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★iPhone/iPod touchゲームレビュー★

「サイレントヒル」のオリジナル作品が登場
サウンド重視のダンジョン脱出ゲーム

「SILENT HILL The Escape」



 株式会社コナミデジタルエンタテインメントは、2008年末にiPhone/iPod touchに参入し、初期タイトルとして4作を発表した。そのうちの1作が、今回レビューする3Dホラーシューティング「SILENT HILL The Escape」だ。

 「SILENT HILL -サイレントヒル-」の第1作が登場したのは1999年。当初はプレイステーション向けに発売された本シリーズも、現在までに4作のナンバリングタイトルが発売され、PSP版の「ZERO」、シリーズ最新作の「HOMECOMING」(日本未発売)など数々の派生タイトルを生み、累計530万本を数える大ヒット作となっている。さらに2006年にはハリウッドで映画化され、好評を博した。

 今回iPhone/iPod touch版で発売された「The Escape」は、これら本家シリーズと世界観やストーリーの直接のつながりは乏しいが、オリジナルの持つ雰囲気をうまく捉えた秀作となっている。



■ 本家シリーズの特徴を大胆に抽出

クリーチャーを避けつつ迷路上のステージを進み、鍵を入手して出口に到達するのがゲームの概要だ
 本家「サイレントヒル」は、アメリカ北東部にある架空の田舎町が舞台の3Dホラー・アドベンチャーだ。かつては静閑な観光地だったが、現在はゴーストタウンと化しており、白い霧が立ちこめている。町には異形の生物(クリーチャー)が徘徊し、血や錆にまみれた「裏世界」にも変貌する。何らかの理由で町を訪れた(あるいは迷いこんだ)主人公は、表世界と裏世界を往来しながら、ストーリーを進めていく……というのが共通の設定だ。

 しかし本作では、表世界・裏世界の要素は雰囲気程度にとどめ、3D迷路からの脱出ゲームに絞り込まれている。ゲームの舞台も“サイレントヒル”か否かはっきりせず、ストーリーもあってなきが如しだ。その一方でiPhone/iPod touchのタッチパネルや加速度センサーを活かした操作系や、携帯音楽プレーヤーならではの臨場感溢れるサウンド、「霧」、「錆」、「クリーチャー」といった、シリーズのキーワードをちりばめたグラフィックスなどで、新しい切り口を見せている。

 ゲームの主人公は、病院と思しき見ず知らずの建物で“覚醒”した男性だ。彼は何の理由も告げられぬまま、懐中電灯の灯りを頼りに、暗い通路の中で出口を目指して歩くことになる。3D迷路状のフィールドを歩き回り、どこかにある鍵を入手した後に、出口にたどり着けばステージクリアだ。

 フィールドにはさまざまなクリーチャーが徘徊しており、彼らに接触すると主人公は死んでしまう。所持していたリボルバー拳銃などで撃退もできるが、弾数が25発と限られているので、無駄使いは厳禁だ。時間の経過と共に懐中電灯の灯りが弱まっていくが、フィールド上の電池を入手すれば明るさを取り戻せる。出口までたどり着ければ、すべての理由がわかるかもしれない……。このとおり、非常にシンプルな内容となっている。



■ タッチパネルで移動し、本体を傾けて照準をあわせろ

 操作はiPhone/iPod touchのタッチパネルで行なう。画面に触れると十字状の操作アイコンが表示されるので、これを前後にスライドすると前進・後退。左右で90度ターンだ。画面右上にはレーダーが表示され、赤の三角マークで現在位置と向き、緑の点で出口の方向が示される。ただし通路のそこかしこに、レーダーには表示されないが通り抜けられないフェンスが張られているので、回り道を余儀なくされるのが常だ。とはいえ、無限回廊やワープゾーンなどの仕掛けはないので、歩き回っていれば必ず出口にたどり着ける。

 画面中央には照準アイコンが表示されている。本体を前後左右に傾けてクリーチャーに狙いを定め、照準アイコンをタッチすれば射撃する(本体裏側をタッチして射撃するように設定もできる)。シリンダーには5発の弾丸が装填されており、右下のシリンダーアイコンをタッチすればリロードできる。画面上にシリンダーが表示されるので、本体を前後左右に傾けてうまく装填できるように動かし、タッチすればいい。ただしリロード中は移動できず、弾丸の位置がずれると、装填漏れが起きるので注意が必要だ。

