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★PS3/Xbox 360ゲームレビュー★

「肉声」で部隊を指揮! 気分は現場指揮官?
第三次世界大戦を戦う近未来の戦術シム

「Tom Clancy's END WAR
(エンド ウォー)」

  • ジャンル:リアルタイムストラテジー
  • 開発/発売元:ユービーアイソフト
  • プラットフォーム:プレイステーション 3 / Xbox 360
  • レーティング:CERO:C(15歳以上対象)
  • 価格:7,329円
  • 発売日:Xbox 360版:1月29日 / PS3版:2月26日発売予定



ボイスコマンドで部隊を操る。全く新しい操作スキームを持つRTSの登場だ
 プレイステーション 3やXbox 360といった最新コンシューマーゲーム機で、リアルタイムストラテジーゲーム(RTS)がにわかに活気付いている。今回ご紹介するPS3/Xbox 360「Tom Clancy's END WAR(エンドウォー)」や、2月26日発売予定のXbox 360「Halo Wars」などが、その代表例だろう。

 RTSはPCゲームの世界で育ってきた代表的なゲームジャンルであるだけに、ゲームデザイン上、マウスへの依存度が高く、コントローラーを前提とするゲーム機で快適な操作性を実現することは難しいと考えられてきた。しかし、その認識は過去のものとなっている。最新世代ゲーム機のパワーを上手に生かすことで、そういった障害を軽々と越えられることが実証されつつある。

 操作性の障害を乗り越えるための方法のひとつは、3Dグラフィクスの表現力を生かすことだ。ゲームフィールドやユニットを全て3Dで表現すれば、旧態然とした見下ろし型の二次元的な画面にこだわる必要はない。小さなユニットを細かく選択して動かすのではなく、カメラを自由自在に動かして戦場を飛び回り、ダイナミックにユニットを操作することができる。

 そしてもうひとつの方法は、本作「END WAR」で初めて実現し、大きな効果を上げている。それは、音声認識技術を使って、ボイスコマンドでゲームを制御するというものである。プレーヤー自身の声をゲームへのインプットとし、コントローラー操作を用いずにユニットに司令を出し、戦況を動かす。一昔前には想像もできなかった技術だが、本作「END WAR」ではこれを全面的に取り入れ、ひとつのスタイルに昇華させている。

 史上初の「肉声で制御するリアルタイムストラテジー」である本作は、Xbox 360版が1月29日に発売され、続いてプレイステーション3版が2月26日に発売予定である。全体的な内容としては、野心的な仕様を備えなながらもストラテジーゲームとしての基本はキッチリと押さえ、手堅いゲーム性を持つ作品に仕上がっている。その詳細をご紹介していきたい。


■ 肉声で命令を出し、作戦を遂行。視界外の部隊も操作できる!

部隊は近未来。第三次世界大戦下、世界各地の戦場で勢力を指揮して戦う
 舞台は近未来。ヨーロッパはひとつの国となり、大国アメリカ、ロシアと合わせて世界の3極を構成していた。2016年、中東で核テロが勃発し、石油の供給ネットワークは機能不全に陥る。事態を重く見た各勢力は、こぞって防衛システムを強化。一見平和が戻ったかに見えた世界に、またしてもテロの嵐が襲う。そして2020年、世界の緊張は高まり、全面戦争の危機が迫ろうとしていた……。

 といったプロットで始まる本作は、第三次世界大戦下のアメリカ、ヨーロッパ、ロシアによる紛争を描く、戦術級のリアルタイムストラテジーゲームだ。戦場は数キロ平方の都市や、山岳、丘陵地帯などで、敵部隊の全滅や、拠点の確保を巡って局地戦を展開する。

 プレーヤーの操作対象は6~12個程度の小部隊となる。「建築物」や「生産」の概念は無く、そのかわりに「増援」によって部隊を投入したり、後方部隊の支援攻撃を要請して戦闘を遂行するという、小規模作戦よりの内容となっている。PC系のゲームを例に出すなら「Age of Empires」シリーズよりも、「Company of Heroes」や「World In Conflict」に近い構成と言える。

