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★モバイルゲームレビュー★

防御を主体にした新感覚のシミュレーション
試行錯誤を繰り返し、己の限界にチャレンジせよ!

「クリスタル ガーディアンズ」

  • ジャンル:ディフェンスシミュレーション
  • 開発元・配信元:スクウェア・エニックス
  • 利用料金:300ポイント(税込315円相当)
  • プラットフォーム:iモード/Yahoo! ケータイ/EZweb
  • 対応機種:FOMA 901i/703iシリーズ以降、au WIN BREW対応端末、SoftBank 3G
  • 配信日:配信中(iモード:1月28日、Yahoo! ケータイ:4月1日、EZweb:6月19日)
  • アクセス方法:
    iモード : iMenu → メニュー/検索 → ゲーム → ロールプレイング → ファイナルファンタジー モバイル
    Yahoo! ケータイ : メニューリスト → ケータイゲーム → ロールプレイング → ファイナルファンタジー
    EZweb : au one → カテゴリ検索 → ゲーム → 総合 → ファイナルファンタジー モバイル



 「守主攻従」という言葉をご存じだろうか? 「守りから始まり、相手の攻撃を完全に防御したあとに反撃する」という、少林寺拳法の根本的な考え方だ。すべての技術は「守ったあとに、反撃に転ずる」ことを前提に成り立っている。

 では、なぜ少林寺拳法は「守主攻従」を原則とするのか。拳法を修得した者は、正義を守るため、あるいは無法者の暴力から自分や周囲の人々の安全を守るためだけに、力を使わなねばならないと戒めているからだ。武の修業を行なうものは、濫りに力を振りかざしてはならないと、心構えを説いているのだ。

 「守主攻従」の心構えは、何も武術に限った話ではない。「力」を持つ者は、持たざる者より責任や自覚がより必要になる。殺伐として争いの絶えぬ世界、何事も強引に「力」で解決しようとする風潮が蔓延する中、「守主攻従」の教えは1つの指針になるのではないか。そんな的外れかもしれない思いを自覚しながら、現在3作目まで配信されているディフェンスシミュレーションゲーム「クリスタル ガーディアンズ」にチャレンジしてみた。

【スクリーンショット】
1列になって行進してくるモンスターの集団と、迎え撃つ味方のキャラクタ。お互いにちょこまかと動き回る姿は、緊迫したゲーム性に反して、ユーモラスでかわいらしい



■ 行列をなすモンスター軍団。プレーヤーは自動で行動するキャラクタを眺めるのみ

 「クリスタル ガーディアンズ」は、スクウェア・エニックスが配信するモバイル用シミュレーションゲーム。「ファイナルファンタジー」の世界を舞台に、ニンテンドーDS用ソフト「ファイナルファンタジータクティクスA2 封穴のグリモア」で活躍したさまざまな種族やジョブキャラクタが登場する。

 特徴的なのは「防衛」に主眼を置いたシステムであること。味方となるキャラクタを配置し、“Wave”と呼ばれるモンスターの一団からクリスタルを守り抜くことがプレーヤーの目的となる。

 マップの入り口から侵入してきたWaveは、出口の先に存在するクリスタルを奪うために通路を行進する。プレーヤーができるのは、基本的にモンスターを撃退するためのキャラクタをマップ上に配置することだけ。配置したキャラクタの操作は一切できず、自分の攻撃範囲に入ってきたモンスターに自動的に攻撃するキャラクタをただ見守るのみ。倒しきれなかったWaveの生き残りが出口に到達すると、クリスタルが奪われる。スタート時に20個所持しているクリスタルが0になる前に、30のWaveの進軍に耐えきるとステージクリアとなる。

【スクリーンショット】
マップによって戦略は全く変化するが、目的は変わらない。モンスターにクリスタルを奪われない最善の策を考える



■ 基本ルールは単純なシステムだが、高度で複雑な戦略眼が求められる

 「見ているだけのゲームが面白いの?」と疑問に思われた方、ご安心あれ。ゲームシステムの単純さに反して、プレーヤーが熟考すべき要素は非常に多い。しかもシリーズが進むごとに、より高度な要素が織り込まれている。ここでは1作目の「クリスタル ガーディアンズ W1」をベースに解説する。

 まずはWaveの特徴の把握。Waveは基本的に1種類のモンスターの集団である。どんなモンスターが何匹いるのか、どのような特徴を持っているのか。飛行型のモンスターには剣や格闘の攻撃は無力だし、魔法攻撃に耐性を持つものもいる。移動速度が速かったり、耐久力が高かったりと、次々に登場するWaveは一筋縄ではいかない奴らばかりだ。

