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会場:GMO Games本社
GMO Gamesは、2007年にトップが村岡総仁氏から、アンディ・クォン氏に変わり、スタッフも総入れ替えに近い形で新体制に移行した。クォン体制下の最初のタイトルとなったのが「キノスワールド」である。2008年6月に行なわれた発表会では、クォン氏も満を持して、新規タイトルに対する抱負を語ってくれた。 しかしながら、ローンチされた新作は、わずか半年足らずでクローズする結末を迎えた。この風景は、同社の前作に相当する「アニス&フリッキー」のサービス終了を彷彿とさせるが、前回と今回で異なるのは、前回は終了、今回は休止であり、再開を前提としているところだ。
今回は、その断を下した張本人であるGMO Games代表取締役社長アンディ・クォン氏に休止の真意と、再開の勝算について話を伺った。 ■ 「キノスワールド ~パジャマの騎士~」突然のサービス休止。その真意を聞く
アンディ・クォン氏: 7月11日に開催したオープンβサービス、プレミアサービスを通じてユーザーさんからの人気が得られることは確信していました。しかしオープンβサービスを実施してみると不具合が次々に出てきました。しかも、思ったようになかなか直らない。その時点から頭の中から何をどうするか色々と考え、7月14日の月曜日に韓国に戻り、現地で開発会社の社長さんと色々と話し合いました。 7月の1カ月間は、非常に多くのユーザーさんに参加していただいたのですが、そうしたユーザーさんが正常な状態でゲームを楽しめないという状況が続いてしまいました。これではゲームをサービスするという点に立ち返りますと難しいのではないかと思いました。韓国で既にサービスしているタイトルですし、それほど問題はないだろうと考えていたのですが、負荷に対するテストが足りなかったことと、韓国の元のバージョンから仕様がかけはなれてしまって、韓国でのβテストがあてにならなかったことが誤算でした。また、最初は不具合だけでしたが、話し合いを続けていくうちにゲームに対する哲学が違うなと思いました。冷静にビジネスとして考えると、無理矢理正式サービスに持っていって少しでも元が取るという考えもできましたが、私自身が「キノスワールド」をプレイしている1ユーザーとしてゲーム内容に納得できなかったんです。 すべてのユーザーと同じようにレベル1からやってみて、ユーザーの目線で、経営者の目線で何がよくて何が悪いという感想は持っています。これをもって正式サービスに持っていくのは納得いかなったのです。不具合がある程度収まってから、どういった形でサービスにもっていくのか、やめるのか、終わりにするのも1つの手だったのです。何よりちゃんとした形でサービスを行なわないとサービスとしての意味が無い。しっかりサービスを提供したうえでユーザーの方々に判断してもらいたい。サービスを中断するのはあまりにもったいないですが、ユーザーさんとの約束を果たしたかったです。 私は韓国人なのですが、どこの国でもどこの市場でも国産・オリジナルはすごく必要だと考えています。中国市場でもそうですが、以前は中国市場のタイトルの8割は韓国産のタイトルが占めていました。中国市場の盛り上がりは色々雑音も聞かれましたが、中国内部のオリジナルの国産タイトルが出てきて、現在では5:5に近くなるくらいまで隆盛してきています。ゲームは1つの文化産業ですので、タイトルに対して情緒的に感じている部分もあると思うのです。外国のタイトルでも良いのですが、国内のタイトルも盛り上げていかないと外国のタイトルだけでは満足できないかゆいところがあると思うのです。日本でも国産の良いタイトルが増えるべきだと考えています。国産のタイトルが増えた後に海外のゲームが光ることができるし、市場全体が大きくなる事ができる。 我々は、このまま終わりにするか、もう一度チャレンジするかの2通りの選択肢の中で、もう一度チャレンジすることを選択し、その上で開発会社さんにおまかせして、このまま続けていくのは望ましくない。我々が持っているゲームへの哲学を載せてやっていくべきではないかと決断しました。 編: その決断を下したタイミングはいつ頃ですか。 クォン氏: 7月末でした。サムスンとの3社契約なので、8月は開発会社への説得にあてられました。7月末と8月頭には色々なアップデートを行なうなど、良いゲームを提供するために努力をしていた期間でした。 