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会場:サイバーステップ本社
先の10月21日の開催された制作発表会では、アバター要素やマイルームなどゲームそのものの発表のほか、韓国を皮切りとした海外展開やWii版の開発着手など、デベロッパーとしての強みを活かした広がりのある構想が発表された。 こうした戦略の舵取りを行なっているのが、代表取締役社長の佐藤類氏だ。「開発はまったく知らないし、わからないので、現場に任せてます」と公言してはばからない正直な人柄が印象的な佐藤氏だが、そうした性格は同社主催のオフラインイベントや社長ブログでも遺憾なく発揮されており、ユーザーからの支持も厚い。
今回はその佐藤氏に、最新作「ゲットアンプド2」を中心に、同社ラインナップの最新情報を伺った。 ■ 「ゲットアンプド2」の開発経緯とその魅力について
佐藤類氏: 2000年の4月にサイバーステップを創業して、2002年の5月に創業から2年かけて韓国で契約の締結にこぎつけました。そこから1年かけて韓国で有料化に至りました。2003年の5月に海外サービスを成し遂げ、中国やタイや台湾が続き、サービス当初から各地でユーザー数が増えました。1年ほどで100万人の会員数を突破してしまうくらい数字が延びて、海外の運営会社から「ゲットアンプド 2」を作ってほしいという強い要望があったんですね。 編: それは「ゲットアンプド」サービス開始直後から? 佐藤氏: 「ゲットアンプド」をサービス開始して1年くらい後からです。それは会社が「ゲットアンプド」屋さんから、開発会社に脱皮するための新たなチャレンジでもありました。「ゲットアンプド」はマッチング型のカジュアルゲームでしたが、次にチャレンジすべきはMMOではないかと思い、そこで2003年の5月から「C21」の開発に着手しました。「C21」の開発には2年を要し、自社サービスで単月黒字にするのにさらに2年かかりました。 一方、「ゲットアンプド」もピークは過ぎているので売り上げが横ばいになってきている。2006年に上場する機会もあり、その時点で2年分の決算が必要で、そこに関してはかなり保守的な事業計画が必要でした。私も国内立ち上げに専念していました。上場をしたけれども次の弾がない。2006年9月ごろに私が社長に戻ったのですが、一緒に創業した大和田(豊、サイバーステップ取締役)に開発の立ち上げに着手してもらいました。今度は1本というわけにはいかない。2年かけて1本ずつというわけにはいかないですし、彼でなければいけないというのは非常に負担が大きい。また「C21」を海外から買ってもらえず海外展開が不調でした。そこで、海外で通用する「ゲットアンプド2」の開発部隊も同時に立ち上げました。大和田の下に小川というものがディレクターで入り、同時平行で2本の開発ラインを作りました。 「ゲットアンプド2」は、開発当初から1年くらいで形ができる見込みでしたが、韓国が早い段階で契約締結していただけたので、早い段階から要望を盛り込むことができました。結果的にはトータルで2年かかりました。今後さらに半年はかかると思いますがアジアに向けた着手をしていきます。「ゲットアンプド」で5年6年かかった実績を2年半ほどで実現できています。会社の状況も影響しながら、この2年間こつこつやってこれました。開発に協力してくれているパートナーを含めてサービスできることをうれしく思います。 編: 「ゲットアンプド 2」の開発に着手する際、開発会社のトップとしてどのようなゲームにしようと思いましたか? 佐藤氏: ユーザーさんの夢を砕いてしまうかもしれませんが、僕は開発には一切関与していません。創業者は僕を入れて3人いて、僕は人やお金を集めるための旗振り役です。大和田がプロデューサー兼ディレクター兼メインプログラマー兼、「ゲットアンプド」にいたってはBGMや効果音やモーション周りの監修やユーザーインターフェイスまでやっています。もうひとりの浅原(慎之輔、サイバーステップ取締役)が数学や物理に強く、サーバーやネットワーク、インフラ周りをやっています。「ゲットアンプド」では、「ネットで今までにないようなアクションゲームができると良いな」と思ってやっていましたが、実現をしたのはその当時から大和田や浅原でした。 編: それでは「ゲットアンプド 2」のゲームデザインに関して、佐藤さんが口を挟んだことはほとんどないということでしょうか。 佐藤氏: 100%ないですね。出てきたものを見てむしろ驚いています。お恥ずかしい話ですが、先日の発表会で、僕のプレゼンはまるでプレーヤーのような発言に終始しました。クエストがあることやマイルームがあることやスキンがこうなっているとか、エモーションがこういう演出になっているとかまったく知らないのです。僕はクローズドβテストをやって純粋に楽しんでいました。 編: オンラインゲームは開発して終わりではない。運営をしなければならない。そのほかにも海外展開、プロモーション、マーケティングなど様々な要素があります。ゲーム外の部分が佐藤さんの担当ということですか。 佐藤氏: そうですね。年末から今年にかけて私がやっていたことは海外ライセンスです。今も昔も変わりませんがノートパソコンの中にゲームを入れて、言葉も通じないところに持っていって見せて「面白いでしょう?」ということをやります。 会社でいえば予算や設備や外部委託といったものになりますが、あくまで作品を良くするために、社内の技術が足りないところをスキルの高い社外の会社に委託したり、サウンド周りもチープなものでなくて良いものにしよう、今回の「C21」も作品にメリハリをつけるために一流の方を頼んでいる。金銭的なバックアップを僕がやっているわけです。先々の稼ぐ弾として海外営業をやっている。今の開発に対して僕ができることはクオリティアップのための資金的な承認なのです。僕が開発に対してかかわることはそれくらいです。 編: 今回、プロジェクトの全体を見渡してみて、一番苦労したことは何でしょう。 佐藤氏: 常に苦労している状態なのですが、未知の分野に進むことにあたって、必ず全員に見えるようにしなければならない。今の我々に一番大きな収益はロイヤリティですから、海外展開がポイントになります。「ゲットアンプド 2」は海外の運営会社に協力いただいていますので、しっかりとパートナーシップを結び、良好に進むことが大事です。国内に関しても「ハンゲーム」さんに早い段階から繋ぎ込みをしています。 「ゲットアンプド 2」では、サーバーは「ハンゲーム」とサイバーステップで分けます。ハンゲームを楽しんでいる方はハンゲームのユーザー同士で楽しんでもらえる環境を構築します。サイバーステップのユーザーは「ゲットアンプド」のユーザーがいますし、「C21」のユーザーがいます。いわゆるゲーム媒体を良く見られる比較的コアなゲーマーの方が出会える場所だと思います。