 10個前後の部隊を随時操作するとなると、コントローラー捌きがかなり大変なことになりそうだが、本作ではボイスコマンドによる操作系統を導入することで、その問題を大きく改善している。これはユーザーインターフェイスの革命と言ってしまっていいほどの出来事だ。

 Xbox 360版では、ゲーム中に右トリガーを押している間、ボイスコマンドの受け付け状態となる。そこで「誰が」→「何を」→「どこに」という順番でマイクに発声すると、それがゲーム内の命令として伝わり、部隊が行動する、という仕組みだ。

 この仕組みの面白さはいくつもあるが、その中でもカルチャーショックに近い衝撃を受けるのが「視界外の部隊も操作できる」ということだ。旧来の操作システムであれば、カーソルで対象を選択して、行き先をポイントしてボタンを押すという方法になり、どうやっても画面内の対象を操作するしかないが、本作では、全然別の地域に居る部隊に対して、移動や攻撃のコマンドを出すことができるのである。まさに気分は現場指揮官だ。

ボイスコマンド発声中は、内容に応じた命令メニューが次々に展開する。はじめのうちは、一語づつ内容を確認して、慎重に発声。慣れてしまえば、早口に喋ってスムーズに司令を出すことも可能になる


プレイ開始時、音声認識の精度を向上させるためにプレーヤーに合わせたキャリブレーションが行なわれる
ほとんどの操作はコントローラーでも可能。ただ、部隊の選択やグループの呼び出しは、ボイスのほうが速い。組み合わせて使うのが賢明だ
 ただ、スムーズに命令できるようになるには少々コツが必要だ。オリジナルが英語のゲームということもあって、命令の語順が、主語、述語、目的語という順番で、自然な日本語では命令できないのである。具体的には、部隊1に対して、敵部隊2への攻撃を指示する場合、「部隊 ワン 攻撃 エネミー ツー」というふうになる。「部隊1は、敵部隊2に、攻撃せよ」では通じない。英語では「Unit one, attack enemy two」とごく自然な表現だが、日本語で不自然なのは致し方ないところだろう。

 また少々やっかいな点として、部隊番号を示す数字の表現が、英語でしか受け付けられない。いち、に、さん、ではダメで、ワン、ツー、スリーだ。このあたりは音声認識の認識率を上げるための仕様と思われる。例えば、12は日本語で「じゅうに」だが、英語では「トゥウェルブ」だ。日本語では「10」、「2」に分解されるおそれがあるが、英語ではその心配はない。まずは慣れてしまえば自由自在ということで、尻込みせずに挑戦するだけの価値はある。

 ちなみに、ボイスコマンドで司令できる命令は、コントローラー操作でも再現することが可能だ。その場合は、十字パッドで部隊カードを選択し、ハイライトした部隊を対象として、移動先を指示したり、敵部隊をポイントして攻撃を指示することになる。ボイスコマンドで部隊選択だけをし、あとはコントローラーで操作することもできる。

 コントローラーのみで可能な操作というのもあって、例えば移動先に地表の任意地点を指定するには、カメラを操作して直接その場所をポイントし、Aボタン(Xbox 360版)を押すしかない。また、部隊の特殊能力を発動させるためにはYボタン(Xbox 360版)を押す。逆に、ボイスコマンドのみで可能な操作としては、複数の部隊をまとめてグループ化した際に、グループ番号を呼び出して操作対象を指定する、というものがある。

 このように、本作ではボイスコマンドによる操作と、コントローラーによる操作を組み合わせて、最大12個の部隊をきめ細かく操作する、というのがゲーム性の基本にあるわけだ。多少の慣れは必要だが、いったんマスターしてしまえば、コントローラーで特定の部隊を細かく操縦しつつ、ボイスコマンドで別働隊に指示を出すといった、他のゲームでは不可能な操作が楽しめる。これは非常に楽しい体験だ。

部隊をグループ化し、グループに対して移動や占領の命令を下すと、必要に応じて歩兵が輸送車に搭乗するなど、ある程度インテリジェントに命令を遂行してくれる

混戦、乱戦となってくると、ボイスコマンドによる指示が乱れがちになる。言い間違えてわけのわからない命令が発効され、収拾がつかなくなることもあるため、発声は常に落ち着いて行なう必要がある


■ 占領か殲滅か、戦術のセンスが問われる局地戦。最後は大量破壊兵器祭りも!

