インタビュー

「SEGA AGES ファンタジーゾーン」インタビュー

「タイムアタック」が復活! 往年の名作シューティングがさらに手軽に、遊びやすくなって登場!

【SEGA AGES ファンタジーゾーン】

11月28日配信開始

価格:999円(税込)

CEROレーティング:A(全年齢対象)

 セガの名作を“こだわり満載”で復刻する「SEGA AGES」。Nintendo Switch用ソフトとして配信するシリーズ第14弾は、1986年に登場し、全国各地のゲームセンターで大人気を博したシューティングゲームの傑作を移植した、「SEGA AGES ファンタジーゾーン」(以下、「ファンタジーゾーン」)だ。

 もはや詳しい説明は不要かもしれないが、本作は主人公である自機のオパオパを操作して、ショットとボムの2種類のウエポン(武器)を駆使して敵を倒していく横スクロールシューティングゲーム。特定の敵を倒すと出現するコイン(お金)を集めることで、ショップに入るとオパオパの移動速度がアップするエンジンや、多彩なウエポンが購入可能となり、ステージごとに適した武器をいかに選んで戦うかという、優れた戦略性を盛り込んでいるのが特徴だ。その名のとおりパステル調のカラーで描かれた、コミカルかつ個性的なキャラクターデザインと美しい背景、そしてノリノリのサウンドのどれをとっても素晴らしく、その魅力は今なお色あせない。

 Nintendo Switch版では、これまでに登場したSEGA AGESシリーズ作品と同様に、アーケード版を忠実に再現した「オリジナルモード」だけでなく、数多くの追加要素や便利機能を搭載しているとのこと。今回もGAME Watchでは、またまた配信に先駆けて恒例の開発スタッフインタビューを実施した。ご参加いただいたのは、「SEGA AGES」シリーズのスーパーバイザーであるセガゲームスの奥成洋輔氏と、開発を担当したエムツーの堀井直樹氏、さらにディレクターの古賀恵介氏にも、「スペースハリアー」の回に続きSkypeにて2度目のご登場となった。「ファンタジーゾーン愛」にあふれた3氏の楽しいお話を、ぜひ最後までご一読を!

【インタビュイーのみなさん】
セガゲームスの奥成洋輔氏(左)と、エムツーの堀井直樹氏(右)
ディレクションを担当した古賀恵介氏(ボイスチャットにて参加)

【「SEGA AGES ファンタジーゾーン」ゲーム画面】

3DS版のオリジナル要素に加え、「タイムアタックモード」もプレイ可能に

――本日もよろしくお願いいたします。「ファンタジーゾーン」と言えば、1980年代から現在に至るまでセガを代表するIPのひとつではないかと思いますが、セガあるいはSEGA AGESシリーズの開発スタッフの皆さんにとっても、やはり特別なタイトルなのでしょうか?

奥成氏: セガで「過去のタイトルの移植をやります」となった場合には、「ファンタジーゾーン」と「スペースハリアー」の両シューティングゲームと、それから「アウトラン」は常にご要望が高いんです。移植のノウハウもかなり蓄積されていますので、特にこの3本は定番として、今回ニンテンドー3DS版の流れでラインナップに加えることになりました。

堀井氏: 多くの皆さんが、セガのタイトルで初めて遊んだとか、初めてセガという名前を意識したのが、まさに「ファンタジーゾーン」だと思うんですよね。

奥成氏:この3タイトルは「龍が如く」シリーズでも全部遊べたりします(※1) し、まさに”ザ・セガ”というタイトルですね。普通のジョイスティックとボタンで遊ぶゲームのなかでは、最も有名なタイトルではないかと思います。

※1……「龍が如く」シリーズでも全部遊べたりします: 「龍が如く0」、「龍が如く6」、その他「JUDGE EYES」でも、作中に登場するゲームセンターに行くと「ファンタジーゾーン」を遊べるようになっている。

