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【連載第7回】あなたとわたしのPCゲーミングライフ!!
■ 佐藤カフジの「PCゲーミングデバイス道場」 ■
もはや常識?のヘッドトラッキングに、NVIDIAが本腰を入れる3Dグラス
手が届かなさそうで届いてしまうVRデバイスをチェック!
色々な意味で業界の「最先端」を走る、PCゲーミングの世界。当連載では、「PCゲームをもっと楽しく!」をコンセプトに、古今東西のPC用ゲーミングデバイスに注目して、単なる新製品の紹介にとどまらず、競合製品との性能比較や、新たな活用法の提案、果ては改造まで、様々なアプローチで有益な情報をご提供していきたい。 |
■ VRデバイスで「モニタの向こう側」を実感する
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今回ご紹介するのは、一風変わったVR系の入力・出力デバイス。ゲームへの没入感を高めてくれるものたちだ |
コンピューターゲームが大衆の娯楽となってから四半世紀ほどが経った。コンピュータの進歩は速く、高性能PCや最新ゲーム機を使えば、今や実写寸前の美しい映像でゲームをプレイすることも可能となった。ゲームの中身も相当リアルになり、昔はスーパーコンピューターで動かしていたような物理シミュレーションも、今ではゲーマーの遊び道具のひとつにすぎないほどである。
それと平行して、「バーチャルリアリティ(VR)」という言葉が魅力を失ってきたようにも思える。というのは、ソフトウェア的な進歩が急激に進み、映像やシミュレーション内容が高度化した一方で、ゲーマーはいまだにマウスやキーボードやゲームパッドでゲームを操作している。大昔に「VR」という言葉が期待させた、「電脳世界への五感の投入」という未来像がいつまでたっても実現されないからだ。
つまり、モニタの向こう側の世界はものすごい勢いで進歩していくが、そこに触れるためのユーザーインターフェイスの進歩は著しく遅い。四半世紀前のファミコンコントローラと現在の最新鋭機用のゲームコントローラが、その機能と役割において“だいたい同じ”であることがそのことを証明していると思う。この点、現状で存在するゲーム機で一番未来を感じさせるのはWiiだが、それでも「攻殻機動隊」や「電脳コイル」の世界はまだまだ遠い。
だが絶望するのはまだ早い。非標準のユーザーインターフェースに目を向ければ、PCゲームの世界においていくつかの効果的な試みが行なわれてきているのだ。そこで今回は、多くのゲーマーが利用でき、しかも効果のあるVR系デバイスを2系統、ご紹介したいと思う。
ひとつは、米NaturalPoint社が開発し、シム系ゲームファンを中心に必須アイテムとなりつつある「TrackIR」シリーズ。これはヘッドトラッキングデバイスと呼ばれる装置で、「ゲーム画面と頭の運動のインタラクション」を提供してくれるものだ。これを使えば画面内の視野を頭の運動で操作できるので、プレーヤーの意志とゲーム世界との連動性がぐっと高まる。また、同等の機能を無料で実現するフリーソフトにも触れてみたい。
もうひとつは、グラフィックスチップメーカーのNVIDIAが突如としてリリースした3Dグラス「GeForce 3D Vision」。これは、モニター上の映像を立体的に見せるための装置で、ゲーム世界の存在感を「手を伸ばせば触れそうな」というレベルに高めてくれる。この手の試みは赤青メガネの大昔から繰り返されてきたものではあるが、今回大手ハードメーカーが本腰を入れて開発したという点にも注目してみたい。
【今回のラインナップ】
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TrackIR4
発売元:MSY
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GeForce 3D Vision 発売元:NVIDIA |
FreeTrack
フリーソフトウェア |
■ ハンズフリーで視界を自由にできる機能性。ゲーム世界との一体感を与える「TrackIR」
【TrackIR 4: PRO】 |
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ジャンル:ヘッドトラッキングセンサー
開発元:NaturalPoint