 次にマップの形状を研究し、最も効果的なキャラクタの配置場所を考える。キャラクタはWaveの通り道や障害物上には置けず、道の脇などに配置する。また同じマスに重ねて複数のキャラクタを置いたり、あとで配置場所を変えたりはできない。キャラクタが増える後半の攻防で特に重要となる要素だ。Waveの侵攻を阻止するための要所を慎重に見極め、キャラクタを配置する必要がある。侵攻のルートが2つに分岐するマップでは、重要な位置の把握も複雑化する。

【スクリーンショット】
次のWaveが始まる時にモンスターの特徴が表示され、戦略を練る時間が与えられる。Wave開始のタイミングは自由なので、じっくりと好きなだけ考えよう


 最後は配置するキャラクタの職業(ジョブ)の選択。選べる職業は6種類で、“ソルジャー”、“黒魔道士”、“ホワイトモンク”、“時魔道士”、“弓使い”、“シーフ”と、「ファイナルファンタジー」シリーズではお馴染みのジョブが用意されている。ジョブごとに独自の攻撃方法があり、攻撃力や行動範囲が設定されている。ソルジャーは剣、黒魔道士は攻撃魔法で戦い、その攻撃範囲や攻撃力、攻撃のサイクルに違いがあるというわけだ。

 キャラクタは自分の攻撃範囲に入ってきたモンスターだけを攻撃する。特性を考えてキャラクタを配置しないと、ちぐはぐな攻撃になってしまう。結果、Waveの行進を食い止められずあっという間にゲームオーバーになるのだ。ちなみにWaveから攻撃を仕掛けてくることはないので、いかに効率よく攻撃できるかだけを考えればいい。

【スクリーンショット】
キャラクタの特徴をすべて理解することが大切。キャラクタの性能は実際に配置して使用してみないとわからないことも多い


 「キャラクタを置けるだけ置いたらいいのでは?」と思うかもしれないが、そうは問屋が卸してくれない。キャラクタを配置するためにはお金(ギル)が必要になる。ギルは新たなキャラクタを配置するだけでなく、配置済みのキャラクタをレベルアップさせ、攻撃力や攻撃範囲を増すこともできる。ギルを獲得できるのは、モンスターを倒した時と、ひとつのWaveをクリアしたときのボーナスのみ。収入と支出のバランスにも頭を悩ませることになる。

 ここで考えなければならないのは本作の目的。30のWaveを撃退するとゲームクリアだと前述したが、クリアした時のギルの残額が“スコア”として記録される。しかもWaveをクリアした時にもらえるボーナスのギルは、残っているギルが多いほどたくさん獲得できる。つまり、できるだけ少ない戦力で勝利することがハイスコアを叩き出すために不可欠なのだ。こちらの戦力が少なすぎてはWaveに突破され、逆に多すぎてはスコアが低くなる。ゲームをクリアし、ハイスコアを目指すために、敵を撃退できるギリギリの戦力配置を考えることになる。

【スクリーンショット】
些細なミスによって、あっさりゲームオーバーになってしまうこともある。慎重さと大胆さの同居した作戦立案能力が試される



■ シリーズが進むごとに、段階的に深みが増す戦略性。新要素が攻略のカギ

 現在、シリーズ3作目の「W3」が配信されているが、スクウェア・エニックスでは「W1」を入門編として位置づけ、「W2」、「W3」と進むにつれ、より高度な要素が追加され、戦略性に深みが増している。

 「W2」では、ジョブが一部変更され、“竜騎士”、“バーサーカー”が登場する。さらにキャラクタの能力を向上させる“パワークリスタル”の要素も新たに追加された。パワークリスタルは、設置した周囲の味方の攻撃力やスピードを上昇させる効果があり、キャラクタの配置以上に戦略的重要度が高い。

 「W3」では、Waveが2種類のモンスターを組み合わせた“パーティWave”へと進化。行進中に体力が回復し続けるアンデットモンスターも出現するなど、新たな強敵が押し寄せてくる。ジョブも大幅に追加され、“魔砲士”、“からくり士”、“フェンサー”、“狩人”が登場。ジョブの特徴を活かした戦略の重要性がまた一段と増している。

 また全作に共通して、シリーズ中の2作以上のアプリがダウンロードされていると、“召喚獣”を召喚できるようになる。召喚獣はマップ上のすべての敵に効果がある特殊な攻撃を発動してくれるのだが、召喚できるのは1Wave中に1度だけ。しかも守るべきクリスタルを5つも消費してしまう。使いどころは難しいが、困ったときの切り札として心強い。

