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G-Star 2008現地レポート

韓国モバイルゲームデベロッパーCom2uS 李副社長にインタビュー
“ゲーム個別パケット定額”など韓国モバイルゲームの仕組みを聞く

11月11日 収録

会場:韓国Com2uS本社

 世界のモバイルゲーム市場において、日本と韓国は先進地域と言われている。高性能な端末の投入や、キャリアのモバイルゲームに対する積極的なアプローチなど、一見するとかなり似たような動きで市場を成長させてきている。

 しかし日本と韓国の携帯電話の利用スタイルは、大きく異なるようだ。韓国では携帯電話はもっぱら通話に利用され、メールはインターネット経由ではなく、電話番号を使ったSMSが主流だという。確かに韓国の街を歩いていても、電話している人の姿は当若男女問わずあちこちで見かけるものの、端末を見つめながらボタンを押すという様子はあまり見られない。隣同士の国がともに成長してきたとはいえ、そこには少し違った骨組みがあるのかもしれない。

 そこで今回、G-Star 2008の取材に合わせて、韓国で最大のモバイルゲームデベロッパーであるCom2uSを訪ね、韓国のモバイルゲームについて伺った。インタビューに応じていただいたのは、同社副社長の李永一(イ・ヨンイル)氏。李氏は同社の日本法人となる株式会社カムツスジャパンの社長も務めており、両国のモバイルゲームに通じている人物である。

 先にCom2uSの紹介をしておくと、1999年ごろに韓国でモバイルゲームが立ち上がった当初からゲーム制作を始めた老舗のデベロッパー。現在は200人以上の開発者を抱え、その半数がモバイルゲームの開発を行なっている。残りの半数は、iPhone用ゲームの開発や、PC向けオンラインゲームの開発・運営、IPテレビのセットトップボックスで遊べるオンラインゲームの提供などを行なっており、事業の幅を広げている。

 日本では前述の日本法人を立ち上げる以前から、株式会社サイバードが運営しているEZweb向けゲームサイト「ミニゲー☆天国!」にゲームを提供している。今後は日本法人の立ち上げに続き、独自に日本のモバイルゲーム市場に進出する準備を進めているという。

【G-Star 2008 Com2uSブース】
G-Star 2008にブースを出展していたが、モバイルゲームの出展は少数。ブースの大半が占められた「Domination War」は、世界中のデザイナーが描いたキャラクタで競うコンテストで、過去3回行なわれている。EAやBlizaard、Ensenble Studiosといった企業も参加している




■ キャリア主導で動く韓国モバイルゲーム。タイトルごとに細かなサービス設定が可能

Com2uS副社長で、日本法人のカムツスジャパンの社長も務める李永一氏。ちなみにCom2uSの社長は李氏の奥様なのだそうだ
 韓国でのモバイルゲームの配信は、各キャリアが管理している。デベロッパーは完成したモバイルゲームを1タイトルごとにキャリアに見せ、価格設定などを相談の上、キャリア側のサーバーにアプリを置く。販売もタイトルごとに個別に行なわれる。

 日本では、auのBREWアプリが、個別にキャリアが審査を行なう仕組みを取っており、比較的これに近い。ただ課金はサイト単位で行ない、アプリもキャリアではなく、デベロッパー側のサーバーに置かれるのが一般的だ。韓国のほうが仕組みとしてはシンプルでわかりやすいが、日本ではサイトにある全てのアプリが一定料金で利用できるといった方法も取れるので、課金方法に幅を持たせやすいという利点がある。

 韓国で人気のジャンルについて尋ねたところ、「特にジャンルの偏りは見られないが、クオリティの高いものに人気が集まりやすい」という。日本ではカジュアルなFlashゲームも、サービスの仕方によっては高い人気を得ているので、若干異なる傾向といえるかもしれない。このほか、「ただPCゲームで『StarCraft』や『World of Warcraft』にユーザーが集中したように、モバイルゲームでも特定の人気タイトルに集中する傾向はある」という。この辺りは韓国のお国柄といったところ。