しかし、開発会社とは明らかに意見が違う部分がありましたので、我々が引き取って開発を継続するべきではないかと思いました。ただ、先方としてもそれにすべてを賭けるという意思をもってやられていたので、色々な形でいったりきたりしながら進めていきました。先方の説得に時間がかかりました。 GMO GamesはGMOインターネットのグループ会社です。開発を引き受けるという決定はグループとしても大きな決定の1つでして、グループ全体に通さなければなりませんでした。GMO Gamesの取締役会だけでは決める事ができず、社内に通すために準備をしていました。私は8月半ばの時点でこれは我々がやっていくべきだという確信を持っていましたので準備期間だったのです。現場としてはソースコードや仕様書の分析を9月からやっており、現在までも続いています。 編: NFRONTさんとのゲーム哲学が異なるとのことでしたが、具体的に何が違いましたか? クォン氏: 第1にゲームの制作に関する考え方です。韓国のメーカーは非常にアメリカ的なコンセプトを持ち、すべてをシステマチックに考える傾向があります。ゲームを作るときに、これはPvPか、これはPvEかでわけて、PvEのシステムの追加、PvPとしてシステムの追加、というように考える傾向にあると思います。 我々としてはシステムも大事かもしれませんが、目的の無いシステムでは意味が無い。日本のお客様は単純なレベル上げでは飽きてしまう。これは開発会社の社長さんを説得するときに使った例ですが、「日本の格闘アニメ」が良い例なんです。「日本の格闘アニメ」のストーリーはきわめてシンプルで、同じ事の繰り返しなのです。強い敵が現われて1対1の対決をしてこれを潰す。何十回とそれを繰り返します。ユーザーさんもどちらが勝つかということは最初からわかっているのです。しかし、目的性があり納得がいくから見ているのです。オンラインゲームでもそういう仕組みがないと難しいだろうというのが我々の考え方です。 そこで我々は、ストーリーテラーとして「レイチェル」というキャラクタを追加しました。このキャラクタの追加でぶつかったりしたこともありましたが、何の目的かをはっきりしないと、システムが追加されても、コンテンツが足りないといわれてしまう。特定の狩場やクエストだけユーザーが遊んでいるようなことがしばしばあります。 後はゲームのバランスに対する感覚です。感覚なので表現が難しい問題です。我々が受けた感覚というのはあまりに理論的に美しい世界を考えていたのかなと思います。たとえば職業の中で「メイジ」がダントツに能力が高い。このバランスではおかしいと伝えましたが、開発側は、こういう仕組みなのでデータ上は問題ないよといわれてしまう。それでも実際のゲームバランスは違うわけです。 「キノス」は、韓国で「ルディックス」と呼ばれていまして、「ルディックス」の原点は、世界的に有名な日本の横スクロールのアクションゲームに似ているところがあるのです。冒険を繰り返して、パズルを解いて前に進むという仕組みがあります。パズルがあるのは良いのですが、どんな職業でも公平に進むという仕組みを作らなければいけない。たとえばゲームの中ではメイジしか進めなかったりシーフでしか進めないというところがあります。開発会社の考えとしては、だからパーティーを組んで協力して進んでくださいという考え方があります。それは、理論的には正しい。しかし、実際にそう簡単にパーティーが組めるのかと思いました。パーティーを簡単に組める仕組みを事前に用意しておかなければ、日本のユーザーはシャイなのでなかなかパーティープレイに結びつかない。 パーティーはつまりコミュニティです。コミュニティをどのように持っていくのか考えるスタッフが各社たくさんいます。そういうところや、逆にパーティープレイの必要性そのものが障壁になってしまう。パーティープレイができるマップだけで、それをできる人たちだけの狩場になってしまう。オンラインゲームはそれほど美しい世界ではないというのが私たちの考えでした。 編: 「キノス」の発表会では、日本オリジナルの要素や日本のユーザーが望むようなアップデートを行なっていくという公約を発表されました。しかし、そこに行く前の段階で行き詰まってしまったということですか。 クォン氏: はい。我々の予想しえなかったところで不具合がたくさん出て、アップデートを担当するはずのスタッフが不具合の修正に回ってしまい、悪循環に陥りました。これは今でも怒っていることですが、開発会社さんがスタッフを増やすという約束を守ってくれませんでした。