奥成氏: セガにとっては、ひとつの転機になったゲームであったとも思っています。それ以前にも「フリッキー」とか「忍者プリンセス」ような人気タイトルも出してはいましたが、まだゲームファンにとってセガはそれほど注目されていませんでした。ですが、1985年の春と冬に、FM音源や68000CPUを使用した16bitハードのゲームである「ハングオン」と「スペースハリアー」を出したことによって、「おお、セガってスゴイぞ!」と注目されるようになり、一気にゲームセンターのパワーバランスが変わったんですね。

 その流れで出た「ファンタジーゾーン」は、その2作の体感ゲームのハードウェアと比べると、アップライトやテーブル筐体向けにダウンサイジングされてはいるものの、FM音源と68000CPUというコアの部分はそのまま残した、 システム16(※2) というシステム基板の実質的なローンチタイトルという扱いで見られることが多いんですね。ゲームのオリジナリティの部分だけでなく、サウンドやパステルカラーのグラフィックスなど、これまでよりも色鮮やかなゲームが、ここから次々と華々しく出ていきました。

 さらに、間を空けずセガ・マークIIIでも遊べるようになってからは、家庭用ハードの人気もどんどん上がっていきましたし、アーケードで68000CPUをずっと使ったノウハウによって、その2年後にはメガドライブというセガの歴史を代表する家庭用ゲーム機を発売することもできました。また、「ファンタジーゾーン」自身も、セガ・マークIII版の翌年には、ファミコン版がサンソフトから発売され、これをきっかけにしてゲームとしての面白さがさらに多くの人たちに知られるようになり、またその翌年には、NECアベニューからPCエンジン版も発売されましたので、家庭用向けにおいてもセガのゲームのメジャー化に貢献した、ある意味代表作であり、マスコット的な存在にもなっていたと思います。ですからセガファン、アーケードゲームファン、そして家庭用ゲームのファンにとっても、「ファンタジーゾーン」は忘れることができないタイトルなのではないかと思います。

※2……システム16: セガのアーケード用システム基板の一種。ちなみに、本当の第1弾は野球ゲームの「メジャーリーグ」で、「ファンタジーゾーン」は第2弾にあたる。

――つまり、Nintendo SwitchでSEGA AGESシリーズを配信しようと決まった時には、真っ先に本作がリストアップされたわけですね?

奥成氏: そうですね。その前から、ニンテンドー3DSでセガ3D復刻プロジェクトを展開するにあたって、人気タイトルを据置機でも遊びたいという需要が、「スペースハリアー」や「アウトラン」とともに「ファンタジーゾーン」もあったということですね。特に、前回作った3DS版では、ゲームの完成度としてはかなり高まった自信作を出すことができました。

堀井氏: ええ。3DSの時に、もうこれ以上やれることはほぼないだろう、というところまで作れましたね。

奥成氏: ただ難点としては、3DSLLを使用しても画面が小さいとか、あるいはジョイスティックで遊びたいとか、我々ではどうにも対応できない問題もありました。「龍が如く」シリーズでは、アーケード版をそのまま遊べるようにはなっていますが、こちらはアーケードの忠実移植版でしたので、3DS版にあった数多くの追加要素を据置機でも遊びたいというご要望もありましたので、今回のNintendo Switch版では、今お話をしたようないろいろな声を反映したうえで作った、移植版としての集大成になっています。

SEGA AGESシリーズのスーパーバイザー、奥成洋輔氏

――では、今回Nintendo Switch版には、具体的にどんなモードや機能を搭載したのか教えていただけますか?