かたや「ハンゲーム」の場合は、そのコミュニティの中で楽しまれている方が多い。それを混ぜてしまうのは良いことなのかと考えたんですね。 「ハンゲーム」のユーザーは「ハンゲーム」のユーザーで楽しんでいただける形にしつつ、サイバーステップのユーザーだった方は、こちらでプレイしていただく。そしてまだ確定ではありませんが、日本一決定戦をやるときは各サーバーから代表を選んで頂上決戦をやろうかといった楽しみも広がるのです。 編: ご自身で熱心なプレーヤーだということですが、実際にゲームをプレイしてみて、良い部分、悪い部分は何か感じましたか。 佐藤氏: 声優さんが「ハマるとやばいからやらない」といった気持ちがわかりました(笑)。代表取締役社長という肩書きがない状態で、「ゲットアンプド 2」に出会ったらヤバいなと思いますね。社内のSNSにも書いたのですが、リアルで会ったことのない人とコミュニケーションが密になって、最近社員よりもプレーヤーとのコミュニケーションの方が多いと。インゲームのユーザーとは格好を見ただけで誰とわかり、こんにちはとなりますが、社内では社員が100人も超えると顔はわかっても名前まではわからないことも多くなります。これはちょっとまずいなと(笑)。そういう感じです。 編: どのあたりにハマってしまうと感じたのでしょうか。 佐藤氏: 「ゲットアンプド」の面白さは、お笑いを見たり、プロテニス選手の試合を見て感動するという楽しさに近いものがあります。そして「ゲットアンプド 2」の楽しさは居心地の良さです。前作の「ゲットアンプド」は遊ぶときにしか起動しません。しかし、「ゲットアンプド 2」ではとりあえず起動してログインすると、定番のポジションに座るのです。「GATスタジアム」の階段の近くにいってまずは座ります。すると誰かしらが近くに来るのです。私が打ち合わせで席を外して戻ってくると、隣にその人が座っているのです。時々寝落ちのように繋がらないこともあるのですが、会話がつながるとエモーションで感情を表現したり、対戦で交流を深めることができます。そのほかにもフレンドやギルドといった機能もあり、居心地がよくて1日中ログインしてしまいます。 編: 「ゲットアンプド 2」の良さはビジュアルロビーの空間とコミュニケーション性が肝だということですね。 佐藤氏: 座っていじいじと泣いていたり、笑っていたり、チャットよりもエモーションのほうが多いような気がします。あとはその場所に座っているなどです。空間とスキンとコミュニケーション性の充実が重なっていて、ランキングで育てる要素がある。縦横と奥の深いつくりになっていると思います。 編: 現時点でユーザーとして不満はありますか。 佐藤氏: ストーリーの先を知りたくなってしまいます(笑)。オンラインゲームはどうしても育成寄りになったりコレクション寄りになってしまう気がします。「ゲットアンプド 2」はストーリー性があります。レベルを上げていかないと単行本の次が読めない仕組みになっている。とにかく時間をかければ進めるようにはなっているのですが、次に進めば進むほど、次を読むのに時間がかかってしまいます。僕はそこまで時間がないのですが、正直早く読みたくなってしまう。どういうことがあるのだろうというじらされる感覚があります。不満ではなく欲求があります。先を知りたいのだけど、簡単に教えてくれないというのがジレンマです。 編: ストーリー要素は、クエストをクリアしていけば見られるものですか? 佐藤氏: 基本的にはそれぞれの時間軸でアドベンチャーゲームをクリアしていくようになります。プレーヤーのランクに応じたストーリー展開になります。「ドリラー」、「ファイター」、「ウォリアー」、「チャンピオン」、「ヒーロー」とランクがあるのですが、「ドリラー」から「ファイター」になる節目で、イベントが発生します。そのイベントがアニメの1シーンのように展開され、次にどうするんだというところで「続く」となる。その次を見るためには「チャンピオン」を目指さなければなりません。しかし、どのタイミングでランクがあがるかは開発者しかしらない。はじめは10時間くらいでサクサク進むのですが、その後からはなかなか進まない。要所要所にクエストや謎解きが入ってきます。1人でやっていたらコンシューマゲームだと思います。オンラインでやるときに、上位のプレーヤーを見ると「まだ知らないところを知っているのだ」という見方になると思います。「ゲットアンプド 2」のこうした要素が大きな魅力だと思います。 編: 「ゲットアンプド2」は、「ゲットアンプド」のフルモデルチェンジバージョンであり、「ゲットアンプド」をやっていた人は必然的に「ゲットアンプド 2」をやりたくなってしまうのではないか。結果として「ゲットアンプド」から乗り換えてしまうユーザーは多いのではないかと思いましたが。 佐藤氏: 僕らにできることは良いものを提供するだけです。遊んでいただけるだけでもありがたい。むしろ「ゲットアンプド」は対戦格闘で共通ですので、乗り換える動きがあるのかなと感じていたのですが、不思議なことに先月のオフラインイベントでユーザーと話した限りでは、「ゲットアンプド」は「ゲットアンプド」で、「ゲットアンプド 2」は「ゲットアンプド 2」だといわれてしまいました。開発のコンセプトとしても「ゲットアンプド」は対戦格闘なのです。一方で「ゲットアンプド 2」はボタンを連打してもそれなりに遊べるデザインになっています。シビアな「ゲットアンプド」に対して「ゲットアンプド 2」は違うものなのです。 予想外だったのが「C21」と「コズミックブレイク」です。両者はMMORPGとFPSアクションくらいの差があるタイトルなのですが、こちらの方が食い合う結果になってしまいました。ロボが好きだという人たちが重なってしまったのかもしれません。見た目は近いですがゲーム性はまったく異なります。「ゲットアンプド」よりもこちらのほうが食い合っていますね。夏休みに「コズミックブレイク」のクローズドベータを行なったら半分くらいのユーザーが「C21」から来たユーザーでした。とはいえ、いずれのタイトルもわれわれにとってはメインのコンテンツですので、開発および海外に対するサポートについてはむしろ競わせるつもりで育てていきたいです。
■ 1はコア向け、2はマス向け。似て非なるゲームデザイン
