いますか、これは「バーチャレーシング」の回でもお話をしたのですが、鈴木裕さんというレジェンドクリエイターが作ったタイトルの軌跡を残していこうという思いがありました。「パワードリフト」と「チャンピオンボクシング」の移植がようやくできましたので、残っていたピースが「G-LOC」だったということもありました。

※2……システム16:こちらもセガのアーケード用システム基板の一種。「メジャーリーグ」「ファンタジーゾーン」「カルテット」などに使用された。

※3……Xボード:同じく、セガのアーケード用システム基板で、「アフターバーナー」「サンダーブレード」などに使用された。

松岡氏: あとは初代「ハングオン」も、まだ我々のほうで移植をしていないんですよね。

奥成氏: 「ハングオン」は、実は 「シェンムー」のときに一度移植されているので(※4) 、今遊びにくいタイトルをということで挙げるとすれば「G-LOC」だろうと。「G-LOC」は、過去にメガドライブとゲームギアで移植版が発売されましたが、実はアーケード版とは内容がほぼ別物なんです。タイトルと基本ルールがかろうじて同じというだけで、内容は全然別でしたから、元祖「G-LOC」を遊べる環境がアーケード版が出て以降、今までずっとなかったんです。

※4……「シェンムー」のときに一度移植されている:1999年に発売されたドリームキャスト用ソフト、「シェンムー」の作中に登場するゲームセンターで「ハングオン」が遊べるようになっていた。ちなみにPS4版「シェンムーI・II」でも同様に遊ぶことができる。

SEGA AGESシリーズのスーパーバイザー奥成洋輔氏

――ゲーム開発の巨匠、鈴木裕さんが手掛けたタイトルへのリスペクトの意味も込められていたんですね。

奥成氏: 「パワードリフト」から「バーチャレーシング」へと至る過程で、裕さんがどういう形でゲームに取り組んでいたのかと言いますと、まず「スペースハリアー」や「アフターバーナー」で作った3D表現をさらに発展させて、初めてX・Y・Zの3軸で立体のデータとして持つようになったのがYボードを使った「パワードリフト」で、ここで初めて疑似3Dから、本当の3D表現になったという考え方もできるわけですね。ただ、「パワードリフト」のときはポリゴンではなくスプライトで表現していましたので、コースをグルグル回しながら、それを遠くから見られるようにして作ってあるんですね。

堀井氏: そうそう。コースを遠くから見たときの絵を見せるための、カメラのプログラムが入っているんですよ。

奥成氏: そこがYボードの凄いところでした。ただ、ポリゴンという技術自体は世の中にはもうありましたので、おそらく裕さんの頭の中には3D表現に関して目指していたものがずっとあったなかで、社内研究をずっと続けた成果によって、やっと裕さんが求めるクオリティを満たす、ポリゴンが使える仕組みが実現できたのが MODEL1(※5) でした。その過程のなかで、ポリゴンみたいな演出を使ってゲームを見せたいということで、「G-LOC」のような“書き割りポリゴン”と言いますか、ポリゴンぽく見せたものを使って3D表現をしていたんですね。

※5……MODEL1:こちらもアーケード用システム基板の一種で、セガ初となる3DCGボードで、「バーチャレーシング」「バーチャファイター」などに使用された。

堀井氏: 最初に「G-LOC」を見たときは完璧にポリゴンを使っていると思ったのですが、見抜けなかったですね……。

奥成氏: 苦肉の策とも言えるかもしれませんが、いかにもアーケードゲームらしいですよね。「そう見えるようにしてしまえばいいだろう」と。ソフトウェア的には3Dなのですが、ポリゴンまでには至っていないハードで、ポリゴンみたいな表現を演出すると。

松岡氏: ですから、「G-LOC」の方向性としては実写取り込みゲームに近いんですよね。

奥成氏: もし「G-LOC」が世に出ていなければ、「バーチャレーシング」の次に「アフターバーナー」の3D版が代わりに出ていたかもしれないですね。

堀井氏: あ、確かに! 当時は ナムコが「ウイニングラン」を、アタリが「ハードドライビン」(※6) を出していましたから、セガでも何かしら3D表現を使ったものを作っておきたいという考えがあったのかもしれないですね。

※6……「ウイニングラン」、「ハードドライビン」:前者はナムコが1988年に、後者はアタリが1989年に発売した、ポリゴンを使用したレースゲーム。後者は海外製だが、ナムコが日本国内向けにも販売していた。

エムツー代表取締役の堀井直樹氏

――ナルホド! スプライトからポリゴンへ、2Dから3Dへとトレンドが移る、まさに過渡期の作品だったんですね。ところで今回の「G-LOC」ですが、アーケード版を忠実に再現した移植タイトルを発売するのは、確か初めてですよね?

