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また、不正対策やユーザーサポートにおける手際の善し悪し、独自イベントやオフラインイベントの開催の有無など、運営力の面でもメーカー間で明確な実力差となって現れつつある。結論として、2008年のオンラインゲーム業界は、ビジネスとしては順風満帆とは行かなかったものの、確かな熟成が感じられた1年となった。 年末特別企画として今年最後にお送りするのは、今年、人気を獲得するまでには至らなかったものの、まったく新しい方程式でオンラインゲーム界に新風を巻き起こしてくれたダレットの「ストリートファイターオンライン マウスジェネレーション(SFO)」の開発/運営チームのインタビューである。 「SFO」は、マウス1本で片手で操作可能な「ストリートファイター」として2008年7月にサービスインし、同シリーズを代表するヒロインである春麗に、妙なかぶり物をさせたり、「サイボーグ009」シリーズのキャラクタを導入するなど、誰も予想できないアップデートを連発して賛否両論を巻き起こした。ほかにも、12時間耐久組手「やれんのかコラ! 2008夏」や、メーカー主催のオフ会「SFO SHOCK! ゴールデンボーイ緊急来日!? in 秋葉原」といったユニークなイベントをゲリラ的に開催するなど、既存のカプコンの枠、「ストリートファイター」の枠、オンラインゲームの枠といった、あらゆる枠組みからはみ出したところに存在意義を置くという実に独創的なサービスを行なっている。 リリースを一読して、どこまでがマジで、どこまでがネタなのかよくわからないというゲームは「SFO」ぐらいのものだが、そこで今回は「SFO」の開発/運営を統括するダレット第2事業推進部部長の波多弘幸氏と、第2事業推進部チーム「SFO」のメンバーである内田洋平氏、渡辺賢作氏の3名に、ユーザーを代表して“ツッコミ”を入れに行ってきた。
話を伺ってみて、やはりというか予想通り、緻密な計算のもとに“真面目にふざけている”ということがよくわかった。それに付随して、ビジネス的に収穫期に入る来年に向けての様々なアップデート構想を聞くことができ、実りの多いインタビューとなった。内容的にも、「SFO」にとどまらず、オンラインゲーム全体、オンラインサービス一般にまでふくらんでいるので、年末向けの読み物としてぜひお楽しみいただきたい。 ■ 新世代のオンラインゲーム「ストリートファイターオンライン」の4カ月間
波多弘幸氏: 1対1の格闘アクションは、通常のオンラインゲームの方法論が通用しなそうなジャンルかなというところで、予想していたビジネスモデルに対してかなり試行錯誤した4か月間でした。機能的な部分の改善も並行して行なっているのですが、作り手としてはユーザーの意見を多く取り入れました。アイテム課金でもロビーでみんなで集まってお祭りやったりといった、ステータスには影響がないアイテムで、格闘ユーザーならではの望むものがありました。パーツを組み替えておちゃらけて良いねという意見もありましたが、ユーザーの興味はもっと深いところにあるのだなと思いました。ユーザーとのキャッチボールをし続けた4か月間でした。 格闘ゲームは1対1で勝つことが究極のゲームの目的です。どうやって勝っていくのか、勝つために何を揃えていくのか、ただ、「SFO」の場合は、ストレートに出すのではなくて、ちょっと笑ってもらったり楽しんでもらうためにどういう見せ方をするか悩みながら、1週間に1回ずつアップデートを繰り返してきました。空振りもあったしヒットもありました。4か月間でユーザーが何を求めているか、こういうことをやれば満足してくれるという基礎固めは見えてきました。やっとそこに立てたと思います。 編: 点数をつけるとこれまでで何点ですか。 波多氏: ぎりぎり60点です。足りない40点は主にオーディエンスの部分です。スポーツエンターテインメントを例にするとプレーヤーとオーディエンスという立場があり、やっている人間よりも見ている人間の方が圧倒的に多い。「ニコニコ動画」を見ればわかりますが、動画をアップする人間よりも見る人間の方が圧倒的に多い。たとえばMMORPGでは見る人間=プレーヤーです。オーディエンスはあまり介在しない。ディズニーランドと同じで、遠くで見て楽しんでいるわけではなくて実際に中で遊んでいる。そういうゲームとは違うところで、プレーヤーとオーディエンスの関係を重要視してくると、こういう戦い方おもしろいね、こいつすごいねという部分が今後考えていかなければいけないところですね。 編: 逆に狙い通りだったというところはどこですか。 波多氏: 時間をかけなければ勝てないという格闘ゲームの概念が突き崩せました。1個のコマンドを覚えるのに何度も何度もゲームセンターに行って100円玉を投入したというのではなく、意外と技もでるし、気軽にできるねという風な感じで、キーボードを使わない層にも訴求できました。後はキャラクタの固定概念をぶっこわせました。ユーザージェネレイトまでいけたかどうかはユーザーさん自身に聞いてみないとわかりませんが、「リュウ」や「春麗」という概念から一歩踏み出して、リュウなのだけど俺のリュウ、春麗なのだけど“私の春麗”というところを出していけたところが面白いところですね。 編: “私の春麗”という点では、「SFO」は跡形もないぐらいカスタマイズできるわけですけど、これはカプコン的にはウェルカムなのでしょうか。 波多氏: 会社的にそう言いきれない部分もあると思いますね(笑)。ただ、稲船が両方の開発を見ていることもあり、かなり現実的に見ていますね。つまり、ユーザーにどう受け入れられているかで見ています。ユーザーに受けいれられたという感覚を稲船が持った段階でそれはアリだということになります。そこが某社さんとは違うところです(笑)。コンソールとオンラインの文化は違うし、コンソールのやり方がオンラインでまるまる通用するということはない。オンラインにはオンラインなりのやり方があるのだと理解していると思います。 