奥成氏: 過去にエムツーさんが移植を担当したタイトルのなかから、PS2版のSEGA AGES2500シリーズで一番最後に発売した、「ファンタジーゾーン コンプリートコレクション」に入っていた 「タイムアタックモード」(※3) の復活と、3DS版の 「ウパウパモード」や追加ボス(※4) などの全要素を入れたというのが、今回のセールスポイントですね。

――PS2版の「ファンタジーゾーン コンプリートコレクション」、今となっては懐かしいですね。私も発売日に購入して遊びましたが、こんなことを言ってはたいへん申し訳ないのですが、「タイムアタックモード」を遊んだ記憶が全然ないのですが……。

古賀氏: 「タイムアタックモード」は、隠し要素として入れてあったんですよ。

奥成氏: とはいえ、PS2版を発売したのは2008年ですから、もう10年以上も前になりますし、堀井さんも仰ったとおり3DS版であらゆるアプローチをやり切りましたので、今回はそこにPS2版にあった要素をプラスして、ブラッシュアップしたバージョンという形なんです。で、これらのひとつひとつの要素をまとめてくださったのが、エムツーの古賀ディレクターというわけですね。

※3……「タイムアタックモード」: PS2版「ファンタジーゾーン コンプリートコレクション」では隠しコマンドを入力すると遊べるようになっていた。1周8ステージクリアまでの時間を競うモード。詳しくは公式サイトを参照

※4……「ウパウパモード」や追加ボス: 3DS版「3Dファンタジーゾーン オパオパブラザーズ」で追加された要素。主人公オパオパの弟ウパウパを操作し、所持金のストックがある間はすべてのウエポンを無制限に使用できるのが特徴。追加ボスとは、特定の条件を満たすと出現する、セガ・マークIII版の4面のボス、ウルトラスーパービッグマキシムグレートストロングトットや、6面のボスのdz・デノ・ローマなどを指す。

【「タイムアタックモード」】
スコアの代わりにプレイ時間が表示されるだけでなく、何分何秒にどんなアクションをしたのかというログも随時表示され、ショップで買い物中の時間もカウントされる

【「ウパウパモード」】
エンジンとウエポンは任意のタイミングで切り替えが可能。ウエポンは使用するごとにストックしたコインを消費し、消費量は性能が優れたものほど多くなる

――先程、実機で遊ばせていただきましたが、敵の前線基地の位置がレーダーや指のマークですぐにわかるにようになっていて、なおかつ高速連射も付いているので、かなり難易度が下がった印象を率直に受けました。これらのアイデアは、ディレクションを担当された古賀さんが考案したのでしょうか?

堀井氏: はい。いろいろな追加要素を入れましたが、考えたのはおおむね古賀です。

奥成氏: これは懐かし話になってしまいますが、最初は3DS版の時にワイド画面を反映したフルサイズで遊べるようにできないかと、エムツーの古賀さんと松岡(毅)さんに検討してもらったんです。でも、いろいろと技術的な検証をしていくと、そもそも「ファンタジーゾーン」は 敵の前線基地を破壊していくゲーム(※5) ですので、画面を広くするとオリジナルのゲームバランスも変わってしまうんですよ。遠くにある前線基地や敵があまりにも早く倒せるようになって、しかも連射が標準搭載されていますから、ゲームとしてあまりいい方向には働かないことがわかりました。

 そこで、じゃあワイド画面を生かすにはどうしようかとなった時に、「前線基地との体当たりによるミスが発生しにくくなる方向でいこう」ということで、レーダーなどのアイデアを考えていただきました。確か今回は、指のマークは画面外に置くようにしたんですよね?

※5……前線基地を破壊していくゲーム: 本作は各ステージ(最終面をのぞく)に前線基地が10体出現し、これらをすべて破壊するとボスが出現して、ボスを倒すとステージクリアとなるルールになっていることを指す。

古賀氏: そうですね。なるべく画面に重ならないような位置に出るように調整しました。

奥成氏: また、3DS版では、上下2画面あるうちの下側の画面にいろいろと表示させていた情報についても、Switch版でひとつの画面内に詰めて表示できるようにしました。

古賀氏: 3DS版で表示していた情報はすべて表示させたかったですので、ゲーム画面をギリギリまで上に寄せて、下側にレーダー等の表示をなんとかレイアウトしました。また、テレビモードと携帯モードとでは、それぞれが見やすくなるように表示の仕方を変えてあります。

