★iPhone/iPod touchゲームレビュー★
拳銃をiPhoneに持ち替えて タッチで伝説のガンマンとなれ!
「ワイルドウエストガンズ」 |
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- ジャンル:タッチシューティング
- 開発元・配信元:ゲームロフト
- 価格:600円
- プラットフォーム:iPhone/iPod touch
- 配信日:2月5日(配信中)
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携帯アプリを筆頭に、世界規模でカジュアルゲームの開発・配信を手がけるゲームロフトから、iPhone/iPod touch向けのタッチシューティング「ワイルドウエストガンズ」がリリースされた。2008年8月にWiiウェア向けに配信されたタイトルの移植版で、iPhone/iPod touchの特性に合わせて上手く調整されており、思わずのめりこんでしまう秀作となっている。
■ 西部劇が舞台のタッチシューティング
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ステージが始まると主人公が画面中央に表示され、左下に移動して画面外に消える。これだけの演出でゲーム世界に対する没入感がぐんと増す |
本作は西部劇の世界観が舞台のガンシューティングだ。ステージは酒場、荒野、列車など10種類で、おなじみのシチュエーションばかり。標的は保安官、カウボーイなどから空き缶、風船、ハゲワシ、はたまたソンブレロ(つばの広い帽子)まで多種多様だ。
このとき、標的を直接タッチして射撃していくだけでなく、地面をうろつくネズミや、背景の看板、窓ガラスや鐘など、画面上のさまざまなモノを破壊でき、これが純粋に楽しい。プレーヤーの入力行為に対して、常にゲーム機側がそれを上回る反応を返すことに成功している。近年では物理エンジンを搭載して、プレーヤーの入力行為に対して多彩な反応を返すゲームが増えているが、これを多数の「隠し標的」をゲーム内に埋め込んでおくという、ある種の力業で行なっているのが、本作の大きな特徴だ。
スコアは標的につき原則100点だが、人間の場合は頭部を撃つと「ヘッドショット」となり、1,000点が加算される。連続して命中させるとコンボがつながり、基本点×コンボの得点となる。コンボは最大10連鎖までで、ヘッドショットでコンボを決めると、最大1万点ずつ加算されていく。標的を外したり、敵から攻撃を受けると、コンボは途切れてしまうが、1度狙いを外しても2秒以内に他の標的に命中させると、コンボは継続する。そのため画面のさまざまな箇所を撃ってみようという気になってくる。
難易度は「ノーマル」、「ハード」、「サバイバー」、「リロード」、「スナイパー」の5種類で、それぞれ6ステージからなり、1つのステージが3つのチャレンジから構成されている。個々のチャレンジは「1:画面上の標的を撃つ」、「2:飛びさるソンブレロを打ち落とす」、「3:列車強盗を退治する」というように、牧歌的なものからシリアスなものに進んでいき、3つのチャレンジの総得点が一定以上を超えると、次のステージに進める。各チャレンジは数分で終了し、ミニゲーム感覚で次々に遊んでいける。ゲーム開始直後は難易度が「ノーマル」、「ハード」しか選択できないが、各難易度内の全ステージをクリアすると、追加の難易度が選択可能になる。
詳しくは後述するが、Wiiウェアからの移植版とはいえ、これだけのボリュームが600円で楽しめるのは、かなりお得感がある。ちょっとした移動時間には最適のゲームだ。また他のiPhone/iPod touch向けゲームと同じく、音質面も優れているので、ヘッドフォンを着用してのプレイをお勧めする。
【ゲームの流れ】 |
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難易度とステージを選ぶとゲームが始まる。ステージは3つのチャレンジから構成され、ステージが終了するとスコアが表示される。設定スコアを超えると次のステージに進める。ロード中に高スコアの秘訣が表示されることもある |
■ ガンシューティングからタッチシューティングへの改良
本作のポイントはWiiウェアからの移植作という点だ。そこでまず、この点に絞ってレビューしてみたい。
Wiiウェア版は一般的なガンシューティングで、テレビの前でWiiリモコン、またはガンアタッチメントを使用して標的を射撃する(余談だがWiiウェア版はヌンチャクを使用しないため、Wiiザッパーよりもサードパーティ製のハンドガン・アタッチメントを使う方が、プレイしやすいかもしれない)。これがiPhone/iPod touch版ではタッチシューティングとなり、画面を直接タッチして射撃する。この是非が本作の最大のポイントである。結論から言うと、iPhone/iPod touch版は巧みな調整と追加仕様で、タイトルの持つおもしろさが、より凝縮された内容になっている。
