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「Gamefest Japan 2008」講演レポート
「AC6」のサウンド開発秘話と、実績マニアによる“いい実績論”

9月4、5日 開催

会場:ホテル グランパシフィック LE DAIBA

 マイクロソフト株式会社が9月4日、5日に開催したゲーム開発者を対象とするプライベートカンファレンス「Gamefest Japan 2008」では、Xbox 360およびWindows向けのゲーム開発に関するセッションが開かれた。

 本稿ではその中から、オーディオセッション「『ACE COMBAT 6 解放への戦火』インタラクティブサウンドデザイン」と、パートナーセッション「実績の達人によるパネルディスカッション -理想の実績教えます-」の2つのセッションをレポートする。いずれも内容的にはゲーム開発者向けのものだが、一般のゲームユーザーにも楽しめる話題をダイジェストでお伝えする。



■ 爆風を突き抜ける快感を生む「ACE COMBAT 6」のサウンドデザイン

バンダイナムコゲームスの中西哲一氏
 株式会社バンダイナムコゲームスが2007年11月に発売したXbox 360用フライトシューティング「エースコンバット6 解放への戦火」は、圧倒的な映像の美しさと迫力で発売前から話題となり、日本のXbox 360市場を牽引するタイトルと言えるヒット作となった。しかし本作は映像だけでなく、サウンドにもこだわりを持って制作したという。

 そのこだわりの一端が紹介されたのが、オーディオセッション「『ACE COMBAT 6 解放への戦火』インタラクティブサウンドデザイン」である。講演者は、バンダイナムコゲームス コンテンツ制作本部 技術部サウンド課の中西哲一氏。本作におけるサウンドのコンセプトは大きく分けて「フルサラウンド」、「超接近」、「加算式ダイナミクスコントロール」の3つだという。

 まず「フルサラウンド」について。本作は、バンダイナムコゲームスの社内で作られた独自のサウンドミドルウェア「NUSound」を使い、フル5.1chサラウンドを実現している。そのサラウンドの利用方法として、BGMではセンターチャンネルとLFE(低音チャンネル)はあまり使わないようにしているという。

 LFEは爆発音などの低音で使われるものだが、本作ではLFE専用の音を用意せず、ソース波形に含まれる低音成分の分配のみで処理している。これはステレオやヘッドフォンなど、個別にサブウーファーを用意できない環境でも音を成立させるためのものだという。ただ、LFEを使うときには、「遠慮なくドカンと使う」のも決まりごとだったという。これはゲームを触ってみれば、すぐ実感としてわかるものだろう。もう1つのセンターチャンネルについては、ダイアログや一部の効果音で使うために空けてある。

 またインテリアパンニング(他の機体や爆発とすれ違う際など、音が前後に流れるような効果)では、通常は中央に近づくほど音源方向が希薄になる。本作では、逆に近づくほど方向感をはっきりさせるという処理を、ミサイルなど一部の効果音で取り入れている。これは視界外の情報を音でフォローするという、ゲームならではのアプローチによるものだ。

 次に「超接近」について。これは爆発音においてこだわりを見せているもの。通常であれば、敵機を撃墜するなどして爆発が起こると、そこを音源とした爆発音が、自機との位置関係に合わせて再生される。そこに本作では、さらに爆風と破片を表現した2つの音を別々に用意している。

 この3つの音は、音が流れる時間と、音量が減衰する距離の2点で差を付けられている。爆発音は短時間ながら遠くまで聞こえるが、爆風はそれより長時間流れ、かつ近距離でないと聞こえない。破片はさらに発音時間は長いが、ほとんど密着するような距離でしか聞こえない。破片音は、爆発の中に突っ込むような動きをすると「パリパリ」と聞こえる機体の破損音の表現で、爆発点に近くないと聞こえないことから、音によって自然にプレーヤーに距離感を与え、“爆風を突き抜ける快感”を生む仕掛けになっているのだという。

 3つ目の「加算式ダイナミクスコントロール」は「インタラクティブ・ミキシング」とも呼んでいたもので、状況に応じて音のミックスバランスを制御する機能を指している。この目的は、無線指示や警告音といった重要な情報となる音を、きちんとプレーヤーに聞かせるためのもの。効果音やBGMの音量はその都度異なるので、発音状況にあわせてインタラクティブに音量調整しようというものである。

 音量調整の方法としては、「邪魔になる音の音量を下げる」か、「聞きたい音の音量を上げる」という2つがあり、本作では後者を選択している。これは5.1chサラウンドを前提にしたことでダイナミックレンジが広くなり、音量を上げるマージンがあるからだという。調整の際のバランスは、露骨にわかるほどではなく、むしろプレーヤーには気づかれない程度にさりげなく行なっているという。具体的には、「効果音が一定以上になったら無線音量を上げる」、「アフターバーナー中は無線音量を少し上げる」、「効果音がある程度大きいとき、ロックオンの警告音を少し上げる」などが実装されている。

 講演のまとめで中西氏は、もっとサウンドにCPUのリソースを割くことを推奨した。映像では処理能力の向上により、インタラクティブな映像表現が進化し、リアルタイム演出も増えている(本作のデモシーンもリアルタイム処理を採用している)。また物理エンジンやプロシージャル手法などで、映像は膨大なバリエーションが生まれている。中西氏は、これらの映像に適切なサウンドを対応させるためには、メモリの限界まで音のバリエーションを用意するといった手法では限界がくることを指摘した。

 そうすると、サウンドもリアルタイム処理を活用し、少ない波形から多くのバリエーションを生み出す手法が必要になるというわけだ。中西氏はこういった動きについて、「実際、海外では既に使われている。私はそれを理由に、『CPUパワーをくれ!』といってやっている。海外勢に負けないよう、世界に勝てるような提案をしていってほしい」と、来場したクリエイター達に訴えた。

