インタビュー

「SEGA AGES イチダントアール」インタビュー

AC版、メガドラ版が両方遊べて、初心者向け「ヘルパー機能」でボリュームもアップ!

【SEGA AGES イチダントアール】

9月26日 配信開始

価格:925円(税別)

CEROレーティング:A(全年齢対象)

 セガの名作を“こだわり満載”で復刻する「SEGA AGES」。Nintendo Switch用ソフトとして配信するシリーズ第12弾は、1994年にアーケードゲームとして発売されたテーブルゲームで、「タントアール」の続編にあたる「イチダントアール」を移植した「SEGA AGES イチダントアール」(以下、「イチダントアール」)だ。

 本作は、8方向レバーとボタン1個だけのシンプル操作で、パズル、アクションなど20種類ものミニゲームが遊べることで人気を博した作品。その後、メガドライブやゲームギアなど、家庭用の移植版もたびたび発売されており、本作を一度でも遊んだことがある人であれば、「二酸化ガンマン」、「ロイヤル猿~ン」、「ベートー弁当・う~運命」などなど、ユニークな名称が付いたミニゲームの数々は、今なお脳裏に焼き付いていることだろう。

 Nintendo Switch版では、新たにオンライン同時プレイが可能となり、なおかつオリジナルのゲームモードのあるメガドライブ版や海外版も遊べるようになっているとのこと。今回もGAME Watchでは配信に先駆けて、毎度おなじみの「SEGA AGES」シリーズ開発スタッフインタビューを敢行した。さらに、次回以降の配信タイトルの続報も併せてお話を聞くことができたので、ぜひ最後までご一読を!

【「SEGA AGES イチダントアール」ゲーム画面】
数々のミニゲームに挑戦し、ノルマを達成するとクリアとなる。
お手本どおりの順番を覚え、銃でターゲットを撃っていく「二酸化ガンマン」
同じ動きをしているサルのペアを選び出す「ロイヤル猿~ン」
お手本どおりに入力し、楽曲を演奏させる「ベートー弁当・う~運命」

【インタビュイーのみなさん】
左から順に、エムツーの堀井直樹氏、セガゲームスの小玉理恵子氏、奥成洋輔氏

グローバル展開を意識して配信を決めた「イチダントアール」

――今回もよろしくお願いいたします。まずは本作の配信を決めた経緯からお尋ねしますが、シリーズ第1弾の「タントアール」ではなくて2作目の「イチダントアール」を選んだのは、やはりほぼ同じ時期に発売となったメガドライブミニに、「タントアール」が収録されたのが理由でしょうか?

堀井氏: シリーズ作品のうち、1本は入れておこうという考えがまずありました。見ればすぐに遊び方がわかるパズル&アクションゲームなので、いろいろな人に楽しんでいただけますからね。今回の「SEGA AGES」は、海外にも展開する必要があったのですが、実は「タントアール」は海外版が存在しないんです。そこで、海外版が元々あった「イチダントアール」のほうを今回は選びました。

小玉氏: 元々「SEGA AGES」は、全世界で展開するというのがというコンセプトなんですね。

奥成氏: 海外の人にとっては、「タントアール」とか「イチダントアール」と言われても、いったいどんな意味の言葉なのかが全然わからないでしょうね。ちなみに、海外版のタイトルは「ICHIDANT-R」と書きます。

堀井氏: 日本語の単なるダジャレですから、意味なんか全然わかりませんよね(笑)。

【国内版と海外版のタイトルの違い】
メニュー画面で国内・海外版の切り替えが可能。海外版のタイトル表記は「ICHIDANT-R」で、デモ画面のタイトルコールや、ミニゲームの呼称を叫ぶボイスもそれぞれ異なっている

――それ以外のシリーズ作品、例えば「2度あることはサンドア~ル」や「対戦タントアール サシっす!!」ですとか、あるいは主人公の2人が最初に登場した、「ボナンザブラザーズ」(※1)を出そうというお考えはなかったのでしょうか?

