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★Xbox 360/PS3ゲームレビュー★

シビアなバランスが戦争のリアリティを生む
史上最大の空挺作戦を仲間と共に参戦せよ!!

「ブラザー イン アームズ
へルズハイウェイ」

  • ジャンル:FPS
  • 開発元:Gearbox Software
  • 発売元:ユービーアイソフト
  • プラットフォーム:PS3 / Xbox 360
  • レーティング:CERO:D(17歳以上対象)
  • 価格:7,329円
  • 発売日:Xbox 360版:10月30日、PS3版:2008年発売予定



 「ブラザー イン アームズ」は第2次大戦をテーマにしたFPSシリーズ。シリーズ最新作となる「ブラザー イン アームズ へルズハイウェイ」(以下、「ヘルズハイウェイ」)の日本語版が本日発売となった(Xbox 360版のみ、PS3版は2008年予定)。開発は米Gearbox Software、発売はユービーアイソフトが行なっている。

 「ブラザー イン アームズ」シリーズは“チームプレイ”を重視した作品だ。主人公は他のFPSのような1人で戦局をひっくり返すような超人的な力は持っていない。チームで動き、仲間と力をあわせて、文字通り地獄のように厳しい戦場を生き抜いていくのだ。

 「ヘルズハイウェイ」はノルマンディー上陸作戦から3カ月後、連合軍がドイツを目指してオランダに進軍していく「マーケットガーデン作戦」を題材としている。プレーヤーは連合軍の空挺師団の分隊長として仲間を率いて戦っていく。美しいオランダの農園、廃墟となった村、両軍の激突で無惨に破壊された街と戦場は移動していく。そこで描かれるのは、部下達と激戦をくぐり抜ける主人公の姿だ。今回は、Xbox 360版でのプレイを通じて本作の特徴と感触を紹介していきたい。


■ 史上最大の空挺作戦発動! ドイツ軍の支配地域に降下する兵士達の明日は?

主人公マット・ベイカー軍曹は、仲間を失った事件を秘密にしている。その秘密が信頼できる隊長としての顔に時折影を落とす
仲間に指示を下し、共に戦う。シリーズの要素を受け継ぎながら、カバーや障害物の破壊など様々な要素をパワーアップしている
 「ヘルズハイウェイ」の題材となったマーケットガーデン作戦は、正確には“マーケット作戦”と“ガーデン作戦”の2つからなっている。マーケット作戦とは空挺部隊をオランダ国内に降下させ、オランダ国内にあるいくつかの橋を確保する作戦。降下には輸送機によるパラシュートと、輸送機が牽引するグライダーによって行なわれた。降下する兵士は3万人にも及ぶという、史上最大の降下作戦だった。ガーデン作戦はマーケット作戦に合わせて機甲師団が国境を突破、マーケット作戦での降下兵が確保した橋を渡りオランダ国内を通り抜けようとする作戦だ。

 しかし、このマーケットとガーデン作戦の連携はうまくいかなかった。オランダ国内のドイツ兵力は連合軍の予想よりもずっと多く残っており、結果機甲部隊は空挺部隊と合流に難航、空挺部隊は補給も受けられないまま孤立し、過酷な状況に立たされてしまったのだ。

 「ヘルズハイウェイ」の主人公はマット・ベイカー軍曹。彼は過去に「ある事件」で部下の半数を死なせてしまう。オランダに進軍する彼はその事件をひた隠しにし、今度こそ部下を1人も死なせたくないと強い決意で戦いに臨んでいる。その彼の行動は部下の心を打つが、一方で秘密を持つ彼に不安も感じさせている。

 映画「プライベート・ライアン」の冒頭で描かれるノルマンディー上陸作戦では、ドイツ軍の機関銃になすすべもなく倒されていく連合軍の兵士の姿が描かれた。その弾丸の雨の中、多大な犠牲を出しながら進んでいく連合軍……。戦場の恐ろしさ、悲惨さ、そして狂気を描いたシーンとしてその後の作品に多くの影響を与えた。

 「ヘルズハイウェイ」もまた、そんな戦場の恐ろしさに直面する感覚を体感できる作品だ。主人公のベイカー軍曹と部下達は容赦ない弾丸の雨にさらされる。その描写は恐ろしく、筆者など実際に直面したら壁に隠れてふるえる事しかできなくなってしまうに違いない。