――改めて画面を拝見しますと、デモ時に英語で表示されるストーリーが、3DS版から日本語でも表示されるようになりましたが、今回も字幕が画面の右から左に流れて表示されるようになっていますね。

古賀氏: ゲーム画面に重ならない場所はこことここしかない、という消去法だったのですが、ちょうど良い感じになりましたね。

奥成氏: あとNintendo Switch版だけの要素として、インストカードの表示も2種類ありますよ。

――あ、確かに! 今まではインストカードが半分切れた状態になっていましたが、設定モードで「スモール ヴィンテージ」を選ぶと全部読めるようになりますね。

古賀氏: そうなんです。セガさんの方からインストカードの全体が見えるモードが欲しいという要望がありまして、これは自分もそう思っていたので追加しました(笑)。

奥成氏: 要望を出していたのは多分自分なんですが、今まで、何でこれができなかったんだろうと思っていて、今回ようやく用意してもらいました。ただ、たいへん申し訳ないのですが、前月配信した「SHINOBI」にあった 「キャビネット」(※6) は、開発スケジュールの都合上、入っておりません。

古賀氏: 並行して作っていましたので、そこまでは手が回らなかったですね。

※6……「キャビネット」: ゲームセンターをイメージした背景と、アップライト型筐体のグラフィックスを表示しながらゲームが遊べる設定のこと。

【インストカードの表示も変更可能に】
「ノーマル」設定時は、懐かしのテーブル筐体の縮尺サイズに合わせて作られたため、インストカードが左右両端で切れた状態で表示される
「スモール ヴィンテージ」に設定を変更すると、インストカードが画面内にすべて収まるようになる

各要素の出現条件を大幅に緩和、初心者にもさらに優しい親切設計を実現

――開発期間は、だいたいどのくらい掛かりましたか?

古賀氏: 5月の末に、「スペースハリアー」の開発が終わってからすぐに始めましたので、だいたい5カ月ぐらいです。仕様書は、その前から「スペースハリアー」と並行しながら作っていましたので、それも含めると半年になりますね。

――ほかにも、Nintendo Switch版のオリジナル機能は何かありますか?

古賀氏: HD振動に対応しています。必要な要素だと思っていましたので、優先度高めでかなり早い段階でプログラマーにお願いして実装しました。

奥成氏: 実はHD振動って、シューティングゲームと相性が良いんですよね。

堀井氏: そうそう。「撃ち込んだ感」をすごく出せるんですよ。

奥成氏: ここまでのお話をまとめますと、今回は「据置機でも遊びたい」というご要望を聞きつつ、まずは3DS版にあった要素はすべて遊べるようにしようと決めまして、 追加ボスが5体(※7) 出てくるようにしたり、それから「ウパウパモード」や 「コインストックシステム」(※8) も遊べるようにして、画面構成も今お話したような要素を入れました。そのうえで、古賀さんがお考えになった画面情報もなるべく反映させたい、1画面内にどうやって入れようかと、いろいろ試行錯誤をしながら作ったのが、今回のNintendo Switch版ということですね。

堀井氏: 1画面になったので、3DS版よりも視線の移動が圧倒的に少なくなりましたよね。

奥成氏: 「ファンタジーゾーン」は結構忙しいゲームなので、3DS版では下の画面までなかなか見ている余裕はなかったかもしれませんが、1画面に収めたので今度こそ大丈夫だろうと。前線基地の場所をナビしてもらいながら遊ぶこともできますし、3DS版で実現させた要素は、漏らさず収録ができたと思っております。

※7……追加ボスが5体: 前述したセガ・マークIII版の2種類のボスは、実はさらに特定の条件を満たすと、それぞれ異なるタイプのものが出現する。また、6面のボス戦の直前までに別の条件を満たすと、ファミコン版に登場した、3本腕のウインクロンが出現することを指す。

※8……「コインストックシステム」: ゲームオーバー時に所持していたコインをストックできるシステムのこと。ストックしたコインは、次回プレイ時にプレーヤーが任意の金額を設定して引き出すことが可能。