キャンペーンマップ。各戦場の戦果がフィードバックされ、新たな戦略的局面を生み出していく
戦闘開始時のブリーフィング画面にて、勝利条件の確認や、初期投入する部隊の編成を行なう
 そんなボイスコマンドを使って展開する本作のバトルは、大いに戦術のセンスを求められる内容だ。基本ルールは、敵対陣営との直接対決にて、相手の戦力を殲滅する、もしくは、戦場に配置された陣地「アップリンク」を半数以上占拠し、持ちこたえることだ。

 ソロプレイモードの「第三次世界大戦」で、プレーヤーはアメリカ、ヨーロッパ、ロシアいずれかの陣営を選択し、ひとりの将軍として各地の作戦を指揮することになるが、世界地図上から選択する戦場の様相に応じて、勝利条件や、得られる後方支援の種類など、様々な要素が変化する。このため、戦場を選択する時点から、ゲームは始まっているというわけだ。

 戦闘開始時点では、戦闘開始前に選択したごく少数の部隊が展開しているのみだ。「アップリンク」の支配を巡るルールでは、占領が可能な兵科である「ライフル兵」もしくは「工兵」のどちらかを最初に展開することになるだろう。追加の部隊は、占領や敵の撃破などで増加する「指揮ポイント」を消費して「増援」という形で戦地に導入することになる。

 本作に登場する兵科の種類はそう多くない。大別すると歩兵、戦闘車両、指揮車両の3種だ。歩兵には「ライフル兵」と「工兵」があり、前者は対人戦闘に強く、後者は対車両戦闘に強い。歩兵に共通する特徴として、建物や障害物を使って立て籠もることができ、その状態であれば、他のどんなユニットよりも粘り強く戦えるというメリットがある。

 戦闘車両としては、兵員輸送も可能な「輸送車」、タフさと攻撃力を兼ね備える「戦車」、遠隔攻撃が可能な「砲兵」、空中から攻撃できる「戦闘ヘリ」が存在する。このうち「輸送車」、「戦車」、「戦闘ヘリ」の間には、「戦車は輸送車に強く」、「戦闘ヘリは戦車に強く」、「輸送車は戦闘ヘリに強い」という3すくみの関係が存在する。攻撃されればもろい「砲兵」は特殊な例として、前線のぶつかりあいでは、この関係をいち早く判断し、適切な兵科を敵にぶつけることが必要だ。

 最後の「指揮車両」は特殊なユニットで、戦場における情報戦を司る存在だ。戦場に「指揮車両」を投入しておくと、プレーヤは戦略マップを開く事が可能になり、戦場を俯瞰視点で一望できる。また、経験を積んでアップグレードした「指揮車両」は、無人偵察機を飛ばして遠方の敵を発見したり、戦闘ドローンを展開して攻撃補助をすることも可能だ。指揮車両は、無くても戦闘は成立するが、有れば全体の流れをぐっと掌握できる、という存在なのである。

歩兵は一見弱そうだが、敵に発見されにくく、建物に籠もれば粘り強く戦うことができる。また「アップリンク」を占領できるのは歩兵だけだ、

戦車、輸送車両、戦闘ヘリの間には、ごく典型的な3すくみの関係がある。敵の動向に対応して適切な部隊をぶつけることが戦術の基本だ


「アップリンク」を「アップグレード」することで、各種の後方支援を要請可能になる
後方支援は指揮ポイントを消費するので、増援の投入とのトレードオフになる
 個性ある各兵科の部隊を駆使して、優先するべきは占領か、敵の殲滅か。確実に言えるのは、戦場に点在する「アップリンク」を占領し、それに対して「アップグレード」を施せば、各種の後方支援を呼び出せるようになり、有利に戦闘を展開できるということだ。従って、戦闘の序盤はいくつかの「アップリンク」を確保することに集中することになる。