サービス前から話を進めて、この体制では我々の要求どおりの開発が難しいので人数を増やしてくださいと。なぜなら我々が契約した時点からみてスタッフが半減していたのです。我々はこの開発体制を見て契約したのであって、人を増やしてほしいと要望していました。そのためにサムスンさんも支援をしていました。それをやらなかったということで約束が違うということになりました。 編: 負のスパイラルに陥ってしまったのですね。 クォン氏: 彼らも不具合がでなくてうまくいっていればだんだん人を増やしてというつもりだったと思うのですが、最初に予想以上に大きな打撃がきてしまったので、悪循環に陥ったのではないかと思います。 編: 問題の根幹がちょっとよくわからないのですが、開発会社のリソース不足と考えていいのですか? クォン氏: リソース不足も1つの原因です。不具合も原因の1つです。ただ、不具合がなかったら何の問題もないのかといえば違うと思うのです。それはゲーム性に関わる問題であって、我々が思っているゲーム、ゲームがどうあるべきかという考え方がやはり違うなという部分があります。 編: 先ほど、ユーザーとして納得できなかった部分があったとのことでしたが、個人として社長として現在の「キノスワールド」に対して納得いかない部分とは何でしょうか? クォン氏: 今は不具合がある程度落ち着いていますが、一番納得いかないところはうちのゲームだけではないのですが、オンラインゲーム会社はコンテンツの量にどこの会社も苦しんでいますよね。だから、狩りを繰り返させたり、必要経験値を上げて、レベルを上げづらくする仕組みを取り入れています。それはどこの会社でもやっています。我々としては、コンテンツがないから、レベル上げを難しくするのではなく、中~高レベルのユーザーに対してそれ以外の楽しみを与えなければなりません。そうした努力が足りなかったと私は感じています。 私はすごく高レベルのユーザーで、社長だからといってGMツールを使ったわけではなく、純粋にプレイだけで1から50レベルまで上げたのでその苦しみはわかるのです。根本的な問題は、ゲームの単純性にあったと思うのです。マップは多いのですがやることは同じことの繰り返しになります。スキルであってもレベルであっても単純な繰り返しであって与えたい楽しみは明確ではなかった。ゲームに対する哲学が明確ではなかったと思うのです。何を望んでいるゲームなのかが明確ではなかった。とにかくレベル上げにはなるのですが、目標が明確でなかったです。 編: 最後の手段として自分で引き取ることにしたのですね。 クォン氏: 3つの方法があったと思うのです。捨てるか、正式サービスをして少しでも利益を出すか、引き取って再チャレンジするか。リスクに関しては3番目の再チャレンジすることが会社にとっては最もリスキーなことなのです。我々が納得できるものとユーザーとの約束を考えた場合、3番目になりました。躊躇はありませんでした。
■ 新「キノスワールド」はGMO Games初の自社開発タイトルに
クォン氏: いつかはやるべきだと思うのです。日本のオンラインゲーム会社は海外のタイトルをやっている。それでヒットをしてコンテンツを増やす。いずれ体力ができれば自社コンテンツをやっていく。これは他社さんが聞けば非常に生意気な発言ですが、ゲーム産業というのは貿易会社になってはいけない。知的財産を扱う分野なのです。漫画でも音楽でもゲームでも一緒で、ゲームとは何ですかといえば楽しむものなのです。このゲームをやってよかったという気にさせなければならない。 去年の6月に社長に就任しまして、当時からいずれ内部で開発をするという備えはしていました。ですから予定通りといえば予定通りです。ビジネス的にどうこうというより、我々がやるべきことは非常にシンプルです。無理もあるのは確かですが、お客さんとの約束もあるし、会社としても独自コンテンツを作るチャンスだし、リスキーなのですが事業というのはどちらにしろリスキーです。小さい会社ですので悩む事はなく、体力が持つかどうかだけだったのですが、何とかいけるのではないかと思います。大きなチャレンジにはなるのですが、良いものを作って紹介して、お客さんに評価していただいてから悩んでも遅くはないのではないかと思いました。 編: 意地悪な質問ですが、いったん休止して再開したオンラインゲームで成功した例はほとんどありません。その意味では成功する確率は非常に少ないと思うのですが、勝算をどのあたりに感じたのでしょうか? クォン氏: 世界的に見るとそうでもないのです。