発売元:MSY
価格:25,800円(本体のみ) 30,300円(バイザー、赤外線LEDクリップ付き)
発売日:2006年(発売中)
対応OS:Windows 2000/XP/Vista
備考:ドライブ、フライトなどのシム系ゲーム向き
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「TrackIR」、その本体は小さな赤外線カメラだ |
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付属の「Vector Clip」を帽子に付けた状態。これを被ってゲームをプレイする |
「TrackIR」は、プレーヤーの頭の動きを追跡し、その動きをゲーム内の視界操作に変換するというヘッドトラッキングセンサーだ。原理としては単純で、デバイスの本体である赤外線カメラが、プレーヤーが頭に装着する赤外線LEDもしくは製品付属の反射クリップからの赤外線を捉え、それを独特のアルゴリズムで映像解析して数値入力にするというものだ。
この方式には大きなメリットと、少々の限界が存在する。メリットとしては、カメラを適切な位置(例えばモニタの上)に設置するだけなので導入が非常に簡単であることと、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)のような重い装置が不要なので肉体的にプレーヤーを拘束せず、当然ながらいつも使用しているモニタをそのまま利用できることだ。
そして限界というのは、プレーヤーが頭につけた赤外線LEDもしくは反射クリップをカメラが捉えてトラッキングするという原理上、肉体的な意味においてあまり大きな動きができないことである。プレーヤーが真横や真後ろを向いてしまうと、トラッキングに必要な光点がカメラに写らなくなり、トラッキングが停止してしまうのだ。
だがこの限界も、考えようによっては好ましいものだ。ジャイロセンサー搭載型のHMDでは、プレーヤーの動きと画面内の動きが等倍対応するのが普通なので、戦闘機のゲームで後方確認するたびに首がねじきれそうになるが、「TrackIR」はプレーヤーの動きを何倍にも増幅してゲームに伝えるという基本機能があり、頭をちょっとだけ横に向けるだけでも真後ろを見ることができるのだ。そのおかげで、長時間プレイしても肉体的な疲労は軽減できる。
それでいて、「TrackIR」導入によるVR効果は非常に高い。機能的な面では、視界を操作に手を縛られることがないので、ゲームの操作に集中できる。それにより、視界操作が本質的な意味で「自由」になる。マウスやスティックやテンキーを使って視界を操作する場合、他の操作が邪魔されたり、忙しくなりすぎて視界操作まで手が回らなくなることがありがちだ。だが「TrackIR」を使用すれば、そんな心配から完全に切り離されるのである。これにより、プレーヤーの肉体的な感覚が、よりゲーム世界の本質的な部分に近づけるようになるわけだ。
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「TrackIR」カメラの設置方法は基本的に自由だが、なるべくプレーヤーの正面に近い場所がいい。筆者の場合、モニタ上部に透明テープで強引に固定した。この状態で「TrackIR」ソフトウェアを立ち上げ、反射クリップもしくはLEDを付けた帽子、ヘッドセットを装着。カメラが赤外線を捉え、トラッキングを開始する |
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「TrackIR」ソフトウェアの設定画面。光点がきちんと検出されていれば、頭を動かすことで画面内のマネキンがそれに合わせて動く。ゲームに合わせた感度調節など、必要な設定はすべてこの中で行なえる |
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「Test Drive」。コックピットタイプのレースゲームと相性抜群。頭の動きで視点操作ができるため、操縦に集中できる |
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国内オンラインゲームの「Level-R」も本製品に完全対応している |