佐藤氏: アクション性に関しては、「ゲットアンプド」は繰り返しバージョンアップしてきているので、新規である「ゲットアンプド 2」と同じぐらいのアクション性はあるのです。1と2でもっともわかりやすく変えたものがガードです。「ゲットアンプド」では攻撃ボタンを同時押しするとガードになります。相手の攻撃を先読みしてガードを入力するわけです。一方で「ゲットアンプド 2」ではオートガードです。相手が攻撃してきた際に、単純に同じ攻撃ボタンを押すとガードになるのです。 たとえば相手が強攻撃を出してその直後に強攻撃を出すと防御になるわけです。攻撃のつもりでボタンを連打していると防御するような形になります。それを外すために、強攻撃を防げるものが強攻撃のガードです。向こうが弱攻撃を放ってくるのにあわせて弱攻撃を入力するとガードになります。「ゲットアンプド」は先読み式で、「ゲットアンプド 2」はじゃんけん式であるといえるでしょう。 一発死のルールも変わりました。初心者には厳しいルールですから、2では体力がなくなるといったんリングアウトして戻ってきます。武器に関しても、「ゲットアンプド」では武器はマップに落ちていて、拾っても攻撃を食らうと落としてしまい、その武器を奪われてしまいます。自分が強い武器を持っていっても武器を落とすと自分が不利になってしまう。「ゲットアンプド 2」では武器はすでに装備しており、フィールドには落ちていません。アイテムボタンを押すと自分がセットした武器をストックされている回数分振ることができます。得物が奪われることはないわけです。 武器は比較的手軽に使えるものになっていて、自分が強い武器を持ったからといって相手を利することはない。初心者に優しく上級者も楽しめるつくりになっています。ガードも「ゲットアンプド」のユーザーを意識して、マニュアルでのガードも選べるようになっています。上級者とある程度戦ってみて、勝てないこともありますけど結構戦えたという気持ちになれます。 編: そうしたゲームデザインは、開発側(サイバーステップ)で考えられたものですか、それとも運営側(韓国Windy Soft)で考えられたものですか? 佐藤氏: 根幹の部分は社内ですね。こういう遊び方があるといったバリエーションやこういうポイントがついているというものはサービスにより必要な要素は社内で行なっています。等身やビジュアルや楽しみ方という点ではWindy Softさんから数多くの要望をいただいています。 編: 初心者を意識したゲームバランスを採用したことについて、サイバーステップさんの中で「ゲットアンプド」ではまだ難しかったという判断があるわけですか? 佐藤氏: アイテム課金型のカジュアルゲームとして登場して方向性がそうなってしまったということがあると思います。強い武器が売れますが、だんだん強さのインフレを招きます。ユーザーも緊張感を求めるようになり、最初は広かったステージも後の方になると狭くなってくる。始まって3秒で終わってしまうような緊張感が求められるようになり、それが楽しまれるようにもなりました。しかし、「ゲットアンプド 2」は新規ですから、まずは広がりのある方向性にしました。 編: フィールドも広くなって戦いやすくなっていますよね。 佐藤氏: まず「ゲットアンプド」と共通するところで、デザイン性を重視しています。まずは見た目がきれいであることです。2Dでスケッチして3Dに起こしています。対戦のためにこうしようといった意識はありません。そこから「ゲットアンプド 2」はアトラクション性を高めています。高いジャンプができたり、天井裏で戦えるような仕組みです。シャンデリアの上など場所が色々広がっています。もう1つに時間軸です。最初は広かったステージの1部がだんだん狭まってきて最終的には1箇所で戦えるような形もあります。1Fに加えて2Fでも戦えるようになったけど、最終的にはそこはいられなくなるといった時間軸の要素が考えられています。 編: 「ゲットアンプド 2」で盛り込まれた新しいギミックにどういったものがありますか。 佐藤氏: まずはバネで飛ぶのと、砲台に乗ると砲台目線になれます。「マリオ64」で砲台に乗ったような形です。そういうちょっとユーザー視点が取り込まれています。後はトラップなどもあるのですが、時間によってパーツが剥がれたり、小さな爆弾が埋め込まれているといった要素が入っています。後は純粋にたたくと得点になる樽などがあります。「ファイナルファイト」のドラム缶の要領です。壊れるものがいくつもあるので、単に叩いてまわるだけでも楽しいです。 樽などを破壊するとアイテムやポイントが手に入ります。だから僕はチーム戦で2対1になったときに「ちょっと卑怯だな」と思ったときは端っこで樽を叩いています。その間に1対1で戦っている。ストレス発散ではありませんが小遊びができるオブジェクトがほぼすべてのステージに盛り込まれています。 編: といった点では、コアユーザー向けの「ゲットアンプド」と、マスにアピールできる「ゲットアンプド 2」ということで、完全に棲み分けができたということでしょうか。 佐藤氏: 対戦格闘になりますので、ぶつかってもおかしくないですし、海外でもぶつかることは避けられないと思います。そういう意味では「マリオゴルフ」と「マリオカート」というような棲み分けはできていないです。同じ対戦格闘ですのであまり棲み分けは気にしませんでした。 編: マイルーム機能についてどのような期待をお持ちですか。 佐藤氏: 日本で1番アバターで成功されているのは「ハンゲーム」さんだと思います。「ハンゲーム」のユーザーさんの楽しみ方を見ているとゲームを楽しんでいる方もいれば、一方でアバターパーツや「ハンゲーム」でいうところの「マイルーム」に対してすごくこだわりを持っているユーザーさんがいらっしゃることも事実です。 僕の感覚ではわからなかったのですが、実際「ゲットアンプド 2」で自分で作ってみて、人の部屋を見に行ってみるとすごく面白かった。人のお部屋に遊びに行ってこそこそ話しができるのです。時々うちのゲームマスターが食事にいったり、打ち合わせにいっているときはログアウトしているのではなく、マイルームに引っ込んでいるのです。その時間帯にそいつの部屋にいくとマイルームにいて、「何をしているのだ?」と聞くと「食事に行っています」といった話しをします。オンラインゲームはどうしても拡声器で話しているような感覚になっていますが、公に話しにくい会話を「マイルーム」という敢えてオンラインゲームなのに狭い空間を用意してやることで、気兼ねなく会話ができる。SNS的な楽しみ方ですが、足跡が残ったり、1行メッセージを残すことができる。郵便ポストを覗きにいくような感覚になります。誰かから何かメッセージが入っていてそれに返事を書いてみる。 サイバーステップのゲームの強みはリアルタイム性と、インタラクティブ性です。メールはインタラクティブに送ることはできてもリアルタイムではないのです。電話くらいはリアルタイムでインタラクティブですが、Webやメールや掲示板もコミュニケーションツールとしてはインタラクティブですがリアルタイムではない。オンラインのサービスで双方向かつ実時間でコミュニケーションできるものはオンラインゲームでしかない。そこがゲームの強みなのです。ウチのゲームは特にインタラクティブ性とリアルタイム性を重視した結果、言葉ではなくアクションで会話が成立するようになっている。逆にマイルームではある意味その部分を否定している。