編: たとえば、「春麗」がかぶりものをしてしまう。これはおそらく賛否ありますよね? 波多氏: 当初は結構な拒否反応がありました。最近はあまりないです。今もあるのかもしれないけど「『SFO』だから良いか」という雰囲気になっています。 内田洋平氏: 遊んでくれている人は賛成派の方が多いですが、オンラインユーザー全体から見れば否定派の方が多いのかもしれません。ただ、認められつつはあるとは思います。会員数やユニーク数はずっと増えているので認めてもらっているのではないかと思います。荒らしがいない、紳士的な人が多いという面からみても拒否反応は薄いと思います。 渡辺賢作氏: ユーザーさんからの意見としては、当初は「スト2」と比較して、「ある」、「ない」、といった意見がほとんどでしたが、今はまったく違うキャラクタを入れてくれとか、違うゲームのキャラクタをいれてくれといった要望も来ており、ユーザーさんには徐々に浸透してきたのではないかと思います。 波多氏: コーラが入ってきたときと同じですよね。当時「ラムネとここが違う」という議論がなされていたこともありましたが、今では誰も議論する人はいなくて、普通に飲んでいる。時間の熟成は必要ですが、継続してプッシュしていける力があれば変えていけると思います。変えたから何というわけではなく、ユーザーさんの思いを反映していかなければいけないと思います。単に強い弱いだけで、オーディエンスのいない砂漠の中での1対1の喧嘩状態を変えていくことで、オリジナリティの高いエンターテインメント性のあるドリンクに変えていきたいと思うのです。 編: そのダレットが「SFO」を通じて作ろうとしている文化についてですが、いまオープンソースの格闘ゲームがありますよね。どんどんキャラクタを足して、技も作って、みんなでわいわいやる、バランス云々の前にみんなで自由に作れるところが楽しいという一種のコミュニティゲームです。「SFO」はそれをプロフェッショナルレベルでやっているのかなという風に見ていますが。 内田氏: その認識で間違ってはいないと思います。そういう風な概念で始めています。「MUGEN」とかをおっしゃっていると思うのですが、色々な問題が介在していて、あそこまでいってしまうと混沌としてしまって、入ってこれない人が大量に出てきてしまう。 「SFO」は「ストリートファイター」を主眼としている以上、あくまで「ストリートファイター」をやりたい。「ストリートファイター」の土台の上にありながら何でもありというものにしたい。システム上でここまでという線引きを設けています。入れる時にはユーザーが主体でありたいので、今回のようなテストルームを設けました。 編: もともとプロジェクト初期の段階では、「スト2」をPCオンライン化しようという比較的単純な発想だったと思いますが、それがいつの間にかなくなって、いつのまにか「SFO」という一種の怪物ができあがりました。ゲームも特殊なら、展開方法も特殊で、あえて特殊な文化を作ろうとしているところがありますよね。ただ若干新しすぎて、ついていけてないユーザーがぼつぼついるのかなという印象を持っていますが。 波多氏: おっしゃるとおりです。そこは変えていかなければいけないです。ダレット自体が仮想世界をやっていますのでやる意味がある。 編: カプコンさんは「ストリートファイター」に限らず、昔からコラボレーションが得意ですが、「SFO」では、爆発的に行なわれていますよね。当初は金庸の武侠キャラクタとのコラボレーションでしたが、現在は何でもありになりつつあります。結果として、「ストリートファイター」色がどんどん薄れている。名前としては「ストリートファイター」は残りつつも、この分だと、遊び手側が意識しなくなりそうですよね。 波多氏: 薄れると思います。開発側がこだわっていようがいまいが薄れていくのだと思います。なぜならユーザーの志向によって変わってくるので、ザンギエフってかったるいと思ったりするかもしれませんし、他のキャラクタの方が面白いと感じるかもしれない。作り手側が供給する世界から、ユーザーが享受する世界に変わったというだけの話だと思うのです。 たとえばベースボールを作った人は誰なのか今はわからないですよね。野球自体はずっとあって、昔はベーブルース、今は松坂です。違うプレーヤーが主役になっています。回顧する人もいれば今の試合をみてエキサイトする人もいる。それでよいのかなと思います。 内田氏: パーツの組み換えができる時点で薄れているのかもしれないですが、それがあったからこそ今のシステムになっているという根幹があるので無視はできません。しかし薄れてもらって逆に人が賛同してくれるようであればかまわないと思うのです。作っている側としては忘れてはいけない部分ですよね。 編: 今年は「ストリートファイター4」がリリースされ、アーケードやコンシューマでも話題になっていますが、これだけ強いコンテンツが同一のフランチャイズ内に存在するにも関わらず、「SFO」は一切迎合せず、完全に独立独歩でやっていることが面白いですよね(笑)。 波多氏: 1つのモノが大衆的になっていく中で必ず分かれ道はあるのかなと思うのです。牛肉を扱うお店の中で牛丼の部分だけピックアップされて多店舗展開されていったり、インド料理の中で特定の人が好むというところでカレーライスという文化ができました。 多かれ少なかれ、コンソールからオンラインのサービスコンテンツになっていく中で、似たような現象は起きると思うのです。パッケージというお弁当を扱っていたところからサービスというレストランで時間消費を提供するような感覚の違いにわかれるのです。その過程の中でシフトは起こると思うのです。やり方が嫌いだから決別という話ではなくて、オンラインに真剣に向き合えば向き合うほど変わらざるを得ない。格闘ゲームが担ってきた究極的なヒエラルキー構造をオンラインでやっても成立しないということは過去の実績が証明している気がします。
■ 「ストリートファイターオンライン」が目指す格闘ゲーム像とは何か!?