※1……「2度あることはサンドア~ル」「対戦タントアール サシっす!!」「ボナンザブラザーズ」:  順に1995年、1996年、1990年に発売されたアーケードゲーム。「ボナンザブラザーズ」は、敵と戦いながら3分以内にステージ内の証拠品を全部盗んで脱出を目指すアクションゲームで、主人公の正義のギャング、モボとロボの2人組は、後に「タントアール」シリーズにも登場することになった。

堀井氏: 「ボナンザブラザーズ」も出したいという話は、当然出ていましたけどね。

奥成氏: ニンテンドー3DSで展開した「セガ3D復刻プロジェクト」と同様、「SEGA AGES」も第1期では、予算やスケジュールに限りがありましたので、今回はメガドライブの開発を通じてノウハウが蓄積された、 C2ボード(※2) を中心にしたいという提案がエムツーさんからありまして、C2ボードのタイトルが多くラインナップされました。C2とメガドライブはまったく同じ仕様ではないのですが、この辺りは堀井さんのほうがお詳しいと思います。

堀井氏: メガドライブはZ80と68000CPUを使っていて、そこからZ80を取り除いて代わりに68000CPUのクロックを上げ、スプライトとBGで共通の4パレットだったものを別々の4パレットに変更し、PCM音源を付け加えたのがおおむねC2になりますね。要するに、C2は「色の数がいっぱい使えて音もきれいに出る、メガドライブのアーケード用基板」なんですね。

※2……C2ボード: セガ製のアーケードゲーム用基板の一種で、CボードにPCM音源を追加し、静電気対策などを施した改良版にあたる。「タントアール」「イチダントアール」のほか、「ぷよぷよ」「ぷよぷよ通」などにもこの基板が使用されている。

奥成氏: もしかしたら、C2の仕様がメガドライブになっていたかもしれないという、そんなボードかもしれませんね。「タントアール」と「イチダントアール」は、どちらもC2ボードで開発されていましたので、ここは抑えておきたいなということでエムツーのディレクターの松岡(毅 氏)さんからご提案がありました。ちなみに、「2度あることはサンドア~ル」と、「対戦タントアール サシっす!!」のボードは ST-V(※3) ですので検討にはありませんでしたね。

※3……ST-V: セガサタ-ンとの互換性を持つ、アーケード用システム基板。「花組対戦コラムス」、「ぷよぷよSUN」などのほか、シール機の「プリント倶楽部」シリーズにも使われていた。

堀井氏: 「2度あることはサンドア~ル」や「対戦タントアール サシっす!!」も面白いので、いずれ出したいなとは思っていますが、もしやるとしたら当分先のお話になりますね。

奥成氏: 一方、「ボナンザブラザーズ」のほうは「ゲイングランド」と同じ システム24(※4) で、今回のところは「ゲイングランド」をそもそも本当に出せるのかという問題がまずありましたので、システム24のタイトルは「ゲイングランド」1本だけになりました。今後、もし第2期が実現したら、システム24の別タイトルが候補に入る可能性は十分にあり得ます。メガドライブミニのほうでも、収録できなくて残念だったというタイトルとして、「ボナンザブラザーズ」を挙げるユーザーさんが割と多かったので、「SEGA AGES」向きなのかなと思いますね。

堀井氏: そうなんですよね。見た目はコミカルだけどすごく熱いゲームなので、あってもいいなと思いますよね。

※4……システム24: こちらもセガ製のアーケードゲーム用基板の一種。CPUに68000-10を2個搭載し、3.5インチのフロッピーディスクでソフトを供給していた。「クラックダウン」「クイズ 宿題を忘れました」などにも使用された。

スーパーバイザーの奥成洋輔氏

奥成氏: 確かに「ボナンザブラザーズ」のキャラクターが出自にはなっていますが、今となってはどれが先で、どういう流れでタイトルが出たのかはもうあまり関係なく、まず「タントアール」や「イチダントアール」があって、そのキャラクターがアクションしているのが「ボナンザブラザーズ」ということでいいんですよ。要は「ぷよぷよ」と「魔導物語」みたいな関係みたいなもので。

――そこでお尋ねしたいのが、「タントアール」シリーズは、セガにおいてどのような位置付けを持つIPなのでしょうか? 新作が出なくなって久しいシリーズではありますが……。

堀井氏: 私も詳しく知らないのですが、ガラケーの頃にかなり活用されていた気がするんですけど?

