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ユードー代表“dj nagureo”南雲玲生氏インタビュー
世界最小パブリッシャーがiPhoneで発売本数世界一を目指す

11月19日 収録

 iPhone 3Gの発売にあわせてスタートしたApp Store。iPhone/iPod touch向けにアプリケーションをダウンロード販売するプラットフォームだ。7月10日の開始から約4カ月が経過した今、ゲームだけで1,500本以上と、無料・有料を含めて大量のソフトウェアが配信されている。まさに玉石混合というべきカオス状態だ。

 その中で精力的に活動しているのが、ゲーム開発ベンチャーのユードーだ。「Aero Guitar」、「Aero Drum」、「Aero Synth」と3本の音楽ゲームをリリースし、そろって国内ランクインした。現在は「1$-GAMES (1ドルゲーム)」という新ブランドを立ち上げ、自社に加えて外部クリエイターが作ったゲームの販売代行サービスも行なう計画だ。

 このユードーを率いるのが、以前KONAMIで「ビートマニア」などの音楽ゲーム開発に関わった「dj nagureo」こと南雲玲生氏だ。2000年に退職後、青山学院大学の学生として経済を学ぶかたわら、2003年に起業。カバヤ食品からゲームCD-ROM付き玩具菓子「ゲーム伝説」を発売するなど、ゲームの枠に捕らわれないユニークな活動を続けた後、2007年にはニンテンドーDS向け健康ソフト「健康検定」を発売し、ゲームパブリッシャーとなった。

 社員7名と「世界最小のゲームパブリッシャー」を自認する南雲氏。特に近年は「健康検定」でDS向けにパッケージソフトを発売し、続いてWiiウェア向けに音楽ゲーム「Aero Guitar」をリリース。そしてApp Store展開と、次第にダウンロード流通に傾倒していく様子がわかる。現在はApp Store向けに開発を集中し、5ラインが並行稼働中だという。果たしてApp Storeは「約束の地」となるのか……。同社の戦略を聞いた。



■ 昔から亜流を求めたがる傾向があった?

ユードー代表取締役プロデューサーの南雲玲生氏
――はじめに南雲さんの足跡からお伺いします。ゲーマーとしては、初代「ビートマニア」の開発スタッフとして有名ですよね。

南雲氏 : はい。高校3年生の時に、たまたまAppleのラジオコマーシャル向けに楽曲を作ることができたのです。バイトにしては報酬がよくて、将来こういう商売ができればいいなあと思ったのが、業界に入った契機というか、あやまちの始まりでしたね(笑)。浪人中に広告音楽を制作する制作会社に入りまして、紆余曲折の後にKONAMIに入社しました。そこで「ビートマニア」の制作に携わることができました。

――「ビートマニア」ではどのようなポジションでしたか?

南雲氏 : ネットだと作曲した人みたいに書かれていますが、実際は裏方全般です。曲は合間に「おまけ」で作ったくらいで。これは今と同じですね。

――それで2000年に退職された。

南雲氏 : ちょうどプレイステーション 2が出た頃で、ハードは売れるけどソフトは売れない。国内市場も1997年をピークに減少傾向でした。将来に危機感を持ちまして、僕はずっとクリエイター系でしたから、まずは大学で経済概念を学ぶ必要があると思ったんです。それで青山学院大学を受験して、経済学部に入学しました。

――ユードー設立と同じ年ですね。

南雲氏 : そうです。だから社長業のかたわら、大学で学生もやって、ビジネスモデルやマーケティングについて学んで。2007年に卒業しました。

――普通のゲーム開発会社とは、少し毛色が違いますよね。

南雲氏 : 最初からコンシューマゲームを開発するのは無理でした。昔から亜流を求めたがるところもあって、ゲームのノウハウを他の市場で役立てようと思ったんです。今で言うシリアスゲームでしょうか。それで「ゲーム伝説」とか、リアルな街を携帯電話で誘導する「なびんちょ」、さらにはDSで「健康検定」などを発売しました。会社名の「ユードー」も、お客さんを誘導したい、という思いからです。