奥成氏: はい。実質的には、今回が30年ぶりとなる初の完全移植になりますね。実は今回、ソースデータがないのでエムツーさんに提供ができなかったので、バイナリを解析する形で開発をしました。

堀井氏: バイナリの解析自体は毎回やっているのですが、ソースがあれば取り掛かりがたくさんできるので、すごく楽になるんですよ。

奥成氏: 「ゲイングランド」や「バーチャレーシング」のときはソースがあったのですが、今回は用意できなかったので本当に申し訳なかったですね……。

松岡氏: 「バーチャレーシング」のときは、おそらくソースがなければ移植は不可能だったと思いますね。

奥成氏: 多分、普通に移植をするだけならソースがなくても何とかなると思いますが、「SEGA AGES」で出すにあたっては、必ず何かプラスアルファの要素を付加していますから、ソースがあればいろいろなことができるようになるんですけどね。メガドライブミニのように、そのまま以前と同じものを動かすとか、ちょっと手直しする程度のものであれば、それほど苦労しなくても作れるのですが。

松岡氏: 例えば、リプレイ動画を作成するプログラムひとつを作るにしても、ソースがない場合はプログラムのどの時点がゲームスタートで、どの時点でゲームオーバーなのかをちゃんと解析しなればいけないので、ソースのあるなしでは手間が全然違ってくるんですよ。

――つまり、「G-LOC」に関しては、セガからエムツーに基板を貸し出して解析をするところから開発が始まったわけですね。

松岡氏: 弊社の近くにセガさんの倉庫がありますので、そこへみんなで押しかけてROMをお借りして、そこからデータを吸い出していました。しかし基板はセガさんの重要保管物なので借りることができなかったのですが、BEEP さんがこころよく貸してくださいました。専用筐体がなくても動作するようにカスタマイズしてある基板だったので、ものすごく助かりましたね。

――「G-LOC」でも今までの「SEGA AGES」シリーズと同様に、国内版と海外版との切り替えができるようになっているのでしょうか?

奥成氏: はい、メニュー画面のところで切り替えができますよ。

松岡氏: 海外版のROMも残っていましたので、問題なく作ることができましたね。

――ナルホド。今回はソースがないところから開発を始めたから、これだけの時間が掛かってしまったわけですね。ちなみに本作のディレクターは、開発が始まった当初から松岡さんということで宜しいですか?

松岡氏: はい。私のほかにもうひとり、弊社で一番バグ出しが上手な橋本という者がおりまして、橋本がディレクションを担当すると、もう重箱の隅をつつくような、すごく細かい部分にまでこだわって作ってくれるので、本当に助かっています。

――先程、松岡さんが「パワーが足りない」というお話がありましたが、現行のプラットフォームであるNintendo Switchを使っても、30年前に発売されたゲームを移植するにはパワー不足だというのは本当に驚きですね。

松岡氏: エミュレーターは、純粋にCPUのパワーだけを使って作ることになるからですね。

奥成氏: 3DSでもNintendo Switchでも、基本的にはゲームをエミュレーションするためのハードではないんですよね。

堀井氏: 3DSのときには、そのハードを使って作ろうとしているゲームの方向性がそもそも違うから、我々のほうで苦労することになるんですよ。

松岡氏: 例えて言えば、F-1のマシンで引っ越しの荷物を運ぼうとするようなものなんです(笑)。

堀井氏: 荷物を運びたいのに、F-1マシンだから荷台が付いてないという(笑)。

松岡氏: Nintendo Switchで言えば、ポリゴンを動かすことに関してはすごいパワーがありましたから、「バーチャレーシング」で8台通信対戦を実装することができたわけですね。

――今回の「SEGA AGES」のラインナップ候補として、例えば「ストライクファイター」ですとか、あるいはR360版(※7)などの3Dシューティングの配信も検討していたのでしょうか?

松岡氏: 予定から1年遅れて言うのもなんですが、もし時間があれば、「ストライクファイター」や「R360」版も作りたかったですけどね。

※7……「ストライクファイター」、R360:前者は「アフターバーナー」と同様にミサイルとバルカンで敵機を撃墜していく、1991年に発売されたアーケードゲーム。後者は前後左右360度に回転する大型体感筐体で、本機専用バージョンの「G-LOC」のほか、「ラッドモビール」と「ウイングウォー」が稼働していた。

奥成氏: 「G-LOC」とR360版の「G-LOC」、それから「ストライクファイター」も、すべてソフトウェア的には別物なんです。もしYボードエミュレーターのようなものがあって、ROMを放り込んだらすぐに動かせるのであれば、以前に発売した「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」の「ナックルズinソニック2」みたいな追加要素も作れるのですが、今回はそうではないので、もしこれらも移植しようと思ったら、たとえ追加要素を入れずに作ったとしても単純に3倍の時間が掛かってしまうのですよ。

堀井氏: もし時間があれば、我々のほうでドサクサに紛れて作っちゃおうかなとも思ったのですが(笑)!