【追加ボス】
セガ・マークIII版の4面のボスとして登場したウルトラスーパービッグマキシムグレートストロングトット
同じく、6面のボスのdz・デノ・ローマ
こちらはファミコン版の6面のボスをオマージュした、3本腕のウインクロン(※オリジナル版は6本腕)

――「コインストックシステム」は便利ですよね。途中で失敗してゲームオーバーになっても、それまでに集めたコインがたまるので無駄死になることが一切ありませんので、本当に助かります。

奥成氏: ええ。すごくいいアイデアですよね。コインをある程度ためておかないと「ウパウパモード」は楽しめないのですが、今回はハードルをかなり低くしましたので、「ウパウパモード」にもどんどんチャレンジしていただいて、オパオパの時とは違ったエンディングを見られるまで、ぜひ楽しんでいただきたいです。

古賀氏: 「ウパウパモード」では、3DS版と比べて、敵が落とす金額を情報調整、ウエポン使用の消費金額を下方調整してあります。また、画面の左上には、そのプレイで獲得したコインの総額(トータルコイン)がカウントされるように改造もしました。今回の「ウパウパモード」のランキングでは、獲得したコインの数を競う内容に変更していますので、ランキングに入るためには 敵をなるべく早めに倒して、高額のコインを集めることが必要です(※9)

 「オリジナルモード」ではスコア、「ウパウパモード」では獲得コイン、「タイムアタックモード」ではクリアタイム、というようにランキングの集計要素がモードによって別種になるようにまとめた感じですね。

奥成氏: それから、ランキングのお話で言いますと、「タイムアタックモード」のほうも連射がすごく速くてゲームが簡単になったこともありますので、このモードならではの面白さがより引き立つようになったのではないかと思います。

※9……敵をなるべく早めに倒して、高額のコインを集めることがコツになります: 本作では、倒した敵がドロップするコインの金額が、ステージ開始時からのプレイ時間が長くなるほど下がる仕組みになっている。

古賀氏: 「タイムアタックモード」については、実は久保田(和樹氏)のほうから要望がありました。でも、この前のPS2版で収録したばっかりの要素だしなあ……と思って確認してみたら、発売が2008年で、もう10年以上経っていたことにビックリしました(笑)。PS2版の「タイムアタックモード」には私自身は直接関わってはいなかったこともあって、とても新鮮でしたね。ただ、初心者には最後までクリアできないモードになる懸念がありまして、松岡のアイデアを元に、オパオパの残機ストックを無制限にする変更を行なっています。

堀井氏: タイムアタックなのでクリアしないとゲームオーバーになっておしまいで、ランキングできないですからね。要するに、オンラインランキングをちょっとでも賑やかにしたいなと思ったわけです。

――つまり、「タイムアタックモード」では何回ミスしてもタイムをロスするだけで、途中でゲームオーバーにはならないわけですね?

奥成氏: はい。PS2版の「タイムアタックモード」は、完成のギリギリのタイミングで実装されたので、ただタイマーを付け足しただけでしたが、今回は残機を無制限にしましたので、初心者救済のためのモードにもなっているんですね。

古賀氏: 最終ラウンド以外のボス戦でミスをした場合は、ショップからのリスタートになる救済措置要素も新たに追加しています。ボス戦での復活では装備がなくなりますので、一旦ミスすると倒すのが難しくなるボスが何体かいるんですよね。何回ミスしても平気なので、初心者の練習用にも使えると思います。

奥成氏: 思えば、PS2版の 「ファンタジーゾーン コンプリートコレクション」に収録したシステム16版の「ファンタジーゾーンII」(※10) と、そのリメイクになる3DS版の「ファンタジーゾーンII」を作ったのも古賀さんでしたよね。「II」を移植、開発する時には、初代「ファンタジーゾーン」の仕組みを完全に理解したうえでどうしようかと考えながら作りましたので、その時の経験が今回のNintendo Switch版でうまくフィードバックできているのではないかと個人的には思っております。