奥成氏: 携帯でも出ていることは出ていますが、基本的にはメガドライブ時代のゲームということになります。最終的に、セガサターンに「2度あることはサンドア~ル」が移植され、「タントアール」は「SEGA AGES/宿題がタントアール」として、「イチダントアール」は「SEGA AGES/廊下にイチダントアール」という カップリングタイトルとして出ていますので(※5) 。PS2の「SEGA AGES2500」では、リメイク版の「イチニのタントアールとボナンザブラザーズ」もありましたけど、こちらはシリーズに全部に出てきたミニゲームを交ぜて出していますので、「イチダントアール」というよりは「タントアール」のデラックス版みたいなものになっていました。

 今回の「SEGA AGES」として配信する「イチダントアール」は、忠実移植として作っています。先程もお話しましたが、海外ではアーケードでしか「イチダントアール」が出ていなくて、「タントアール」も「イチダントアール」もメガドライブ版が出ていないということで、日本に特化したゲームではないかと思いますね。

※5……カップリングタイトルとして出ています: 「SEGA AGES/宿題がタントアール」は、「クイズ 宿題を忘れました」と「タントアール」の2タイトルを収録した作品で、「SEGA AGES/廊下にイチダントアール」は、「クイズ 廊下に立ってなさい」と「イチダントアール」を収録した作品で、どちらも1996年に発売された。ちなみに、前者はサターン版「SEGA AGES」第1号タイトルである。

堀井氏: タイトルからして、日本語のダジャレですし(笑)。

――ゲームのタイトルだけでなく、収録されているミニゲームの名前もほとんどがダジャレですよね。

堀井氏: 「忍者どこじゃ?」って言われたところで、外国の方には全然わからないですよね(笑)。

エムツーの堀井直樹氏

「SEGA AGES」版は「アーケードモード」と「メガドライブモード」の両方を収録

――「SEGA AGES」版の「イチダントアール」は、アーケード版には存在しない新モードなどが用意されているのでしょうか?

奥成氏: オンライン対応など以外に新モードはありませんが、メガドライブ版には4人で遊べるモードがすでにありましたので、「イチダントアール」をNintendo Switchで出すにあたって、4人プレイを遊びたいというご要望はきっとあるだろうと。つまりメガドライブ版も収録したいというお願いです。それで、松岡さんをまた悩ませることになってしまったのですが(笑)。

堀井氏: 当初松岡がこのタイトルを希望したときには、メガドライブ版を入れる作業時間は計画に入っていませんでした。そこでまたまた例によって、どうしようかと悩むことにはなりましたが、今となっては松岡のほうも頑張った結果実装ができましたので、本当によかったと思っていますね。

奥成氏: そのくらいメガドライブ版の存在はこのゲームにとって大きいんです。メガドライブ版の「タントアール」と「イチダントアール」は、追加要素として画⾯を4分割して4人同時プレイができるモードがありますが、メガドライブ版「イチダントアール」はそれだけでは飽き足らず、1人で遊んでも楽しめるRPG風味になっている「クエストモード」が追加されているんです。これが「SEGA AGES」にもどうしても欲しかったんです。

【RPG形式で遊べる「クエストモード」】
魔王を倒すべく、敵が仕掛けてくるミニゲームにクリアしてレベルアップを重ね、賢者の石を集めるというストーリー。2人協力プレイも可能。

――メガドライブ版には、他にも自由にゲームを選びながら4人で遊べる「フリーモード」もありましたよね?

堀井氏: はい。「イチダントアール」には面白いミニゲームがたくさん入っていますが、ゲームセンターだと遊び方を初見で理解できず、悔し涙をのむということが往々にしてあったのですが、家庭用であれば繰り返し遊んで覚えることができますからね。私も当時、セガサターン版を買って遊んでいましたが、そういう意味でも家庭用があったのは本当よかったなあと思います。

奥成氏: クリアなボイスなど含め、鮮やかさはアーケード版が一枚上手なのですが、とにかくメガドライブ版の追加要素がとても良くできていましたので、これに関してはアーケード版もメガドライブ版の両方が入っていてもいいだろうと。松岡さんの頑張りのおかげですね。

――つまり本作は、アーケード版を移植した「アーケードモード」だけでなく、メガドライブ版が遊べる「メガドライブモード」も選択できて、その結果「クエストモード」、「コンペモード」、「フリーモード」もすべて遊べるようになったわけですね。

奥成氏: はい、そうです。それからアーケード版はネットワークにも対応していますので、対戦と言いますか協力プレイができるようにもなっていますよ。

堀井氏: ネットワークのほうも、「ぷよぷよ」を出した頃よりもおそらく快適に遊べるようになっていると思います。それでも「チキチキ・チキンレース」のようにフレーム単位で入力のタイミングを競うミニゲームとかになると、もうどうにもしがたいものも正直ありますが、それ以外はラグをかなり減らして相当に良くなっていると思います。

