★PC/PS3/Xbox 360ゲームレビュー★
爆発、炎上、崩壊。破壊に全てを捧げた痛快FPS
クーデター直下の南米ベネズエラで石油争奪戦!!
「マーセナリーズ2: ワールドインフレームス」 |
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新作ラッシュでゲームの選択に迷いがちになるこの季節、スカッと爽快に破壊行為を楽しめる1本をご紹介しよう。米Pandemic Studiosが制作した「マーセナリーズ2」は、オブジェクトの破壊行為に全てを捧げたFPSだ。ゲーム中に用意された大量の武器、弾薬、爆弾、砲撃などの様々な方法で、広大なフィールドにある全ての人工物や自然物を思うさま破壊し、都市をひとりで廃墟に変えてしまうこともできる。
■ 南米ベネズエラでクーデター発生! 私怨を果たすため傭兵家業に精を出す
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フィールドに存在するモノは何でもぶっ壊せるという、破壊に全てを捧げたゲームだ |
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舞台は南米・ベネズエラ。オイルマネーで栄えた摩天楼を背景に大乱闘 |
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これがソラーノ。主人公に銃を向けたばかりか、報酬を踏み倒すという非道をはたらいた |
本作の舞台は南米ベネズエラ。ベネズエラは世界最大級の油田がある国で、油田が発見された20世紀以降はクーデター、独裁、無政府状態を繰り返してきたという、火種の尽きない地域でもある。そして本作の主人公は、金儲けのためなら軍隊さえ敵に回すという凄腕の傭兵。無政府状態の国、そして傭兵とくれば、ご期待の通り、派手なドンパチがプレーヤーを待ち受けている。
ゲームフィールドは実際のベネズエラをぎゅっと凝縮したシームレスな地形になっており、都市、下町、アマゾンのジャングルなど、様々な環境を楽しむことができる。歩いて行くにはあまりにも広大な世界なので、路上を走る民間の車両を奪って敵地までドライビングするも良し、仲間のヘリを呼んで安全に移動してもいい。
本作のゲームモードは、上記ストーリーを追うキャンペーンモードのみだ。ステージの切り替えという概念もなく、シームレスに再現された広大なゲームフィールドの各所で、ミッションを受け、様々な手段を用いてそれを遂行するという、“GTAライク”なゲームシステムを採用している。
オンラインの協力プレイもキャンペーンモードに統合されているという徹底ぶりで、プレーヤーがゲームを開始するたびに、オンラインでプレイするかどうかを選択できるようになっている。オンラインでプレイする場合は、自動的にプレーヤーがゲームホストとなり、他のプレーヤーの参加を待ち受けながらゲームが進行するというユニークな仕組みになっている。
協力プレイのプレーヤー数は、ゲームホスト役のプレーヤーと、それに参加するプレーヤーとで2名固定だ。協力プレイでは、2人で同じ乗り物に乗ったり、全く別々の場所で戦闘を展開してもいい。全くの自由だ。遂行中のミッションなどのゲーム状況についてはホスト側の状況に従うほか、参加者がゲームを抜けても進行に影響は無く、プレーヤーがひとりに戻るだけだ。こういった仕様のため、協力プレイはあくまでオマケ的な感じである。なお、今時のゲームとしては珍しく8人、16人、32人といった不特定多数で楽しむようなマルチプレイモードは実装されていない。
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ゲームフィールドは、実際のベネズエラを小型化したシームレスな地形になっている。小型化したとはいっても、歩いて移動すればフィールドの端から端まで数十分もかかるほど、広大な面積があり、その風景も地域によって様々だ |
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操作性は非常に“ゲーム的”で、非リアル系だ。気楽にプレイできる |
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支援攻撃を使って建物もろとも敵を撃破。大味なプレイこそ本作の真骨頂だ |
