【連載第4回】あなたとわたしのPCゲーミングライフ!!
■ 佐藤カフジの「PCゲーミングデバイス道場」 ■
ゲーミングマウスのセンサー優劣抗争に終止符を打つ
レーザーとオプティカルはどっちが優秀なのか!?
色々な意味で業界の「最先端」を走る、PCゲーミングの世界。当連載では、「PCゲームをもっと楽しく!」をコンセプトに、古今東西のPC用ゲーミングデバイスに注目して、単なる新製品の紹介にとどまらず、競合製品との性能比較や、新たな活用法の提案、果ては改造まで、様々なアプローチで有益な情報をご提供していきたい。 |
■ こだわりゲーマーの間で根強い「オプティカル優位説」は真実か?
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ゲーマーの間でオプティカル信仰は根強い。それを裏付けるデータを取ることはできるか? |
連載第2回で「マウスのカスタマイズ」を取り上げたのち、読者の方からこのような内容のご意見をいただいた。「ゲーム用途として重要なトラッキング性能では、レーザーよりもオプティカル方式のマウスのほうが優れているはず。だから、レーザーばかりでなく、オプティカルマウスもきちんと紹介してほしい」と。
レーザーマウスの記事を掲載する際、このようなご意見が来ることは予想していた。というのも、熱心なゲーマーの間では、「マウスはやっぱりオプティカルでしょ」という声が圧倒的に多いからだ。それはコアゲーマーにとって体感的な経験則であるようだが、一般のゲーマーにしてみれば、「新製品はレーザーのほうが多いし、世代交代も進んでいるから性能も良いはず」となんとなく思っているのが普通だろう。つまり、コアゲーマーとカジュアルゲーマーは、ゲーミングマウスのとらえ方に大きな隔たりが存在するのだ。
筆者は、これまでにFPSの大会などに参加、観戦する機会が多く、トップゲーマーのプレイを間近で見てきた立場から言うと、実際、トップクラスのゲーマーにおけるオプティカルマウス装備率は異様なほど高い。世の中は最新のレーザーマウス全盛なのに、数世代前のオプティカルマウスを頑固に使い続けているゲーマーが多くいるのだ。彼らトップゲーマーは、「オプティカルマウスのほうがトラッキングが正確だ」と、「オプティカル優位説」を極めて断定的に語る。
オプティカルマウス優位説を語るのはプロゲーマーだけではない。北欧のゲームデバイスメーカーSteelSeriesは、つい最近までオプティカルマウスにこだわり続け、それがゲーミングマウスメーカーとしてプロゲーマーに根強く支持されてきた経緯も考えると、これは、ミステリアスな「信仰」と言って片付けられる問題ではない。
実際問題、本当にオプティカルセンサーの方が高性能だというのであれば、レーザーセンサーに移行しきったゲーミングマウス業界は、ここ数年の取り組みが根本的に間違っていたことになり、もういちど製品ラインナップを考え直す必要がある。しかし、体感や、経験則、噂レベルの話で「オプティカル優位説」をいくら唱えても説得力があまりないのも事実だ。本稿では、この議論に決着をつけるべく、具体的な論拠を提示した上で、レーザーマウスとオプティカルマウスの性能の優劣を直接比較してみたい。
【今回のラインナップ】 |
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DRTCM01 (レーザー)
発売元:シグマA・P・Oシステム販売
価格:7,980円
発売日:2008年1月25日(発売中)
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DRTCM02 (オプティカル)
発売元:シグマA・P・Oシステム販売
価格:7,980円
発売日:2008年8月22日(発売中)
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IKARI Laser (レーザー)
発売元:マスタードシード
価格:13,800円
発売日:2007年12月7日(発売中)
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IKARI Optical (オプティカル)
発売元:マスタードシード
価格:8,800円
発売日:2007年12月7日(発売中)
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■ レーザーVSオプティカル、トラッキング性能計測システム
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計測システムのベースとなったLPプレーヤー。ターンテーブルの回転が良いものを選んだ |
というわけで、今回は同一のメーカーで、レーザー版とオプティカル版の両方をラインナップしている兄弟製品2種を取り上げて、そのトラッキング性能をなるべく具体的な方法で直接比較したいと思う。そこで、マウスのトラッキング性能をどうやって計測するか?ということが問題になってくる。