韓国でも存在しますし、日本でも他社さんの話なので我々が語るべきことではないのですが、日本で現在運営されているオンラインゲームの中にも、当初こそ苦労されましたが何年かたってちゃんとサービスされて評価されているタイトルがあります。途中から開発会社も変わってほぼ新しいコンテンツとして生まれ変わりましたよね。あきらめずにやってきたから成功できたと思うのです。 恋愛と一緒であきらめるかあきらめないかだと思うのです。弊社の取締役でユンという者がおりますが、彼は韓国のオンラインゲーム開発者出身です。彼の手がけたタイトルは、当時一時的にサービスを休止したことがあったのですが、再オープンして、現在は日本でもお客さんがいらっしゃいます。あきらめずにやっていったので、それなりに評価されたのだと思います。 我々としては休止してやるのか、休止せずに続けてお客さんに知らせずに我々が引き取って変えていくのか2択がありましたが、ユーザーとしての私という考え方がもっとも働いたと思います。納得いかないゲームを変えたかったのです。納得いくかたちでゲームを楽しめるよという形でもっていきたい。そのためにはどうするべきか。我々は2年くらい開発に携わった人間なので、弊社内部で話し合って、どこまで変更できるか、あるいはどの程度時間がかかるか相談しました。そこで1年という期間になりました。 これはビジネス的にはかなりリスキーだと思います。しかし、良いコンテンツは愛されるという自信もあります。我々は同時接続5万人、10万人といった大規模な成功を望んでいるわけではないのです。同時接続5,000人、1万人と少しずつお客様が増えてもらえれば我々はハッピーだと思っています。 編: 当時まだ入社していなかったクォンさんには関係の薄い話ですが、ユーザーさんから見てGMO Gamesさんといえば「アニス&フリッキー」の印象が強い。あれはデベロッパーが音を上げて開発が終わってしまいました。あのときは終了でしたが、今回は再開を前提とした休止です。前回とは何が違うのでしょうか? クォン氏: 社長が違います(笑)。社長が違えば考え方も違います。ゲームに対する意識や、我々もこれから色々なタイトルをサービスしますよね。うまくいかないからといってすべて引き取ってすべて開発するわけにはいかない。今回の場合、開発会社も続けたかったのです。私がこういう形ではいけないと説得したのです。開発会社の社長さんに対して「あなたはゲーム内でレベルいくつまでやったのですか?」と。「私はレベル50までプレイしました。これはサービスではありません。私はユーザーとして納得できません」と申し上げました。 GMOインターネットのグループの理念としてちゃんとしたものを提供してお客さんの笑顔を見ましょうということがあります。そこでたとえば7月にサービスした翌日に、「社長の顔を殴りたい」という書き込みを見ました。私はその気持ちがわかりました。「お前ふざけるなよ、うそつくなよ」と私でも思います。実際に1年後にユーザーの方が2度と来ないかもしれないのですが、「GMO Gamesはたいしたことがないけれどもがんばっているからやってやろう」というくらいの気持ちにはなってほしいですね。 編: これまでは韓国のタイトルをライセンスしてきて、独自のカルチャライズを加えてサービスしていくというオンラインゲームパブリッシャーとしてのビジネスがすべてでした。今後は自社オリジナルタイトルに乗り出すわけですが、会社の構造が変わるわけですか? クォン氏: 変わりません。パブリッシャーとして、パブリッシングは今後もやっていきます。それにプラスして内部でスタジオを持って開発を行なうことで、ある意味で真のパブリッシャーになると考えています。 編: GMO Games初の自社ブランドコンテンツと銘打っていますがその意図は何ですか? クォン氏: 自分たちのIPを持ちますよということが大事なので、表現が適切かわかりませんが自分で初めて子供を生む感覚でしょうか。私たちが示したいのは我々が作りますというよりは国産タイトルが増えますよということがフォーカスなのです。 編: 遊び手としては、国産かそうではないかというのはそれほど重要ではないと思います。あくまでゲームとして面白いかどうかだと思います。クォンさんが、国産にこだわる理由は何でしょうか? クォン氏: 味を出したいからです。車であればドイツ、日本、アメリカとありますが、それぞれ違う味があると思うのです。どちらが良いか悪いかではなくテイストの問題です。私もユーザーとして韓国産だろうが中国産だろうが確かに関係ありません。 