 また今名前の挙がったエムツーの久保田さんは、実はPS2版の時は「ファンタジーゾーンII(SYSTEM E版)」のリプレイ動画のプレーヤーとして参加された方のおひとりなんです。当時はまだゲーム業界以外の会社にお勤めでしたが、それをきっかけにより深くゲームに関わり始めて、ご自身で「ファンタジーゾーン」の同人誌を出されたりもして、気が付けばエムツーに入社されていました。「ファンタジーゾーン愛」をぐっと高めたところでエムツーさんに入られたようですね。

堀井氏: ホント、何で人生こんなことになってしまうのか……。「ファンタジーゾーン」、オパオパのおかげで人生が狂ってしまったんですよ、久保田という男は(笑)。

エムツーの堀井直樹氏

※10……「ファンタジーゾーン コンプリートコレクション」に収録したシステム16版の「ファンタジーゾーンII」: 「システム16が最新の基板だった当時、もしこれで『ファンタジーゾーンII』を開発したらどうなるか?」というコンセプトで開発された、リメイク版の「ファンタジーゾーンII」を指す。なお、オリジナルの「ファタジーゾーンII」は、1987年にセガ・マークIII用ソフトとして発売されたもので、翌年にはシステムE基板を使用したアーケード版も発売された。

――すると、テストプレイ時に久保田さんのほうから、かなり細かい調整やツッコミが入ったのではないかとお察ししますが?

堀井氏: そうですね。ほかの仕事で忙しくてあまり時間がなかったと思うのですが、かなり口うるさく言われましたね。

古賀氏: 開発中、オンラインランキングで、久保田のスコアが当然のようにランクインしているんですが、自分ではまったく抜けませんでしたね(笑)。

堀井氏: そう! 彼がゲーセンで「ファンタジーゾーン」を遊んでいるところを見ていると、「これって人間の動きかよ!」って思わず言いたくなるほどうまいですからね……。

奥成氏: 担当ディレクターが世界で一番ゲームがうまいと思ったら、それは大間違いだぞと(笑)。でも、久保田さんは数多くいる「ファンタジーゾーン」好きのなかでも間違いなく上位に入る方ですよ。そんな方々が梁山泊のごとく集まっているのが、エムツーという会社なんですよね。

堀井氏: 前回の「SHINOBI」のインタビューに参加させていただいた駒林(貴行氏)のように、我々が出したものに対して、「ちょっとここが違うなあ……」という目を持っている人って、やっぱりいるんですよね。中身をより突き詰めてもらえるので、本当にいいスタッフだと思います。

――ちなみに、本作でも上位にランクされたプレーヤーの動画は公開されるのでしょうか?

古賀氏: はい。オンライン上にランクインしたプレーヤーの動画は、すべてダウンロードしてご覧いただけます。それから今回は、「タイムアタックモード」以外のところでも、なるべく簡単に遊べるようにしたいと考えながら調整しました。例えば、先程もお話した追加ボスと簡単に戦えるモードも新たに用意してあります。

奥成氏: 3DS版では、発売当初は追加ボスなどの存在は隠したままにしておいて、発売後になってから「実は、セガ・マークIII版のボスが入っていました!」とお客さんを驚かせたかったので、出現条件はある程度上手くないと出てこないように、割とシビアに設定していたんです。

 Switch版「スペースハリアー」を出すにあたり、「隠しボスのハヤオーが出現する条件を3DS版より緩くしてほしい」とお願いしました。SNSで購入者の皆さんの反応を見ていたら、たくさんの人が「ハヤオーが出てきた!」ってびっくりしていたんです。3DS版を買われた方でもハヤオーの存在は意外と知られていなかったんですね。当時GAME Watchさんの発売後インタビュー記事まで読んでいただけたらよかったのですが(笑)。

――つまり、今回のNintendo Switch版では、「ファンタジーゾーン」も追加ボスの出現条件を緩めに設定したということですね?