では、どのようなゲームで威力を発揮するのだろうか? 本製品はあくまで「視界を操作するため」にデザインされているので、視界と同時に視界と銃口の両方が動いてしまうFPSには向かない。だが、カーレースやフライトシムなど、コックピットに乗るタイプのゲームでは効果覿面だ。マシンの操縦に手足を専従させつつ、頭の動きで敵機の位置やコーナリング先を見逃さない。プレイの技術と臨場感が格段に高まるという勢いだ。
また、本製品の全ての機能に対応したゲームであれば、視界方向を替えるだけでなく、ゲーム内の頭の位置を動かして窓から顔を出す、といった動きも可能になる。例えば「フライトシミュレーターX」では、3Dコックピット内の計器を確認する際、頭を近づけることで細かい表示もしっかり読み取ることができる。あまりにも便利、そして楽しすぎて、もはや「TrackIR」なしのプレイが考えられないところまで依存度が高まるのは間違いない。
こうしたメリットの大きさが評価され、「TrackIR」シリーズはフライトシムファンを中心に広く普及している。対応ゲームの数は数百に上る勢いで、ドライブ系、フライト系など3Dバーチャルコックピットを備えた乗り物系ゲームはほとんど全ての新作が対応しているという状況だ。
また、「Armed Assault」をはじめ、リアル系のFPSでも対応例が増えてきている。その手のゲームでは、マウスによる胴体と銃の操作と平行して「TrackIR」で頭の向きだけを操作できるので、横方向の味方隊列を確認しながら前進、といった臨場感溢れるプレイが可能だ。
本製品の唯一にして最大の弱点を指摘するならば、その価格である。シリーズの最新版「TrackIR 4: PRO」の販売価格は25,800円と、ゲーミングデバイスとしては決して安くない。だが、その効果はあまりにも強烈で、しかも長く使える製品だ。このメリットを最大限に享受できるレースゲームファンやフライトシムファンは、一家に一台という感覚で本製品をゲットしていただきたい。
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「TrackIR」のパワーが遺憾なく発揮されるのは、ドライビングやフライトシムなど、乗り物を操るゲームだ。一度使ったらもう手放せない、というほどの威力がある |
■将来の3Dゲームは立体視も標準機能に? NVIDIAが開発した3Dグラス「Geforce 3D Vision」
【GeForce 3D Vision】 |
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ジャンル:3Dグラス(立体視メガネ)
開発元:NVIDIA
発売元:NVIDIA
価格:2万円前後(予価)
発売日:2009年2月 発売予定
対応OS:Windows Vista
備考:120Hzの映像入力・出力が可能なモニタが必須
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本製品はNVIDIAが1月8日に情報を公開したばかり。果たして3Dグラスはゲーマー必携のガジェットになるのか? |
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今回試用のためにNVIDIAから借りしたSamsungのピュア120Hz対応モニタ「SyncMaster 2233Rz」。まだ国内流通はしていない模様 |
次にご紹介する「GeForce 3D Vision」は、大手グラフィックスチップメーカーのNVIDIAが開発した3Dグラス、あるいは立体視メガネだ。この製品、姉妹紙PC Watchの記事「NVIDIAの3Dグラス『GeForce 3D Vision』を試す」でお伝えしているとおり、モニターに120Hzのリフレッシュレートが必要であるという点で従来のサードパーティ製3Dグラスとは一線を画している。
本製品はNVIDIA自ら製造から販売まで手がけるという力の入れようだが、前提となる120Hz表示可能なモニタ自体がほとんど市場に流通していないのが最大のボトルネックだ。NVIDIAのリリースによれば、PC用液晶モニタとしてはSamsungの「SyncMaster 2233RZ」かViewSonicの「FuHzion VX2265wm」が使えるとのことだが、このいずれも国内市場ではまだ流通していない模様だ。
他の方法としては3Dグラス用端子を持った三菱電機のDLP 1080p HDTV、DepthQ HD など立体視対応のプロジェクタが利用できるとされているが、これらはエンタープライズ向けの特殊カテゴリの製品であり、とても一介の個人で所有するような代物ではない。