奥成氏: R360版の「G-LOC」も確かに面白いのですが、やっていることは遊園地のアトラクションゲームなので、基本的に筐体の動きを味わうためのものでして、どんなに上手なプレーヤーでも2分で終わるルールになっていました。あと4年ぐらい待っていただければ、R360版も「ストライクファイター」も全部入れられたかもしれませんけどね。

松岡氏: R360版は、あと半年ぐらい待っていただければ出せると思いますよ。実は、PCのエミュレーター上では動かせるようになっていましたので、パワーのあるCPUさえあれば作れるんです。

奥成氏: そんなことを言うと、「じゃあ、PS4で出してくれ」っていろんな人から言われちゃいますよ(笑)。

松岡氏: しまった! 余計なことを言わないでおけばよかったですね。プログラムを全部C言語に置き換える作業をしたうえで、そこからまたエミュレーター用にコードを全部作り替えなきゃいけないので、もし本当にSwitch以外のハードで作ることになったらすごく大変なんですよ……。

(一同爆笑)

エムツーの松岡毅氏

精鋭スタッフの執念が実り、土壇場で「ムービング筐体」の実装に奇跡的に成功!

――次に「SEGA AGES」版ならではの新モードや追加機能などについてお尋ねします。「G-LOC」には、どのようなゲームモードがあるのでしょうか?

奥成氏: ゲームモードは、アーケード版をほぼ完全な状態で収録した「アーケードモード」と「AGESモード」があります。ヘルパー機能として、3DS版の「アフターバーナーII」にも搭載した、カーソルの判定が甘くなってロックオンがしやすい「クイックロックオン」が使えるようにしてあります。それから、ついに「SEGA AGES」シリーズ初となる 「ムービング筐体」(※8) も久々に遊べるようになりました。もう本当にやっとですよ!

松岡氏: これを出したら、今度は「『スペースハリアー』とかもムービング筐体を入れて作り直してほしい」って言われそうな気がして、何だか怖いですね(笑)……。

※7……「ムービング筐体」:機体の操作に合わせて筐体が上下左右に傾く大型体感筐体の仕様を、ゲーム画面を左右に傾けることで擬似的に表現し、なおかつ実機から収録したモーターの駆動音も鳴るようにした機能。3DS版の「3Dスペースハリアー」などに実装されている。

奥成氏: 以前に出した「アウトラン」や「スペースハリアー」では、残念ながら開発期間の関係で「ムービング筐体」の仕様が入ってなくて、個人的にも本当に残念でした。実は、「G-LOC」でも当初は「ムービング筐体」を作る予定はなかったのですが、3DSの「セガ 3D復刻プロジェクト」以来、久々に実装することができました。

松岡氏: 「G-LOC」のメインプログラマーは、「アウトラン」や「スペースハリアー」と同じく篠田が担当したのですが、「体感ゲームのUI部分はもう完成しているから、G-LOCは低コストでできそうだということだったので、じゃあ「ムービング筐体」も入れるしかないな、ということになりました。SEGA AGESを続けてきたことのメリットが、ここにきて結実したわけです。

奥成氏: 松岡さん、「ムービング筐体」はいつ頃から作り始めていたんですか?

松岡氏: 「G-LOC」の一番最初の段階から作り始めていました。最初にやろうとしていたのが、まさにこれでしたので。

【ムービング筐体】
「ムービングシート」に設定すると、機体に操作に合わせてシートが傾くデラックス筐体の挙動を、画面を傾けることで擬似的に再現してくれる
こちらは「コックピット」設定の画面。画面は左右に傾かないので、固定シート式のスタンダード筐体でプレイしたときの雰囲気を再現している

奥成氏: だから、ROMになるのが遅かったんですね。「G-LOC」の移植は今回が初めてでしたから、3DS版のあった「スペースハリアー」や「アウトラン」のときと違って筐体の素材が何もなかったのですよね。そこで弊社の倉庫にエムツーさんがしばらく前に取材に行って、 デラックスとスタンダードの2種類の筐体(※9) と、付属のパネルなどを撮影して作りました。実は当時、デラックス筐体がたまたま故障していて動かなくなっていて、修理が完了するまでにはしばらく時間が掛かる状態だったのですが、「筐体の写真を取るだけだから大丈夫ですよ」と言って撮影をしていたんです。