多くのゲーマーがやっているように、マウスを高速で動かしてみて、体感的に「これはいい」、「これはダメ」とやっても、客観性に欠ける。そこで、今回は専用の装置を制作してみることにした。ここでご紹介するのが、構想3日、制作1日のトラッキング性能計測システムである。
計測システムといってもそんなに大それたものではなく、ごくふつうのLPプレーヤーのターンテーブルに、円形に切り抜いたマウスパッドを乗せただけの装置だ。これにマウスを乗せ、ターンテーブルを回転させれば任意の速度でトラッキングさせることができる。そこでマウスからレポートされるデータを、DirectInputを用いた専用のプログラムで検出し、トラッキング性能を測るわけだ。
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切り抜いたマウスパッドを載せて回転させてみる |
制作にあたって難問が2つあった。ひとつは、レコード盤を再生する装置なのだから当然といえば当然だが、標準ではターンテーブルが33RPMもしくは45RPMでしか回転できないことだ。マウストラッキングの限界を超えた速度としては250~300RPMは出したい。しかし、今回は駆動部を改造するだけの時間も予算もなかったため、今回は超アナログ的に「手で回す」ことにした。中心付近を指で押さえてグルグル回すわけである。がんばれば300RPMも達成できた。
もうひとつの問題は、ターンテーブルの回転数を直接検出する方法がないことだ。これについても洗練された装置を制作することができなかったため、窮余の策をとった。ターンテーブルに敷いたマウスパッドの一部を切断し、トラッキングが不能になる領域を作り、マウスの移動量を検出するプログラム側で「移動量ゼロ」を検出したら「一周した」と見なす。これで回転速度が計測できるので、マウスのセンサーが位置する場所の円周長と掛け合わせて秒間の速度が出せる。
ただこの方式では、回転が超高速になった際に、マウスのトラッキングが失敗したのか、マウスパッドの切断部に到達したのか、区別がつかないことがあるため、計測にやや不正確さを残すこととなった。そこはマウスのレポート数値のクセをみつつ、プログラム側の検出アルゴリズムを微調整して対策したが、労力が大きすぎる結果になってしまった。今後の改善リスト第1号である。
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完成した計測装置の様子。回転は手動というアナログぶりだが、300RPM程度の高速回転が可能だった。急ごしらえのアームで固定したマウスはPCに接続されており、DirectInputのプログラムで回転速度とカウント数を計測する。 |
・計測する内容は?
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今回の計測内容。ターンテーブルが1周するごとに、マウスが何カウントをレポートしてきたかをグラフ化する |
装置はできあがったので、次は「何を計測するか」を考えたい。今回明らかにしたいのはマウスのトラッキング性能である。したがって、おおざっぱなアプローチとしては、「単位時間あたりのカウント数」、もしくは「単位距離あたりのカウント数」のいずれかが考えられる。
今回は後者、つまり単位距離あたりにレポートされたカウント数を計測する方法を採用した。理由は、今回制作した装置が、ターンテーブルの1周ごとにやってくるトラッキング不能領域を持つため、単位時間あたりの計測では、トラッキング不能領域をどれだけ通過したかの違いによって、計測値が上下してしまうためだ。
このため今回は、トラッキング可能領域を1周通過するごとに、マウスからレポートされたカウント数を合算して計測することにした。ターンテーブルの半径はおよそ30cmあり、マウスセンサーは中心から12~14cmの部分にくるため、1周あたりのトラッキング長はトラッキング不能領域を除いて70~80cm程度。これを800DPIで正確にトラッキングすれば、1周あたり22,000~25,000カウントほどになるはずである。
トラッキング長の計算は目測が入るため不正確なので、今回の計測では何カウントレポートされたかを直接比較するのではなく、「カウント数がどれだけ安定していたか」を重視する。ターンテーブルの回転速度は、およそ300RPMを限界値とした。1周80cmとすると、秒速4メートルになる速度だ。
これで準備は整ったので、今回のラインナップに挙げた2つのレーザーマウス、2つのオプティカルマウスにてトラッキング性能を計測する。「オプティカル優位説」は裏付けられるか? なお、ターンテーブルに乗せるマウスパッドとして、トラッキング性能に定評のあるRazer「Goliathus」を使用した。これは全マウスで同一の条件である。