ガンシューティングからタッチシューティングへの変更で、ポイントとなる点の1つに、命中率の上昇に伴う難易度の再調整がある。テレビから1mくらい離れて座り、画面に向けて狙いを定めるガンシューティングと違い、画面を直接タッチするタッチシューティングでは、命中率が格段に上昇する。そのため下手をすると、標的マーカーを順にタッチしていくだけの、味気ないゲームになってしまう恐れがある。しかもガンコントローラーを握るという最大の魅力が、タッチシューティングではスポイルされてしまう。
そこでiPhone/iPod touch版では、Wiiウェア版がハンドガンだけだったのに対して、ショットガンとマシンガンが追加され、個々のチャレンジ内での難易度曲線が再調整された。すべてのチャレンジは最初にハンドガンから始まり、途中で表示される武器アイコンをタッチすることで、他の武器が使用可能になる。一定数の弾数を使い切ると、再びハンドガンに戻る仕組みだ。ほとんどのチャレンジでハンドガン → ショットガン→ ハンドガン → マシンガン……という緩急のリズムが設定されており、これがゲーム展開をより引き締めることに成功している。
またショットガンとマシンガンの使用時は、画面のどこを撃ってもコンボが途切れないようになった。これによって本作の大きな特徴である、ステージの至る所がインタラクションし、破壊の爽快感が楽しめる魅力が、さらに引き立っている。ハンドガンだけではコンボを考えれば、むやみに標的以外を狙えなかったが、ショットガンとマシンガン時は、コンボを気にせず、派手に撃ちまくれるようになったのだ。
一方でWiiウェア版では、標的に命中させるまでの時間で点数が変わったり、10回連続で命中させるとボーナス点が加算される仕様があったが、iPhone/iPod touch版では削除されている。これも命中率の上昇を考慮した結果だと思われる。またゲーム中に天候が変わったり、つむじ風が吹くなどの、一部の演出も省略されている。このほか2人同時プレイや競争プレイもできない。
・武器紹介
【ハンドガン】 |
【ショットガン】 |
【マシンガン】 |
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基本の武装で弾数は無制限だが、難易度「リロード」では装弾数が8発となる |
広範囲に散弾が飛び取り、1発で複数の目標を攻撃できる |
指で画面上をなぞり、連射して攻撃できる |
■ 命中率の上昇がハイレベルの楽しみを提示
個人的にはタッチシューティングとなり、命中率が上がったことで、新しいおもしろさが感じられた。ガンシューティングが得意なプレーヤーには「何を今さら」という感じだろうが、基本的に同じゲーム内容であっても、よりハイレベルで、一味違うゲームの楽しさが、手軽に味わえるようになったのだ。
これはゴルフゲーム史における「みんなのGOLF」の位置づけと比べると興味深いかもしれない。それまでのゴルフゲームは、「遙かなるオーガスタ」などのリアル路線が主流で、シングルで回るのも難しいものが多かった。これが「みんなのGOLF」では、思い切って初心者向けに難易度調整したことで、多くのプレーヤーがプロゴルファーのアンダーパーで回る感覚でラウンドできるようになった。このことでゴルフ競技の魅力が、より多くのプレーヤーに伝わる結果となったように記憶している。
本作も同様で、タッチシューティングで命中率が向上したことが、「射的」のもつ楽しさを、より広げたように感じられる。プレイに慣れてくると、カントリーミュージック風のBGMにあわせてリズミカルに標的を撃ったり、ショットガンの一撃で複数の標的をまとめて撃ち落とすなども可能になる。こうした楽しみはWiiウェア版のガンシューティングでは(筆者が下手な点も大きいが)得られず、iPhone/iPod touch版ならではの魅力に感じられた。
なお当然ながらゲーム中はマルチタップではなく、シングルタップのみの反応となる。ただしタッチの微妙な押し加減で、複数の指が連続して反応することはある。とはいえ、ステージを進めるにはコンボが重要なので、複数の指で画面を押しまくるといったプレイスタイルでは、すぐに行き詰まるだろう。一方で両方の親指でタップしていく二丁拳銃スタイルもきどれる。個人的には人差し指の1本だけでタップしていくスタイルが好みだが、ここは好き好きだろう。自分にあったプレイスタイルで遊んで欲しい。
チャレンジ内で中ボス的に登場するのが、これらの悪漢たちだ。プレーヤー側に突進してくるため、遠くにいるうちに倒さなければ、他の標的の邪魔になる。これらが緩急のリズムをデザインする上でいいスパイスとなっている。
・愛すべき悪漢たち
【ならずもの】 |
【マッドサイエンティスト】 |
【ネイティブ・アメリカン】 |
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スコップを持って突進してきて、プレーヤーを殴りつける。殴られると少しの間、画面にスコップの跡がつく |