リアルタイムでなくてもコミュニケーションができる。その2つが売りだと言ってきましたがそうでなくても楽しさが提供できてしまうことに感動しました。 編: マイルームでは友人との会話以外に何ができますか? 佐藤氏: まずは家具を配置します。椅子に座れたり、人形を叩いたり、ピアノのような家具から音が鳴ったり、ダーツを投げることができたり、ちょっと遊ぶことができます。それからフレンド一覧を見たり、足跡を見たり一言メモを交わしたりその人の部屋に飛ぶことができます。 編: バーチャルワールドのサービスはいくつもありますが、そこでSNS的なサービスが提供されていて、できることはそれほど違いがないと思います。世間にあるバーチャルワールドとの違いは何だと思いますか? 佐藤氏: 古い話ですが、コミュニケーションの言語の1つにゲームがあったら楽しいだろうなと思いました。「ドラクエ」をやっていたときにゲームの世界を通じて会話ができたことがありました。一緒について歩けるわけではないのですが、知識では共有しています。それと近いことではあると思います。それがオンラインになることで、物理的な距離感が関係なくなります。ゲームが会話の言語の1つになると、韓国の中学生と日本の中学生が会話ができたりする。スポーツは物理的な距離が近くないと成立しませんが、オンラインのエンターテインメントだとそういうものがありません。 編: コミュニティツールとしては、もっと多機能な外部のツールがあるわけですが、「ゲットアンプド 2」の中にあえて導入した理由は何ですか? 佐藤氏: 3D空間では「セカンドライフ」がありますし、テキストでは「mixi」がある。いろいろなものがあって、なぜうちだけがゲームなのだろうと自分で時々思うのですが、僕たちの判断基準は楽しいか楽しくないかだけなのです。楽しければアクションRPGだってFPSだって、Webサービスだって良いわけです。僕らが作る側だという義務感もありますが、やりたいという気持ちがある人間が集まっている。そういう土壌で人が集まったからそういうことをしている。僕らは世代的に任天堂と手塚治虫に育てられているので自然発生的にそうなっているのかなと考えている。だから「セカンドライフ」は作りたいとは思わない。古くいえば進化論みたいなものなのです。 編: マイルームの終着点はどこにあるのでしょうか。 佐藤氏: 広さが拡張されていきます。最初は8畳一間、6畳一間の家具の1つもない部屋ですが、それが倍くらいの広さになる。窓もついたり、家具を置けるようになり、中2階が提供されたり、クエストをクリアすることで立派な部屋がもらえたりと、広さやデザイン性の幅が広がります。戸建の家みたいなものが広がります。東京都下のワンルームマンションから区内の鉄骨のマンションに入って、最後は麻布や六本木の高級マンションの最上階のようなところに行き着くと思います。 編: マイルーム内では、何が有料で何がゲームマネーになりますか? 佐藤氏: アバターパーツに関しては手軽に遊べるようにしたいです。感情を表現するエモーションもコミュニケーションに使ってもらいたいものなので、極力ゲームマネーで楽しんでいただけるようにしたいです。ゲームの攻略に必要な武器などもゲームマネーで購入できるようにしたいです。対戦していてもタダで手に入るのですが買い増すとしてもゲームマネーで買えるようにします。基本的に対戦に必要なアクセサリもそうです。基本的なスタイルや職業も幅広く遊んでいただくためにゲームマネーで提供されるのが良いと思います。 未公開のスタイルや上級のスタイル、戦いの幅が広がるアイテムについてはリアルマネーの方向で考えています。ただし全部が全部そうでは楽しめないので、未公開ですがお試し版アクセサリを開発しています。期間限定や回数制の商品みたいにちょっとしか使えないようなものを「ゲットアンプド」でもやったのですが、永久に使える代わりに機能を絞っています。ノーマル技は出るのだけど、必殺技だけ出ないとかそういったものです。普通に有料のアイテムで買うと3連コンボ+アッパーカットが出るものを、超必殺技だけは出ないというものです。出来上がっているものの一部をオフにするだけですから「Office」の製品と同じですよね。この価格帯ではここまでしかできないですけど、この価格帯ではここまでできるというものです。半分くらいの機能はゲームマネーで使うことができる。使ってみてそれなりに使うことができるというものを開発側が主体となって企画しています。 編: マイルームの家具はどうなりますか。 佐藤氏: 会社としては初の試みなので、慎重に考えています。クエストの報酬やここまでいったら貰えるとか、ゲーム内マネーやリアルマネーで購入できるといったスキームが考えられますが、11月6日が正式サービス開始になりますが直前まで社内で喧々諤々することになると思います。 編: 佐藤さんの希望はいかがですか。 佐藤氏: やはり楽しんでもらわなければいけない。楽しんでもらうためには、サービス側とユーザー側の視点の両方が必要で、僕は個人としては楽しめてもユーザーの視点にはなりきれないです。突き詰めると社内の議論は必須です。その結果どうなるかというのはわかりませんが、きちんとゲームをやってランクが高くなっている方に関しては、ランクが上がることは名誉なことなので、リアルマネーに限定せずにそうした部屋が手に入る。ランクが上がってないで手に入るのではなく、ランクが上がってから初めて手にできるくらい難易度が高いものであればゲームマネーでもかまわないです。後はゲーム性と絡めたり、出し方を考えていくことです。 編: 客単価はどう推移すると考えていますか? 佐藤氏: 国内では高くなっています。客単価が高くなっていくことで収益性を高めています。しかしこれ以上超えていけない線というのは必ずあると思うのです。僕らのサービスは勿論国内向けなのですが、海外においても僕らの値付けは基準になるのです。基準を最初に決めるという点で慎重にならざるを得ない。「ゲットアンプド」では買いきりで1人1個までという制限がありました。「ゲットアンプド 2」では家具など複数買えるサービスになります。ですから「ゲットアンプド」よりは高くなると思います。
■ スキンの自作要素について。佐藤氏「我々はむしろ公認する」