奥成氏: 当時の家庭用ゲームは、1フレーム単位で争うようなものがとても多いんですよね。「タントアール」に入っていた「フォトショック」ですとか、「イチダントアール」の「チキチキ・チキンレース」のように、ブラウン管で遅延のないモニターが当たり前の時代だったゲームを、今の液晶モニターで遊ぶのはなかなか難しいですよね。あらかじめ譜面の決まっている音楽ゲームとかには遅延を調整する機能があったりしますけど、「イチダントアール」では申し訳ありませんが、まだそこまでは解決できていないですね。

小玉氏: そこはひとつの味として、ちょっと手前のタイミングで押していただければと(笑)。

奥成氏: 使うモニタによってはちょっとどころか、相当手前かもしれませんけど(笑)。

リードプロデューサー/ディレクターの小玉理恵子氏
こちらは「イチダントアール」の「チキチキ・チキンレース」。猛スピードで走る車にブレーキを掛け、ガケのギリギリの位置に止めるというゲームだ

――ほかにも、Nintendo Switch版ならではの新機能などはありますか?

堀井氏: 「アーケードモード」で、ノルマをかなり減らしてハートも増やした状態で遊べる「ヘルパー機能」を追加しました。「どうぞ最後までクリアしてください、本当に楽になってますよ」という機能ですね。

奥成氏: この「ヘルパー機能」をオンにすると、おそろしくサクサク進めますよ。

堀井氏: それから、ポーズをかけた時に画面が見えたままだとまずいミニゲームもなかにはありますので、その対策もしてあります。例えば、魚の数を数える「まサカナ?」みたいなゲームでポーズをかけた時に、もしそのまま画⾯が見えた状態だと簡単になってしまいますよね? ですから、それを防止するために、ちょっと面白いことをやっています。

(と、ここで堀井氏が実機を起動して実演開始)

――あ、ナルホドです! ポーズ中は大きなキャラクターが出てきて、画面を覆ってしまうわけですね。

【「SEGA AGES」版にはこんな追加要素も】
メニュー画面で「ヘルパー機能」をオンにすると、ハート(ライフ)が通常の3個から20個へと大幅に増え、なおかつ各ミニゲームのノルマも軽減される
ポーズ機能を使って簡単にクリアされないよう、一部のミニゲームではポーズ状態にすると写真のように大きくキャラクターが表示される

――「イチダントアール」の開発期間は、だいたいどのくらいかかりました?

堀井氏: 解析も含めていろいろやっていましたので、1年くらいずっといじっていたと思います。

奥成氏: 今回の「SEGA AGES」のラインナップは、メガドライブミニの収録タイトル決定よりも先に決めたのですが、先ほどお話しましたように、海外展開する上で、海外版のある「イチダントアール」を選んだため、メガドラミニに「タントアール」のほうを選ぶことにしました。でも、まさかこんなに近いタイミングで「タントアール」と「イチダントアール」が続けざまに出せることになるとは思いませんでした。理想のタイミングかもしれませんね。

――本作の移植にあたり、特にご苦労なさったことは何かありますか? 先程もネットワーク対応のお話がありましたが?

堀井氏: ネットワーク回りの部分は実のところ「コラムスII」でもずっとたいへんで、「イチダントアール」に限ればという話ではないんですね。ネットワーク対応が当たり前になった今の時代にあって、タイミングがシビアなのが当たり前だった昔のゲームをどうやって今に持ってくるか、そこを考えて実装するのがとにかくたいへんなんです。これからもずっと、このたいへんさはきっと続くことになると思います。

 それ以外の実装では、特に困ったこともなく、順調にできたのではないかと思います。新たに全体に作用するものとしては、「ヘルパー機能」以外のことはやりませんでしたが、今回のところはもうそれだけでも十分だったという面はありましたね。

――およそ1年間の「SEGA AGES」版の開発を通じて、「イチダントアール」あるいは「タントアール」シリーズの良さや面白さは、改めてどんなところにあるとお感じになりましたか?