■ DRTCM01 vs DRTCM02 ─ 国産ゲーミングマウス兄弟対決
【DRTCM01 (DHARMA TACTICAL MOUSE)】 |
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発売元:シグマA・P・Oシステム販売
価格:7,980円
発売日:2008年1月25日(発売中)
センサー:レーザー方式
CPI:400, 800, 1,600, 2,000
(エミュレーションにて最大3,200CPI)
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【DRTCM02 (DHARMA TACTICAL MOUSE OPTICAL)】 |
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発売元:シグマA・P・Oシステム販売
価格:7,980円
発売日:2008年8月22日(発売中)
センサー:オプティカル方式
CPI:400, 800, 1,200, 1,600
(エミュレーションにて最大3,200CPI)
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こんな感じで計測 |
さて、最初にご紹介するのはシグマA・P・Oシステム販売から発売されているDHARMAPOINTブランドのマウス2種、レーザーマウス「DRTCM01」とオプティカルマウス「DRTCM02」である。
「DHARMA TACTICAL MOUSE」と言ったほうが通りのよいこれらは、まず最初にレーザー版の「DRTCM01」が発売され、およそ半年後にオプティカル版の「DRTCM02」が発売されるといった運びで、レーザーとオプティカルの兄弟のようなラインナップとなっている。直接対決させるにはうってつけの好材だ。
まず「DRTCM01」は、メジャーなレーザーセンサーを搭載したゲーミングマウスだ。センサーの最大サンプリングレート(フレームレート)は7,080Hz、スペック上の最大認識速度は45インチ/秒(114cm/秒)とされている。同系のセンサーを搭載するレーザーマウスは多数あるため、標準的なレーザーマウス製品と言っていいだろう。
一方の「DRTCM02」はオプティカルセンサーを搭載したゲーミングマウスで、DHARMAPOINTブランドの新製品だ。センサーのスペックとしては、最大サンプリングレートが6,469Hz、最大認識速度が40インチ/秒(101cm/秒)とされている。このセンサーについて言うと、オプティカルセンサーとしては割と主流の性能であり、同系のものが多くのマウスで採用されている点では共通している。ただ、製品毎にセンサーの実装形態が異なってくるため、実性能では違いが出ることもあることに留意する必要はあるだろう。
スペック上の最大認識速度に注目してみると、「DRTCM01」は最大45インチ/秒、「DRTCM02」は最大40インチ/秒となっており、数字の上ではレーザー版である「DRTCM01」が勝っているように見える。果たして、実際に計測を行なってみると、スペックシートと実際は異なることが明らかになった。
以下がそれぞれの計測結果をグラフ化したものである。横軸には回転速度から産出したトラッキング面の移動速度をおき、縦軸にはターンテーブルが1周するごとにマウスからレポートされたカウント数の合計を置いている。なお、計測はそれぞれ800DPIで実施した。
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DRTCM01の計測結果:1.5メートル/秒を越えるあたりでトラッキングが顕著に不正確になっている。2メートル/秒を越えるとほぼ計測が意味を成さないレベルまでトラッキングミスが発生した |
DRTCM02の計測結果:2.5メートル毎/秒あたりまでは大きなゆらぎはなく、徐々にカウント数が低下している。3メートル/秒あたりが実用限界と言えるが、4.5メートル毎秒まで計測は可能だった |
「DHAMRA TACTICAL MOUSE」シリーズのレーザーVSオプティカル対決では、レーザー方式が1.5メートル/秒あたりで非常に不安定なトラッキングを見せ始めたのに対し、オプティカル方式は2.5メートル/秒を越えるあたりまで安定したトラッキングを見せていた。2.5メートル毎秒を越えてから平均のカウント数が低下しているのは、1回のレポートでPCに伝わる数値が飽和する「ネガティブアクセラレーション」現象が発生したためと見られる。しかし、1周辺りのカウント数は低下しつつも揺らぎは小さいままだった。
グラフ上のサンプル点には、計測システムの不正確さからくる多少のノイズが含まれている点にご留意いただきたい(RPMの誤検出や、回転が高速になった時に生じるマウス本体のブレなど)。しかしデータを見る限り、計測時のノイズが比較の障害にならないほどの差がついている。オプティカル「DRTCM02」のトラッキング性能が圧倒的に勝ることが明らかになった。