 ところが、開発が進んだところで「ムービング筐体」が実装されて、しかも筐体が動いたときのモーター駆動音まで入っていたので、「アレ? 筐体が壊れていたはずなのに、なぜ音が入ってるのかな?」と思いながらも、きっと小玉さんとどっかで録音したんだろうなあとか思っていたんです(笑)。実際は、「アフターバーナーII」を作ったときに収録した、「アフターバーナーII」の駆動音をそのまま使っていたそうなのですが、まあ「G-LOC」の筐体が壊れていたし、しようがないかなあと思ってそのままにしておいたんです。その後、今月が マスターアップだというタイミング(※10) で、松岡さんから「G-LOC」の筐体の音を入れたいという連絡が突然あったんですよ。

※9……デラックスとスタンダードの2種類の筐体:前者はシート部分が機体の操作に合わせて動くタイプ、後者はシートが固定されたタイプの筐体を指す。

※10……マスターアップというタイミングで:本インタビューは2月18日に収録された。

松岡氏: 以前から、筐体の音を収録したいと打診はしていたのですが、肝心の筐体がどこにもない、最悪、近い音だろうから『アフターバーナーII』の音でまとめるしかないかと思っていたのですが、あるときにYouTube で、「G-LOC」のモーターを動かしている音が入った動画を偶然発見したので聞いてみたら、「アフターバーナーII」とは音が全然違っていたんです。アカン!こらアカン!なにがなんでも「G-LOC」 のちゃんとしたモーター音を入れなアカン!と、残り2週間なのに絶叫しまして。

奥成氏: 私はスーパーバイザーという立場ですので、基本的に開発が始まったらゲームの細かい中身にまでは関与しないのですが、あるとき社内のスタッフが私に突然泣き付いてきたんですよ。「エムツーさんが、ファイナル直前のタイミングになって、何だか訳のわからないことを言っています……」って(笑)。で、よくよくお話を聞いたら、モーター駆動音を差し替えたいと言っていることがわかったんです。そこで、ちゃんと動く「G-LOC」の筐体を探すことになったわけですが、私が知る限りではセガにあるもの以外では4年前に 「GAME ON」(※11) のイベントで筐体を出展した、愛知県の日本ゲーム博物館さんが唯一の存在でした。

 こうなってしまった以上、もう日本ゲーム博物館さんにご相談するしかないということで、「筐体の音を取らせてください。期間はあと1週間しかないんですけど……」と、かなり無茶なお願いをしたのですが、「まだ倉庫の奥にしまったままで修理が終わっていませんが、何とかやってみます」というお返事をいただいたんです。で、数日後に「直りました」という連絡がありましたので、すぐさま弊社の下村(一誠氏)と、エムツーの春日(達彦氏)さん、工藤(索興氏)さんのサウンド精鋭部隊を編成しまして、マイク持参で新幹線に飛び乗りました。日本ゲーム博物館の皆さんは、最初のうちは「この人たちは、いったい何を言ってるんだ?」ときっと思っていたでしょうね(苦笑)……。

※11……「GAME ON」:2016年3月2日~5月30日にかけて、日本科学未来館で開催されたゲームの展示イベント。同年5月20日には、奥成氏も出演した「セガハードの歴史を語り尽くす」というトークイベントも行われ、大盛況となった。
参考記事「GAME ON」トークイベント「セガハードの歴史を語り尽くす」レポート

松岡氏: 愛知に出掛ける前に、春日と工藤の2人にはYouTubeにアップされていた音を聴かせて、「これとそっくりの音を作ってほしい」というオーダーは出していたのですが、「YouTubeで聴いた音を再現するのと、愛知に行って収録するのとどっちがいい?」と聞いたら、2人とも即答で声をそろえて「愛知!」って叫んでましたね(笑)。

(一同爆笑)

堀井氏: まあそう言いますよね。音を自分たちで再現できる自信が満々かと言えば、そうではないというのが本当のところでしょうから。ちょうど愛知に出掛ける前日に、3DS版の時の収録を担当した並木(学)氏とみんなで飲みに行く機会が偶然あったので、春日が並木さんにサウンドのことについて、根掘り葉掘り聞いていましたよね。で、翌日に速攻で旅立ったと。

奥成氏: 日本ゲーム博物館さんで収録ができるかどうかを確認している最中に、堀井さんには電話で「開発終了までもう時間がないですよね? しかも3、4人で愛知まで新幹線で行ったら、結構なお金が掛かります。開発期間が延びてもう予算がほぼカラカラの状態なんですけど、本当に行かないとダメですか?」とお話をしていたんです。でも、堀井さんからは「もし、自分たちが若かったらそんな話はしてないですよね? 自腹でも何でも絶対に現地まで収録に行きましたよね? 行かないという選択肢はないでしょう」と言われましたね。まあ結局なんとかやりくりして交通費は確保できたんですが。