波多氏: もっともっと更新していかなければいけないと思います。 編: というと、大前提としてバランスは取れているが、さらに磨いていくという考えですか? 波多氏: そこが難しいです。10人が10人悪いと思っている部分は確実に改善できていると思います。俺は良いと思うのだけど、もう1人の人は悪いと思っている部分は、常にアップデートしていかなければいけないなと思っています。私はゲームバランスにもトレンドみたいなものがあると思います。今はテール流しみたいなものが注目されて、ハメができるという話が出ていますが、そこに違う機能が出てきた瞬間に必要ないのではないかという議論が出てきます。そこでゲームバランスの概念が変わってくることになります。ユーザーの反応を見て、常にチューニングをし続けることが大事だと思います。 渡辺氏: モグラ叩き状態といいますか、問題が起きてそこを埋めると違う問題が出てきます。パーツがかなりの量ありますので、1つ問題を直しても違うパーツとの組み合わせで違ってきますので難しいです。今のところ根本的な大きな問題はつぶせているとは認識しています。 内田氏: コンソールの場合、一度リリースするとチューニングすることはできないですが、「SFO」はオンラインです。しかしだからこそ難しいといえると思います。常に追加もしていくし、チューニングもしていく。新しいキャラクタを追加するたびにデバッグしているのですが、開発者の予想だにしない行動を常に行なうのがユーザーだと思います。「え、こんなことできるの」ということが頻繁にあります。パーツの組み合わせでできてしまうのですよね。その操作って人間ができるのだと驚かせられることもしばしばです。逆にそれを報告してもらって、バランス調整に反映させる部分で協力していただいています。 編: 想定外だったものではどういったものがありましたか。 内田氏: すごく低空で、ダッシュをした状態から技を当てて、そこからジャンプをしてさらに技を当ててすぐにそこからジャンプして技を当てて……ということをやるとカクカクカクと連続的に当てることができるのですが、マウスをミリ単位で動かさないとできないのです。実際に私も同じ技を再現しようとしましたが腕がつってしまいそうになりました(笑)。普段では当たらないけどこの組み合わせでは当たるとか、色々な組み合わせで試すのですがうまくつぶし切れていなかったりするということはあって、その辺は助けていただくことはあります。もちろん、常に最高の状態で出したいとは思います。ただし、新機能が入った瞬間に全キャラクタをすべて1からデバッグすることになるので、大変です。 波多氏: コントローラー的なものから直観的なマウス操作に変えようということはやったのですが、シンプルでよいではないかということにはなりましたが、逆にコントローラーには規定があります。ボタンを押す、十字キーを押すという動きの中に納める必要があります。ある程度直感的なマウスを使うにあたり、予想もつかない動きをマウスにさせると僕らにはわからない状態のものができてしまいます。 編: 韓国プロゲーマーの試合は、選手の操作が速すぎて画面を見ても何がなにやらわからないことが多いですが、ユーザーさんはそれぐらい物理的な限界を追求していきますよね。格闘ゲームも、一種無限コンボを追究する歴史みたいなところがありますが、「SFO」も無限コンボがちょっと狙いやすい雰囲気を持っています。 内田氏: それはどうしても出てきてしまうと思っていました。そこでメガクラッシュという究極の回避手段を入れている状態です。「SFO」はもともと「マーブルVS」のVSシリーズをオマージュして作っているのですが、あのシリーズにひんぱんに出てくるのが無限コンボなのです。そしてどうやっても無くせない。 編: 格闘ゲームでは、メジャー大会の場で様々なスーパープレイが誕生していますが、それは彼らが凄く巧いからだけではなく、メーカー側もそういう巧いプレーヤーを意識してゲームを作っているからですよね。「SFO」では、そうしたハイエンド層をどの程度意識しているのですか? 内田氏: 「SFO」は誰でも遊べるということで、カジュアルゲームを目指しています。それだけでは先細りするだろうと思って、クローズドβで入れたのが「ガマン(ガード)」の概念でした。これはカジュアルな部分から逸脱した行為だったと思います。しかし、コアも意識しながらやっていくためには必然的な流れではありました。 今回のテストルームにある、必殺技キャンセルなどの機能はコアなユーザーが喜ぶであろうものです。テストルームを設けた理由は機能のチェックは当然なのですが、どのていどコアとカジュアルで別れるのかの調査をある程度兼ねているのです。コアユーザーがいるのは当然なのですが、それを否定する人も中にはいます。そういう人たちの意見として、プレイ人口の増加が重要だと考えている方が多く、機能の追加によって初心者が切り捨てられてしまう。最終的に対戦相手がいなくなるのにつながるから良くないということをイベントで声があがったりするのです。 波多氏: 強さのレベルがRPで3,000以上のユーザー、これは「SFO」では最上位クラスの人たちですが、これらの人たちは完全に僕らの想像を超えた実力を備えていて、ユーザーが繰り出すとんでもないハメ技やパフォーマンスに対して認識しなければならない。もしそうだとしたら彼らを自己満足の世界に完結させずエンターテインメントの世界に見せていくような仕組みを僕らが作っていけばよいのかなと考えています。 編: 発表の段階から比べるとサービスが進むにつれて、だんだんと三角形の上の方に対する意識が強くなっていますよね。我々みたいな「昔は地元で鳴らしたもんだけど、今はてんでだめだよね」という30過ぎのおっさん世代に提供するカジュアルな「スト2」という路線は諦めたと考えていいのですか? 波多氏: たとえばテトリスのようなカジュアルなゲームがありますよね。あそこには全くの発展性がないわけです。むしろだからこそテトリスなのですが……。暇つぶしにやる。ユーザーさんがそういものだというのをわかっていますので1つのカジュアルなものとして定着していくのです。今回ユーザーと一緒に作っていくというポリシーを僕らが打ち出してやっていく中で、僕らの考えた「カジュアルで楽しんでください」というだけで良いのかと思い始めてきました。