奥成氏: はい。「スペースハリアー」での経験もありましたし、3DS版の「ファンタジーゾーン」の隠し要素も、もう皆さんに知れ渡っていますので、今回はよりわかりやすくすることにしました。「ファンタジーゾーン」は難しいゲームですが、何度か遊んでコインを集めているうちに敵が落とすコインの金額が上がったり、ウエポンの使用時間が2倍以上になる設定が選べるようになって、ゲームがより簡単に遊べるという追加オプションが「コインストック」にはあるのですが、Switch版では3DS版より緩くしてあります。

――本作も、3DS版と同様にオート連射を搭載していますが、先程遊ばせていただいたら連射速度がさらにアップしたような印象を受けたのですが、もしかして連射速度を再調整したのでしょうか?

古賀氏: いいえ、スピードは速くなっていません。ですが、3DS版では隠し仕様になっていた一番速い速度の連射設定を、今回は最初から選べるようにしてあります。

――ナルホド! 連射のほうの出現条件も緩和してあるんですね。

奥成氏: 連射を速くすると、普通のショットがまるでレーザービームみたいに強くなっちゃうのでバランスが壊れるんですけどね(笑)。

堀井氏: 敵に張り付きながら撃てば弾切れ状態にもならないので、もの凄く使いやすいですね。

古賀氏: 連射速度を最高に設定すると、「タイムアタックモード」で遊ぶ時にもかなり役に立つと思いますよ。

――そうしますと、「タイムアタックモード」で遊ぶ時には、連射などの設定は特に制限を設けたりしていないということですね?

古賀氏: はい、そうです。とにかく今回は、初めて遊ぶ方でもなるべく簡単に遊べるようにすべてのモードを調整してあります。初心者には「ファンタジーゾーン」は難し目のゲームですので、一旦クリアできるようになると、サクッと軽く1周プレイという感じになりますけど(笑)。

堀井氏: Nintendo Switchで配信するにあたっては、「ファンタジーゾーン」のようなゲームをまだ遊び慣れていない方がたくさんいらっしゃるかと思いますので、そこのフォローですよね。

古賀氏: 実は、追加ボスも3DS版より弱くなっています。

奥成氏: 3DS版の追加ボスは、上手な人がプレイすると出現するようにしていたんで強かったんです。そうじゃないと、ボスがわざわざ変わる意味がないですし、「変わったほうのボスのほうが楽だった」と言われないようにと思って調整しましたが、今回は初めて出会った人にも優しくなるようになっています。もちろん、設定モードで追加ボスの出現をオフにすることもできるようになっています。皆さんからの評価がすでに確立している部分は一切変えずに、普通の「ファンタジーゾーン」としても遊べるようにしてありますので、皆さんがそれぞれお好きな「ファンタジーゾーン」で遊んでいただけるようになっています。

古賀氏: 本当は、セガ・マークIII版の「ファンタジーゾーン」も一緒に遊べるようにしたかったんですけどね……。実は当時、私は「ファンタジーゾーン」が遊びたくてマークIIIの本体を買ったんですよ。

堀井氏: (間髪入れずに)そ、そんなのやっちゃダメですよ!! ただでさえ開発期間がオーバー気味なんだから!

(一同爆笑)

古賀氏: マークIII版もプレイできると追加ボスの諸元が分かって良いかなーと。これがオリジナル版の勇士だ!と。

堀井氏: そうそう! それを知らしめるにはいいアイデアですけどね。

奥成氏: セガ・マークIII版を遊んでみたい方は、3DS版も買っていただければいいだけのお話じゃありませんか! と、いうことで、「セガ3D復刻アーカイブス」シリーズの「1」と「2」の2本を持っている人にはセガ・マークIII版が追加で遊べるようになっています。パッケージ版は既に店頭では見かけなくなってしまいましたが、ダウンロード販売でなら今でも買えますのでこの機会にぜひどうぞ(笑)。

――それから、スタッフクレジットも拝見させていただきましたが、宇宙空間を惑星がグルグル動き回るという、とても凝った演出をしていますよね? これには何か意味があるのでしょうか?