■ 最初はiPod向けにスタート

――そういうこともやりつつ、いよいよ「Aero」シリーズがスタートした。最初はWiiウェアでリリースされて、次にiPhone/iPod touchへと展開していったわけですが……。

南雲氏 : いや、もともとiPod向けのゲームだったんです。実は2006年に第三者割当増資を行ない、その時に事業分野を「教育」、「健康」、「音楽」に絞り込みました。その上でコンソールゲームについても、開発工数が少なくて、世界に挑戦できて、参入障壁が低そうな領域を探したんですね。その時に考えたのが、iPod向けのゲームだったんです。

――でも、その頃にはiPod touchもなかったですよね。

南雲氏 : iPod classicで遊べるものを考えました。そうすれば競合がいないところで勝負できますから。それで2006年のGDCの後、Apple本社に行って、片言の英語でプレゼンしたんです。Macintoshでデモ版を作って見せて、「僕らのエンジンを使えば、処理が軽いし、iPod内の楽曲で音楽ゲームができる」と。メロディの上下にあわせてタッチホイールを回転させるような操作イメージです。そうしたらApple側から、これはおもしろいけど、まだ早いと言われまして(笑)。

――それがWiiウェアになった。

南雲氏 : いや、実はその前にXbox Liveアーケード向けに開発したんですよ。世界に配信できるし、当時は競合も少なかったですから。Appleの担当者が、いつのまにかMicrosoftに転職していた、という偶然もありました。でも、結局お蔵入りになってしまいました。開発は問題なかったのですが、開発終盤になって、なぜかXbox Liveのパブリッシャーになるためのアカウントが開けない、という事態が発生して。その時は本当に会社が潰れそうになりました。

――いろんな理由で出せなくなったわけですね。

南雲氏 : そうです。そんな時にWiiウェアと、iPhoneでApp Storeが立ち上がるという情報が入ってきて、ほぼ並行して開発しました。



■ iPod版の操作をWiiウェアでも踏襲

――まずはWiiウェアで「Aero Guitar」が発売されましたね。

南雲氏 : 実は発売が4回くらい伸びて、開発期間も当初より長い5カ月くらいになりました。Wiiの開発難易度が高い部分があって。でも、これは単純に弊社の問題で、誰も責められません。「健康検定」の時もそうでしたが、任天堂さんの対応は非常にスムーズでした。

――ギターをモチーフにした音ゲーというのは、Wiiリモコンの形状からですか?

南雲氏 : いや、それは違います。「Aero Gutiar」の操作はiPod版を引き継いでいて、音符にあわせてヌンチャクのスティックを上下に入れる点がポイントなんです。タイミングにあわせてWiiリモコンを振るのは、後から来た要素なんですね。

――なるほど。

南雲氏 : それよりも「ビートマニア」の頃はクラブカルチャーが背景にありましたが、これからはロックだなと。それでギターになりました。これには僕がクラブや、もっというと「ビートマニア」みたいなサウンドに飽きちゃったのもあります。

――大胆な発言です(笑)。

南雲氏 : でも、飽きちゃった(笑)。それから「ギターヒーロー」の大ヒットは意識していました。ただ「ギターヒーロー」はめちゃくちゃメタルで、アメリカンなので、僕らはダウナーで、オルタナ系(オルタナティブ・ロック)の地味なサウンドをめざそうと。

――いわゆるJPOPやJロックのサウンドではありませんね。日本の市場は考えていませんでしたか?

南雲氏 : まったく考えていませんでした。あくまで世界に視野を向けて。海外では来年からサービスが始まる予定で、現地のパブリッシャーとの連名となります。

――久々の「音ゲー復帰」タイトルでした。

南雲氏 : 意識しましたが、開発中は口出しをせずに、若手に任せました。コンセプトは“海外で気軽に遊べる、シンプルな音ゲー”です。「ギターヒーロー」は値段も高いので、ライトユーザーが気軽に遊べるものを。遊び込み要素やコンボなどもできるだけシンプルに心がけました。ただサウンド容量が大きくて、Wiiの本体内蔵Flashメモリの512MBという容量制限があったのは盲点でした。背景でストリーミングムービーをPV風に流していますが、これも容量の関係で画質を荒くせざるを得ませんでした。

――楽曲はどうやって集められたのですか?