ユーザーさんの方がカジュアルだけでは収まりきれないニーズや盛り上がりがありました。それにある意味同調する形で今のような形になっています。 編: 余談ですが、私がゲームセンターで「ストリートファイター4」をやれないなと判断するのは、負けることがわかりきっているというのが1つと、もうひとつは相手のひたむきさを真正面から受け止めきれないからなんですね。相手の真摯な取り組み方、向き合い方に対して、自分はなんだ負け覚悟の暇つぶしじゃないかという、性根の卑しさを自覚するところがあって、ゲームセンターから足を遠のかせています。「SFO」はそういうおっさんゲーマーに格好のタイトルだったわけですけど、どうも話が違ってきたなと(笑)。 波多氏: 答えは模索している最中ですが、1つの考え方ではそれぞれのステップがあるわけです。初心者から初級者、中級者、上級者、スペシャリストになっていく。これまではスペシャリストがすべてでした。「SFO」ではそうではなく、途中でスピンアウトする人が出てくる中で、そこをすくっていくサービスを何らかの形で作っていきたいなと考えています。 強くなくても「SFO」にたまに入って、こんなプレイをしてみて、それに対してみんなからコメントを言われるとかチャットで何か返されてよしよしみたいな雰囲気を作りたいです。アイデアとしてはたとえばゲームをしなくても「SFO」の世界に入ることのできるオーディエンスの機能だったり、リプレイ機能だったり、動画のアップロード機能のようなものを考えていきたいです。
■ 「ストリートファイターオンライン」の拡張計画を聞く
波多氏: 1つは仕様的に詰め切れられないのがたくさんあったことが言えます。ニコニコ動画などの動画サイトとのシナジーです。本来ボタン1つでニコニコ動画にあげられるようにしたいねというのがありました。そこはいろいろ事情があるので難しいという結論になったとしても、違うやり方でそれをどのように見せていくのかという試行錯誤をやっていかなければいけない。見て楽しむ部分をどのように広げていくのかということは最初から変わっていないし、今月末から来月実装する機能についてはその考えられた機能の第1弾になれば良いなと思います。 編: 順番にお伺いしていきますが、アップロード機能はどのようなものですか。 波多氏: いったん自分のデスクトップ上にデータを保存して、それをニコニコ動画やYoutubeにアップロードするためのナビゲーションをゲーム内に設けようかなと考えています。本当はボタン1個で上げたかったのですが、上げる先の事情もあるのでなかなかそこまでは実現できませんでした。今では1日最低3,000から3,600くらいの対戦が行なわれていますが、3,000対戦くらいを溜められるサービスにしていこうかなと考えています。 編: そのデータはサーバーに溜めていくわけですか。 波多氏: 「SFO」はP2Pではなく、サーバー介在型でやっていて、キーアサインをサーバー情報として持っているのです。キー情報をクライアントの持っているゲームデータと反応させて、ゲームクライアント上で再現させる仕組みです。キーアサインの情報だけを持っているので、何時何分にこういうボタンを押したという情報がクライアントに逆配送された瞬間にクライアントがその操作を解析してグラフィックスに変えていくわけです。 編: するとラグの影響もない動画が楽しめるわけですね。 波多氏: そうです。完璧なリプレイ動画が見ることができます。ただし、欠点として「SFO」のクライアントが入っていないと見ることはできません。また、弱点としては1週間に1回アップデートしていますので、リプレイ自体は1週間おきにリフレッシュされています。ですから、リプレイ自体は1週間ごとに3,000試合の古い情報から消えていって、どんどん上書きされていく形です。流れ作業的になっているリプレイに対して、これだけはとっておきたいというリプレイがあったとします。それを保存する際に動画ファイルにエンコードされて保存されていく。保存されたファイルを動画サイトにアップロードする時にはその方法を教えてあげる形です。 編: アップロードする際には3,000ファイルの中から探してアップロードしなければならないのですよね。手間ではありませんか。 波多氏: そこは手間を感じさせないインターフェイスを考えたいと思っています。 編: 動画配信によって運営側が期待していることはなんですか。 波多氏: オーディエンスを増やしたいです。ゲームプレイまではいかないともどんなものが繰り広げられているのか見てみたい。それは1時間見るのではなく、2ちゃんねるやMixiを見る合間に立ち上げてみる。とんでもない戦いをしているときにこれは面白いなと保存しておいて、後でニコニコ動画なり、Youtubeなりにあげて、それをMixiに返してこんなものを挙げたけど見てねという流れにしたいです。もちろん自分のプレイを上げても良いと思います。 全然知らない人に対して、対戦まではいかなくてもノリがどういったものが見てみたいという人には戦わずにどういうものなのか見てみようと。戦い方に迷った場合は、ランキング上位のハンドル名が表示されている対戦を見てみたり、実際にチュートリアルを見るよりも1つのあこがれとしてインプットされるので、あのプレーヤーのあのパフォーマンスを見てこの世界に入ったといったきっかけになると思います。 編: サービスが始まるとニコニコ動画に結構な数の動画がドッと上がって盛り上がるのでしょうね。 波多氏: それを期待しています。動画配信機能は早くて12月末から年明け早々の実装を予定しています。「観戦機能」はそれよりも遅れて、1月中旬にはサービス実装できると思います。こちらの場合は、リアルタイムに見られるのです。リアルタイムに見ている間に、チャット文字が画面の中に出てくるような形です。バトルの画面の中にテキストが垂れ流されます。テキストが横に垂れ流すのか、あるエリアだけ上下になるのかは調整中です。本当はチャットログを残したままリプレイに残す方法を考えていたのですが、やらないほうが良いだろうという方向にまとまりそうです。 内田氏: 荒らしが出るとそれが残ってしまうというモラルの問題がありますし、あとチェックが大変です。弾幕とかあった場合、本当の喧嘩になってしまう可能性があります。技術的には可能ですがそれをやるべきではないだろうと。 編: 1セッションの中で同時に観戦できる人の数は何人ですか。 