 残弾がゼロになっても、鉄パイプで攻撃できる。この場合は画面右に表示される鉄パイプバーをタッチして力を満タンまで貯め、相手との間合いを計って離し、「貯め打ち」攻撃する。なお、使った弾はステージクリア時に全回復する。

 プレイ中はBGMがほとんどなく、かわりにホワイトノイズが常に響いている。クリーチャーが近づいてくると、このノイズ音が大きくなり、雑音が混じると共に、移動音なども響いてくる。また画面上部の心臓アイコンも赤く光り、「DANGER」の文字が浮かび上がる。懐中電灯の灯りが明るく点っているうちは、遠くから姿を視認できるが、暗くなってしまうと、近づかなければ視認しづらい。

 クリーチャーの中には天井を伝ってきたり、サイズが小さく照準が合わせづらいものもいる。交差路で横から鉢合わせすることもあるので、音で周囲に気を配ることが肝心だ。そのため、できる限りヘッドフォンを用いてプレイすることをオススメする。

【操作アイコン】
画面のどこかをタッチすると、その場所に操作アイコンが表示される。時には前進中に操作アイコンが照準近くに移動してしまい、うっかり誤射してしまうことも。残弾に比較的余裕があることもあり、このちょっとした操作のストレスも、結果としていいアクセントとなっている

【チュートリアル】
チュートリアルでは基本的な移動方法や攻撃・リロード・脱出方法などを学ぶ。後半で登場するナース風のクリーチャーは頭部が弱点で、当てれば一撃で仕留められる。射撃方法や前後左右の照準方法、感度などはタイトルメニューの「Settings」から設定できる



■ ゲームプレイを通して生理的な嫌悪感を演出

 このように本作は、iPhone/iPod touchのインターフェイスをフルに活かした操作系になっている。チュートリアルモードがあり、操作自体もシンプルなので、すぐに理解できるだろう。

 ただし操作に慌てると、ついついミスをしがちだ。また各クリーチャーには弱点があり、一撃で仕留められるモノもいる。そのためにはある程度近寄って、よく狙うことが重要だ。ただし近寄りすぎると、逆に危険度が増すことは言うまでもないだろう。クリーチャーには主人公を追尾せず、自律的に徘徊するモノも多いので、うまく通路を迂回して避けたり、誘導してかわせる。クリーチャーの撃退数は後述するクリアレベルにも関係するので、無用な戦闘は避けるのが吉だ。

 本作のポイントは、操作上のストレス(加速度センサー、タッチ操作など)を縦糸、リアルタイムに変化するゲーム内環境(画面の明るさ・ノイズ音など)を横糸にして、うまくプレイのリズム感を刻み、「怖さ」を演出している点だ。ショッキングな映像やストーリーなどで怖がらせるのではなく、ゲームプレイを通して体験的な生理的嫌悪感を演出しており、ゲームとして正当派な内容になっている。

 また1人で使用し、ヘッドフォンの装着率も高い携帯音楽プレーヤーならではのプラットフォーム特性から、サウンドによる演出を重視したホラーゲームを実現した点が秀逸だ。ゲームは全10ステージから構成され、2ステージごとに雰囲気が変わり、いわゆる表世界・裏世界の関係を醸し出している。2周目・3周目のおまけ要素もあり、意外なキャラクタでプレイできる。

【ステージ紹介】
病院(Stage1・2) …… 鉄筋コンクリート風の近代的な病院(表世界)と、錆が壁や天井・床全体を覆い尽くし、血のにおいすら感じられる病院(裏世界) 商店街(Stage3・4) …… 表世界は戸外という設定だが、地下アーケードのシャッター街というところだ。裏世界ではすべてがさび付いている
地下鉄構内(Stage5・6) …… 直線に伸びる通路が多いステージだ。クリーチャーの種類が増加し、通路を遮るフェンスも次第に増えてくる 地下道(Stage7・8) …… 通常の地下道というよりも、排水溝が設置された最深部というイメージ。交差路では側面からの不意打ちに注意
洋館(Stage9・10) …… 格子状の通路が特徴的だが、フェンスも多い。最も難度の高いStage10では、いかにクリーチャーをかわすかがポイントだ