■ SteelSeriesブランド「IKARI」シリーズ直接対決
【IKARI Laser】 |
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発売元:マスタードシード
価格:13,800円
発売日:2007年12月7日(発売中)
センサー:レーザー方式
CPI:1~3200まで1単位でハードウェア対応
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【IKARI Optical】 |
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発売元:マスタードシード
価格:8,800円
発売日:2007年12月7日(発売中)
センサー:オプティカル方式
CPI:400, 800, 1600
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ゲーミングマウスの最高級価格帯に位置するIKARI Laser。その実力は? |
次なる兄弟対決は、北欧のゲーミングデバイスメーカーSteelSeriesの主力製品である「IKARI」シリーズだ。「IKARI Laser」と「IKARI Optical」の2製品がラインナップされているブランドだが、この2製品は全く異なるスペックを持っている。
まず「IKARI Laser」は、非常にユニークなセンサーを搭載して高機能をウリにする製品だ。従来のレーザーセンサーは、設置面をある程度の解像度を持つ映像として処理して移動を検出していたが、「IKARI Laser」のセンサーではデータを4つの要素に単純化することで40,000Hzという高サンプリングレートを実現している。この特性からか、CPI設定は1~3,200まで1刻みで設定可能という柔軟性を備えているのが特徴だ。また、最大認識速度は50インチ/秒(127cm/秒)とされている。
兄弟製品の「IKARI Optical」は、同型のシャーシにオプティカルセンサーを搭載した製品で、スペック的には非常にシンプルだ。ハードウェア的には400と800の2種類のCPIを持つセンサーを搭載しており、最大サンプリングレートは6,469Hz、最大認識速度は40インチ/秒(101cm/秒)と、スペック的には先に紹介した「DRTCM02」と酷似している。レーザー版が特徴ある製品なのに対し、こちらは極めてオーソドックスと、好対照だ。
さて、「IKARI」シリーズのマウスはなだらかな形状を持つため、計測用のターンテーブルの上にきっちり固定するのがとても大変だった。これは無駄な苦労話にすぎないが、計測の結果として得られたデータは、その苦労を吹き飛ばすほど興味深いものだった。
計測条件は前記と同じく、800DPIにて行なった。下にグラフを掲載する。
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IKARI Laser計測結果:個性的なセンサーもむなしく、1.5メートル/秒あたりからカウント数は著しく不安定になり、2メートル/秒に到達する前に計測不能となった。概ねスペックシート通りとは言える |
IKARI Optical計測結果:今回のラインナップで最高のデータを叩きだした。段階的なカウント数低下の傾向が面白いが、計測限界の4.5メートル/秒でもかなり安定したトラッキングを見せていたのは特筆に値する |
結果は見ての通り、「IKARI Optical」の圧勝である。「IKARI Laser」のほうは、1メートル/秒あたりまで非常に正確なトラッキングを見せていたものの、1.5メートル/秒を越えたあたりから急激にミストラッキングが発生しはじめ、2メートル/秒に到達する前に計測不能な状態となった(常時0をレポートしてくる)。これはセンサーの限界ということだろう。
対する「IKARI Optical」は、今回用意した計測システムで可能な最大速度でも安定したトラッキングを見せており、今回のラインナップ中で最高の性能を見せ付けてくれた。1.5メートル/秒と3.5メートル/秒あたりで段階的にカウント数が低下している理由は不明だが、センサー周りの移動量検出アルゴリズムを段階的にスイッチしているのだろうか。レポート数値が頭打ちになり連続的にカウント数が減っていった「DRTCM02」と異なり、非常に特徴的なグラフを描いたと言える。
というわけで、今回の計測、「IKARI」ブランドのレーザーVSオプティカル対決においても、オプティカルマウスの圧勝という結果が得られた。発売されているすべてのゲーミングマウスで同様の計測を行なうまでもなく、「オプティカル優位論」は、どうやら正しいらしい、という結論を導いて問題はないだろう。
■ 「オプティカル優位論」は正しかった! ─それではなぜ、レーザーへの移行が止まらないのか?