 以前に3DS版の「ギャラクシーフォースII」を作ったときにも、スーパーデラックス筐体が倉庫に埋まってるというホテルが北海道にあるとネットの誰かの旅行ブログで知りまして、社内にも筐体が残っていなかったので、じゃあ撮影と音の収録に行こうと計画したことがありました。そのときは部長への稟議をちゃんと切ったうえで予算を取り、ゲーセンミカドの池田さんなどにも声を掛けて、筐体が壊れていた時用に修理ができるスタッフも確保して、現地で何があっても対応できるような選抜チームを編成したんです。ところが、全部予定を立てて、最後にホテルに予約の電話を掛けたら「すみません。それはしばらく前に廃棄しちゃいました……」と言われたので、その瞬間に「ハイ、解散!」ということが過去にありました。今回、「G-LOC」の筐体の音を収録したのは、言わばそのときのリベンジですよね(苦笑)。

――何が何でも本物の音を入れたい、いいものを作りたいという、皆さんの凄まじいまでの執念にはただ敬服するしかありません……。

堀井氏: それにしても、よく短い期間で「G-LOC」の修理をしてくださいましたよね。本当にありがたいことです。

奥成氏: 日本ゲーム博物館さんのおかげで、素晴らしい音を収録することができましたね。でも、ついこの間に収録したばかりで、この取材のタイミングではまだその音が実装されていないのに、なぜディレクターがここにいるのかなあと(笑)。

松岡氏: わいはなんでここにおるんや(机に顔を打ち付けながら)。それはそれとして、録音の当日はせっかくの機会だったので筐体の映像も追加取材しまして、デザイナーの古賀はコックピットの隠れた場所の撮影を、プログラマーの篠田はゲーム画面と筐体の傾き比率を、それぞれ遠隔でやりとりしながら詰めていくことができました。あれでさらにワンランク、クオリティが上がったと思います。

 取材させてくれた日本ゲーム博物館さんにはいくら感謝してもしたりないですね。なにしろ筐体を開けてもらって、中で動いてるシャフトの動きを動画にとったりしてましたので、同席してくださった博物館のH 澤店長さんから見ると相当おかしなアクションだったと思います。そうやって録画したものを何度も再生し、同時に筐体マニュアルの図面ともにらめっこしながら、篠田がムービング筐体の角度を調整していましたので、かなり良いムービングぶりになったと思います。

奥成氏: 「ムービング筐体」をなぜ入れたかのかと言えば、どれだけプレーヤーが疑似体験できるかを追求したからなんですね。今回の「G-LOC」では、今までの「SEGA AGES」シリーズで培ってきた 環境音の追加など(※12) もしていますので、3DS以上の雰囲気作りができたと思っています。環境音は、「G-LOC」が発売された当時のゲームセンターっぽい音が聞けるのがポイントですね。

 それにしても、この“ゲームセンターエムツー”は「アウトラン」と「スペースハリアー」と「アフターバーナーII」の筐体をずっと置き過ぎですよね(笑)。

松岡氏: 確かに、これらの筐体の音は全部入っていますので、よ~く耳をすませば聞こえてくるハズです。あとは将来、次世代の「SEGA AGES」を出すときには、バックに店長として堀井直樹がときどき歩き回るようになれば、もう完璧ですよね(笑)。

奥成氏: それいいですね! 何だか「JUDGE EYES:死神の遺言」みたいで(笑)。

堀井氏: そ、そんなのを作るのはやめましょうよ!!

※12……環境音の追加など:筐体のモーター駆動音のほかにも、まるでゲームセンターにいるかのよう雰囲気を出すために、店内のザワザワとした音を流したり、背景にいろいろな筐体の絵を描いたり、その駆動音までもいっしょに流す演出のこと。SEGA AGES版「Shinobi 忍」と「ぷよぷよ通」に実装されている。

奥成氏: それから、筐体に付いているスタートボタンやランプとかも単なる額装ではなくて、実際の筐体と同じように点滅するようにしていますし、Joy-ConのHD振動にも対応させましたので、演出面でもかなり充実したものができたと思います。

――筐体のランプ類の点灯も再現したんですか!? 微に入り細に入り、さすがのこだわりぶりですね!

奥成氏: ちなみに赤いランプは、いわゆる 「The enemy!」状態(※13) になったときなどに光るようになっていますよ。

※13……「The enemy!」状態:自機の背後から攻撃を仕掛けてくる敵機が出現した状態のこと。「アフターバーナー」では、この状態になると「The enemy!」というボイスが流れるようになっていた。

【筐体の発光ボタン・ランプも忠実に再現!】
ゲーム開始時には、画面右下に描かれたスタートボタンが黄色く光る
背後に敵機が迫ってくると、コックピット下部にある赤ランプが点灯する筐体の演出も見事に再現

――先程、HD振動にも対応しているというお話がありましたが、どんな振動の仕方をするのでしょうか?