■ 第1弾としては満足できる内容。アップデートにも期待

 ゲーム自体はシンプルなので、序盤のうちは恐怖心を感じるが、プレイに慣れてくると、ただの迷路脱出ゲームになっていく。懐中電灯の電池が切れても、画面が真っ暗にはならないのでクリアは不可能ではないし、残弾も比較的余裕があるので、それほど神経質になることはない。ステージクリア時に「歩行距離」、「クリーチャーの撃退数」、「命中率」、「クリア時間」でランクが表示されるが、それほど何度もプレイしたいと思うゲーム内容にはなっていない。

 幸いiPhone/iPod touchのゲームはパッケージゲームと異なり、アップデートが手軽にできる点がメリットだ。ここはアイテム収集や武器の変更、難易度変更、主人公キャラクタやクリーチャー、ストーリーの追加など、長く遊び込める要素の改変に期待したい。本家「サイレントヒル」との関連性が薄いのも、シリーズのファンには寂しいところだ。フランチャイズの拡大には成功していると思うので、本家シリーズに彼らを誘導する仕組みも、もうひとひねり欲しい。

 とはいえ、本家のエッセンスを上手く凝縮して、iPhone/iPod touch向けに落とし込んだ点は、さすがと言ったところだ。ハード性能が低く、誰が作っても同じような内容になりがちで、それだけにメーカーやタイトルのブランド力で差別化できた初期の携帯アプリと異なり、iPhone/iPod touchはハードの性能がそこそこ高いため、インターフェイスの特性などをうまく活用したゲーム開発を行なわなければ、せっかくのブランドも生かし切れない。それだけに開発側の力の入れ方が問われるが、本作をプレイした限りでは、なかなかのものだといえる。

 同社からは、すでに「DanceDanceRevolution S Lite」、「フロッガー」もリリースされているが、ファンとしてはリリース予定の「METAL GEAR SOLID TOUCH」が気になるところだろう。同じ3Dシューティングという点からも、期待できそうだ。また本作の方法論を用いた新作(「ローグ」ライクなRPGなど)など、今後の展開にも期待したい。

【クリーチャー紹介】
上半身を左右に揺らしながら、ひょこひょこ歩いてくるクリーチャー。頭部が弱点で一撃で倒せる カラカラと車輪の音を立てながら迫ってくる殺人車椅子。1発お見舞いすればバラバラに壊れる ブンブンと羽音を立てながら画面上を動き回る。一撃で倒せるが狙いにくいので、弾丸の浪費に注意
床をぴょんぴょんと跳びはねながら迫ってくる。照準を狂わされがちなので油断すると痛い目にあう 天井を伝って攻撃してくる。頭部を狙ってしまいがちだが、実は尻尾が弱点という変わり種だ 大きな刀で攻撃してくる。頭部が弱点だがバリアで守られているので、後ろから狙うか、やり過ごすのがいい

【スクリーンショット】
クリーチャーと接触しても短時間なら大丈夫だが、数秒間接触すると即死する。背後から接触しても死亡するので注意 残弾がゼロになっても鉄パイプで攻撃できる。画面右の鉄パイプバーをタッチしてパワーを貯め、離して攻撃する 出口に到着すると、プレイ内容によってランクが表示される。総時間・撃退数・命中度・歩行距離の4項目による総合点で評価される 全ステージをクリアすると、霧に覆われた道路に出る。その先で主人公を待ち受けるものとは……?


(C) 2008 Konami Digital Entertainment

□KONAMIのホームページ
http://www.konami.jp/
□「SILENT HILL The Escape」のページ
http://www.konami.jp/products/touch_sh/index.html
□関連情報
【2008年12月24日】KONAMI、iPhone/iPod touch用ゲーム3タイトルを配信開始
「SILENT HILL The Escape」や「Frogger」など
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081224/konami.htm

(2009年1月8日)

[Reported by 小野憲史]



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