堀井氏: やはり、プリミティブなゲームがいっぱい遊べるところですね。ずっとやり続けていると、「おお、気付くのがめちゃくちゃ早くなったぞ」みたいに、脳内がどんどん最適化されていきますよね?  最初のうちは「こんなのできるか!」と思っていたのが、やがてできるようになっていく、不条理さから開放されていくのがいいところなんですよね。

奥成氏: 最大4人まで遊べるようになっていますが、4人も集まるとみんな得意なミニゲームはそれぞれ違ったりするんですよね。連打、パズル、暗記とか、やってみるとそれぞれ得意ジャンルが違う人がいて、個性、多様性が出るのが面白いところではないかと思います。「タントアール」と「イチダントアール」は、どちらも同じコンセプトですが、「イチダントアール」は「タントアール」以上に多彩なミニゲームが入っていますので、見た目をただ変えただけでない面白さがあるんです。

小玉氏: 「ボナンザブラザーズ」もそうですが、セガのアーケードゲームというと大型の体感筐体とかすごく凝ったものが多いという当時の思い出の中で、グラフィックスデザインも含めて異色の存在感があり、みなさんの記憶に残るゲームになったのではないかなと思います。

奥成氏: ちょうど本作の直前にメガドライブミニが発売されているはずですが、ソフトがたくさんあるので現時点ではまだ「タントアール」を1回も起動していない人がいると思います。そういう方は、是非この機会に一度遊んでください! 家族や友達と1プレイでも遊べば、「イチダントアール」のほうも絶対欲しくなると思いますよ。

堀井氏: 短期集中型のミニゲームばかりですので、スキマ時間に遊ぶのにもちょうどいいですしね。

奥成氏: 「バーチャレーシング」と違って、外に持ち歩いてテーブルモードにしてもメガドライブの解像度でギリギリで遊べると思いますので、「『タントアール』いいね!」と思われてる方は、「イチダントアール」をぜひ持ち歩いて布教してください(笑)。

――それでは最後の質問となりますが、GAME Watch読者に向けて、今回の「イチダントアール」についてひとことずつメッセージをお願いします。

小玉氏: 配信が少し空いてしまい、たいへん申し訳ありませんでしたが、ようやく9月26日から配信させていただくことになりました。我々のほうでチェック作業をしている時も、コンビを組んで助け合いながらプレイしていたらとても楽しく遊べましたので、みなさんもぜひ遊んでみてください。

奥成氏: アーケード版こそ本物であるという思いがありがならも、私のほうでメガドライブ版を強く推したのは、4人プレイと「クエストモード」の存在です。メガドライブモードを起動してからそのメニューから選ぶので見つけにくいですが、ぜひチャレンジしてみてください。また普通は内容がよく似た同じシリーズの2タイトルを同時に遊びたいとは思わないかもしれないんですけど、「タントアール」と「イチダントアール」については、どちらか片方を遊ぶと、もう一方も遊びたくなるんですよね。せっかく両方復刻したので、あちこちでこのシリーズを遊んでいただけたらいいなあと思います。

堀井氏: このゲームの何がいいかと言えば、「ちょっと誰かとゲームを遊びたいな」という時に、普通のゲームであればルールを説明している間の時間に、ミニゲームを3回も4回も遊べちゃうところなんです。すごくお手軽に遊べて、プレーヤー同士で何を競っているのかがとてもわかりやすいのが、「イチダントアール」ならではの何物にも代えがたい、面白さであり良さですよね。普段、こういうゲームで遊ばない人にも、どんどん声を掛けて一緒に遊んでいただけたらうれしいですね。もう本当に盛り上がりますから!

先出し情報:「SEGA AGESサンダーフォースAC」には追加機体が登場。さらに、お財布に優しいお知らせも!

 さらに、ここで読者のみなさまに朗報! 次回以降の「SEGA AGES」シリーズ配信予定タイトルのひとつ、「サンダーフォースAC」のお話もひと足早く聞くことができたのでお伝えしよう。

――先日、15日に行われた東京ゲームショウの「SEGA AGES」ステージイベントでは、「G-LOC」の収録風景や「SHINOBI 忍」「ぷよぷよ通」の実演に加え、「サンダーフォースAC」のプレイ動画が初公開されましたよね? まだ配信日は未定のタイミングではありますが、「サンダーフォースAC」について、現時点でお話ができる範囲で詳しい内容をお聞かせいただけますか?

奥成氏: 「サンダーフォースAC」で、「サンダーフォースIV」の機体が使えるようになります。順を追って説明しますと、まず「SEGA AGES」の第1弾として配信した「サンダーフォースIV」には、 セガサターン版の「サンダーフォース ゴールドパック2」(※6) にも追加されていた、「サンダーフォースIV」で「サンダーフォースIII」の機体が追加で使用できる「STYX(ステュクス)モード」が入っていました。今回はその逆パターンで、「サンダーフォースIII」準拠の「サンダーフォースAC」で、「サンダーフォースIV」の機体が使えるようにしたわけですね。ですから、性能が全く異なる2タイトル分の機体が使えるというのが、今回のNintendo Switch版の面白いところになるんです。