佐藤氏: 「ゲットアンプド」といえば、スキンなしでは語れない要素です。「ゲットアンプド」でできることをどこまでできるようにしようかという議論がありました。たとえば顔の色を塗りやすかったり、髪の色に自然とてかりが出やすかったり、作りやすいというのはもちろんですが、作りやすいだけでなく髪のパーツごとに形を変形できるといったところで、「ゲットアンプド」を上回るつもりで盛り込んでいます。 まだ試作段階ですがFlashと連携させることで、Web上でも自分のキャラクタスキンをグリグリ見ることができます。たとえば「ゲットアンプド」も「ゲットアンプド 2」もそうですが、スキンには自分で作るものと、人が作ったスキンを貰って自分のキャラクタとしてアップするという2つの方法が用意されています。ただ、人が作ったものは改変できなくなっています。作り手の意匠ということもありますし、キャラクタに含まれているパーツの違いもあるので、自作する場合と人が作ったものを使う場合というのは購入方法が違うのです。人が作ったスキンでも作者の許可があれば改変できるような機能を実現しようかなと社内で企画しています。 編: スキンに関して、今後足していきたい機能はありますか。 佐藤氏: お披露目できる場が現在はインゲームだけですが、公式サイトに表示させるのはもちろん、ファンサイトやブログパーツとしてURLを引っ張れば表示させることができたり、ゲーム内装備を変えればそちらも改変される。携帯電話では自分が使っているキャラクタがいつでも待ち受け画面になっているというような連携を深めたいなと思います。そうすることで見せられる場が広がると感じています。 編: 「ゲットアンプド 2」では色々なスキン作品が生まれていますが、ユーザーさんのクリエイティビティについてどのようにお考えですか。 佐藤氏: 日本ではアスキーアートやユーザークリエイティブでやっているものはネットだからというわけではありませんが、インターネットを利用している人たちはそういうコミカルなのだけど変なテイストを入れていて楽しいものを作れてしまう。普通の企業では作れないテイストを作れてしまう。そうしたセンスがある人があふれていて、会社としてもそういう使い方をして頂けるとうれしいですし、個人としても楽しいと思います。 編: 今後コンテストのようなものが行なわれる予定はないのでしょうか。 佐藤氏: 企画では11月中に行なわれる予定です。サイバーステップのサーバーと「ハンゲーム」のサーバーの両方でやります。SNSがあるのですが、そこでクローズドベータ中にも集めました。そのときのスキンコンテストはSNSの中で行なったのですが、インゲームの中のスピンスクエアで集まってくださいといった形で、町を練り歩こうよといったことも私から運営に提案してみました。スピンスクェアからGATスタジアムをみんなで移動して、プライムマーケットでデパートを歩く。インゲームの中にいる人たちは驚くと思うのです。リオのカーニバルのようなものを目の当たりにするわけです。少なくとも20~30人は集まると思うので、最後はエモーションで万歳三唱でもしてみようかなというものを11月中に両方のサーバーでやろうと企画しています。 編: スキンに関しては海外での売り上げはどうなのでしょうか。 佐藤氏: 凄く良いです。「ゲットアンプド」の売り上げの10%以上はスキンです。会社としても勿論収益に影響するということはありますが、継続性が一番大きいと思います。各国の運営会社の社長の方が「ゲットアンプド」はどうしてこんなに息が長いのだと質問されるくらい遊んでもらっています。他のゲームでは旬がありますが、「ゲットアンプド」でも当然波はありますが4年、5年サービスし続けていてもきちんと収益になっている。アクションゲームである普遍性に加えるものがあるとすればスキンの要素であると思います。これほど気に入られている機能はありません。 編: スキンを0から全身作ろうと思ったらどれくらいの価格がかかるのでしょうか。 佐藤氏: まずはボディパーツを買わないとテクスチャを貼ることができません。どの国でもボディパーツはリアルマネーで売られていてそれほど高くはありません。日本韓国台湾に関しては自作スキンについては300円から330円です。人が配布しているスキンを使う場合は360円から390円くらいです。それは人が配布しているスキンには自分が所持していないボディパーツが含まれている場合があるのです。それでも使えてしまう分プラス30円から60円分上乗せされています。自作される場合は300円前後でずっと使えます。中国ではユーザーの母数や物価が違いますので、20円から30円くらいで使うことができます。 編: 売り上げの10%とのことですので、もっと高額なのかと思いましたが、意外と安価ですね。 佐藤氏: 1体では終わらないわけです。各国で売り上げベスト3にはスキンをアップロードするアイテムがほぼ入っています。スキンはストックできる数が決まっていて、標準は3個までです。最大でプラス何個か増やせるのですが、標準の状態では3個以上買う場合は1個上書きして塗りつぶさなければならない。ですから1人が月に何個も買っているわけではなく、幅広く買っていただいています。 編: 発表会でも話題になっていた、著作権に抵触するようなコンテンツの扱いについて考えを聞かせてください。 佐藤氏: 我々はむしろ公認するというイメージで考えています。会社としてスキンを使うことに関してユーザーが使うことを認めていきます。何かあれば会社のほうが対応しますし、きちんと責任を持ちます。ユーザーさんに責任を求めたり使ってはいけないようなサービスを提供することはありません。会社としては企業の活動である発表会で公にしているということは公認するという意思表示なのです。 なぜ公認することにしたかというと、見る人が見ればそれがアニメキャラをモチーフにしたかどうかは明らかなのですが、純粋にユーザーに作られたものであるなら、ボディペイントと変わらないわけです。自分の顔にひげを書いて「ドラえもん」といえるかといえば、遊びだからという言い方ではありませんが、その範疇なのです。うまい人はいるかもしれませんが、その中にコミカルな要素が入っていたりして、僕らからすれば独創性のある作品だと解釈しています。 編: それでも良いこと悪いことはあると思います。その線引きはどこでされるのでしょうか。 佐藤氏: 僕らがダメというのは単純な例では肖像権と物理的な著作権です。ユーザーの中で人の顔写真とか張ったりするのは肖像権を侵害しています。自分の写真ならまだ良いのですが、人の写真を嫌がらせで貼るようなことは辞めてほしい。僕の顔写真も使われることがあるのですが、それはだめだよと。それから公序良俗に反するものもだめです。また、ネットなどに落ちているデータをそのまま貼るというのは著作権侵害です。 編: たとえば韓国ではキティちゃんが大人気ですが、必ずキティちゃんスキンが生まれることになりますが、自作ならかまわないだろうと? 佐藤氏: 版権の収益を不適切に侵害するのは良いことではないです。ただ、髪型を似せる、化粧を真似る、しゃべり方を似せる、衣類をそろえるといったことはエンターテインメントなのかビジネスとして犯してはいけない領域なのか世の中では決まっていません。僕らが守れるのは肖像権の侵害という要素と、ネットに落ちているデータを勝手に使うといったものです。
■ 気になるWii版「ゲットアンプド2」。海外展開、オフイベントはどうなるか?