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今回最高の性能を見せた「IKARI Optical」のセンサー部。業界がレーザー中心になるなか、オプティカルマウスが支持を失わない理由がはっきりわかった |
今回の計測では、レーザー方式よりもオプティカル方式のトラッキング性能のほうが高いらしい、という結論を得ることができた。計測内容はあくまでも速度を基準としたもので、加速度性能や低速移動時のカウント安定性についてはカバーしきれていないが、高速、低感度でマウスをブン回すゲーマーにとっては役に立つ情報が提供できたのではないかと思う。
しかし、オプティカル方式の性能がこれほど優勢であるのに、どうしてゲーミングデバイス業界はレーザー方式へのシフトを続けるのだろうか?
レーザーとオプティカルの2方式は、設置面からの反射光を検出し、画像処理して移動量を算出するという原理は全く同じである。ただ、その波長の違いから、レーザーの方が指向性が高く、センサーが明晰な映像を得られる為、設置面を選ばずに使える利点がある、と一般的には言われている。つまり、マウスパッド要らずで、テーブルに置いたまま使えて便利というわけだ。
これは厳然たる事実だ。筆者の手元にある各レーザーマウスは、マウスパッドを使わずに机の上で直接動かしてもしっかりカーソルが反応してくれる。反対に、オプティカルマウスを机の上で動かしてもカーソルはピクリともしない。
商業的に考えればこの特性は決定的で、常にマウスパッドを帯同しなければならないオプティカルよりも、どこでも使えるレーザーのほうが、面倒が少なくて済むのはユーザーだけでなくメーカー側も同じだろう。それに、レーザーのほうが言葉のニュアンス的に「新しい感じ」がするので一般受けがしやすい。したがって、販売数を伸ばしたいメーカーはレーザー方式にシフトしてきた。おおむねそんなところではないだろうか。
しかし、ゲーマー視点ではどうだろうか? ゲーマーならば、最高の状態でマウスを使いたいと考えるのは当然であり、マウスパッドを用意するぐらいの手間を惜しむ人はいないはずだ。つまり、冷静に考えれば、マウスパッドの有無で、ゲーミングマウスのセンサーがレーザーであるべき必然性はどこにもないのだ。だとすれば、ゲーマーを相手に商売しているゲーミングマウスメーカーがレーザーへシフトしてきた理由は、いよいよよくわからない。
コスト的な理由があるのだろうか。しかし、「IKARI」シリーズではレーザー版のほうが5,000円も高価だ。おそらく技術的に枯れているオプティカルマウスのほうが、より安く、簡単に作れるのではないか。旧態然としたオプティカル方式では、製品の新しさがアピールしにくいという問題があるのかもしれない。いずれにしても、常日頃から多大な協力をいただいているだけに書きにくい部分はあるが、ゲーミングマウス業界は、進むべき道を間違えていたのではないか。
ただ、ゲーマーが求めるのは、スペックシート上の性能や、目新しい仕様ではなく、実際の性能だ。この点において、コアゲーマー達はかねてより「オプティカル優位論」を見抜き、マウス売り場で売れ残りの古い製品を見つけてまでオプティカルマウスにこだわってきた。そして今回の計測で、オプティカルセンサーの優位が確認された。レーザーマウスばかりをラインナップして久しいゲーミングマウスの各メーカーは、この明確なシグナルを無視しないことを願うばかりである。
(2008年10月2日)
[Reported by 佐藤カフジ]
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