現時点で最も可能性があるとすれば、今や絶滅危惧種のブラウン管モニタを使う方法だ。22インチクラスの大型ブラウン管PCモニタであれば、1,024×768ドット以下の低解像度で120Hzを出力できる機種もある。ただ、出力できるとはいっても普通はそのようなリフレッシュレートを公式にサポートしていないため、無理に使えばモニタが壊れる可能性すらあるので積極的にお勧めはしない。
といった感じで、「Geforce 3D Vision」で立体視をするためにはものすごく高いハードルが立ちはだかっている。にも関わらず、NVIDIAがこのような製品を自ら製造・販売するというのは、GeForceシリーズの独自性を際ただせる目的もあるだろうし、今後は一般的なPCモニタでも120Hz表示が可能になっていくという確信があるのだろう。であるので、今回ご紹介する内容は「将来的には一般的に使えるようになるかもしれない製品」のお話として考えていただきたい。
・セットアップはスムーズに進む
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パッケージの内容物。3Dグラス、IRエミッター、ケーブル各種、ドライバディスクが付属する |
「GeForce 3D Vision」のパッケージには、ワイヤレス駆動の立体視メガネと、USB接続のIRエミッターという装置、ケーブル各種、そしてステレオ表示のためのGeForceシリーズドライバディスクが納められている。本製品が立体視を実現する原理は簡単。ゲーム画面を右目と左目用の角度で2枚レンダリングし、それを120Hzの高速で切り替えながら表示するというものだ。その画面を立体視メガネを通して見ることで、両眼に視差のある映像が映り、立体的に見えるというわけである。
メガネにはバッテリーが組み込まれており、あらかじめUSBケーブルでPCと接続して充電しておくことにより、40時間の連続使用が可能となっている。IRエミッターの役割は、装置の背後にあるダイヤルを指で回すことによって、画面に表示される視差の調整ができるようになっている。
初回使用時には、まずドライバをセットアップ後、IRエミッターをPCに接続する。その後、充電を終えた立体視メガネをかけて、テスト画面で見え具合を確認。NVIDIA謹製というだけあり、セットアップからゲームプレイまでの流れは非常にスムーズだ。従来いくつか存在していたサードパーティ製の同種の製品では、セットアップが異様に面倒くさいとか、油断するとOSが壊れるとか、ゲームが動かなくなるといった問題を持つ物も往々にしてあったので、このあたりはありがたい。
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IRエミッターの背面には視差調整のためのツマミがあり、随時見え方を調整できる。また、3Dグラス本体は一般的なメガネと重ねて付けることができるよう、充分な大きさに作られている。筆者は近眼のためメガネを常用しているが、やや窮屈なものの本製品をきちんと装着することができた |
・立体視効果のほどは?
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「TrackMania」画面を直接撮影。右目、左目、それぞれの角度で描かれた映像が、120Hzという高速で切り替え表示される |
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「Left 4 Dead」では立体的に迫り来るゾンビの迫力を楽しめた。ただしシルエット表示が若干変になる |
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「ロスト プラネット」では、オブジェクトが画面よりもずっと手前にある感じで、相当な寄り目をしないと像がひとつにならなかった。このあたりはゲームの実装に依存するようだ |
というわけでセットアップは十分程度で完了。早速いくつかのゲームで試してみた。
対応ゲームは、ものによって効果の違いはあるものの、Direct XやOpen GLを使用するほとんどのゲームやアプリケーションが対象だ。これは、本製品がドライバレベルでステレオ映像を生成する方式なので、アプリケーション側の対応がほとんどいらないためである。