本作のゲームシステムは、3人称視点のカメラを採用しているものの、典型的なFPSの操作スタイルになっている。アクション性は軽快で、自由に移動し、照準を合わせ、射撃するという一連の動作は、非常に“ゲーム的”に調整されており、簡単にマスター可能だ。また、敵に対する照準操作には、かなり強烈な自動調整機能がついており、大ざっぱな狙いでもきちんと命中し、気楽にプレイできる。
主人公が装備できる火器はライフル、マシンガン、ロケットランチャーなど多数用意されており、同時に2種類を携帯可能だ。主人公の体力は、ダメージを負っても一定時間後に自動回復するシステムなので、銃撃戦では障害物を使って立ち回ればそう難しくない。だが、敵もロケットやミサイルなど重火器をどんどん使ってくるので、こちらも大火力で応戦するという、派手な戦いが基本となっている。
その派手な戦いを演出してくれるのが、サポートメニューから呼び出す様々な支援攻撃だ。支援攻撃には砲撃や爆撃をはじめ、各種車両や補給物資の投下など様々なものがある。砲撃や爆撃の効果は絶大で、そこに建物が有れば一瞬で廃墟となり、そこに籠もる敵もまとめて片付けてしまうほどだ。個人の携帯火器では対処できないシチュエーションや、沢山の敵をアッサリ片付けたいときには、支援攻撃を適宜使って戦局を打開するわけである。
さて、プレーヤーに与えられる最初のミッションは、クーデター反対派に囚われたカルモナ将軍の身柄を確保するという、ベネズエラの大富豪・ソラーノからの依頼だ。このミッションはチュートリアルを兼ねており、移動、射撃、乗り物の操作、支援攻撃の用い方といった本作の基本的な操作をひととおり学ぶことができる。
このミッションでカルモナ将軍の身柄を確保した主人公だが、報酬を受け取りにソラーノの元を訪れた時に待っていたのは、銃弾の雨だった。クーデター派の頭目である将軍を味方につけたソラーノは、軍事力を背景としてベネズエラの支配者になることを画策しており、それが成功した後の人生を脅かす存在になりうる傭兵(主人公)が邪魔だったのだ。
絶体絶命のピンチを命からがら切り抜けた主人公は、ベネズエラの大統領となったソラーノへの私怨を抱き、復讐を誓う。いよいよ、無政府状態の国を舞台とする傭兵稼業の始まりだ。
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携帯火器での攻撃力は限られているが、邪魔な敵兵を排除したり、軽装甲の乗り物を撃破するためにマシンガンとロケットランチャーのコンビは欠かせない。各所にある固定銃座を使って砲撃を加えるのも楽しい |
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乗り物も豊富だ。戦車を使えば都市の1ブロック分くらいは完全に廃墟にすることができる。ヘリコプターは移動に便利な上、攻撃タイプならロケット弾の雨を降らせて敵兵を一掃する能力がある |
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乗り物を奪うには、取り付いてから決まった手順で各種ボタンを押す。強力な兵器ほど手順が複雑になってくるので、確実に成功できるようになるためには練習が必要だ |
■ ベネズエラの各種勢力の信頼を勝ち取り、強力な支援攻撃で破壊の限りを尽くす
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主人公の拠点は、力ずくで奪ったソラーノの屋敷。ここに様々な軍事物資がストックされていく |
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各勢力の代表から様々なミッションを請け負う。達成すれば新規アイテムのアンロックなど様々な特典が |
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序盤の強力な支援攻撃は「砲撃」。場所を選ばず、攻撃力も絶大だ |
ソラーノに“ツケを払わせる”ためにベネズエラに残った主人公は、オペレーターのフィオナと共にソラーノの屋敷を占拠し、活動拠点を築いた。主人公は最終目標であるソラーノの暗殺を果たすため、まずはベネズエラ中の各種勢力に接触して情報を集めることになる。
とはいえ情報はタダではない。居場所すらわからないソラーノの手がかりを得るためには、各種勢力が依頼してくるミッションを片付けていく必要があるのだ。無政府状態のベネズエラには、独自の軍事力を保持する「ユニバーサル石油」、「ベネズエラ軍」、反政府ゲリラの「PLAV」などの勢力が各地に拠点を持っている。彼らの拠点を訪れ、ミッションを受けることでゲームが進行していく仕組みである。