波多氏: ルームの数が32人なので、その範囲の中で観戦できるようにしています。対戦している人はマジックミラーの奥のような感じです。後ろから腕組みながら「あ、失敗した」などと話しているような感覚です。 編: 観戦者の拍手などのオーディエンスの反応が対戦者に伝われば面白いと思います。 波多氏: 入れたいなとは思うのです。戦っていても拍手や歓声でポテンシャルが上がっていきますよね。特にサッカーはそうですよね。ホームとアウェーでも全然違う。応援されているという感覚が戦っている最中に何かしらあるとよりプレーヤーも燃えると思います。 編: しかし、30人でチャットしたらが収拾が付かなくなりそうですね。 内田氏: それだけ人が集まって盛り上がってくれるなら、その後もルーム内でチャットもできますし、対戦していた人たちに声がかけられますよね。また、このルームにも初心者向け対策もしているのです。たとえばガマン(ガード)なしやガマンカウンターやよっこいしょカウンターといったちょっと高度なシステムを一切なしにできます。それで全部なしでやると完全に殴りあうという状態になります。それで良いのかというのは別個の問題ですが、出したものがすべて当たるという状態にもできるのです。 編: ちなみに、そうした制限機能の利用率はどのくらいなのでしょうか。 内田氏: 現時点での利用率はあまり高くありません。基本的にはすべて有りの状態です。仲良くなって繰り返し遊びたいということであればルームを作って全部なしにすれば爽快に遊べます。こういうところが妥協点なのではないかと思います。上級者を意識すると機能を入れないわけにはいかない。それをデフォルトで考えた時に、初心者を救済できる策として、そういうルームをつくって全部外してしまってくださいということになります。ほとんど別ゲームですが、ルームを作ることで許されますよね。それ以外に観戦機能が入ると4人とかでルームを作っても、その戦いを見ながらああでもないこうでもないと話しますので、ルームの中の時間の使い方も変わってきますよね。 編: カットイン機能というのもありますね。 波多氏: カットインでは、特定の場面で自分の好きな文字を入れることができます。また、自動生成されるトーナメント機能というのも仕様にあったのですが、それらの実装をずらしてもリプレイとアップロードと観戦を優先しようという決断をこの4か月間でしました。 編: 確かにトーナメント機能の実装もそういえば延び延びになっていますね。 波多氏: ユーザーインターフェイス上では一応表示されています(笑)。機能としてもできていないわけではないのです。ユーザーの意見を聞いている中で本当にこれで良いのだろうかというところはあります。 編: 現在予定されているのは、週末のゲームセンターで行なわれているようなシンプルなトーナメント大会ですよね。 波多氏: 8人集まるとトーナメントが始まって、負けたら落ちていくか強制的に残らされているか。残っているだけではつまらない。他にいきたいけどいけないという課題はずっとありました。 内田氏: そこが観戦と絡んでくると思うのです。トーナメントはずいぶん前にできあがっていたのですが、負けると外に放り出されるという仕様でした。勝った人が「優勝したー」と喜ぼうにも、周りに誰もいないという状況になってしまう(笑)。まずは観戦ありきなのではないかと思います。 編: 順序が逆であることに気づいたということですね。ほかにも団体戦や多人数バトルなど積み残しの企画はまだまだありますよね。 波多氏: その辺は来年ですね。先に観戦周りの機能を揃えていきたいです。それに紐づけてどんどんできていくと思います。インターネットテレビも頑張ってやっているので、見てくれている人もいるのですが、ああいった反応を見ていると1対1の戦いで最も盛り上がるのが自分の戦いが見られていて、そのプレイに対して何か言われていて、それで自分のモチベーションが上がるというところだと思うのです。その部分を抽出して価値を高めるためにどうしたら良いというのを考えて、最優先の実装になりました。
■ アバター、チャネリング、海外展開について
波多氏: 定番的に売れるのは技のステータスが個性的なものは売れますね。瞬間的に売れるのは女の子衣装ですね。キワモノ系は技のステータスが付きますので人気が高いです。 内田氏: “すっぽん”とつけた緑色のものは波多以外全員売れないと言っていたのですが、波多は売れるといっていて本当に売れてしまったアイテムです。全員驚きました。あれはすごく攻撃力に特化していて、思いの他使いやすいと好評でした。 波多氏: パラメータが攻撃、防御、速さが100ずつ、合計300あるのです。通常の「春麗」ではバランス良くなっているのですが、すっぽんシリーズですとかいろいろなシリーズを出している中で、パラメータのステータスが特化しているのです。「春麗」はスピードが特化していて、異常に特化しているものを好きな人は買いますね。1日にものすごい金額を回された方もいました。 編: つまり、現状では真の意味でアバターにこだわる人はあまりいないということでしょうか。 内田氏: 残念ながらかっこいいアバターを入れてもあまり反応はなくて、パラメータに特色のあるものの方が売れています。ただ、女性キャラクタは売れるのです。女性キャラクタは何を出しても良いのですが、男のキャラクタは頑張れども頑張れども「うーん」という感じです。同じコストをかけても売上はまったく異なります。また、ケンを出した時には一時的にどかっと売れました。 編: 新キャラクタに対するニーズはあるのでしょうか。 波多氏: はい。技の変化による遊びの変化を期待されていると思います。早くやってみたいという要望は常にあります。新キャラクタビジネスは続いていくわけですね。 編: 今後、「サイボーグ009」キャラクタの追加を予定しているということですが、009にも001から009まで9人いますが、すべて追加するのですか? 波多氏: 最初は004で行き、後はランダムで考えています。全部入れていく意気込みでやっています。 内田氏: ただ、石森プロさんからは赤ちゃんの001と女の子の003に関しては「戦うキャラクタではないので、戦わせないでください」という要望をいただいています。 