まず、立体視と聞いてすぐに浮かんだのが、ゲーム本体に赤青メガネ用の立体視機能を搭載しているレースゲーム「TrackMania」。赤青メガネでは立体視できても画面が紫色にしか見えないという弱点があるが、「GeForce 3D Vision」は画面のリフレッシュとメガネのシャッターを同期させて両眼それぞれの絵を見せる方式をとっているため、きちんとカラフルに見える。そして「TrackMania」は元々立体視を前提に作られたゲームであるためか、本製品で得られた立体感は素晴らしいものだった。まさしく手を伸ばせば届きそうな雰囲気である。
他のタイトルを含め、本製品はレースゲームと相性がいい。レースゲームは基本的に画面中央の、一定の深度に視線が集中するので、こういった立体視の方式に合っているのだ。
FPSではどうだろうか。Valveの「Left 4 Dead」で試してみたところ、これが非常に良好であった。並居る大量のゾンビが、立体の存在感を持ってドバドバと迫ってくる。接近したところを殴りボタンで散らしてやると、ゾンビとの距離感がいっそうよくわかり、非常に楽しい。ただ、味方キャラクタが壁の裏に隠れたときなどに表示されるシルエットなどはステレオで表示されないため、実際の映像とはズレて見えるなど、対応は完璧ではない。
同じくValveの「Portal」も、立体感としては同等レベルの良好性。壁に開けたポータルの穴の向こう側の風景も、きちんと相応の立体感で表示され、空間の不思議な広がりを認識することができる。唯一の難点は、「Portal」はゲームステージのあちこちを見るゲームであるため、両眼の焦点が照準から離れることも多く、そういった際には照準が2重にブレて見えてしまうところだ。どこに射撃しているのかわからず、ミスを起こしてしまうことが多かった。画面中央に集中するタイプのゲームでなければ快適なプレイは難しいようだ。
FPSとアクションゲームの中間くらいに位置するカプコンの「ロストプラネット」は芳しくない結果だった。まず、深度値の使い方が特殊なのか、画面上のキャラクタやオブジェクトが画面よりずっと手前にあるような視差で表示される。したがってものすごく寄り目にならないと像がひとつにならない。気を抜くと画面のすべてが2つに分離して見えるという状態だ。さらに、影の表示が、右目、左目用のレンダリングで大きく変わってしまうため、ひどい点滅感があった。更に付け加えると、照準がただの2D画像であるため、画面の奥や手前のオブジェクトに視線を置くと、照準が2つに見えてしまい、どこに弾が飛ぶのかわからないことがあった。
サードパーソンアクションの代表格としては「デビル メイ クライ 4」を利用した。「ロストプラネット」と同じエンジンを使っているからか、影の表示は左右の目で全然違って見え、ひどい点滅感が残る。このあたりはドライバが自動表示する注釈に情報があって、「影をOFFにしてください」となっているので、素直に従うほうがよさそうだ。得られる立体感そのものはかなり良好で、アクションシーンだけでなくカットシーンもしっかりと立体的に見える。ただ、「ロストプラネット」ほどではないが、寄り目がちにならざるを得ないシーンもあった。
フライトシミュレータ系として「マイクロソフト フライトシミュレータ X」と、「IL-2 Sturmovik」を試してみた。「フライトシミュレータ X」のほうは非常に良好で、コックピット内部の手近な立体感と、窓の外に見える広大な風景の立体感がうまくマッチして、かなりの臨場感が得られる。一方、「IL-2 Sturmovik」ではステレオ表示が有効にならなかった。これは、本作がDirectX 8世代の古い3D機能を使用しているからだと思われる。対応ゲームはある程度新しいゲームに絞られるようだ。
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「Portal」は立体感が素晴らしいものの、照準が2つに見えて混乱することが多かった。プレイ中、画面の色々な場所を見るためだ |
フライトシミュレータ系のゲームは、近景と遠景がハッキリ分かれているため、通常では得られない空間の広がりを感じられる |
「IL-2 Sturmovik」のような古いゲームでは、ドライバが対応していないのかステレオ表示が有効にならないようだ |
・左右別々の映像を作り出すためのコストは高い。「Crysis」のプレイは難しそうだ