南雲氏 : 僕も作りましたが、後はインディーズのバンドを見に行って声をかけたり。「ALL MY LOVE FOR YOU」のTHE EMERALDSがそうですね。彼らは日本人バンドで、国内では無名ですが、北米と韓国で非常に人気があるんです。それから「That You Need」のK@ori with panic pLcnicさん。彼女は北米で人気の高いPUFFYに楽曲を提供しているんです。

――南雲さんの楽曲は?

南雲氏 : 「GEAR」(下北ブラザーズ)と「infections」(N.A.R.D)です。あまり僕の名前を出すと夢がなくなっちゃうので。

――ゲーム上で直接楽曲が有料ダウンロードできますね。他のWiiウェアでは、あまり見られませんが、実験的な試みなのでしょうか?

南雲氏 : いや、最初からできるものだと思ってました。だから自然に(笑)。



■ 紆余曲折の末にiPhone/iPod touch版をリリース

インタビュー中も時折iPhoneを取り出し、実際にデモしながら説明してくれた
――それで、ようやく話がiPhoneに移るわけですが、開発期間は?

南雲氏 : 実質2カ月かからなかったと思います。App Storeのローンチに合わせることも考えていましたが、App Store自体が本当に大丈夫かな、と心配していた部分もあって。作り始めたら早いだろうなとは思っていました。それでiPhone 3Gを発売日に買って、これならいけると。

――App Storeの開発環境はどうですか?

南雲氏 : 凄いと思います。開発に必要なのはIntel版Macintoshだけです。AppleからSDKをダウンロードしてインストールすれば、すぐにiPhone/iPod touchをエミュレートできます。うちのプログラマーが感動していました。

――ギターだけでなく、ドラムとシンセサイザーの3バージョンを作られましたね。

南雲氏 : それはもう勢いで「作っちゃえ」と。2作あわせて2週間で作りました(笑)。

――開発で気をつけられたことは?

南雲氏 : 海外の、しかもゲームユーザーじゃない人。むしろAppleユーザー狙いですね。だからシンプルに、クールな感じで。Wiiウェア版と同じです。すでに「Tap Tap Revenge」というフリーの音ゲーが出ていて、人気があったので、それといかに差別化するかも考えました。ただ「Tap Tap Revenge」は画面をタッチしても、何も音がしないんです。だから開発も楽なんですよ。僕らがハンデなのは、タッチした時に楽器の音を鳴らす必要があるので、ちゃんとゲームの仕様にあわせて曲をデータ化する必要があることです。

――いわゆる「ビートマニア」は、音楽トラックがマルチで流れていて、ユーザーが操作に失敗すると、どんどんサウンドが下手になっていくところが新鮮でした。しかし「Aero」シリーズでは、操作をミスすると、そのミスした音が鳴らない仕組みです。

南雲氏 : それがまさに、iPodで動かすためのポイントでした。ハード性能が低いので、プログラムの処理を軽くしなければいけない。それで純粋に失敗したら、そのパートの音だけが聞こえないようにしようと。当時はiPod以外の音楽プレーヤーへの広がりも視野に入れていましたし。

――「ビートマニア」と「Tap Tap Revenge」の中間だったわけですね。逆にWiiウェア版ではぴったりのタイミングでWiiリモコンを振ると、振動するなどの仕組みが入っていますね。

南雲氏 : それも、ハードの特性にあわせた結果ですね。

――個人的には「Aero」シリーズ3作の中で「Aero Drum」が一番面白く感じました。両手で画面をタッチする操作が、ドラムを叩くというゲーム内容とよく合っていて自然だし、左右から音符が中央に流れてくるのも、ちょっと変わった感覚でおもしろい。違う楽器のところを押しても音が鳴るので、上手くなると「合いの手」が入れられるのもいいですね。

南雲氏 : 慣れると面白いんですけどね。最初は混乱するみたいです。将来的には自由に演奏できるモードも入れるつもりです。

――フリーの演奏モードは確かに欲しいですね。なぜ最初から入っていないのですか?