佐藤氏: 私の口の軽さが災いしました(笑)。任天堂さんと開発契約は交わしています。完成するかはわかりませんが着手はしています。 編: 完成するかわからないというと、売るかどうかもわからないということですか? 佐藤氏: そうです。まずはやってみると。まずやってみて痛い目を見て、さらに押しすすむというのがやり方なのです。新規ですから仕方ないです。 編: Wiiに向いたゲームデザインだとは思いますが、インターフェイスやビジネスモデルなど考えなければいけないことは多いですね。 佐藤氏: その辺は形が見えてから考えたいです。3カ月くらい前に開発に着手して、現在発売日は未定です。コーポレートとして大々的にこうだということはまだないです。 編: 投資家からするとWii版を出すというのは大きな情報ですよね。 佐藤氏: 僕らからすると先生は任天堂ですから。任天堂のプラットフォームでやれるということで楽しみにしています。 編: 海外展開では韓国でWindy Softさんは決まっていますが、今後はこれからということでしょうか。 佐藤氏: 詰めているところは詰めているのですけれども、まだ適切に発表ができないだけです。どちらかといえばWindy Softさんは最重要なパートナーですからお互いに契約締結を明確に発表することで公に行動ができます。今回も開発に関して両者に打ち合わせをすごく重ねています。サービスの目処を立てることが重要で、今回日本での正式サービスが立ち上がることでいろいろなことが具体化していくと思います。韓国では来年の中旬を予定しています。ローカライズは立ち上がった2か月でやることなので、企画提案をぶつけあっています。開発に参加していただいている感覚に近いです。 編: 北米子会社の事業目標を教えてください。北米で「ゲットアンプド 2」は遊べるようになるのでしょうか。 佐藤氏: 意地でもやります(笑)。USでやらないなんてことはありえないです。現在は販促を開始したところです。出張ベースで立ち上げましたが、よくやったと思います。これまでは私が名目上の社長だったのですが、役員の千葉に現地法人の社長を譲りました。後は千葉がどう判断するかを尊重したいです。今年の年末くらいに現地に人を雇用して、現地のプロモーションを開始していきます。今は課金方法は「ゲットアンプド」がクレジット課金でサービスされているだけなのでそれほどの大きな数のユーザーさんに遊ばれているわけではありません。 今のところは台湾から買い付けをおこなった「ホーリービーストオンライン」とタイで契約締結した「C21」です。「ゲットアンプド 2」と「コズミックブレイク」が来年はアジア方面で立ち上げがあって忙しくなっているので同時にやるものとしてその2作になります。来年中に立ち上げは行ないたいとは考えています。1年で4作立ち上げられれば形としては立派な運営会社といえるのでしょうか。 編: 「ゲットアンプド 2」のゲーム大会についてはいかがですか。 佐藤氏: 絶対やりたいです。この前オンラインオフライン合同のトーナメントをやりましたが、オンラインに関しては月に1回必ずやって強者を集めます。1カ月2カ月で大規模なオフラインイベントをやるべきではないと思いますので、今後考えていきます。僕らが継続してやってきた中にオフラインと世界大会があるので、「ゲットアンプド 2」でもやりたいなとおもいます。 編: そのイベントは「ゲットアンプド」と「ゲットアンプド 2」で別にやるのでしょうか。 佐藤氏: 悩んでいるのです。結構大会を運営するスタッフ側も大変なので。隔週で両方やっていたのを隔月でやることにしました。それでもタイトル4本になったらどうしようと。昼の部、夜の部としてもよいのですが、来ていただける方は夜行や新幹線に乗って遠くから来ていただいているので、午前中はやはり難しい。1カ月目に大規模なオフはいらないだろうと考えていますので、11月は「ゲットアンプド」、12月は「C21」とやってその後考えたいです。 編: 「ゲットアンプド」についてはなんといってもGWFですが、そのスキームも「ゲットアンプド 2」に継承されていくのでしょうか。もしくはその中の種目として取り入れていくのでしょうか。 佐藤氏: GWFはライセンシーのパートナー会社の地域でやりたいと考えているので、別の大会を立ち上げたいなと考えています。1回目は国内になると思いますが、全部の会社が「ゲットアンプド 2」を立ち上げているわけではないと思いますので。そこでジャパントーナメントといった形で、そういうサイバーステップのタイトルをすべてさらうようなものです。「C21」であればタイと日本のユーザーが対戦するような形でやりたいなと。いずれのタイトルについてもやれる場を設けたいです。 編: 「ゲットアンプド 2」の最初の大会はいつごろを予定していますか。 佐藤氏: タイミングとしては2009年5月です。ゴールデンウィークですね。次に東アジアで8月です。5月から8月という時期でやりたいなと思います。 編: 日本展開は成功を目されていると思いますが、「ゲットアンプド」サービス当初とは、市場が変わってきて同じ方法での成功の難易度は上がってきていると思いますが、日本市場についてはどのように考えていますか。 佐藤氏: 我々は海外の収益があれば国内が赤字でもなんとかなってしまいます。しかしそれではいけないと思うのです。きちんと1人前の運営会社として自立するためには国内でもしっかり収益を上げていく。そうしなければ運営会社としては認められません。「韓国の収益で食っていた」と長いこといわれていましたが、それは事実でした。ですから、きちんとした自立をするためには日本で認められ、国内で10社以内には入らないといけないと考えています。 