色々なゲームをプレイしてわかったことは、本製品による立体視の効果は、タイトルによって非常にまちまちであることだ。
ゲームジャンルとしては、画面中央だけに集中できるレースゲーム系が本製品に最も向いており、次にフライトシミュレータ、そして主観視点のFPS、という感じになる。画面のあちこちに視線を飛ばすタイプのアクションゲームなどは、眼への負担がかなり大きくなりそうだ。
また、ドライバレベルで左右別々の映像をレンダリングする方式は、ほとんどありとあらゆる3Dゲームで使える汎用性があるものの、プレーヤーとオブジェクトの距離感をどのように設定するか、という部分では、ゲーム側の実装に依存してしまうようである。「Left 4 Dead」では抜群の距離感が得られた反面、「ロストプラネット」のようなタイトルでは、適切な立体感が得られない問題があった。
その他の問題点にも触れておきたい。NVIDIAでは、本製品を「追加の設定なしにほとんどのゲームで利用できる」としているが、実際のところは多くのタイトルで「影をOFFにする」、「HDRを無効にする」、「フィルムエフェクトを外す」といった設定が必要だった。それなしでも立体感は得られるが、光や影の表示が左右の目でうまく同期せず、画面がチカチカして見えたり、オブジェクトの位置が正確に掴めないために分離して見えたりするのである。
もうひとつの問題として、輝度の低下が挙げられる。モニターに表示される120Hzの映像を、メガネのシャッターを通して見るという原理上、これは避けられない現象だ。体感的には裸眼のときに比べて画面輝度が半分以下になっている感じで、その状態で長時間ゲームをプレイしていると非常に疲れてしまう。
そして、立体感を得るために支払うことになる最大のコストは、やはりフレームレートだ。本製品では左右それぞれの映像を、ドライバレベルで120Hzの頻度にて切り替える構造をとっているが、そのためにはまず1つのシーンを2回レンダリングしなければならない。このため、ほとんどのゲームで、フレームレートが2分の1程度に低下した。
動作の軽いゲームであれば、これはそれほど問題にならないが、最新のゲームではそうもいかない。特に、グラフィックスの処理が重いことで有名な「Crysis」を、最高品質でプレイするのは、現時点ではほとんど不可能だ。解像度を下げたり、レンダリングクオリティを犠牲にすることでなんとかプレイできるようにはなるが、それでは本来の楽しみが得られない。
以上のように、ゲーム用途では色々と不満も出る本製品ではあるが、他方、ゲーム以外の用途を考えると色々な可能性が広がっていそうである。例えば3D映画。映画ならば照準点のブレなどを気にすることなく、映像を見たいよう見ることができる。あるいは、3Dモデルビューワーと本製品を使ってデジタルフィギュアの鑑賞をする、なんて使い道も需要がありそうだ。
大手グラフィックスメーカーのNVIDIAが推進する製品であるだけに、今後色々なコンテンツが出てくることを期待しても良いだろう。まずは120Hz表示可能なモニターが一般的に入手可能になる時機を待ちたい。
■「TrackIR」は高すぎる! という人にお勧めのフリーソフトウェア「FreeTrack」
【FreeTrack】 |
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ジャンル:ヘッドトラッキングソフトウェア
価格:無料 - フリーソフトウェア(GPL)
対応OS:Windows 2000/XP/Vista
備考:別途ウェブカメラが必要
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「FreeTrack」のサイト。ソフトウェアはGeneral Public Licenseで配布されている |
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今回、「FreeTrack」を試したウェブカメラ「VX-3000」。公式サイト上で推奨製品のひとつとされている |
前段でご紹介した「TrackIR」は強力で魅力的なデバイスであるものの、本体のみで25,800円とWiiが買える価格設定なのが難点だ。しかし、原理的に考えれば、ヘッドトラッキングを行なうのに「TrackIR」は必須というわけではない。頭に付ける光点とそれを捉えるカメラというシンプルな構成なので、同じ原理で同様の機能をもっと安く実現する方法があるはずである。実際このような発想はどこでも行なわれているようで、このインターネット上にそのものズバリのフリーソフトウェアが存在する。それが「FreeTrack」だ。