南雲氏 : そこは出し惜しみをしようと。バージョンアップの楽しみですね。

――ああ、バージョンアップが頻繁にできるのもApp Storeのいいところですね。「Aero Drum」も1.1になってモードが加わって、より遊び込めるようになりました。

南雲氏 : それは緊急に対処しました。遊び込む要素がないと、1曲終わって、ああ面白かった、で終わってしまうので。それで休日にプログラマーに連絡して、「ストーリーモードを作るのは大変か?」と聞いたら、「何とか、がんばります」と返事があって。次の日にはできていました。

――1日でできちゃった。

南雲氏 : ほぼ1日です。僕はApple信者のところがあって、iPhoneにも思い入れがあるので、直接開発にタッチしました。仕様書も自分で書きましたよ。

【Aero Guitar】
ギターの弦に流れてくるマークにあわせて操作する。上の弦では上に弾くように画面を触る。下の弦は反対に下に弾く。真ん中は弾かずタッチすればいい

【Aero Drum】
左上、右上、左下、右下の4カ所から流れてくるマークが中央の丸に重なったら、流れてきた方向のスクリーンをタッチする。タッチできる場所は、大きく画面を4分割したもので、アバウトに触っても大丈夫

【Aero Synth】
右から左へ流れてくるマークが左のバーに重なったらタッチする。あるマークに対して次のマークが高音なら、元のマークの上側、低音なら下側の画面をタッチすればいい



■ 課題は北米でのプロモーション

――ユーザーの反響はどうですか?

南雲氏 : アップしたら毎日報告書が届きます。いま(11/19現在)国内の有料版ランキングで「Aero Guitar」が8位になっていて、一時期3作が全部トップ10に入ったんですよ。フリー版では1位になっていますね。フリー版が1日で2万ダウンロードを全世界で記録したのは驚きました。ちゃんと北米でプロモーションしたら、月に100万ダウンロードなども夢ではないでしょうね。

――App Storeは北米が強いと言われます。

南雲氏 : そうですね。ただ僕らは北米のプロモーションができない、というかやり方がよくわからないので、そこが一番の課題です。ただ日本国内だけでも、ちゃんといい物を作れば、採算は取れると思っています。実際に課金状況を見ると、1位が日本で、2位がアメリカ、その後カナダ、メキシコと続いて、欧州各国はその後ですね。日本のiPhone 3Gは20万台程度しか出ていないと思うのですが、それにしてはいい数字です。

――でも、それだけに北米は伸びしろがある。

南雲氏 : はい。最終的にはiPhoneの世界シェアに比例すると思います。iPhone 3Gの世界販売台数が年内で1,000万台を突破する模様、という報道もありました。そのためにも、まずはフリー版で多くの人に知ってもらって、口コミで広めてもらおうと。海外のパブリッシャーさんと提携するという選択肢もあると思いますが、まずはユードーブランドで、どこまで行けるか考えています。

――App Storeのランキングに乗らないと話にならないとも聞きますが?

南雲氏 : それはあると思います。北米ではフリー版がランキングに乗り始めたくらいで、有料版は乗っていません。だから、そこが大変ですね。もっとも、北米のユーザーは日本と考え方が違うようで、いい物に対してはいくらでもお金を出してくれます。エンターテイメントに対して見方が広いので、もっとクオリティの高いものを出していこうと思っています。

――Wiiウェア版でも、開発中のバージョンをYoutubeで動画配信されていましたね。

南雲氏 : あれはみんなが勝手にやっちゃうんですよ(笑)。止められなくて困っちゃうんですが、いいんじゃないでしょうか。ただ効果は計測できないですね。動画もDVカメラでモニターを直撮りしているので、汚くて。あれはちゃんとキャプチャした方がいいと思っています。

――「Aero」シリーズは最初は800円でしたが、途中から350円に値下げしましたね。

南雲氏 : 社員に問い詰められたんです。「800円は高いですよ、350円くらいなら買う。それに今は世界的に大恐慌だし」と。僕は最後まで800円で粘って、面白いゲームだから売れると思って出したんですが。でも安くして、世界中で売れて、それで採算が取れればいいかと思って、バージョン1.1のタイミングで値下げしました。もっとも年末までの期間限定で、それを過ぎたら戻します。ユニクロと同じですよ。新作は安くして、皆さんにどんどん遊んでもらいたいなと。安いうちに、いま買ってくださいという広告ですね。本当に熱心な人は、高くても買ってもらえるだろうし。



■ 世界に通用する曲作りとは?