松岡氏: 「ムービング筐体」の設定にしているときはアーケード版と同じように振動して、それ以外の場合はオリジナルの揺れ方をするようにしてあります。HD振動についても、弊社の古賀(恵介氏)が細かいところまできっちり作り込んだので、良いものができたと思っております。

奥成氏: あ、「G-LOC」の筐体も元から振動するようになっていたんですね。それは素晴らしいです!

より気持ち良く、より親切に遊べるようこだわり抜いた「AGESモード」

――Nintendo Switch版オリジナルの「AGESモード」は、どのような内容になっているのでしょうか?

奥成氏: 3DS版の「アフターバーナーII」のときに入れた「スペシャルモード」に近いですね。基本ルールは「アーケードモード」と同じままで、より遊びやすいように敵の出現セットを大幅に変更しました。ステージは「アーケードモード」の上級コースに沿った形で進みますが、敵機の出現パターンはまったく異なっていて、さらにロックオンがしやすくなっています。

――取材が始まる前に私もプレイさせていただきましたが、敵機がたくさん出現して、「アフターバーナーII」と同様に、照準がちょっと触れただけでロックオンができるので、とても気持ちがよかったです。

松岡氏: 「アフターバーナーII」はバリバリのシューティングなのに対して、「G-LOC」はシミュレーター寄りですので、より慎重なプレイが要求されるんです。なので、「AGESモード」は「アフターバーナーII」のようにバリバリ
のシューティングとして楽しめるようにと思って作りました。敵機のセットは、「アーケードモード」の2、3倍ぐらいに増やしてありますよ。

――わかります。終盤の難しいステージでは、一度ロックオンをし損ねただけでも大きなタイムロスになってしまいますよね。

堀井氏: ええ。アーケード版は滅茶苦茶シビアですからね。

松岡氏: それから「AGESモード」の8面は、元の上級コースでは着陸するだけのステージだったのですが、せっかくなので、敵をたくさん撃ち落とせるステージに変えました。

奥成氏: 「G-LOC」の歴史についてちょっとお話をしますと、最初にシミュレーター寄りの「G-LOC」を作った後に、アトラクションとしてR360版の「G-LOC」を作って、さらに「アフターバーナー」寄りのゲームを求めていたユーザーのニーズにおこたえしようと「ストライクファイター」を作ったという経緯があります。「ストライクファイター」は裕さんが開発にタッチしていないのですが、こちらは弾数を無制限にして撃ちまくれるシューティングゲームになっていました。ですから、今回の「AGESモード」は「G-LOC」でも「ストライクファイター」でもない、もちろん「アフターバーナー」もない、オリジナルの遊び方ができるのが面白いところではないかと思っております。

松岡氏: 「AGESモード」ではいろいろ作り変えましたが、元の「G-LOC」からは逸脱しない範囲で、本作の良い意味での渋さを残しつつ、気持ちよく遊べるようにするにはどうすべきかを考えました。その結果、コンティニューは無しにして、ミサイルは最大50発までのストック制限がありますが、たくさんの敵機を気持ち良くバリバリ撃てるようなものを作りました。

 R360バージョンを見ていると、ロックオンの動作が通常の「G-LOC」とかなり違っておりまして。ロックオンカーソルが敵機にピタっと吸い付くような動きをしている。これは気持ちいいと思ったんですが、R360 のプログラムは解析していなかったし、そのままコピーするのも困難だった。だからあきらめていたんですが、突然、プログラム解析担当の南が「⽬コピしたどー︕」ってチカラワザで実装してくれまして(笑)。このゴキゲンなロックオンができたから敵が倒しやすくなった。倒しやすくなったから敵もノルマも⼤増量しました。ひとつ好転しただけで全部がうまく回るようになったんですから南は⼤⾦星でしたね。

――今回の「AGESモード」も、世界中のプレーヤー同士でハイスコアを競うネットワークランキングに対応していたり、上のプレーヤーのプレイ動画を見られるようになっているのでしょうか?

松岡氏: はい。もちろん対応しています。上手な人のプレイは見ているだけでも楽しめますから、こちらもぜひご覧になっていただければと思います。「AEGSモード」は、元々ランキング向けにと考えて作ったモードだったんですよ。上手なプレーヤーなら10秒でクリアできる所を、うまくないプレーヤーだとそこから5秒程度遅れるようなゲームバランスにしつつ、なおかつ初心者でもなるべく途中でゲームオーバーにならないよう、頑張って調整したつもりですので、ぜひこちらもお楽しみいただければと思います。

奥成氏: と、いうわけで、「AGESモード」という新作ほぼ1本分のボリュームがあるものを、今頑張って作り込んでいるところです。今回のために、エムツーさんでは長い時間を掛けて「『G-LOC』の面白さと何か?」という研究をかなりしていただいたのですが、その結晶がまさに「AGESモード」なんですね。

【「AGESモード」】
正面からも背後からも地上から、たくさん出撃する敵機を撃ちまくれる楽しさを追求したゲームモードだ

――ほかにも、何か新モードや機能などはありますか?