「FreeTrack」にて配布が行なわれているこのフリーソフトウェアは、「全ての軸自由度を全ての人に」というスローガンのもと、有志により開発されたものだ。最大の特徴は、適当なウェブカメラさえあれば、「TrackIR」と同等の機能を実現できることである。
ただ、その導入に関しては少々ハードルもある。「FreeTrack」を利用するためには別途ウェブカメラが必要になるが、通常のウェブカメラは「TrackIR」のようにヘッドトラッキング専用にデザインされたハードウェアではないので、多少の工作もしくは調整が必要になるのだ。また、カメラに捉えさせる光点を発生する装置も自前で調達しなければならない。
まず、通常ほぼすべてのウェブカメラは、可視光以外の光を受像しないために、物理的な赤外線フィルタを備えているが、これはヘッドトラッキング用途としては不都合だ。そこで「FreeTrack」のサイト上ではウェブカメラを分解して赤外線フィルタを除去することを推奨している。その上で、1つないし3つの赤外線LEDを帽子などに固定し、頭に装着して使うのが良いとされる。
なかなか大変だが、ヘッドトラッキングを試してみたいならばやってみる価値はある。今回、筆者はマイクロソフトのVX-3000というウェブカメラと、パーツ店で購入してきたLEDを使って「FreeTrack」の導入を試みてみた。
LEDは3点使用し、テープを使って帽子に強引に取り付ける。電源供給は単4電池のボックスから直接おこなうという形で、工作の手間をできるだけ減らす。ちなみにウェブカメラを分解して赤外線フィルタを除去する作業は避けたかったので、赤外線LEDではなくただの赤色LEDを使用した。材料費は占めて800円ほどである。
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線つきの赤色LEDを3つ、電池ボックスに直結して、こんなものを作った |
「FreeTrack」の露出を調整するとこんなふうに映る |
「TrackIR」と同じ要領でヘッドトラッキングが可能に |
・タダでヘッドトラッキング! その性能は?
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ソフトウェア的には感度調節や「TrackIR」互換の出力設定など、必要な機能が全て揃う。唯一の問題はウェブカメラの性能だ |
結論からいうと、上記の構成で「FreeTrack」がしっかり動作した。ウェブカメラがLED以外の光も捉えてしまうので露出調整がかなりやっかいだが、そこは部屋を暗くして光源を限定することで対処。3つのLEDを用いつつ「FreeTrack」側も3点トラッキングモードにすることで、「TrackIR」と同じ、6軸の検出が可能になる。
さらに「FreeTrack」には様々な動作モードがあり、「FreeTrack」独自のデータ送出モード、マウスエミュレーションモードのほか、「TrackIR」互換のインターフェイスも備えているので、「TrackIR」対応タイトルならば大抵のものが利用可能だ。
しかしながら、ゲーム専用にデザインされた「TrackIR」とは違って、カメラのフレームレートが低い、CPU利用率が高いなど、弱点もある。動作がウェブカメラのスペックに依存する以上、環境によってはトラッキングのミスもかなり発生する。筆者の場合、部屋が明るくなるとまともにトラッキングできなかった。応答の高速性や安定性においては、やはり「TrackIR」が数段上を行く感じである。
とはいえ、ウェブカメラと少々の工作努力さえあれば、色々なゲームでヘッドトラッキングが可能になるというのは非常に魅力的だ。「TrackIR」は高くて手をだせないな、という方は余暇を見つけて是非挑戦してみよう。なにぶん有志制作のフリーソフトウェアなので、特定タイトルでの動作の可否や、使用して発生した結果については保証しかねるので、ご了承いただきたい。
(2009年1月19日)
[Reported by 佐藤カフジ]
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