 しかし、兵士達はあえてその戦場に飛び込んでいく。敵を倒さなくてはその恐怖に終わりは来ないのだ。本作はかなりシビアなバランスのゲームとなっており、敵の弾丸が数発当たれば倒れてしまう。何度も試行錯誤を繰り返し、じりじりと進んでいくという展開になるだろう。弾幕に飛び込む勇気と、仲間を守る責任を問いかけられる作品である。

 本作は通常のFPSの様に1人で突っ込んでいっても事態は全く好転しない。大事なのは仲間との連携なのだ。この難易度の高さ、仲間との連携によって生まれる爽快感が本作の大きな特徴である。過酷な戦場を生き残るという、「生の実感」を体験できるゲームであるという印象を持った。

 ムービーによって語られるストーリーにも力が入っている。しかし、最初はシリーズを意識していることと、出てくるキャラクタが同じような恰好をしているため見分けがつきにくく、さらに時間軸が目まぐるしく動くため兵士達のストーリーがちょっとわかりにくく感じた。ゲームを進めることでキャラクタ達がわかってきて、ストーリーの時間軸も追うことができるようになる。1回クリアして終わりではなく、繰り返しプレイするタイプのゲームであるといえる。

 本作はキャラクタの声などはすべて日本語化されており、戦場での状況もつかみやすい。ただ、ムービーシーンはキャラクタの声が少し小さく、全体的に音量は少し大きめにしてプレイするのが良いと感じた。

グライダーで空挺部隊を降下させるマーケット作戦。グライダーの中にはジープが格納してあり、そのまま進軍が可能だ
今作はストーリー要素にも力が入っていて、兵士達の様々なストーリーが語られる。過去のエピソードから、兵士達の結束や、一瞬の休息、若い兵士の暴走など様々なドラマが展開する。
戦場は目まぐるしく変化していく。装備の少ない空挺部隊は、過酷な戦場に直面することになる


■ 仲間の指示と、安全確保が攻略の鍵。シビアな戦場で生まれる戦争の恐ろしさ

チュートリアルで戦いの基礎を学ぶ。基礎をうまく戦場で応用して行かなくてはならない
バズーカで敵をまとめて吹っ飛ばしたり、狙撃で頭を撃ち抜いたりするとスローモーションの演出が入る
敵の攻撃を食らうと視界が赤く染まり、そのままダメージを受け続けるとゲームオーバーに。物陰で休息することで体力は回復する
 「ヘルズハイウェイ」では仲間との協力が必要不可欠となる。本作ではプレーヤーは3人1組のチームを、最大2チーム指揮することができる。チームは重機関銃で敵を制圧する「機銃チーム」、バズーカで遮蔽物を破壊することができる「バズーカチーム」、そして機動力に優れた「アサルトチーム」がある。

 ステージによってプレーヤーにはこの3チームの内1~2チームが与えられる。彼らを指揮して戦っていくのだ。「ブラザー イン アームズ」シリーズは敵の頭上に赤い丸のゲージが表示されるのが特徴となっている。このゲージは敵の活動状態を示し、赤いときは活発に攻撃をしてくる。

 このとき、例えば機銃チームで攻撃を加えると、敵は障害物に隠れ身動きが取れなくなる。隠れている敵のゲージは灰色に変わる。この灰色の障害物に隠れて萎縮している敵に対して、アサルトチームで側面から急襲すると、簡単に倒すことができる。敵の“制圧”は移動にも必要不可欠だ。アサルトチームが前線で攻撃して一時的に制圧し、機銃やバズーカチームを前方に呼び寄せる、といったときにも有効だ。

 プレーヤーはまずタクティカルマップで敵の位置を確認、遮蔽物の配置も頭に入れて、ルートを考える。バズーカや機銃を全面に配置し、敵を制圧してからアサルトチームを率いて迂回ルートから敵の側面を攻撃する。文字で書くと簡単そうだが、ルートの発見や、味方へのスムーズな指示などを的確にするには慣れが必要だ。

 味方への指示はLT(左トリガー)で行なう。十字キーで指示するチームを選択してから、指示を出す。LTを引くとカーソルが表示される。カーソルは場所によって変わり、青い円はその場所に移動をさせる。敵にカーソルを合わせると攻撃カーソルに変わる。敵の近くで攻撃を指示すると、手榴弾を投げて急襲が可能だ。