奥成氏: 基本はこれで以上です。ちなみにこれはこぼれ話になりますが、ヘルパーモードとして当初は「ノルマハーフ」というものを実装していたのですが、ボツになり、今のクイックロックオンに変更しました。

松岡氏: 「アーケードモード」を、より親切に遊べるようなものはできないかと考えているうちに、ステージクリアのノルマを従来の半分に緩めた「ノルマハーフ」というアイデアを思い付いたんです。ところが、逆につまらなくなったと、奥成さんに怒られてしまいました。

奥成氏: 「G-LOC」は、時間が迫って「あ、もう少しでクリアできたのに!」とハラハラするところが面白さのひとつなのですが、「ノルマハーフ」にするとすぐに1ステージが終わってしまうので、まるでステージクリア後のリザルト画面ばかりを見てるゲームになっちゃったんです。実プレイ時間が半分になると、その分だけ1プレイ全体のなかで何もしない時間の割合が多くなってしまったので、これでは「G-LOC」ならではの面白さがないからということでボツにしました。

松岡氏: 割と時間を掛けて作ったので、ぜひ入れさせてくださいよとお願いはしましたが、最終的にはNGという判断になりました。ですが、「AGESモード」を作っている最中に、いろいろな特殊機能を作ることができました。奥成さんの仰るように、もっと気持ち良く遊べるものを作ろうということで、ロックオンが素早くできる「クイックロックオン」を作りました。実はこのシステムは、セガの西村(真人氏)さんが古いバージョンのサンプルROMをご覧になったときに思い付いたアイデアなんですよ。

奥成氏: 西村の本職はデザイナーなのですが、なぜか聴力もすごいので、サウンドを聴かせると「この音だけちょっとおかしい。エミュレーションがヘンだ」などと指摘してくれるので、「SEGA AGES」ではサウンドの監修をたびたびしてもらっています。彼はゲーセンでもかなりやりこんでたそうで、今回の「G-LOC」では、サウンド以外の部分も意見が山盛りでした。頼んでないのによい仕事をしてくれました(笑)。

サウンドやスタッフクレジットの演出にもさらなるこだわりが!

――ほかにも、演出面などで何かこだわった部分はありますか?

奥成氏: 「G-LOC」はシミュレーターっぽいゲームなので、「バーチャレーシング」などと同様にゲームスタート時に短いジングルしか流れず、プレイ中は効果音だけしかないんですよ。そこで、BGMの設定を「ループ」と「フェードアウト」の2種類を新たに選べるようにしました。

――つまり、「ループ」を選ぶとプレイ中にずっとBGMが流れるようになるわけですね。

松岡氏: そうです。これは奥成氏さんのほうから、ぜひ入れてほしいというオーダーがあったので作りました。

奥成氏: 以前にTwitterで、 Hiro師匠(※14) が「G-LOC」のことをつぶやいていたときに、そういうツイートをしてたのがきっかけだったんですよ。

 もしかしたら、裕さんの意図とは違うのかもしれないのですが、私もずっと曲が流れるほうがいいなと思っていましたので、Hiro師匠作曲のBGMを存分に楽しめるように「ループ」設定を用意しました。エムツーさんのほうではずっと以前から解析が完了したので、「AGESモード」専用で「ループ」を実装していたのですが、私のほうから「AGESモード」だけではなくて、「ループ」は標準設定にしてほしいとお願いをした結果、めでたく「アーケードモード」でもずっと曲が聴けるようになりました。

※14……Hiro師匠:「G-LOC」で作曲を担当した川口博史氏のこと。「スペースハリアー」「アウトラン」など数々のセガタイトルで作曲を担当し、現在は「maimai」のサウンドディレクターとしても活躍する。

松岡氏: 実は、その交換条件としてHiro師匠に「AGESモード」用の新曲を作っていただけないかと交渉してみたのですが、かなり厳しかったので断念しました。

【2種類のサウンド設定が選択可能】
それぞれのゲームモードで、BGMを繰り返し流す「ループ」と、1ループ後に消える「フェードアウト」の2種類が選べる

奥成氏: それから、セッティング画面にある「ミュージックプレーヤー」ですべてのBGMを聴くことができるのですが、実はR360版の曲もコッソリ入れてあります。それから、「スタッフクレジット」を選ぶと、R360版「G-LOC」の映像が流れるようにもなっていますよ。

――それも驚きのニュースです! 貴重な映像が再び見られるとあっては、セガファンの皆さんもきっと感激することでしょうね。

堀井氏: 今回収録しているのはライドモード、つまり機体は操作せずに筐体が動くのを体感するだけのモードの映像なんですよ。

松岡氏: ですから、R360版のゲームを遊ぶことはできませんので、くれぐれもお間違えのないようにお願いしますね。

奥成氏: R360版の映像は、基板を使って収録しました。つまりROMはあるので、もしかしたら10年か20年後には、エムツーさんがR360版を専用筐体ごと再現した移植版を作って遊べるようにしてくれるかもしれませんね(笑)。

堀井氏: エエエ、専用筐体ですか!?