「ゲットアンプド 2」と「コズミックブレイク」が2年ごしで開発を進めて、今年立ち上げです。僕らの強みはパートナーシップだと思うのです。開発の会社ではあるのですが、うちの大きな資産は海外のパートナーとの関係なのです。彼らと協調しながらサービスをブラッシュアップさせていく。それと同じようなモデルで国内でもやろうと思ったのです。そこで、今回「ハンゲーム」という最大手に協力いただけましたし、運営サービスを2社で開始しようということで、計4つのサイトからプロモーションが提供される。 編: チャネリングが日本で成功する秘訣の1つだというわけですね。 佐藤氏: はい。弊社とNHNさんとガマニアさんとジークレストさんです。ガマニアさんは日本よりも台湾での関係が長い会社さんですがそのご縁がありました。ジークレストさんも初期のの頃から交流させていただいて、こちらからご相談させていただきました。
■ 「ゲットアンプド X」のリニューアルの意図、今後の展望について
佐藤氏: Xになった経緯ですが、うちはもともとリニューアルを考えていて、十分な開発もしていたのです。アップデートコンテンツもマイルームや合成要素などたくさんありました。そこで東南アジアを中心に盛り上げていくためにもXにしようということを決めたのです。実は第1弾が日本ではなくタイなのです。Xのロゴはタイのユーザーが作ったのです。第1弾でタイにリニューアルするということを告知してロゴを募集したところ送られてきた20個のうちの1つです。タイはこれがいいとなったのを日本でも使うことにしました。今後これを韓国、中国やブラジルなどに広めていこうと考えています。 編: Xに相当するコンテンツは、すでにすべて実装し終えているのですか? 佐藤氏: タイでは先行したのでまだ全部を実装していないです。大きいのはマイルームや新マップを10個くらい実装することを考えています。そのほかにも合成など15、6項目を盛り込んでいます。これまでにこれほど大きなアップデートはないです。 編: 今回のX関連アップデートは、「ゲットアンプド 2」を意識してということですか? 佐藤氏: 社内でも開発同士の交流がありますからマイルームがあっても良いのではないかというのがあって、「ゲットアンプド」でも「ゲットアンプド 2」でも別ルートで着手していました。 編: 「ゲットアンプド X」については、今後どのような拡張を考えていますか? 佐藤氏: 開発会社として新規で作るものと、海外の運営会社が快適にサービスできるようにサポートするということです。新規に関してはXである程度出尽くした感があります。今後プロジェクトとしてはオランダやロシアを立ち上げたり、日本で出したアップデートをアジア各国に広めていくということがミッションになると思います。今後遊び方は色々な遊び方があっていいと思うので、マイルームや16人対戦がありますが、研究開発段階が多いのですが、ダンジョンのように探索して遊んでいくようなものを開発側は作っているようです。「トルネコ」のような自動生成ダンジョンに近いようです。後ろから見ているだけですのであまりよくわかりませんが(笑)。 編: では今後もゲームの構造を変えるような大型の新規コンテンツは、引き続き開発を行なっていくということですね。 佐藤氏: 行なっていきます。1担当が1つずつ作っていて、出来上がったものから出していくような状況です。 編: 11月以降は「ゲットアンプド 2」がフラグシップになることになります。その中で「ゲットアンプド」はどういう立ち位置になるのでしょうか。 佐藤氏: サイバーステップの中での「ゲットアンプド」は長男で、「ゲットアンプド 2」は次男です。三男が双子に近い形です。日本の運営のフラグシップは「ゲットアンプド 2」なのかもしれませんが、会社の代表作は「ゲットアンプド」なのです。ですからどうであってもなんら変わることはないです。部署的には事業開発は「ゲットアンプド」を作っていて、研究開発は「ゲットアンプド 2」を作っています。それぞれの部署の人たちががんばって作っている。DSや漫画は「ゲットアンプド」のものですし、気持ち的にはなんら変わりません。 編: あえてうがった見方をしますと、「ゲットアンプド」のDS版が発表されましたが、1はDSに収束されていくのかなと感じました。 佐藤氏: あれはコンシューマ分野に対する試みの1つです。日米欧というコンシューマが主力のマーケットに対してメインになる可能性はあるかもしれませんが、僕らは日米欧だろうとアジアだろうと広げたいのです。その方法で実現しています。 編: 開発中のDS版ですが、どういったゲームになるのでしょうか。 佐藤氏: ワイヤレスで4人、インターネット対戦では1on1でデザインしています。1人では遊べないというのはコンシューマではご法度ですので、基本はストーリー要素のある「ゲットアンプド」です。戦っていくとボスが出てきてストーリーで展開が変わってくる。そこに人がいれば遊ぶことができ、タッチペンでスキンを作ってそれでたのしむことができるというゲームです。スタンドアロンでも楽しめて、対戦だったらPCとも遜色のない形で3Dで30フレームでグリグリ動く。DS初のゲームになると思います。 編: 開発度はどれくらいですか。 佐藤氏: 言う人によって違うと思いますが、売り出し前のレベルで80%です。発売日は2009年春を予定しています。 編: DS版にはアップデートはあるのでしょうか。 佐藤氏: できないです。ただ、PCとの何らかの連携はやりたいと考えています。スキンがきちんとストックできるというのを確認して進めています。物理的なアップデートはDSはできないので、パッケージとして完成したものにします。
■ 「C21」と「コズミックブレイク」も盛況。ロボット事業はどうなるのか?