ダイナマイトを持ってプレーヤー側に突進して来て、倒すと爆煙が発生する。近くで爆発すると画面が見づらくなる |
プレーヤーを押さえつけに来る。ふりほどくには本体を左右に振る必要がある。加速度センサーを活かした仕様だ |
■ ステージ構成における巧みなバランス表現
本作の優れたところは、ゲーム構成に学習要素を持たせた上で、うまく難易度曲線を設定し、思わずハマらせる仕組みをとっていることだ。障害の設定とクリアのループを通して、プレーヤーのストレスを巧みに操ることは、ゲームデザインの根幹であり、国産ゲームの十八番である。中でも任天堂の「リンクのボウガントレーニング」を徹底的に分析して、うまく取り込んでいるように感じられる。
前述の通り本作では、5つの難易度と6つのステージ、3つのチャレンジで、合計90種類のチャレンジが収録されており、これらが巧みなバランスで配置されている。まずステージ1では「動く標的」 → 「空飛ぶソンブレロ」 → 「列車強盗」とすすみ、次第にシリアスになっていったところで、再びステージ2で「ブリキ缶撃ち」と、シチュエーションが牧歌的になるというように、世界観や難易度がジグザグ構造になっている。そしてステージ3のチャレンジ2で再び「動く標的」が登場するが、ここでは背景が変わり、新しいミニゲームがプレイできる……といった具合だ。
さらにステージ2の「酒場の銃撃戦」は、ステージ5で再登場するが、ここではライフ制が初めて登場し、ゲームオーバーの概念が登場する。ここまでのチャレンジでは、標的から攻撃を受けることがあっても、コンボが途切れるだけでゲームは進められたが、ここで初めて一般的なガンシューティングと同じように、ライフ制が登場するのだ。ただし標的の出現パターンは一定なので、以前のプレイ経験を活かせる。カジュアルユーザーでも、自然にゲームが上手くなる仕組みだ。
なお第3の難易度「サバイバー」では、全編にわたって15ポイントのライフ制となり、1ステージ内で残ライフ数が引き継がれる。4番目の「リロード」では、ハンドガンの弾倉が8発となり、再装填の手間が発生する。弾を撃ち尽くすと「装填」アイコンが表示されるので、これをタッチして再装填しなければならない。この一手間が難易度を押し上げる、いいスパイスとなっている。最後の「スナイパー」では、10ポイントのライフ制となり、ミスショットするとライフが減るという、上級者向けの仕様だ。実際には「サバイバー」ステージでも、一部のチャレンジには「リロード」ギミックが登場するなど、これらが巧みに組み合わされている。
補足すると、本作では画面をタッチすると射撃音が鳴り、標的に命中すると「やられパターン」がアニメーション表示される。ミスショットしても樽が壊れたり、鶏が飛び上がったりと、画面のさまざまな箇所がアクションして、点数も上がる。この一連の「アクション=リアクション」の関係がよくできており、打てば響くような快感がある。このベーシックな快感を基盤に、前述したチャレンジ内のリズムがあり(しかもiPhone/iPod touch版では武器追加でメリハリが強まっている)、さらにチャレンジごとのリズムがあり、その上でステージごとのリズムや難易度ごとのリズムがある。このように複数の異なるリズムが、幾重にも入れ子構造になっている点がミソである。
これらはコンソールゲームでは当然のことだが、iPhone/iPod touch版でも(移植版とはいえ)同様の作り込みがなされている点が秀逸である。また同じコンソールゲームでも、こうした作り込みは一昔前なら、いわゆる「洋ゲー」の弱点の1つという印象があったが、もはや日本産ゲーム並のレベルに達している点に、改めて驚かされる。一方で相応の作り込みが必要になるため、国産のiPhone/iPod touchゲームでも、なかなか難しいのが現状ではないだろうか。
・「ノーマル」難易度 チャレンジ紹介
【ステージ1】 |
【動く標的】 |
【空飛ぶソンブレロ】 |
【列車強盗】 |
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画面上に現われる標的を撃っていく。保安官バッジは高得点で、ドクロバッジはミスだ |
魚などが飛び跳ねる湖畔をバックに、ソンブレロを打ち落としていく |
列車強盗を攻撃していく。時々出現する貴婦人を撃たないように注意だ |
【ステージ2】 |
【ブリキ缶撃ち】 |
【風船割り】 |
【酒場の銃撃戦】 |
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最大3個まで出現するブリキ缶を、地面に落ちないように撃ち上げていく |
町の広場を背景に風船を撃っていく。同じ色の風船を続けて割ると高得点だ |
酒場を舞台に銃撃戦を行なう。突進するネイティブ・アメリカンが初登場する |
【ステージ3】 |
【ハゲワシの来襲】 |