――今後の展開は?

南雲氏 : まず曲の追加です。ただ音楽ゲームって「曲」の存在が「敵キャラ」になるんですね。そのため、新曲をどんどん作り続けるスパイラルに陥ってしまいます。ですので次は、人が敵になる、バトルをオンラインでできるようにします。同じ曲を同時にプレイして、どちらが高得点を出せるか、とかですね。

――「Aero」シリーズに向いたサウンドはありますか?

南雲氏 : iPhoneのユーザーは音楽ファンなので、いわゆるゲームサウンド、ゲームクリエイターが作ったロックというのは、やっぱり向かないと思います。彼らは職人さんなので、最初から「どういった曲を作りましょうか?」と受け身になってしまうのです。そうではなくて、普通のアーティストくらいのクオリティで、海外志向がなければいけない。

――逆に普通の楽曲があるとしましょう。それを「Aero」シリーズに落とし込んでいく上でのコツというのは?

南雲氏 : それは、「Aero」シリーズが成熟してくると、自然にゲームシステムに向いた曲というのがわかってくると思います。いい曲でも演奏がシンプルだとゲームがつまらない、という側面はありますし。でも今はそれよりも、純粋にいいサウンドでしょうね。それが一番重要なことだと思います。

――イベントなどはありませんか? 新曲オーディションとか。

南雲氏 : 実はやっているのですが、日本と北米では文化が違うので、そこは重要ですね。日本人のアーティストが海外に進出していった時の失敗例を見ると、2通りあるんです。1つは海外で受けるロックをやろうとして、やっぱり向こうが本場だから、そこで負けるわけです。もう1つは逆に日本の美とか、オリジナリティは何だろうとか考えすぎて、沖縄民謡とかを持っていって、失敗しちゃった人もいた。それは違いますよね。

――なるほど。

南雲氏 : 対して、「Aero」シリーズの曲だと、先ほどのK@oriちゃん。彼女はヘタウマなんですよ。なまじ英語の発音を練習するんじゃなくて、英語下手だけどがんばらなくていいのよ、みたいな感じ。そっちの方が北米の人たちにはクレイジーに見えるのかもしれません。そういう方向性が今は一番いいのではないかと思います。

――そういう人たちは、地道に発掘するわけですか?

南雲氏 : それもありますし、僕が頑張ると。自分が頑張って曲を作りますよ。



■ 次の目標は「1ドルゲーム」ブランド

ユードーの開発の様子。ちょうど新作のデバッグ中で少々慌しかったが、20代前半の若いスタッフが多く活気があった
――では「Aero」シリーズのApp Store配信は成功だったわけですね。

南雲氏 : 成功ですね。今後はiPhone/iPod touch向けに集中します。先日発表したように「1$-GAMES」ブランドを立ち上げて、みんなで1ドル(App Storeでは0.99ドル/115円)のゲームを作っていきます。社内からの提案だったんですが、最初は僕が止めたんです。安いゲームをどんどん排出していくだけになってしまうので。でも1ドルにこだわって、ブランドをちゃんと立ち上げられればいいなと。「Aero」シリーズと「1$-GAMES」で、ユードーのゲームはクオリティが高いとか、変なゲームが多いとか、そういう風に確立したいですね。

――ゲームがあふれませんか?

南雲氏 : ええ。それで将来的にはApp Storeも日本の成熟したモバイルマーケットと同じになると思うので、課金モデルじゃないところまでいければと。広告モデルなども視野に入れていきたいですね。

――具体的には? ゲーム内広告などですか?