ミッションの多くは、依頼元の敵対勢力に対する武力攻撃だ。拠点を奪ったり、活動をサボタージュしたり、重要人物を捕えるといったものが数多く用意されており、そして、その達成のためには確実に敵との激しい戦いを切り抜けなければならない。
少々辛いのは、ゲーム序盤の戦いでは使える攻撃方法が限られていることだ。利用できるのは携帯火器、もしくは奪った車両くらいのもので、そこらじゅうを破壊して回るには火力が不足気味。強力な火力を提供してくれる支援攻撃は無制限に使えるわけではなく、フィールド上で入手したり、各種勢力と仲良くなって購入する必要があるためだ。
多数のミッションをこなして各種の強力な兵器をアンロックするまでは、身ひとつで敵兵と撃ち合うという、本作の本来の水準から言えば地味な戦いが展開することになる。傭兵家業にも下積みの期間が必要らしい。しばらくの辛抱だ。
力を蓄えるため、まずは「ユニバーサル石油」のミッションを連続的にこなし、前進拠点で各種の支援攻撃を購入しよう。この序盤の時点で特に役立つのは、支援攻撃の一種「砲撃」だ。ビーコンを投げると、その地点に数十発の砲弾が空から降ってくる。砲弾1発でビルを倒壊させるほどの威力で、半径50メートルほどの地域を一気に一網打尽にできるのだ。
「ユニバーサル石油」のミッションを相当数こなしていくと、戦車を購入できるようにもなる。戦車の砲弾はかなり強力で、小型の建築物なら一発、中規模のものでも数発で崩壊させることができる上、装甲が硬いため戦地での移動手段としても優秀だ。
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ミッションの中には、前哨基地を奪う手助けをするというものもある。NPCの占領部隊が敵にやられてしまわないよう護衛し続け、規定人数の占領部隊がターゲットに進入すれば勝ちというものだ |
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「じゅうたん爆撃」を使えば、小規模拠点を一撃で一掃できる |
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米軍の「超重戦車」。装甲も火力もパーフェクトで、一家に一台は欲しい |
こういった手段を利用して沢山のミッションをこなしていけば、複数の勢力の依頼を受けられるようになり、いよいよ戦力を増強しやすくなる。
特に、ゲーム中盤から終盤に登場する連合軍(という名目の米軍)、中国軍からは、重戦車、戦闘ヘリなどの強力な乗り物や、「デイジーカッター」や「MOAB」といった、桁外れの強力な爆弾を購入することが可能だ。そこまでくれば、いよいよ戦いはド派手に展開する。町中で破壊の限りを尽くし、ゲームが本当に面白くなるのはここからだ。
沢山の敵に囲まれるシチュエーションでは、米軍の「じゅうたん爆撃」を使って辺り一面を吹き飛ばしてしまえばいい。中国軍の「戦略ミサイル攻撃」を使えば、堅固な建物も一発で吹き飛ぶ。大味だが、痛快で爽快な破壊の醍醐味。多数のビルがいっぺんに倒壊する様は一見の価値ありだ。
ちなみに、各勢力のミッションを受ける中で、時には味方になった勢力への攻撃をしなければならないこともある。その結果、それまで味方だった勢力を敵に回しても大丈夫だ。傭兵の拠点に戻って、フィオナに話しかけ、敵対状態になってしまった勢力への「賄賂」を依頼すれば、また味方に戻すことができる。ただ、あまり頻繁だと莫大な金額が賄賂に消えてしまうため、ミッションを受ける順番をある程度コントロールしながら進める必要がある。
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洋上プラットフォームでの戦い。複雑で立体的な地形では、どこにスナイパーが潜んでいるかわからないが、うかつに支援攻撃を要請すれば自分の足場ごと破壊することになってしまう。こんなシチュエーションでの戦いもなかなか味がある |
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連合軍という名の米軍が登場。核兵器を持つ彼らの信頼を得るため、中国軍との戦いに足を踏み入れる。激烈な戦闘の連続で、難易度はかなり高い |
■ 全てはチャンス! ソラーノを追い詰めるため、各勢力の石油利権争いに首をつっこみまくれ
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事態は世界大戦に発展。米中の軍事衝突が始まる |