堀井氏: はい。以前の3DS版とはちょっと違う形にしてみようと、最終面の舞台であるサルファの周囲を、ほかのステージの惑星が動き回るようにしました。

奥成氏: 3DS版の時は、オパオパがエンジンを装備して飛んでいるシーンでしたよね。

古賀氏: アーケード版のチラシを見ていたら、惑星系のイラストが載っていたんですよ。それを見ながら、この惑星は多分、黄道面の傾斜角がこのぐらいだろうとか、各惑星の軌道を私がいろいろと推測しながら作ってみました。

堀井氏: 古賀はSF好きなので、そういうものを見ると独りで勝手に想像を膨らませながら作っちゃうんです(笑)。でも、我々が全部勝手にやったわけではなくて、元ネタはちゃんとセガさんのほうにあったということですね。

【スタッフクレジット】
海外版のブローシャー(冊子)に描かれた惑星のイラストを元に、「ファンタジーゾーン」の世界観をイメージしている。こちらもファン必見の演出だ

――それでは最後に、皆さんからGAME Watch読者へのメッセージをお願いします。

古賀氏: 繰り返しになりますが、3DS版にあった要素は今回も全部遊べます。セガさんからは、「3DS版と同じものが全部入っていればオーケーですよ」と言われていましたが、オンラインランキングと相性のいい「タイムアタックモード」も追加してみました。3DS版では画面が小さいのがネックでしたが、今回は大きなテレビ画面でも遊べます。HD振動も細かく調整をしておりまして、使用したボム(ウエポン2)によって震え方が微妙に違っていたりしますので、そこも含めてお楽しみいただければと思います。

堀井氏: 今回のNintendo Switch版で、さらに極まったものができたと思います。「もう何回出すんだよ!」と思われる方もいるかもしれませんが、「ファンタジーゾーン」はいつ遊んでも本当に面白いゲームであると私は思っていますし、時代とともに新しいハードに置き換わっていくなかで、その時々のハードで遊べる環境を維持していくことが、セガのゲームの魅力に初めて目覚めたタイトルが「ファンタジーゾーン」であった私にとっては、これはもう義務であり、今後もずっとやっていきたいなと考えています。

 前回の移植は3DSでしたので、ジョイスティックをつないだり、テレビに映し出して遊べる「ファンタジーゾーン」は、実は久々に出すんですよね。自分たちで遊びたいなあと思って作ったものをまた遊ばせていただこう、仕事はそのついでだみたいなノリで作っちゃいましたが(笑)、この機会にぜひまた遊んでいただけたらうれしいです。

奥成氏: 「ファンタジーゾーン」の主人公、オパオパの生みの親であるベテランデザイナーの近藤正樹さんが、実は今年で定年を迎えられまして、その記念すべき年に発売することになりました。近藤さんや、今は独立された石井洋児さん、作曲をされたHiro師匠など、まだ現役でご活躍をされている皆さんが若かりし頃に作られたゲームを、このタイミングでまた出せるのはとてもありがたいなと思っておりますし、皆さんには過去の良いものをいつでも、何度でも遊んでいただきたいですね。

 もう今度こそ、3DS版の際「 赤弾が見えない!(※11) 」と、1980年代に若者だった、ベテランプレーヤーの方々から言われていた問題は携帯モードでも起きることはありませんので、50インチでも60インチでも、皆さんのお好きな大画面に映し出して存分に楽しんでください。

――ありがとうございました。

※11……赤弾が見えない!: 赤弾は、敵が撃ってくる弾の一種。本作は、オパオパの装備を強化するなどの条件を満たすとゲームの難易度が上昇し、敵弾の色や形状、速度が変化する仕組みになっている。赤弾は、通常難易度の場合、3周目から登場する。初期状態で敵が撃つ青色の弾よりもスピードが速く、画面が小さい場合はどうしても見落としがちになる。