【スクリーンショット】
シリーズを順番にプレイすることで、複雑なシステムにも自然に対応できるように配慮した設計は見事



■ 試行錯誤の面白さ。努力や失敗の数がスコアに結実する快感

 “トライ&エラー”で少しずつ、正しい筋道を探していくのが本作の面白さである。スコアにこだわらず、クリアするだけを目指すのであれば、本作の難易度はそれほど高くない。ただし、ハイスコアを狙ってプレイすると、まったく別の顔が浮き上がってくる。「クリスタル ガーディアンズ」の本質は、ハイスコアを目指して向き合うと初めて見えてくるのだ。

 できるだけ少ない戦力を、どこに、どう配置すれば最高の結果が得られるのか。次々出てくる敵にも対応できるフレキシビリティがあるのか。提示される数的データは限られているため、リソースを最大に生かすには、体験で学ぶしかないのである。

 ビジネスでよく使われるマネジメント用語に、「PDCAサイクル」というものがある。Pは“Plan(計画)”、Dは“Do(実行)”、Cは“Check(評価)”、Aは“Action(措置)を表している。計画を実行し、評価をして結果に合わせてなんらかの措置をとる、らせん状のプロセスを繰り返し、品質の向上や業務改善を図る手法のことだ。

 本作は「PDCAサイクル」を繰り返した回数が、如実にスコアに反映されるのだ。ゲーム中に運が紛れ込むケースは、実のところほとんどない。例えば14,000点のスコアを獲得できた戦略は、何回繰り返してもおよそ14,000点くらいのスコアになる。では、あと1,000点、いや500点だけでも高いスコアを狙うにはどうしたらいいのか。そのためには「PDCAサイクル」しかない。最適なキャラクタの配置を計画し、実際にWaveと戦わせる。結果がどうなったのか冷静に評価して、更なる高得点を狙い調整するのか、違う方法を試すのか措置を決定。あきらめない心が、よりよい結果を実らせる。

【スクリーンショット】
挑戦に果てはない。そして努力は結果を裏切らない。たった100点でも、悩んで悩んで積み重ねた努力がスコアになって表れる喜びを知ってしまったら、もう抜け出せなくなってしまう



■ モバイルというプラットフォームを計算し尽くした、お手本のようなSLG

 30のWaveで構成されたひとつのステージクリアにかかる時間は、戦略を考える時間に大きく左右されるが、基本の戦略ができあがっていれば20分程度で終わる。このプレイ時間が非常にモバイル向きだ。移動などの空き時間のたびに繰り返しプレイしようと思えるし、前述の通り、ゲーム自体が繰り返しプレイをさせるモチベーションを与えてくれる。

 本作はサーバーにデータを送信することで、マップ別のスコアランキングに参加できる。ランキング1位を目指して、多くのユーザーたちと高いスコアを競い合える仕組みだ。ランキングの上位のスコアを見ていると、最初は「本当に同じゲームをプレイしているのだろうか?」と思うほど高い得点が並んでいる。しかしゲームをやり込んでから再びランキングを眺めると「ここまで高いスコアを作り上げるには、一体どれほどの労力が必要なのだろうか?」と、まったく別の思いが浮かんでくる。目指すべき目標が明確になり、刺激や張り合いが生まれるのは実に面白い。

 スピードを要求される操作はほとんどなく、ゆっくり落ち着いてキー操作できるので、携帯電話の小さなボタンでも困ることがない。モバイルゲームとして丁寧に設計が練られているのがよくわかる。

 「クリスタル ガーディアンズ」はシミュレーションゲームだが、ある意味、パズルゲームよりもパズル的なゲームかもしれない。一見単純で、実は非常にシビアなシステムを、「ファイナルファンタジー」の世界観を踏襲することで、わかりやすく伝えていることには感心する。「防衛に徹する」という切り口で、モバイル向けに特化したシミュレーションゲームの新境地を見せてくれている。

(C)2008 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/jp/
□「クリスタル ガーディアンズ」のページ
http://www.square-enix.co.jp/mobile/ff/cg/
□関連情報
【6月19日】スクエニ、クリスタルを守る戦略シミュレーション
「クリスタル ガーディアンズ W1」EZweb版配信開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080619/cg.htm
【6月2日】スクエニ、Yahoo! ケータイ「クリスタル ガーディアンズ W2」
新要素や新ジョブキャラクタを加えたシリーズ第2弾
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080602/cgw2.htm
【1月28日】スクエニ、iモード「クリスタル ガーディアンズ W1」
敵の能力などに応じてキャラ配置を考える新感覚SLG
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080128/cgw.htm

(2008年10月2日)

[Reported by 山科明之進]



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