 「サンダーフォースIII」と「サンダーフォースAC」はこれまでセガサターン、ニンテンドー3DSとメガドライブミニに移植されましたが、プレーヤー機体を追加したことは一度もないんです。今回ついに、シューティングゲームの中でも大きなロマンになるものを今、頑張って作っているところです。と、いうことで、こんなものを追加しているのでいつまで経っても完成せずに配信が遅くなっております、というのが今回のお知らせとなります(苦笑)。

※6……「サンダーフォース ゴールドパック2」: 1996年に発売された、「サンダーフォースAC」と「サンダーフォースIV」の2タイトルを収録した作品。

【「サンダーフォースAC」に「サンダーフォースIV」の機体が登場!】
「SEGA AGES」版「サンダーフォースAC」は、「サンダーフォースIV」の機体でも遊べるとの驚きの情報が東京ゲームショウ会場で明らかに。詳しい続報と、正式な配信日の発表が待たれるところだ

堀井氏: はい、本当に遅くなっています! でも、何でこんなに時間が掛かっているんでしょうね……。

奥成氏: それはもう、エムツーのみなさんがシューティングゲームが大好きだからでしょう。

堀井氏: 本当に、もう止めても無駄なんですよね。別ゲームの音声や効果音まで引っ張ってきて、シューティングゲームに新しい自機を追加するのは本当にやめたほうがいいんですけどね。「サンダーフォース」シリーズの移植は今回が2度目なのに、みんな全然学習しない(苦笑)!

――社長である堀井さんが「止めても無駄」と仰るとは、エムツーのみなさんの尋常ならざる情熱が伝わってきますね……。

奥成氏: いろいろなご意見があるかとは思いますが、メガドライブミニのように昔のままで遊べるようにするのもひとつのコンセプトなのですが、「SEGA AGES」では「コラムスII」のように、難しかったアーケード版を遊びやすくしたり、快適さを上げて家庭用として遊んだ時の面白さを出したりして、もうひと味加えて遊びの幅をより広げているんです。今度の「サンダーフォースAC」のように、移植だけれども未知の体験、遊びができるようにするところも、エムツーさんならではのこだわりがあって、熟成が進んでいるのがいいですよね。

堀井氏: そうですね。とりあえず私が言えることは、もしメガドライブミニで同じことをやったら、発売されるのは間違いなく10年後になるということですね(笑)。

奥成氏: 個々のタイトルをどこまで掘り下げて作れるか、そこのバランス加減は 「エムツーショットトリガーズ」(※7) と弊社との間で、これからもうまく調整をしていただければと思います。

※7……「エムツーショットトリガーズ」: エムツーのシューティングゲームの復刻・開発プロジェクトのこと。

堀井氏: その現実的な落とし所は、小玉さんのほうでしっかりとコントロールしていただけてますので。お陰様で、我々も初めて社会になじむことができました!

(一同爆笑)

奥成氏: そこはまあ、良い意味でタガが外れたのが「エムツーショットトリガーズ」ですので。エムツーさんのお陰で、「SEGA AGES」のほうではバランス良く、我々のほうから1,000円で手に入れられるソフトとして出せるようになっていますけどね。もっとも、もうすぐ1,000円を超えちゃいますけど……。

小玉氏: いいえ。実は、来月以降も1,000円を超えない予定です。

――エッ!? 来月以降も1,000円を超えないということは、「SEGA AGES」シリーズは実質値下げになるんですか?

小玉氏: はい。マーケティング担当の意向もありまして、999円の価格を守ろうと思っております。

堀井氏: それは素晴らしい! 800~1,000円の価格帯で出すやり方は、かなり「ショットトリガーズ」寄りですね。「この内容で、1,000円で出しちゃうのはどうなのよ?」って、いつも弊社の松岡には言ってるんですけど、まあ止められないですね。「でも、止まらないのは知ってるでしょ?  澤井さん(※8) には、何を言っても理想を追求するよね。でも、社長もそういうのが好きだよねって言ったら、絶対に『うん』と言うよね」って。もう止めるけども止めない、倒れない範囲で止めない(笑)。

※8:澤井さん: プログラマーの澤井寛之氏のこと。「3D ガンスターヒーローズ」や、「3D復刻アーカイブス3」に収録された「サンダーフォースIII」のプログラマー。

奥成氏: でも、これはもしかしたら「このままゲーセンに置いてほしい」という要望が来るかもしれませんよ(笑)。

――ありがとうございました。