波多氏: 003のバレリーナ姿のアバターも良かったのですけどね(笑) 内田氏: 出すこと自体は良いですという話ですので、009がスーパーコンボを出した時に、ヘルプで来たりスキルの1つとして体力回復の際に003がやってきて傷の手当をして去っていくですとか、そういった形で演出面での起用を考えたいです。 編: 「サイボーグ009」は私も好きな漫画ですが、それぞれの特殊スキルをどう再現するのかが楽しみですよね。 内田氏: 004は全身武器なのでわかりやすいです。技を考えた時、問題は002と009の差です。004、005、006、009が比較的簡単で、002、007、008はどのように追加しようか考えているところです。それぞれ1年以内に徐々に追加していきたいです。11月28日に追加となった004は、手に仕込んだカッターでシャカーンシャカーンとやってみたり、ヒザからミサイルを出したりします。 波多氏: 今の「SFO」に「サイボーグ009」のキャラクタが入って戦っているというのは異常ですよね(笑)。でもその異常と普通に向き合える時代だと思います。何せCMではお父さんが犬だったり、宇宙人が労働者になってコーヒーを飲む世界もありますから(笑)。かたや女の子の体にザンギエフの頭をつけているようなのと戦っている(笑)。サイボーグシリーズは組み替えてはいけないという契約上の問題がありまして、1体まるごとで販売します。たとえば原作に出てきたコスチュームや服の緑の色違いであれば大丈夫です。 編: 石森プロとのコラボが続くとすれば、今後はキカイダーや仮面ライダーなどの展開になっていくのでしょうか。 波多氏: その辺は結果次第だと思います。よかったら次もというところです。仮面ライダーは色々他に絡みがありますので一概には難しいとは思います。しかしそれ以外にもコラボレーションは考えていて、実現しそうなお話もありますのでえーっと驚くキャラクタが参戦すると思います。 編: 来年くらいには何キャラクタ参戦するのでしょうか。 波多氏: 現在11キャラで、月に1~2キャラクタの割合で追加していますので、倍くらいにはなる計算になりますね。 編: チャネリングについてですが、なぜカプコンではなくHangameさんなのでしょうか。 波多氏: オンラインゲームビジネスを考えますと一番大きなポータルサイトを持っているNHNさんにチャネリングして最大化を図るというのは事業展開的に必要です。カプコングループの中でアイテム課金型のオンラインゲームは「SFO」が初めてです。あくまで向いている先はオンラインゲームユーザーです。チャネリングも含めて拡大展開を行なっていく予定で、最低限でブラックリストの対応や細かい機能を実装していきます。 編: 「Hangame」さんとのチャネリングではサーバーはどのような扱いになるのですか。 波多氏: 既存のサーバーに接続します。課金形式はハンコインになりますが、売り物は同じになります。「MHF」と同じく「ダレット派」と「ハンゲーム派」で熱いコミュニティ争いが繰り広げられると思います(笑)。 編: コミュニティのサービスが違いますけれども中身は同じということですね。 波多氏: コミュニティの層は違いますね。「ダレット」は30代中心の良質なユーザーさんが多いように思います。 編: 「SFO」のユーザーさんはアンテナが高いユーザーさんですよね。「Hangame」さんがチャネリングして、一種のメジャーデビューを果たしたことになりますが、認知はしていても、遊ぶに至るまではまだハードルがありますよね。そこはどうされていくつもりですか? 波多氏: 「強さ」の意味をどう考えるか? それにはチュートリアル機能を入れたりロボット対戦を入れたりといった方法があると思います。それらを先発の人たちがやってきて、盛り上がっているのか盛り上がっていないのかと。いろいろやってきて、ギャンブルでいうビギナーズラックと似ていて、圧勝してしまうとその記憶が忘れられないという人間の心理に基づいた機能を入れていきたい。 たとえば、初心者はかなり攻撃力や防御力が高い状態から始まる。上級者も初心者と戦うときは「体力に変動がないので初心者のためだから許せるな、いいよいいよ」となる。そこで圧勝してもらう感覚を初心者の人に持ってもらいたい。何十戦するとフラグが立って初級者マークが外れて、みんなと同じになると、そうしたステップアップを「Hangame」さんの展開と合わせて考えています。 いろいろなユーザーさんが入ってくるのですけど、最初からボコられると二度とやらないということになってしまいます。恋愛と同じで、最初からうまくいけば「こんなものでしょう?」と自信に繋がります。最初に強いショックを受けるとその時の記憶が残っていて控え目になってしまう。それと同じです。ユーザーを盛り上げるために、最初に圧勝できる仕組みを入れていきます。 編: なるほど(笑)。ビギナーに勝たせるために一定期間強力なプラス補正をかけるわけですね。 内田氏: めちゃくちゃな補正をかけます。その間は攻撃力や防御力2倍といった感じです。勝っても負けても成績は残らないので、やられる方やる方も気兼ねなくやれます。初心者フラグが終わったあとはちょっとだけ初心者の卒業証書のようなものを用意して、なだらかに中級者の世界に持っていこうと考えています。 編: 他社さんのタイトルで恐縮ですが、「サムライスピリッツ」では初心者は間違いなく覇王丸の大斬りに全力を注ぎますよね。なぜならそこにビギナーでも勝てるチャンスがあるからですが、まさにそんな雰囲気ですよね。 内田氏: そうですね(笑)。強くする部分は決めています。今後詰めていき、より充実した初心者への対応はやりたいです。 波多氏: 「Hangame」さんとのチャネリングの際に新規がどっと流入しているので、そこにリーチしたいです。