 支援攻撃は、戦略マップ上で隣に策源地の存在する戦場で利用可能だ。そのような戦場で、プレーヤは「アップリンク」を占拠して「エアストライク」、「電子戦」、「支援部隊」という、3種類の後方支援のいずれかを有効にすることができる。

 「エアストライク」はその名の通り、空軍による爆撃支援だ。発見はしているが攻撃が届かないような敵、あるいは直接戦闘で劣勢の味方を救いたいときに、対象を指定して「エアストライク ターゲット」と言えば、即座にジェット戦闘機による爆撃が行なわれて、対象に大ダメージを与える。ごくごく使いやすく、効果もてきめんだ。

 「電子戦」は玄人好み。ターゲットを指定してこの支援攻撃を呼び出すと、対象の敵部隊の制御装置が一定時間停止し、無防備な状態となる。そこに他の部隊を使って集中攻撃を加えれば、簡単に撃破することができてしまうわけだ。プレーヤーによる能動的な連携が必要な点で少々コツは必要だが、使いこなせば劇的な効果がある。

 最後の「支援部隊」は、あまり戦闘力は高くないものの、防衛には適した自動制御の部隊を、任意地点に呼び出すというもの。これは拠点の防衛に向いている。いずれの後方支援も、増援部隊の呼び出しと同じく「指揮ポイント」を消費するため、戦況に応じて賢く使い分ける必要がある。このあたりはうまくバランスされており、ゲームが面白い展開になるよう工夫されている印象だ。

後方支援が利用できないマップでも「アップリンク」を確保することで「指揮ポイント」を確保できるので、ほとんどの戦いでは歩兵を有効活用することが大切だ


「アップリンク」の占拠が勝利条件である場合、半数以上を占領した時点でターニングポイントがやってくる
 戦いが中盤にさしかかり、部隊数が最大に達して「アップリンク」の占領が進む頃には、敵部隊との交戦、必要な拠点の防衛など、かなり忙しい展開となる。2つ以上の戦線で戦うことも希ではないため、コントローラー操作とボイスコマンドと、二足のわらじで絶え間なく部隊をコントロールすることになるだろう。

 基本的には、機動力のある戦闘ヘリで敵の分布を偵察しつつ、前線を戦車と輸送車で固め、敵の後方部隊を砲兵による遠距離射撃で叩く、というパターンが王道になる。敵に見つかりにくい歩兵を前線に展開させ、地道に損害を強いるというのも妙手だ。

 いずれにしても勝利条件は、敵の増援部隊を払底させ、戦場に存在する部隊を全滅させる、もしくは半数以上の「アップリンク」を支配し数分間それを維持する、ということだ。そして勝敗の行方が見えてくると、究極の支援攻撃「WMD」および「ポイント破壊」が、劣勢側の陣営に解禁される。これが本作のバトルにおけるターニングポイントだ。

「WMD」発動!キノコ雲が上がり、爆心地周辺の部隊は一気に全滅。これを見越して部隊を分散させておきたい
 「WMD」は、Weapons of Mass Destructionの略で、つまり大量破壊兵器のことだ。マップ上のどこにでも直接着弾させることができる上、その威力は、建築物もろとも、衝撃圏内にある部隊を消滅させる勢いである。着弾時に全部隊が1カ所に集結していたりしたら、目も当てられない。1発で全滅、大逆転にてバトル終了だ。

 劣勢側の陣営が「WMD」を使用すると、以後、優勢側の陣営にも「WMD」の使用が許可される。「WMD」は数分おきにリチャージされ、再発射が可能となるので、後はもう撃ち合いだ。主力部隊は軒並み吹き飛ばされて、数少ない残存「アップリンク」の制圧と防衛を行なうことになる。