それは文化産業なのです。音楽でも一緒ですよね。たとえば外国歌手でも歌は非常に上手いですが、人気は国内歌手の方が高い。味と色が違うと思うのです。色々な味が出てからお互いに交流が始まるし刺激にもなると思うのです。たとえばコーエーさんのゲームにはコーエーさんなりの色があります。その色をどんどん出していくことでユーザーさんの選択肢が増えますし、面白いと。何かの一色になることは良くない事なのです。 現在は、8割以上の日本のユーザーが韓国産のコンテンツを遊んでいて、同じ方式で遊んでいる。それは日本の業界のみならず韓国の業界にとってもよくない。日本で日本産や北米産のタイトルにさらされなければならない。たとえば「World of Warcraft」が韓国のゲーム業界に与えた影響はものすごく大きいのです。それと同じなのです。我々が良いゲームが出せるかは分かりませんが、我々や他社さんが努力をして層が厚くなればそのなかでどんどん良いものが出てきます。産業構造として車のように日本産、北米産、韓国産とあって市場として確立されるのではないかと思います。 編: 味ということに関していうと、国産オリジナルだから出せる、韓国産だから出せないという二元論にはちょっと賛同できないんですね。発表会で、日本オリジナルの要素について語られていましたが、ご自身で韓国産に日本オリジナルの味を出すと明言していたわけです。しかし今までの枠組みではそれができなかったということでしょうか。 クォン氏: そうですね。足りなかったと思います。味とは考え方、哲学だと思うのです。 編: 味について、もう少し掘り下げたいのですが、「キノスワールド」では、全体的に丸みを帯びたグラフィックスデザインと、レイチェルを中心にした平尾リョウさんのイラストが、うまく解け合わずに互いにケンカしていた印象を持っています。私はあの実装内容に大きな違和感を持っていましたが、クォンさんはこの点についてどのように思っていますか? クォン氏: まさにそれもです。私としては、すべてを平尾さんの絵に差し替えてグラフィックも修正するつもりでした。結局レイチェルとPCキャラクタのいくつかしかできなかったのです。単純にいえば開発会社さんの手が回らなかったのですが、我々としては「約束を守ってくれなかったよね」となってしまうのですが、そうした部分も含めて我々が納得する形で提供しなおしたいのです。
■ ないない尽くしの「キノスワールド」。再開後はどのようなゲームになるのか?
クォン氏: まずはバランスのところをすべて直していく必要があると考えています。スキルの単純性、職業の単純性を見直さなければなりません。その2つを見直さなければ負けパターンは変わらないと思います。それを改善した上でどういうストーリーや幅を持っていくのかということになります。アイデアはたくさん持っていますので、どれを採用するかですね。もうちょっとちゃんとしたゲームを作らなければならないので、「キノスワールド」に無かった要素を入れる可能性は高いです。たとえば変身とか、1次転職や2次転職だけではなくてといった部分です。 編: 今回発表されたリリースの中に「満足いただけるレベルにする」とありましたが、クォンさんの満足するレベルとはどのへんですか? クォン氏: 実はまだどういったものを作るのかというものがプレゼンされていないのでお答えできません。来週から私が1次、2次、3次と見ていきます。私を納得させてみろといっているのですが、あらゆる面で内部での評価を置いておいてもゲームとして何を与えられるのか、面白さという形のないものをどのように与えられるかと。みんなゲーム業界が長いので、語り合って納得いけるのか、つまりどこのゲームでヒットしているから入れるということではなく、このゲームで主張したい夢と目標があります。その中で必要なのだからこうしたシステムが入ると。 私は数字をすごく大事に思っています。ロジカルかロジカルでないのか。面白さは形のないものなのでそれは数字に任せなければなりません。しかし、あちこちのゲームからそれぞれの人気コンテンツを取り上げるような形で攻城戦やPvPといったものを追加していくだけではだめなのです。このゲームで何が必要なのかを見極めたうえで、こういうゲームになるのだ、こういうゲームで楽しめるのだという確信に入れば開発にかかると思います。 編: つまり、現時点では何を表現したいのか何も決まっていないのですか? クォン氏: 横スクロールは変えないというところまでしか決まっていません。「キノスワールド」というタイトルも含めてかなり変わる可能性が高いです。