南雲氏 : それは当たり前なので、会員を囲い込むイメージです。たとえばウェブと連動させるとか。他にも「Ocarina」という楽器アプリが人気ですが、これと同じようなスタイルで、コミュニティを構築したいですね。ゲームの本数がどんどん増えているので、もうApp Storeの画面だけでは、ゲームの内容や品質が判断できなくなっていますよね。レビューもサクラが多いという噂もありますし。

※ 「Ocarina」 …… 米Smuleが開発したiPhone向けの楽器アプリケーション。iPhoneをオカリナに見立てて、画面上の4つの穴を押しながら、マイクに息を吹き込むと演奏できる。GPSと連動しており、演奏データをサーバーにアップロードすると、リスニングモードで表示される地球儀で、アップロードした位置から音楽が溢れるように流れてくる。

――「Aero」シリーズでもタップやフリックなどのインターフェースを意識した作りになっていますが、iPhone/iPod touchならではの可能性は、どこに感じられますか?

南雲氏 : マルチタッチとGPSですね。入力方法とコミュニティという意味です。

――「1$-GAMES」の展開を教えてください。

南雲氏 : まず2作あって、1つめは「SPY BUG RADAR」という盗聴器発見ゲームです。2つの周波数の音が鳴っているので、本体を動かして位相を調整していきます。ぴったりあうと、盗聴器が発見できた、という仕組みです。映像がなくても遊べるのがポイントです。もう1つは「Cutie Scratch」というゲームで、画面上のイガイガをよけながら画面上を指でこすると、次第に下の女の子のCGが見えてくる、というものです。最初は脱衣形式にするアイデアもありましたが、さすがにやめました(笑)。来年はこういったカジュアルなゲームを、最低でも月に4本リリースして、来年はゲームの発売本数世界一をめざします。

――おもしろそうですが、1社でやるのは大変では?

南雲氏 : はい。それでAppleからもOKをもらいまして、クリエイターの方々のゲームの販売代行も行ないます。逆に、いいアプリケーションやアイディアを持っているけれど、デザインができないとか、サウンドがつけられないといった場合は、僕らが一緒に作って、出していく。そういうことを、来年は本気でやります。

――フットワークが軽いですね。

南雲氏 : みんな興奮しているんです。特にプログラマーがいちばん喜んでいますね。自分たちが開発したものが、すぐに世に出て、フィードバックももらえるので。今週もずーっと調整をしていて、2日くらいしか帰っていないんですよ。ゲームを開発するのが、こんなに面白いものかというのを、久々に感じています。

――DSのカートリッジがあって、Wiiウェアがあって、そしてiPhoneにたどり着いた。

南雲氏 : iPhoneというより、App Storeですね。僕が子供の頃にYMOに出会ったのと、インターネットを知ったのと、App Store、というくらいの衝撃です。

――来年はWiiウェア版の海外展開も始まって、いよいよ楽しみですね。ありがとうございました。

【Cutie Scratch】
トゲトゲの敵に触れないように画面をこすり、時間内に隠れた画像を完全に表示させるゲーム。画像は犬や猫の写真、女の子のイラストなどがあり、それぞれ別のソフトとして配信されている


□ユードーのホームページ
http://www.yudo.jp/
□「1$-GAMES」のページ
http://1dollar.yudo-games.com/
□関連情報
【11月6日】ユードー、iPhone/iPod touch用リズムアクションゲーム
「Aero Guitar/Synth/Drum」を全世界へ配信
http://game.watch.impress.co.jp/20081106/aero.htm
【10月13日】モバイルゲーム出展ブースレポート
規模は縮小気味ながら、iPhone用音楽ゲームなども登場
http://game.watch.impress.co.jp/20081013/mob.htm
【6月5日】ユードー、Wiiウェア「Aero Guitar」
ギターの演奏気分が味わえるギターゲーム
http://game.watch.impress.co.jp/20080605/aero.htm
【2007年8月29日】食事バランスガイドやエクササイズガイドで生活習慣を改善
ユードー、DS「健康検定」
http://game.watch.impress.co.jp/20070829/kenko.htm

(2008年12月3日)

[Reported by 小野憲史 / Photo by 石田賀津男]



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