【動く標的】 |
【墓場の激戦】 |
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ハゲワシの襲来から一定時間ウサギを守る。保護したウサギの数がボーナス点だ |
標的はステージ1と同じだが、背景が納屋となっている点が異なる |
他の銃撃戦と同じだが、ここでは墓場をバックに銃撃戦を行なう |
【ステージ4】 |
【風船割り】 |
【ブリキ缶撃ち】 |
【列車強盗】 |
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標的はステージ2と同じだが、背景がならずものの家で、ダイナマイト付きの風船もある |
45秒間ブリキ缶を地面に落とさないように保つ。地面に落とすと即、失敗だ |
内容はステージ1と同じだが、こちらは列車の先頭からのスクロールとなる |
【ステージ5】 |
【空飛ぶソンブレロ】 |
【動く標的】 |
【酒場の銃撃戦】 |
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標的はステージ1と同じだが、こちらは町の通りが舞台となる |
ステージ1、3と同じだが、こちらは広場が舞台となる |
内容はステージ2と同じだが、ライフ制となっており、撃たれてゼロになると失敗だ |
【ステージ6】 |
【ハゲワシの来襲】 |
【動く標的】 |
【列車強盗】 |
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ステージ3と同じ。時折顔を出すプレーリードッグを撃つと高得点だ |
ステージ1、3、5と同じだが、背景はならずものの家だ |
ステージ1、4と同じだが、最後尾からのスクロールでライフ制だ |
・高難易度での違い
【サバイバーステージ】 |
【リロードステージ】 |
【スナイパーステージ】 |
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15ポイントのライフ制で、ライフ数は各ステージで引き継がれる |
ハンドガンで弾数制限があり、リロードの必要がある |
10ポイントのライフ制で、ミスショットするとライフが減少する |
■ よくできているだけに、さらなる作り込みも欲しい
ただし、いくつか不満点が感じられたのも事実だ。まず第1に、90種類のチャレンジが用意されており、少しずつ差異が設けられているとはいえ、全体的に見ると似たような組み合わせに終始しており、途中でダレ気味になってしまうことだ。中でも「ノーマル」から「サバイバー」のあたりで、その印象が強い。またチャレンジの中でも「ハゲワシの来襲」はゲーム内容の変化に乏しい。もうひとひねり加えて、全編にわたって常に新しい要素が加わるようなステージ構成にして欲しかったところだ。
このほかWiiウェア版では2人同時プレイができたが、iPhone/iPod touch版では1人プレイ専用になったのも残念なところ。Wi-Fi経由で2人で協力プレイをしたり、早撃ちの通信対戦などができれば(加速度センサーを用いて、実際に本体を上下させて狙う、などの仕様も考えられる)、さらに楽しめるモノになっただろう。1丁の銃を回し撃つように、1台のiPhone/iPod touchを交替で使って、複数のプレーヤーでミニゲームを遊ばせる、などの遊びもいいかもしれない。このあたりは今後のアップデートに期待したい。
また最後に補足として、インフォメーション画面からゲームロフトの最新ゲーム情報が入手できたり、簡単にフィードバックメッセージが送れるようになっている点を賞賛したい。特にiPhoneでは常時接続が保たれているため、こうしたプロモーション/フィードバック機能は、他のタイトルでも必須となるのではないだろうか。無数のライバルがひしめくApp Storeでは、このようにユーザーに手軽な導線を提供して、自社タイトルのファンになってもらい、ブランドの確立につなげていくことが、強く求められているのではないかと思われる。
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□ゲームロフトのホームページ
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□ニュースリリース
http://www.gameloftjapan.com/gameloftnews/000384/
□関連情報
【2008年8月5日】ゲームロフト、Wiiウェア「ワイルドウエストガンズ」
西部劇の雰囲気が味わえるガンシューティング
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080805/wwg.htm
(2009年3月3日)
[Reported by 小野憲史]
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