 次にシステム的に気になるのが、通信料の問題。日本ではパケット定額制が定着しており、これがモバイルゲームを加速させた大きな要因となったとしている。韓国でもパケット定額制は用意されているそうだが、前述のとおり、あまりメールの文化は浸透しておらず、スマートフォンの利用者でもない限りはメリットが薄い。そこで韓国では、さらに一歩踏み込んだサービスとして、ゲーム個別のパケット定額サービスが導入されている。

 これは、ある特定のモバイルゲームの通信に限り、定額で利用できるようにするというもの。例えばAというモバイルゲームに対し、100円の追加サービス料金を支払えば、そのゲームに限ってパケット通信料がかからなくなる。完全なパケット定額制よりも安価で、ユーザーもタイトルごとに利用するかどうかを選べるので、利便性は高い。

 ただこれは、全てのアプリに対して行なわれているサービスではない。スタンドアローンのゲームもあるので当然ではあるが、ネットワークゲームだからといっても、必ずしも提供されるものではない。キャリアと相談の上、キャリアが必要と判断した場合にのみ、付加サービスとして用意される。中には、売れ行きが伸び悩んでいるアプリを後押しするため、配信後にキャリアがパケット定額サービスを追加することもあるという。

 概要だけ聞くと、日本でも今すぐ取り入れて欲しいサービスなのだが、アプリの管理がデベロッパー側であったり、サイト単位での課金であったりという日本の仕組みでは、特定のアプリの通信をキャリアが判別する仕組みを用意するのは難しい。キャリアがアプリを一元管理する韓国の仕組みだからこそできる、独特のサービスといえるだろう。

 韓国の携帯電話事情でもう1つ気になるのが、SIMロックフリーの端末の存在である。SIMロックとは、携帯電話の電話番号などの情報を持つSIMカードを、他のキャリアが提供している端末に挿しても動作しないという仕組みのことで、日本で発売される端末はほぼ全てがこの仕組みを導入している。韓国も以前はSIMロックを使っていたが、現在はSIMロックを解除した端末(SIMロックフリー)が登場してきている。

 これによって各キャリアには、今まで存在しなかった他社端末を利用するユーザーが現われることになる。キャリアが配信しているモバイルゲームは、そのキャリアが発売している端末については当然サポートしているが、元々存在しない端末についてはフォローが難しい。ユーザーにとっては、SIMロックフリーの最新端末を手に入れて、電話としては使えるようになったものの、アプリは利用できない、ということもありえる。

 これについて李氏に聞くと、「悩ましい問題ではあるが、現時点ではまだ端末とSIMカードがセットで販売されるのが一般的で、影響は見えていない」という。日本でSIMロックフリーが一般的になる日が来るかはわからないが、ひとつの試金石として今後の動きが気になるところだ。ただ李氏は、「Com2uSは全キャリアにアプリを提供しているので、対応端末についてはあまり問題にならないだろう」と業界トップらしい自信も覗かせた。

 最後に、韓国のキャリアに対しての不満や要望はあるかと尋ねたところ、「アプリ配信にかかるロイヤリティが低く、ゲームアプリに対して積極的なので、特に何もない」という。続いて日本のキャリアに対してはと聞くと、「やはりロイヤリティが低く、コンテンツプロバイダに対してもやさしい」とこちらも満足している様子だった。

 ただ日本に対しては「あえて言うなら」と前置きした上、「キャリアの要求仕様によって端末の性能が揃えられている。その仕様どおりにゲームを開発するのだが、稀に特定の端末でだけどうしても動作しない場合がある。その際、原因は端末メーカーにあるのか、キャリアの仕様にあるのか判断しづらい」と語ってくれた。韓国では、端末の仕様はあくまで端末メーカーが独自に決めるものなので、開発で何か問題があれば、その端末メーカーに尋ねればいい。結果的にプラットフォームの数は多いものの、トラブルの原因究明は日本よりもシンプルに行なえる、ということのようだ。

 韓国のデベロッパーとしては日本のモバイルゲームの仕組みに対し、稀に困惑する部分もあるものの、概ね満足しているという感想を持っているようだ。今後、日本市場に本格的に参入することになる同社の動きに注目しつつ、その後にもまた改めて話を伺ってみたいと思う。