波多氏: 中国を今やっていまして、12月頭からテストをやっています。今年の秋に内田と2人で中国に行きました。中国は取引の手法が複雑です。僕らがやったのは、パブリッシャやロビー活動ではなく、直接中国のユーザーさんにアプローチする方法をとりました。単独で記者会見をやりました。いろいろな中国のメディアの人を呼んで、中国の人と作っていくという趣旨の話をしました。どうしたら「SFO」が中国でみんなに愛されるのかという意見を聞くテストを近日中に予定しています。 編: テスト用のサーバーはどこに置くのですか? 波多氏: 日本です。中国語にローカライズされたものが既に完成しています。 編: パブリッシャーや運営もダレットですか? 波多氏: いえ。そのデータをもとにパブリッシャーの選定を行ないます。これだけ多くの中国のユーザーさんから意見があって、「これらをカルチャライズするけれどもあなたのところでやる?」というお話です。それは表向きで、裏では政治的な工作も必要です。中国で一般的なのは、日本のゲームメーカーはお金を稼ぐために、最初にイニシャルを稼ぐために契約金何億円の代わりにソースを全部出すというやり方ですが、だいたいその後、塩漬けにされて終わります。 ビル・ローパーが「World of Warcraft」でやったやり方はまったく異なるものでした。ビル・ローパーが単身中国に渡り、1年ほど布教活動をやっているのです。福建省のネットカフェにいってそこのオーナーさんと一緒にゲームをやってみたりということをやりました。民衆レベルで「WoW」が土台として定着した中で、このゲームを中国でやったときに誰がパブリッシングをするのだというセリをかけて、社運をかけてThe Nineが買いました。 編: そのやり方を踏襲したわけですか。 波多氏: そうです。それはビジネスだけではないです。車の世界ではGMなどの外資系の企業が中国に入っていく時に、まず国ではなくユーザーに訴えていくやり方がビジネスを成功に導いている傾向にあります。何せ人口が多いですから民衆のパワーと言うのは、もの凄く大きなうねりになると思います。 編: 中国の政府に睨まれるということはないのですか? 波多氏: そこがポイントなのですが、このゲームは丸々日本のゲームではないということを訴えています。カプコンが父でダレットが母だったら、金庸先生が偉大な師ですと。金庸先生なくしてはできないゲームですということを訴えて、中国の人と一緒に作っている感を出しました。中国の文化として有効なものだということをPRして認識してもらうところで、押し付けという認識を持たれないよう回避しています。 編: なぜ1番アジアで難しい中国を目指したのでしょうか。 波多氏: 稲船(敬二、カプコン常務執行役員兼ダレット代表取締役社長)の方針です。カプコンのコンソールが北米欧州で成功しています。アジアでそういう展開になればいい。稲船がダレットをやる前からグローバル戦略ということを言っていて、コンソールは北米欧州からで、オンラインは中国を攻める。一番難しいところを攻める方針です。「『SFO』が成功するかしないかはわからないけれども、お前の作った道を誰かが踏んで行くから大丈夫だ」みたいな(笑)。「MHF」も同じように一緒にやっています。 編: 現在は、中国、韓国よりむしろシンガポールを中心とした東南アジア地域がメジャーになりつつありますが、その辺はあまり意識していないのでしょうか。 波多氏: まったく意識していないわけではなくて、さまざまな情報は来ています。ロシアに対しても、ベトナムやシンガポールに対してもそうです。まずは中国をやっていこうと。それほどヒューマンリソースもないので、結局どっちつかずになっても意味がない。中国の諺で、夜が長いと悪い夢を見るというものがあります。時間を置くと気が変ってしまう。まずはそこに集中します。一番ネゴシエーションが難しいところを突破することで、海外戦略をしていく時に今後役に立つだろうというのが稲船の戦略です。
■ 2009年の事業戦略について。波多氏「目指すところは温かいギャグゲーム」
波多氏: カラオケに行こうと思っていたけど「SFO」があるからやめとく、というような存在になれることを目指したいです。人間の時間の中で余暇時間は限られています。その中で選択する手法はいろいろあると思います。コアユーザー向けには選択肢を省いた形になりますが、そうではないユーザーにとってみれば選択肢の幅があって、ゲームをやらずに今日はデートだという選択肢があります。そういう中で1か月に何回かはそのチョイスの中で「SFO」をチョイスしてくれるようなそうした位置にいきたいです。 編: ゲームジャンルとしては何になるんでしょう。 波多氏: 誤解を恐れずに言わせていただくと、「ギャグゲーム」ですかね(笑)。 渡辺氏: 「SFO」というジャンルのゲームですか(笑)。 内田氏: 対戦格闘といえば簡単なのですが、ジャンルとしては存在しないのではないかと考えています。マウスでやって、コントローラーやパッドという概念がない。組み換えでキャラクタという概念はなくなりますよね。お互いに対戦して、後ろで見ている人が出てきて、これだけあればパーティーゲームに近い感覚かもしれないです。 波多氏: ゲームの最終的な目標は達成感です。今までのゲームは面をクリアしました、ラストボスをやっつけましたという達成感がゲームを支えています。その達成感を満たすためにいろいろな手法が取り入れられている。ホラーだったり何でも有りだったりシューティングだったりします。 「SFO」の場合は達成感もそうですが、みんなと共有する何かを目指しています。ニコニコ動画のスタッフの方が言っていたのですけど、ポイントポイントで感動する共有をみんなで持つことなのだということです。時報であったり、何か面白いネタがあったときに同調する感覚がニコニコ動画なのだとおっしゃっているのと同じです。ゲームをやっている側も見ている側も一緒になって盛り上がる何かが今までのゲームとは違うところで「SFO」にあるような気がします。 編: 昨今ではPCのみならず、コンシューマでも、ボイスチャットがコミュニケーションの軸になりつつありますが、ボイスチャットに対する興味はいかがですか。 内田氏: すごくやりたかったのですが、回線の事情でできないということになりました。 編: つまり、パケットにそのための容量を確保してないから技術的にできないということですか? 内田氏: いや、確保できると思うのです。ただ多人数で観戦した時にそこで大量に回線の帯域を食われますよね。なおかつ対戦格闘でリアルタイムにやらなければいけないので、ラグのもとになってしまう。その問題があります。 波多氏: ボイスチャットをやった場合、そのボイスチャットをできる人間は限られてしまいます。「SFO」の場合はプレーヤーとオーディエンスの関係を広げていく中で全員がボイスチャットをした時にどうなるのということを考えなければいけない。一度試しに、制限なしでやってみたいですね。 