 バズーカや機銃は、障害物を破壊できる力を持つ。特にバズーカは土嚢なども吹き飛ばすことができ、隠れている敵をまとめて倒すことができる。敵と味方の弾丸が飛び交う中、指揮官であるプレーヤーは時には危険を顧みず偵察し、最適の作戦を瞬時に考えて行かなくてはいけない。

 「ヘルズハイウェイ」では“カバー”が非常に重要な意味を持つ。LBを押すとプレーヤーキャラクタは障害物に隠れる。煉瓦や鉄製でない場合は破壊されてしまう場合があるので気をつけなくてはならない。障害物に隠れた場合、3人称視点になって視界が広がる。特に仲間への指示がしやすい視界を確保できる。またスティックを動かすことで障害物越しに射撃ができるが、通常の場合に比べ右スティックを押し込む“狙撃”の視界が良くなり、より正確に敵を狙うことができる。

 正直、最初はカバーや指示のシステムをうまく使うことができなかった。カーソルを合わせたときに変わる条件が曖昧で、思った通りの指示が出せなかったり、指示を出しても仲間が従わないときが多々あった。また、常に数倍の敵を相手にしなくてはならない上に敵はことごとく待ち伏せをしているため、機銃チーム1つで制圧してアサルトを横から、という作戦がうまくいかない場合もあり、難易度を理不尽に感じた。

 もう少しゲームとして錬り込めるのではないかと思う一方で、本作を楽しむのは、このもどかしさを逆手に取ることだとも感じた。命令を聞かない仲間を効率よく動かすにはどうするのか、今見えているルートだけではなく、有効なルートがあるのではないか。試す方法はたくさんある。

 「ヘルズハイウェイ」はチャプターメニューでクリアしたマップを何度もプレイし直すことができる。仲間を1人も死なせない最適のルートはどこなのか、相手を制圧したとき、どこから狙えば倒せるのか、どうすればうまく攻略できるかにユーザーの議論が集中しそうなゲームだ。

 レビューのために過去のステージをプレイすると、確かに難しさは感じるが初めてのころと比べてうまく戦える自分がいる。戦い方を覚えることの楽しさを感じることができる作品である。プレイ動画を録画し、自慢するためにアップロードする、というプレーヤーもいるかもしれない。うまい戦い方を追求したくなるゲームだ。

タクティカルマップで敵の位置とマップの配置を確認、機銃チームで敵を釘付けにして側面から急襲する
チュートリアルを実践。農家の生け垣に隠れて敵の背後に回り込む
今作ではカバーが重要な要素を持つ。中央がカバーの状態から右レバーを押し込んでの狙撃画面。左がカバーしていないときの狙撃画面だ。視界やカーソルの表示が大きく違う
前進してから機銃チームを呼び寄せる。このとき仲間が撃たれないように気をつけなくてはならない 木の柵などは隠れても簡単に破壊されてしまう。仲間の配置の時には気をつけたい 風車の上から偵察。タクティカルマップの情報の精度が上がる


■ 多くの資料によって作られたリアリティ。降下兵達の眼前で繰り広げられる生と死のドラマ

88ミリ砲を水平発射してくるドイツ軍。至近距離に撃たれたらバラバラになってしまいそうだ
時には戦車隊として活躍する場面も。砲塔にはいることで戦車の視界は狭くなる
戦場と化した街。平和だった街は無惨に破壊されている
 「ヘルズハイウェイ」ではマーケットガーデン作戦を進む兵士達の戦いを追体験できる。ストーリーはチャプターによってわかれており、いつでも再挑戦が可能だ。また、チェックポイントが多く用意され、倒されてもそこから復活可能なため、シビアなバランスながらも根気さえあればゲームを進めていくことができるだろう。

 「ヘルズハイウェイ」はやはり膨大な資料から作り出したという戦場のリアリティが楽しい。プロローグ、チュートリアルを経てはじまる本格的なスタートとなるチャプター「マーケット作戦」はオランダの象徴とも言える風車の上から農村を偵察し、待ちかまえるドイツ軍を排除、グライダーで降下する友軍を支援する。

 チャプターがはじまる前には、グライダーの着地シーンや、そこからジープを出しての進軍などマーケット作戦ならではの風景を見ることができ、戦っているときもグライダーが頭上を飛び越えていったりと演出も凝っている。ドイツ軍は資材を乱暴に積み上げたバリケードに立てこもって抵抗をしたり、オランダの住人を逃げ出さないように監視していたりと、農村が戦場に変わってしまった状況が生々しく語られている。