どこまで変わるかはわかりませんが1年という期間がありますので、アイデアを出している段階です。 編: 現行バージョンで残すものとは何でしょうか? クォン氏: 我々が外に出していないだけで、平尾さんが今も作業をやっていますので、平尾さんの作ったコンテンツは活かしていくと思うのです。その件に関してユンに尋ねましたが、レイチェルは使うみたいです。 編: 後は宮崎さんをはじめとしたボイスでしょうか。 クォン氏: はい。使うと思います。主人公も増えるかもしれません。ゲームの中での案内です。レイチェルだけがしゃべって他のNPCが一切話しません。その部分をしゃべらせてみるといったことを考えています。 編: 「キノスワールド」はカジュアルのMMORPGで、比較的低年齢層でも楽しめるゲームデザインですが、新バージョンでは基本的なゲームデザインはどうなりますか? 権氏: 低年齢も遊ぶことのできるゲームデザインです。プレカンで19歳から24歳までのお客様をターゲットにしたということでコミュニティからは笑われたのです。しかし、実際一番コミュニティで多いのはその年齢層なのです。若いお客さんが目立つだけであって、実際には20代のお客さんが最も多く、次に15歳から18歳くらいまでのお客さんになります。その数というのは30代の方とほとんど同じなのです。 ですから我々としては低年齢も遊べるコンテンツを作るというのは大事なのですが、メインの20代前半と女性のお客さんを重視しています。「キノスワールド」の場合は女性のお客さんの比率が4割と非常に多かったのです。ハードコアなゲームで1割、多くて2割という中で、この割合は非常に大きい。そういうところを参考にしないと厳しいなと思いました。女性の方も気軽にやれるゲームという側面は他のゲームよりも考えなければいけないですよね。 編: 今後の関係会社のパートナーシップはどうなるのでしょうか? これまではGMO Gamesさんがいて、韓国のGMO Games Koreaさんがいて、サムスンさんがいて、NFRONTさんがいる。 クォン氏: GMO Gamesが開発会社でありながら日本のゲームパブリッシャーになります。サムスンさんはワールドワイドの権利を持っていてこれまでと変わりなくやっていきます。3社の関係でNFRONTさんだけが抜ける形になっています。契約の詳しい内容は申し上げられませんが、端的に申し上げて、我々が開発して世界へのパブリッシングはサムスンさんとGMO Gamesが行なっていきます。サービス自体は韓国ではサムスンさんがやって、日本ではGMO Gamesがやることになります。 編: NFRONTの開発スタッフはどうなるのでしょうか。 クォン氏: 我々が引き受けることはありません。哲学が違います。一緒に仕事をするのは難しいというのが結論です。開発は内部で行なっていきます。 編: しかし、GMO Gamesには開発者はいないはずですよね。 クォン氏: いえ、韓国におります。私が就任をする際に、一緒に開発スタッフを連れてきていつか開発を行なうことは考えていました。私も開発にいた人間ですので強い希望を出してユンをつれてきたのです。日本のスタッフも開発について色々と教えていましたし、GMO Games Koreaだけが開発するのではなく、日本から韓国に何人か派遣して開発させるということになります。GMO Games Koreaの中で開発していく事になります。 編: GMO Games Koreaの開発体制を教えてください。 クォン氏: 昨年引越しして今は16名でやっています。韓国側がシステム・開発、日本側が営業・マーケティングの2パートに分かれていますので今後もGMO Games Koreaは開発会社として発展していくと思います。ユンは韓国に常駐しています。
■ 新「キノスワールド」は2009年9月正式サービス開始予定