松岡氏: いやあ、今回も時間があったらR360版も作りたかったんですけどね……。

奥成氏: あるいは、R360ミニみたいなハードを作るとか(笑)。それにしても、今回は久々にエムツーさんに対していっぱい注文を出しちゃいましたね。

松岡氏: R360ミニ! 作りたいね~(笑)。

奥成氏: 「ムービング筐体」が作れたのは、エムツーさんがすごく頑張ったからこそですよね。我々としても、いろいろとブーブー言ったかいがありました(笑)。

【「スタッフクレジット」】
今となっては極めて貴重な、R360版の映像を堪能できる(※画面は開発中のものです)

――まさか令和の時代になってR360版のBGMも聴けるようになるとは、これまた往年のセガファンにとってはビックリ情報ですね。

奥成氏: 「G-LOC」のサントラは、サイトロンとマーベラスレーベルで2回発売されましたが、もうだいぶ昔のことなんですよね。サントラには未使用とされる曲が2曲あったんですよ。そのひとつがランキング用の曲で、もう1曲は「未使用」とだけ書かれたものでした。後日、松岡さんから「その曲は、ちゃんと使われています!」という連絡がありまして、実は残りタイムを大量に残してクリアしたときに流れる曲だったことがわかったんです。今回タイムを増やすことで、ようやく聴けるようなもので、私も全然知らなかったので、その話を西村にしたら、「俺がゲーセンでやれば、普通に鳴るけど」って言われてしまいました(苦笑)。

松岡氏: ですので、今回からはその曲名にあった「未使用」の表記を外してあります。

奥成氏: それから本ソフトと同時となる3月26日には、R360版の曲も含めたすべての曲を新たに基板から収録したサントラを、ウェーブマスターさんから発売予定です。メガドライブミニのアレンジ曲を担当していただいた、高西圭さんによる「SSTバンド風のアレンジメドレー」や、かつてサイトロンの「G.S.M. 1500」シリーズ以来、ずっと音源化されていなかった「ストライクファイター」のBGMも収録しましたので、こちらもぜひお楽しみにしていただければと思います。

――今回もまた楽しいお話をたくさんしていただきましたが、そろそろお時間が迫ってきたようです。それでは最後に、GAME Watchの読者の皆さんに向けて、おひとりずつメッセージをお願いします。

奥成氏: 「G-LOC」は、ほかの大型体感ゲームに比べるとマイナーなタイトルかもしれませんが、Switch版「SEGA AGES」を立ち上げたことによって移植が実現できて、なおかつクオリティの高いものが作れたのは本当にうれしかったですし、すごく意義のあることだなと思っております。マスターアップの寸前まで、エムツーの皆さんが一生懸命作ってる30年ぶりの移植タイトルを、皆さんもぜひお楽しみください。

堀井氏: 「G-LOC」の移植がようやくできて本当にうれしかったですね。私がセガさんと最初にお仕事をするようになったきっかけは、ゲームギア版の「ガンスターヒーローズ」だったのですが、そのときに私がゲームギアを持っていないとお話をしたら、山のように機材を送っていただいたんですよ。で、そのなかに「G-LOC」のROMもあったので遊んでみたら、「これが『G-LOC』なのか?」と思いながらも遊んでいたのを今でもよく覚えています。

 そんな「G-LOC」を、今回ほぼアーケード版と同じような、移植再現度の高いものを作ることができたのは、これも何かの縁なのかなあと。今はひとつのフラグを解消したような、とても清々しい気持ちですね。何はともあれ、皆さんぜひ遊んでみてください。

松岡氏: 「SEGA AGES」のプロジェクトが始まった当初から作り始めて、ようやく発売まで漕ぎ着けることができました。この「G-LOC」は、セガ2D 体感ゲームのひとつの到達点ですので、なるべくその凄みを再現するようスタッフ⼀同がんばりました。ぜひプレイして、“1990 年のセガ”に思いを馳せてみてください。あと、バリバリのシューティングに仕上げた「AGES モード」もオススメです。テンションアゲアゲでプレイしていただければと思います。

 今後も我々のほうではどんどん移植をしていきますので、ぜひご期待をいただければ幸いです。それから、もし遊んでいる最中におかしな箇所を見付けてしまった場合は、皆さんの心の奥にそっとしまっておいておくださいね(笑)。

――ありがとうございました。