 劣勢側はまた、敵に占領されている「アップリンク」を1カ所だけ破壊することもできる。これと「WMD」の専制使用との組み合わせは凶悪で、優勢に戦いを進めていた側が一気に敗色濃厚になることも当たり前という案配だ。この仕様のおかげで、華麗な戦術を駆使して無傷で勝利する、ということがほとんど不可能になっており、最後は泥試合で決着が付くバランスとなっている。このあたりは、少々大味になりすぎ、せめて「WMD」は1発だけにしてほしかったところだ。

 いずれにしても、戦闘を終えれば、プレーヤーはゲーム内の金銭と、生存部隊の練度向上という報酬を受け取る。金銭は各部隊に追加能力を付加するために使用することが可能なほか、部隊の練度が向上することで、体力や攻撃力が向上していく。こういった成長要素を通じてより成長していきながら、世界大戦を戦い抜いていく、というのが本作のソロキャンペーンの醍醐味だ。

最小の犠牲で勝利することが名将の証だが、部隊は第三次世界大戦ということで各戦場で必ず大量破壊兵器の投入が行なわれ、少なくない部隊が全滅の憂き目に遭う。それ以上被害を拡大させないためにも、残存部隊を有効に使って早期決着を図ることが求められる


■ オンラインプレイはソロキャンペーンの拡大版

オンラインモードでは、数十日にもわたって続けられている巨大な第三次世界大戦キャンペーンに参加することになる
 本作ではもちろん、オンライン対戦もサポートされている。基本的には2モードあり、ひとつは、一般的なマルチプレーヤーゲームと同じスタイルで、任意のマップを選んで対戦する「スカーミッシュ」モード。もうひとつは、本作のメインフィーチャーとされる、第三次世界大戦キャンペーンをオンラインでプレイする「シアター・オブ・ウォー」モードだ。

 「シアター・オブ・ウォー」では、オンラインサーバー上で世界でひとつだけの第三次世界大戦キャンペーンが、ごくゆっくりと進行している。プレーヤーは所属陣営を選んでこの世界に参加し、キャンペーンの進行に応じて与えられる戦場で、他の陣営に所属するプレーヤーとの戦いに挑む。

 オンラインのキャンペーンは1日に1ターン程度のスピードだ。戦局に応じてプレイ可能な地域が決められるので、同じタイミングで対戦するプレーヤーは、ほぼ同じ戦場で戦うことになる。サーバー上では対象となる戦場の両陣営の勝利・敗北の成績が蓄積されており、その成績に応じてターン終了時の地域の所属先が決まる、という仕組みだ。

オンラインにも部隊の成長要素がある。いかに被害を出さずに勝利して、部隊を精鋭にしていくかが大きな関心事
 いわば第三次世界大戦をテーマとするMMO空間のようなものになっているわけだが、それだけに、プレーヤーひとりの存在は、砂浜の砂一粒くらいのもの。大局的な戦線の推移について深く気にする必要はなく、「毎日戦線が変動していく、動的な対戦ロビー」くらいに考えておけばいい。それよりも重要なのは、「シアター・オブ・ウォー」ではソロモードと同じく、プレーヤーの所有部隊に成長要素が適用される、ということだ。

 成長要素があるということは、戦いを重ねて部隊を強化していくほど、先々の戦闘で有利に戦えるようになるということだ。だが、ソロモードと違って、オンラインのキャンペーンでは、戦場で「戦闘不能」状態になった部隊が救出されて「生存」扱いになることがほぼなく、即「戦死」扱いとなってしまうため、部隊を古参、精鋭と成長させていくのが、ことのほか難しい。

 このため、中には相手の部隊を殲滅してしまうことを、マナー違反と考えるプレーヤーもいるようで、「敵は全力でたたきつぶして当然」と考える、筆者のようなプレーヤーが煙たがられることもあるようだ。特に、複数の部隊を一気に「戦死」させてしまう「WMD」の使用は、相手を本気で怒らせてしまう可能性もあるので、留意が必要だったりする。