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究極の支援攻撃、核兵器。一介の傭兵がこんなものまで持ち出す日がくるとは! |
こうして、ソラーノへの私怨を果たすためにベネズエラ国内の各種勢力の味方になったり、敵になったりする主人公だったが、クーデターの頭目であるカルモナ将軍を片付けてから事態は急変する。ベネズエラ軍の崩壊をチャンスと見た米軍と中国軍が介入し、第三次世界大戦の様相を呈してきたのだ。
ここに来ての主人公の望みはただひとつ、「核をよこせ」。その用途はストーリー終盤の展開に触れるためここでは伏せるが、事ここに至って人類史上最悪の兵器を必要とする一介の傭兵である。成すべきことはひとつ、ベネズエラの石油利権争いに参加してきた大国同士の争いに首をつっこんで、自らのチャンスに転ずることだ。
主人公は核を入手するため、米軍か中国軍のいずれかに味方することになる。搭乗兵器の豊富さでは中国軍が優れ、支援攻撃の多彩さでは米軍が優れている。どちらを選んでもシナリオは同じ結末へ収束していくので、好きな方を選択しよう。
こういった展開になるゲーム中盤以降、序盤は進入不可になっている地域へのアクセスも可能になり、非常に豊富な支援攻撃を利用できるようになるため、いよいよゲームが本番に入ってきた感触が得られる。戦闘はますます激しくなるが、プレーヤーの戦闘手段も幅広くなり、本作の醍醐味を最大限に味わえる。
ただ、ここに来てプレイのテンポを悪くする要素がひとつだけある。各種の支援攻撃を使用するためには、「燃料」のストックが必要で、燃料はフィールド上の各地にある石油タンクを奪うことでしか入手できない、というゲームルールによる負担だ。
中盤以降の戦闘では支援攻撃の使用がほぼ必須となるシチュエーションが多いのだが、それだけに大量の燃料を消費することになる。戦闘の最中に燃料のストックが切れてしまうと、ターゲットの建物を破壊する手段や、移動手段を調達する方法が失われてしまうため手詰まりになりがちだ。そこで戦闘を中断し、石油タンクを探して徘徊するハメになる。これはゲームのテンポを著しく悪くしているため、せめて中盤、終盤以降では、燃料を金で買えるなどの手段が欲しいところだった。
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傭兵稼業のためには常に石油のストックが欠かせない。フィールドの各所にあるタンクを見つけて回収するのだが、ゲーム終盤ともなるとこのプロセスが面倒で仕方ない。何とか別の方法を用意して欲しかったところ |
こういった形で進行する本作は、急いで本筋だけをプレイすれば、10時間ほどでエンディングを迎えられるほどのボリュームだ。しかし、本作はクリアだけを目指してプレイするのは非常にもったいない。本作には沢山のサブミッションがあり、大量のアンロックアイテムがある。それらの獲得を目指しつつ、沢山の兵器を入手して「1発でビルがどれくらい倒壊するか」を試すといった遊び方も楽しいものだ。
本作に“本格的な最新FPS”の内容を求めるのも避けた方がいい。核爆弾の投下指示を手投げのビーコンで行なうという理不尽なほどのコミカルさや、爆弾のの直撃を受けても、数十秒で全快してしまう主人公の体力など、各所に「リアルさなんてどうでもいい」と言わんばかりの表現が溢れ、ゲーム性は破壊行為のためだけにデザインされているのだ。しかめっ面をしてマジメに取り組む要素など、本作には無いのである。
難しいことを考えずに頭を柔らかくして、“叩けば壊れる箱庭”とのインタラクションを楽しむ。「マーセナリーズ2」はそういうゲームだ。
【スクリーンショット】
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本作におけるFPS的な銃撃戦はむしろ脇役。派手な砲撃や爆撃で建物もろとも敵を吹き飛ばすという大味な戦いを、気楽にリラックスして楽しみたいタイトルだ |
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http://www.eajapan.co.jp/
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(2008年12月15日)
[Reported by 佐藤カフジ]
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