佐藤氏: サーバーを増設して負荷分散して安定をさせていく一方でバージョンアップをしていかなければならない。そのバランスをとっています。ここ1年くらいでありがたいことに急激にユーザーさんが増えましたので、それまでで普通に動いていたものに課題が出ることもありました。 編: サーバーが不安定になった原因は特定できたのですか? 佐藤氏: 無茶なロボットを出したのです(笑)。当たり判定を100個も出るような武器を打つといったことでサーバーが悲鳴をあげてしまいました。オンラインのイベントをやったら通常の2倍のユーザーに接続してきていただいて、同時接続では1,000人の時には出ない不具合が、2,000人だと出て再現性の確認が難しいということもありました。「コズミックブレイク」は「C21」の開発経験に基づいて描画やサーバー周りを活用しているので、安定した形でクローズドベータをはじめられました。大和田が直接見ているタイトルではありませんが、非常に安定して進められています。 編: 「ちょこっとテスト」はどういった目的で実施したものなのですか。 佐藤氏: 現場がやりたいといったもので行ないました。今あるものに対する確信がなかなか持てないようでした。既存のテスターの方に入っていただくことを意図しました。現場と開発がぜひやりたいということで、SNSでも反応がよかったのでやってごらんと。やってみるとすごいですね。「ゲットアンプド」よりもちょこっとテストの方が同接がよかったりしました。 編: 日本では、「ゲットアンプド 2」を上回る人気というわけですか? 佐藤氏: 国内では「ゲットアンプド」系よりも「C21」系の方が興味をもたれていると思います。アジアの中でコミカルなアクションゲームがないところに「ゲットアンプド」が出たのと同じように、オンラインでの純粋なロボというのはありませんよね。ロボを模した人間的なゲームはありますが、組み換えができるような純粋なロボというゲームはほとんどないですよね。そうしたコンテンツを欲している方に反響をいただいていると思います。 編: 佐藤さんを見るとロボットに対して凄く思い入れが強い。ゲームもありますが、リアルロボも手がけていますよね。 佐藤氏: もう1人の創業者の浅原という者がやっています。ロボにすることで世界が広がるという発想なので、謙虚な意味で僕だけではなくトップクラスの連中がそういう考えです。オンラインのエンターテインメントを作りたいのです。地域や年齢に関係なくです。 編: サイバーステップは「ゲットアンプド」とロボット事業の2本柱と考えてよいのでしょうか。 佐藤氏: ロボットはまだそこまではないですね(笑)。あと僕らはそうポコポコゲームを作れる会社ではないので、僕らは生み出して育てて広めるということを繰り返すと思うのです。自分たちで育成ゲームをやっているようなものなのです。自分たちで作ったものを育成していく。逆から言えば「ゲットアンプド」系と「コズミック」系が2本柱になるのは事実ですね。 編: 発表会でいただいたフィギュアと漫画がありました。あれは新規事業なのですか? 佐藤氏: 結果的には販促になりましたが、私はそのつもりはないです。日本的なエンターテインメントは、玩具やフィギュアやゲームといったジャンルに存在し、それはすばらしいものだと思います。自分たちがさわりだけでも理解できれば世界に向けて活用できると思っているのです。しかしどうやって活用するかわからないとビジネスにはならないのです。ですから今はとにかく作って提供している。そこで皆さんの反応を見ながら、実体験で苦労をしながら模索しているのです。 編: 佐藤さんとしては「コズミックブレイク」の漫画なども作ってしっかり事業にしていきたいと。 佐藤氏: いいえ。出版部を持つとか、本で売り上げを立てるということではないです。会社がトータル成長していけばよいのではないかというスタイルをとっています。ですから漫画単品、フィギュア単品で収益をあげるかではなく、それをすることでより多くの人に楽しんでもらえてサービスが活性化して会社もきちんと成長できればそれでよいと思います。 編: 今回が第1弾だとすると、第2弾はどういったことを考えていますか。 佐藤氏: 「C21」に出てくるコズミックロボに出てくる組み立てフィギュアも原型までは作ったのです。15センチくらいあるような結構大きなものです。パーツで組み立てられるもので、オスメスでいろいろなパーツを組み合わせられるような原型の金型を作ったのです。使い方も定まっていませんが、そういったものも世の中に提供してみたいなと。フィギュアは「ゲットアンプド」から「コズミックロボ」に進んでいます。漫画に関しては「ゲットアンプド」と「ゲットアンプド 2」を書いていますがそれを継続していくことです。読み込むにはまだまだボリュームが足りませんからね。 編: あくまで売るのではなくて無料で配ると。 佐藤氏: はい。ネットで配布しても良いと思うのです。たとえば中国や韓国で出版してくれるのであれば絵素材をすべてタダで運営会社にあげます。勝手に翻訳してくれて良いです。ゴールとしては世の中が楽しくなればよいと。 編: 同人誌の親分的な考え方ですね。 佐藤氏: そうかもしれませんね(笑)。個人やボランティアがノーギャラでやっているようなことを法人としてやってもよいではないかという程度の考えなのです。同人誌を会社が作ってはいけないということはありませんよね。 編: 佐藤さんは、経営者として非常にドライな部分と、ひとりのゲームファンとして素人丸出しの部分が綺麗に同居しているように見えます。それが1つの個性になっているからおもしろいですね。 佐藤氏: 上場企業になってから形式ばってもあまり良いことはない。ウチくらいの会社がはっちゃけないでどうするのと。模範になろうと言う考えはないですが、部門それぞれの中堅クラスの人たちが「僕もこういうものをやってみたい」と思って貰った上で、会社としてどんどんやらせてみるべきではないかと思っています。 編: ユーザーさんに向けて一言お願いします。 佐藤氏: 僕らは新しいものを作ることはもちろんですが、きちんとサービスもしつつ、サービスの内容が運営サイドとユーザーが双方向性を持ったコミュニケーションを保っていきたいです。オンラインでのイベントやトーナメントだけでなく、オフラインでのトーナメントを交えながら、ゲームの中の顔と顔を付き合わせたサービスを会社としてやっていきたいです。インゲームにはかなりウチの社員がいますので、会った時には気軽に話しかけてみて、運営の連中との距離を縮めてみていただきたいなと思います。ゲームマスターも個々に特徴がありますので、そうした部分もサイバーステップのサービスの中のコンテンツの1つだと思って楽しんでみてください。 編: ありがとうございました。
□サイバーステップのホームページ (2008年12月2日) [Reported by 中村聖司]
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