■ ミニゲーム集から本格MMORPGまで幅広くラインナップするCom2uS

Com2uSの開発部署。空きが目立つのは、先日iPhoneの開発部隊が別の場所にまとめて移されたため
 Com2uSはこれまでに200タイトル以上のモバイルゲームを開発してきている。その中で最も高い人気を集めているゲームが、ミニゲーム集「ミニゲーム天国」シリーズ。ワンボタンで遊べるミニゲームを10種類収録したもので、現在までに3作を配信し、トータルで800万ダウンロードを記録しているという。日本の半分にも満たない人口の韓国において叩き出した数字であることを考えると、かなりのインパクトがある。

 他にも、ユニークなアクションゲームや、PCゲームにも劣らないような本格派のMMORPGなど、幅広いラインナップを揃えている。またiPhone用ゲームについては、韓国での端末の発売よりも早い今年の年末から、オリジナルRPGなどを投入予定で、日本語版も提供するという。もちろん日本でもダウンロードできるはずなので、ぜひご期待いただきたい。

 今回は同社の代表的なタイトルをいくつか紹介させていただく。モバイルゲームについては配信中のもので、iPhoneとIPTVのものは年内に配信予定としている。

【モバイル「ミニゲーム天国3」】
ワンボタンで遊べる10種類のミニゲームを収録したミニゲーム集。ゲームはシンプルだが、アイテムをコレクションする要素もある。同社で最も人気の高いシリーズ作品である

【モバイル「アクションパズルファミリー2」】
10種類のパズルゲームを1本にまとめたパズルゲーム集。ゲームをプレイして得たポイントでミニゲームをアンロックしていくが、追加料金を払えば最初から全て遊べるようにもなる。画面脇にいるアバターのコーディネイトも可能

【モバイル「スーパーアクションヒーロー2」】
線で描かれたラクガキのようなキャラクタを操作するアクションゲーム。動きが非常に素早く多彩で、コマンド入力による技も出せるなど、脱力系の見た目とは裏腹に本格派のアクションゲームになっている。仮面のデザインはオリジナルのものが作成でき、アップロードして他のユーザーに配れる

【モバイル「フォーチュンゴルフ」】
3Dグラフィックスを採用したゴルフゲーム。日本でも「青春! ゴルフじいちゃん」という名前で配信されている。プレーヤーキャラクタは最初は老人だが、腕が上達すると若返っていくという面白い設定になっている

【モバイル「アクションヒーロー3D」】
「スーパーアクションヒーロー」の3Dグラフィックスバージョン。アクション性の高さはそのままに、派手なグラフィックスで迫力を出している

【モバイル「アイモ」】
2006年7月よりサービスしているモバイル向けのMMORPG。スキルツリーを選びながら好みのキャラクタに成長させていく。他のプレーヤーとチャットやPvPも可能で、PCゲームにも見劣りしない本格派

【iPhone「イノティア戦記」】
iPhone用のファンタジーアクションRPG。日本では同名タイトルのモバイル版を既に配信しているので、iPhoneには「イノティア外伝」というタイトルで配信予定

【iPhone「クレイジーホットドック」】
iPhone用の「ホットドック店シミュレーション」。ホットドックを並べていい具合にひっくり返して焼き、同時に店にやってくるお客さんの注文どおりの数を提供する。遅いとお客さんが怒ったり帰ったりしてしまう

【IPTV「花札」】
韓国のIPテレビ用セットトップボックスで動作するオンライン花札ゲーム。テレビのリモコンで操作し、オンライン対戦も可能。まだ開発中だが、現金でゲーム内ポイントを購入して、それを賭けて遊ぶというスタイルになるという


□Com2uSのホームページ
http://www.com2us.com/
□G-Star 2008のホームページ
http://www.gstar.or.kr/
□関連情報
【11月13日】韓国最大規模のゲームショウ「G-Star 2008」が開催
業界再編後初のショウ、自社開発からパブリッシングへの流れが顕著
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081113/gstar08_01.htm
G★2007 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071111/gslink.htm

(2008年11月16日)

[Reported by 石田賀津男]



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