 部隊の成長は、戦いを有利に運ぶための手段であるはずで、それを目的化してしまうのは、本末転倒だ。だが、腐心して成長させた部隊が簡単に「戦死」扱いとなって新兵に戻ってしまうという本作の厳しいバランスにも、問題があるのかもしれない。

 いずれにしても、オンラインでの戦いは、良い相手とぶつかることができれば、想像もしなかった戦術を目にすることもできて、非常に濃密な体験ができる。また、大切な古参兵部隊を失うことなく戦おうとすればするほど、高い緊張感を持って戦いに臨めることだろう。非常にやりがいがある。

「シアター・オブ・ウォー」の戦いでは、部隊に被害が出ることをおそれて消極的に戦うプレーヤーが多い印象。ガツガツ攻めてくるプレーヤーは少ないが、劣勢側にはいつでも「WMD」の使用が許されることに注意しつつ、慎重に戦いたいものだ


■ ボイスコマンドの威力を証明する快作。将来にも大いに期待したい

ボイスコマンドの力でスムーズにプレイできるRTSに仕上がった本作。将来に向けてのマイルストーン的な作品となった
 本作の最大の目玉、そして功績は、やはりボイスコマンドを実用レベルでストラテジーゲームに導入したことだ。正直なところプレイ前は「実用になるのだろうか?」と半信半疑だったが、実際にプレイしてみて、ボイスコマンドが実に優れたユーザーインターフェイスであると思うに至ることができた。

 ボイスコマンドの利点としては、機能的な面では、コントローラーの操作と平行して、画面外の部隊に対して命令を出せることが挙げられるし、また、複雑なコマンドを必要とせずに、ほとんどの操作が可能になるという応用性の高さも上げられる。もちろん、肉声で部隊を指揮することで得られる「臨場感」も素晴らしい。

 また同時に、本作はボイスコマンドを初めて導入したRTSなので、問題点も色々と浮き彫りになっている。ひとつは、命令の発声のために、ある程度の時間がどうしても必要になるため、究極的には、コントローラーでできる操作ならば、コントローラーのほうが速く入力できるということだ。これは、本作においては、戦闘の難易度が高くなるほどボイスコマンドの使用頻度が下がっていくという形で現われている。

 この問題の根源は、本作におけるボイスコマンドが、コントローラー操作の代替に過ぎないところにある。つまり、ボイスコマンドでできることと、コントローラーでできることが、同じなのだ。ボイスコマンドならではの命令系統があり、それがうまくゲームに使われていれば、本作はさらに素晴らしいゲームになった可能性がある。

 例えば、本作をプレイしていると、特に戦闘の中盤以降では、細かい操作の多さに辟易することがある。有利に戦うためには部隊1つごとに、戦車を前に出して輸送車を後方に配置するといった調整をしたり、歩兵を近場の建物に侵入させたりと、細かい制御が必要になるが、こういった操作の積み重ねを「部隊1 少し前進」、「部隊2 敵の射程外に後退」、「部隊3 近くの建物に侵入」といった、自然な音声命令で実行できれば、非常にプレイの質が上がりそうである。

 そういった「より自然な」ボイスコマンドの実現のためには、音声認識技術とゲームデザインの両面で、大きな進歩を遂げる必要がありそうではある。難関ではありそうだが、実現すればRTSのプレイ体験を、現状とは全く異なるレベルまで引き上げることができそうだ。

 それだけの可能性がボイスコマンドには眠っており、そのことを力強く感じさせてくれた本作「END WAR」は、紛れもなく快心の1作であると評価できる。どのようなゲームファンにも、ぜひ1度プレイしてみて欲しい。

【スクリーンショット】

(c) 2008 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. EndWar, Ubisoft, Ubi.com and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries.


□ユービーアイソフトのホームページ
http://www.ubisoft.co.jp/
□「Tom Clancy's END WAR」の製品情報
http://www.ubisoft.co.jp/endwar/

(2009年2月20日)

[Reported by 佐藤カフジ]



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