サラウンド環境を、演出のみならずゲームの情報として扱うことを重視している。実はあえてリアルでない方向性の処理も多い インテリアパンニングでは、“ミサイルは近づくほど方向感をはっきりさせる”という、逆転した手法をとっている 爆発音は主に3つのレイヤーで構成。本当に近づいたときだけ、破片の音が聞こえる
インタラクティブミキシングの実装例。調整幅はさほど大きくない。実際にプレイして気づいた人はいるだろうか? こちらはインタラクティブミキシングの処理をグラフ表示したもの。右上が音量調節量を示しており、ものによって上げ下げしているのがわかる オーディオにより多くのリソースを割くことを常識にしてしまおう、というのが中西氏の訴え。映像同様、リアルタイム処理による進化をすべきだと述べた




■ ゲームスコア数万を稼ぐ“実績の達人”が語る「いい実績とダメな実績」

左から、松井ムネタツ氏、盛政樹氏、X氏、「いち」氏、「れんねん」氏、巽重夫氏
 「Gamefest Japan 2008」の最後の時間に開催されたセッション「実績の達人によるパネルディスカッション -理想の実績教えます-」では、Xbox 360やGames for Windowsのタイトルで提供されている「実績」について、既に数万から10万のゲーマースコアを稼いでいる5人を招いたトークセッションが行なわれた。

 参加者はメーカー代表として、株式会社5pb プロデューサーの盛政樹氏と、某大手メーカー開発者というX氏。続いてユーザー代表として、「DB-BOX360」管理人の「いち」氏と、副管理人の「れんねん」氏。そしてメディア代表として、エンターブレインの松井ムネタツ氏が参加した。セッションの司会進行は、マイクロソフト PRの巽重夫氏。

 トークの前に巽氏から、マイクロソフトが提示している実績に関する情報が公開された。まずメーカーが実績を設定する際に示される最低限の規定は、5つ以上の実績があることと、合計ゲーマースコアが1,000になることの2点のみだという。またこれに加えてガイドラインも用意しており、プレイ開始から数分で最初の実績を解除できること、その次が30分以内、その次は数時間以内、さらに30時間以上プレイして得られるものがあること、といったことが書かれている。

 トークの最初のお題は、「思い出に残っている実績」。盛氏は「トラスティベル ~ショパンの夢~」を挙げ、2周しないと取れないアイテムコレクションの実績を目指してプレイし、ついに全て揃えたと思ったら、必要なアイテムを売ってしまっていたようで、3周目も遊ぶ羽目になったという。「そういうアイテムは売れないようにしてほしい」というのも当然のことだろう。

 また、「いち」氏からは「NBA 2007」で、“オンラインで1,000人集まったところに居合わせる”という実績を取るため、米国が中心になって行なわれた1,000人集まろうというイベントに早朝に起きて参加したというエピソードを語った。イベントとしては思い出に残るものだろうが、通常では入手不可能に近い実績ということで、若干の不満もにじませていた。

 しかしネガティブな意見ばかりでもない。数タイトルの実績設定経験を持ち、自らもゲーマースコア10万オーバーで「実績は人生の全て」と豪語するX氏は、「実績をきっかけに、普段絶対にやらないようなゲームをプレイし、おかげで素晴らしいゲームに出会えた」とも語った。こういった気持ちは、日本においては小規模ながら尖ったゲームが多いXbox LIVE アーケードをプレイする人は、特に強く感じるだろう。

 次に、「理想の実績とは何か」というお題では、「ランクマッチの実績で、対戦とは関係ないことをさせるものはよくない。真面目に対戦させるべき」、「ソフトの延命措置に使おうというのが見える。長時間のプレイを強要すれば、逆にゲームの評価を下げる」といった、ゲーム内容との不整合についての不満点が挙げられた。

 ではどんな実績が理想かと問われると、「遊んで欲しいところを実績で示してくれるもの」というのが共通意見となった。実績を解除するために“本来のゲームから外れたことを強要する”のではなく、“新たな遊び方や、気づかなかった面白さを引き出してくれること”が求められているようだ。

 またX氏はメーカー側の視点として、「“この実績を取ってくれたということは、このモードが人気なんだ”とか、“この実績を取らないということは、この部分は飛ばされたんだ”というデータが取れる。メーカーの思いとユーザーのニーズをがっちりかみ合わせられる」といった形でも評価した。

 「実績の効果や付加価値は必要か」という話題では、「金品交換があったらやめます。何もないから美しい」、「お金以上の価値がある」と全面的に否定。これは実績の達人たちならではの思考といえるかもしれない。

 最後にX氏より、実際に社内で使ったという実績設定のポイントが紹介された。第1の目的は「未購入の潜在顧客に購入を促すこと」としており、理由としては発売の少し前から実績の内容をオンラインで確認でき、そこからどんなゲームかを知る目安にもなるためと説明した。他にも「ゲームの制作段階から実績を意識しておく」、「想定プレイ時間を遥かに越える設定にはしない」、「50項目を使い切る」、「常人に無理な獲得難度にしない」、「実績名や説明は面白く」といったことがガイドされた。

マイクロソフトから指示されている実績の規定は、実は2つしかない 実績を有効に活用することで、ゲームの幅を広げる効果を得られるが…… 実際にはユーザーに苦痛を感じさせ、ゲームそのものに対する印象をネガティブにするものがある


□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□「Gamefest Japan 2008」のホームページ
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/xna/cc723908.aspx
□関連情報
【9月4日】マイクロソフト、「Gamefest japan 2008」を開催
遊び、作る楽しみをエンドユーザーに広げていくプラットフォーム戦略が結実
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080904/gf1.htm

(2008年9月5日)

[Reported by 石田賀津男]



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