編: 「SFO」はPCオンラインゲームですが、iPhone/iPod Touchのようなタッチパネル端末への展開に興味はないのですか。 波多氏: iPhoneはアップルさんのお呼びがあればいくらでも伺います(笑)。構造的には難しくないのでクライアントの再現は簡単だと思います。後はWindows以外への展開も考えたいと思います。たとえばUMPCの分野がありますよね。「SFO」はCPUさえちゃんとしていれば動きますから、Windowsである必要はないんです。Linuxでも可能です。 編: つまりUMPCを念頭に置いたLinux版を出したいと? 波多氏: そうです。そこから広がるモバイル端末の可能性があって、そこにiPhoneが連動してくるのかもしれないのですが、そこら辺は考えたいです。 編: 残る期待されるネタとしてはUGC(User Generated Content)があります。今年もいくつかのメーカーさんのオンラインゲームで、ユニークなUGC的なサービスが生まれましたが、「SFO」にはまだありませんね。 波多氏: UGCという点では、「SFO」は最初からあったといえばあったのです。ユーザーが自由にパーツをカスタムできるものなどです。その先という話だと思いますが、慎重にやりたいのです。火のつき方によっては、ぶれてしまうと思ったのです。日本のユーザーはお膳立てをしっかりしてあげれば、その道筋に沿って自発的にジェネレートしていくことがあるのですが、それができないと価値を見いだせないことがあります。そこまでユーザーにさせていく道筋を考えていきたいなと思います。 内田氏: 吹き出しでユーザージェネレイテッドは可能です。なおかつニコニコ動画にアップできたりすることもユーザージェネレイテッドですよね。自分で吹き出しを組み合わせて面白映像を撮ってアップすれば表現方法の1つになります。 波多氏: 今の吹き出しを見ていてもやらない人はまったくやらないのです。かたや、やる人はえぐい吹き出しを載っけちゃって、2ちゃんねるで晒されるのです(笑)。極端なのですよね。個人的には面白いのですけど、そういうところからダーティなイメージがついてほころぶのもいやだなと思います。 渡辺氏: もしムービーのように吹き出しが出せるということが浸透して、たとえば吹き出しを4コマ漫画や寸劇のように使用するなど、もうちょっと盛り上がってくれれば力を入れていこうと思います。 編: 昨年の構想では、まっさらなポリゴンデータを提供します。そこに何を塗ってもいいですし、まっさらな書き割りに、自由にステージイラストを書いていいですみたいな、自由度の高いUGCサービスを提供するというニュアンスだったと思いますが、その辺が見えてきてないですよね。 内田氏: その計画自体はずっと残ってはいます(笑)。 波多氏: それを実装した時に、1つの方向性に向けるアプローチを僕らができるかどうかなのです。何も与えないと結局卑猥な絵を描いたりすることになるだけなので、「もう終わってるでしょうあそこ」という風にならないための全体心理的な抑制や方向付けを何らかの方法でしなければいけない。具体的に何かといえば、トーナメントやユーザーと触れ合える機会を作って、「SFO」に群がっている人たちの人間の価値観みたいなものを作っていかないといけないのかなと思います。卑猥な絵が出てきたところで、「それはちょっとなぁ」、「いや悪い悪い」といったことがいえるようにならないと。それがないとスラムになるだけだと思います。 編: 日米のUGCの扱いで、決定的に違うのはレーティングですよね。日本では誰がどれだけ見てるかという勢いが重要視されるのに対し、北米ではコンテンツのバリューが大事にされる。愉快犯がどれだけがんばって卑猥なネタを量産したところで、みんなが評価しなければたちまち視界から消えてしまう。逆に万人が認める良いコンテンツは目にとめやすい位置に置かれみんなが等しく楽しむことができる。こういう価値観が日本にももっともっと欲しいですよね。 波多氏: まずはそこですね。機能の土台はできていますので、1つの原理原則にアプローチできるかを考えなければいけないです。中途半端に提供すると、やらないか変な方向にいくかのどちらかです。 内田氏: あとは、北米ではその手のコンテンツの作成者は多いですが、日本の場合は見るだけの人に対して、作る人はほんの一部で、評価システムがあったとしても絶対数が少ないので全部残ってしまう可能性がある。まず我々としてはお膳立てをしっかりしてあげて、意識をしっかりこちらに向かせる。そこまでできることが楽しいことですよというのが今の段階なのです。 たとえば、吹き出しに文字を簡単に貼り付けできる。これは手間がかからないですよね。それでもやっている人が少ないのです。本当はもっとどんと入れたいのですが、実際はそれをやったとしてもユーザーにしてみれば不利益にしかならないというのが現状なのかなと考えています。そこで、吹き出しを作ってみましょう、みんなで動画してアップロードしてみましょうということを、やること自体価値あることでかっこいいことだということを浸透させていってやっといけるのではないかと考えています。そのためには今はあせらずにゆっくりやっていくしかないと思うのです。 編: 最後にユーザーさんにひとことお願いします。 渡辺氏: なんだかんだでユーザーさんありきのゲームですので、もっとご意見ご要望をどしどしお待ちしています。いろいろな形で返していきたいと思いますので無茶をおっしゃってください。 内田氏: 「SFO」はこれまで類を見ないほどユーザーに近い立ち位置のゲームだと思います。11月23日にオフ会をやりましたし、メーカー主催という、「え?」と思われるようなすごく近い立場でやっています。どうぞ誰でも来てくださいというスタンスで今後も続けていきたいです。イベントを楽しみに参加していただいても良いですし、ゲームの要望もいただければ逐一拾っていきます。一緒にユーザーさんと楽しく作っていくゲーム作りをスタンスとして持ち続けていきたいです。 波多氏: 目指すところは温かいギャグゲームですね(笑)。でも真剣にやっていきます。どうぞご期待ください。
編: 来年も期待しております。ありがとうございました。
□ダレットのホームページ (2008年12月26日) [Reported by 中村聖司]
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