 次のチャプターの「シンク大佐の戦略」では地方都市へ進軍、橋を確保するために戦うことになる。巨大な対空砲を水平方向に発射してくるため、これまで以上に命の危険を感じる。川縁は遮る者も少なく、まごまごしていると戦死者が増えるばかりだ。悪戦苦闘しながら最適なルートを素早く指示しなくてはならない。

 「石に刻まれた言葉」というチャプターではドイツ軍スナイパーを追って教会に侵入する。時には1人で敵の待ちかまえる場所に行かなくてはいけない。どこに敵が隠れているか、彼らを撃つのはどこのポジションが良いか、「ヘルズハイウェイ」では“あせらないこと”も大事だと感じた。

 本作では連続して敵から攻撃されるとすぐに倒されてしまう。壁に隠れていれば敵の攻撃をかなりかわす事ができる。物陰から物陰に移動し、敵を発見したら頭を出すのを待ち、狙撃を試みる。プレーヤーの持つM1ガーランドは装弾数こそ少ないものの、狙撃の性能が高く、本作では非常に優秀な武器となっている。また、短機関銃は敵の側面を襲うときなど至近距離での戦いにとても有利だと感じた。Yボタンで臨機応変に切り替えて戦っていきたい。

 ゲーム中盤ではベイカー軍曹ではなく、戦車長としてプレイする場面もある。歩兵の時は敵の攻撃を必死にかわしていたが、戦車に乗れば無敵気分を味わえる。ユニークなのがLBの隠れるボタンを押すとハッチを閉めて中に入るものの、普段は砲塔のハッチから半身を出している状態でいるということだ。

 ハッチから戦車長が体を出していると戦車全体を見回すことができ、塹壕やバリケードを避けて進むことができる。ハッチを閉めてしまうと前方の狭い範囲しか見えない。戦車の運用の難しさをうまく表現した演出だと感じた。

 今回、発売前ということでオンラインモードはプレイできなかったが、本作は10vs10の対戦が可能だ。マップを俯瞰できる“リーダー”、バズーカやライフルを使いこなす“スペシャリスト”、戦車を使うことができる“タンク”と3つの役割が選択可能だという。日本人プレーヤーとボイスチャットで挑戦してみたい要素だ。

 全体的に、シビアさとリアリティ、そしてゲームならではのやりこみ要素を楽しめる作品だと感じた。英雄的な活躍ができるFPSも楽しいが、時には過酷な戦場を必死に生きる兵士を追体験するのも良いだろう。連合軍がどうドイツに進軍していったか、この作品をプレイすることで歴史の一側面を見ることができたように思う。

風車や畑など、農村風景を実感できる序盤のマップ。グライダーの中には着地に失敗したものが多くあり、作戦の無謀さも語られている
時にはプレーヤー1人で戦う場面も。教会に潜む狙撃手を撃つために、ベイカー軍曹は少人数で突入する
スナイパーライフルで敵と戦う。左は戦車で戦う場面、戦車長はハッチを閉めて戦車の中にいる。上の写真と視界を見比べて欲しい
ドイツ軍の反攻作戦に炎と化す街。空挺部隊は燃えさかる街の中、進軍していく

(C)2008 Gearbox Software, LLC. All Rights Reserved. Published and distributed by Ubisoft Entertainment under license from Gearbox Software, LLC. Brothers In Arms Hell’s Highway is a trademark of Gearbox Software and is used under license. Ubisoft, Ubi.com, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries. Gearbox Software and the Gearbox logo are registered trademarks of Gearbox Software, LLC.

□ユービーアイソフトのホームページ
http://www.ubisoft.co.jp/
□「ブラザー イン アームズ へルズハイウェイ」のページ
http://www.ubisoft.co.jp/hellshighway/
□関連情報
【10月24日】ユービーアイソフト、PS3/Xbox 360「ブラザー イン アームズ へルズハイウェイ」
仲間と連携で戦うFPS、Xbox 360版は10月30日発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081024/biahh.htm
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「プリンス・オブ・ペルシャ」、「FarCry 2」など、強力な4タイトルを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081014/tgs_ubi.htm
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「ブラザー イン アームズ ヘルズハイウェイ」や「Far Cry 2」など
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080704/ubi.htm

(2008年10月30日)

[Reported by 勝田哲也]



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