クォン氏: 向こうでは決まっているのです。私は単純に2社の社長をやっていて、体が1つしかないので、1カ月の中で3週間は日本にいて韓国に1週間います。私に報告をしにくるタイミングが来週というだけであって、7月末からユンを始め開発準備を始めているのです。シナリオライターも入っていますし、サーバープログラマーも入ってきますし、企画チーフももともといましたし、私の承認を得ていないだけで向こうはすでに作っているのです。東京ゲームショウに合わせてユンが来日して私に直接プレゼンをして、今月末に今度は私が向こうに渡って、細かい部分のチェックを行なう予定です。 編: 10月31日まで運営が行なわれますが、終了までにビジョンの提示は行なわれるのでしょうか? クォン氏: 具体的にどのラインまでお見せできるかはまだ決まっていないです。 編: しかし、どういうゲームになるのかがわからなければ期待しようがない。ビジョンの提示は必須だと思います。再度伺いますが、そのタイミングはいつになりますか? クォン氏: タイミングとしては今月末になると思います。派手に公開しても1年経って行く間に忘れていくお客様も、待っていらっしゃるお客様もいると思います。しかし大事なのは何を公開してそれが守れるのかどうかだと思います。立派な事だけ約束して守れないというのは同じことの繰り返しになるので、それは避けたいです。半年後でも3カ月後でも公開する計画は持っています。 まだ全貌は申し上げられませんが、生まれ変わる「キノスワールド」は、アニメ的な展開を持たせて、ストーリーにエンディングを設け、「シーズン1」、「シーズン2」といった流れを考えています。また、クエストをクリアするたびに、動画スタイルによる演出を加え、達成感を味わっていただけるつくりにしたいと計画しています。 編: まだ先の話になってしまいましたが、「キノスワールド」のビジネスモデルはどのようになりますか? クォン氏: アイテム課金になるのは変わらないです。ただし我々のオンラインゲームサービスという観点では、定額制かアイテム課金かどちらかだけかということは考えていません。新しいロールモデルを考えなければいけないなと思います。 編: といいますと、新しいビジネスモデルを創出するのでしょうか? クォン氏: 作る可能性はあります。それが1年後になるか10年後になるかはわかりません。誰かの作ったビジネスモデルに乗るだけではないとは思います。オンラインゲームのビジネスモデルは定額制からスタートして、その後にアイテム課金が始まってそのときから当たり前のようにアイテム課金が流行しました。他の会社さんが作れるのであれば、いつかは我々が考えるロールモデルを作れるのではないだろうかと。オンラインゲームの収益が広告型に変わるかどうかというのは色々な可能性が開かれていると思います。 編: GMO Gamesの代表者としては、どのようにしたいとお考えですか。 クォン氏: 基本的にはアイテム課金で考えています。ただし、私が考えるのはメーカー側としてサービスをやっている以上安定した収益をある程度あげられるモデルが欲しいです。ユーザー側としてはなるべく負担を減らせるほうが良い。 編: 負担を減らすということは月額の客単価を下げるということでしょうか。 クォン氏: 「コルムオンライン」も非常に客単価が高いのでお客様には申し訳ないのですが、業界全体的にある程度考えてやっていかなければならないのではないかと思います。他社さんの場合は未成年はいくらまでという限度額もありますし、業界全体が色々な努力をして副作用を考えなければいけません。タダで遊んでいらっしゃる方々はお金を使わなければ遊べないのかという文句がありますし、お金を出しているユーザーからすると、お金を出しているのになんでこんなに価値が下がるのだという批判もあります。バランスを取ることが非常に大事だと思います。 編: 「キノスワールド」の新しいサービススケジュールを教えてください。 クォン氏: あくまで現時点の予定ですが、2009年の6月あたりにクローズドβテストを行ない、7月にオープンベータをはじめ、9月に正式サービスにつなげたいです。 編: 「キノスワールド」のユーザーさんにメッセージをお願いいたします。 クォン氏: 約束は守ります。お客様の意見は非常に分かっていますし、我々もゲーム会社として誇りを持っている人間たちなので、本当に納得できるような良いゲームを作ってちゃんと提供いたします。これからは定期的にビジョンを皆様にお見せいたしますので、楽しみにしていてください。 松木氏: 開発元だけの自己満足のゲームを作るのだけではなく、我々もお客様にも満足してもらうというところから入ってもらって、徐々に満足度が高くなっていくゲームを作っていきたいです。それも来年になってしまいますので、その1年間の間に少しずつお見せしていき、期待度を高める展開を目指してがんばっていきたいです。
編: ありがとうございました。
□GMO Gamesのホームページ (2008年10月17日) [Reported by 中村聖司]
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