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会場:韓国釜山市クァンアンリ海水浴場
「新韓銀行 プロリーグ」は、KeSPAが認定する12のプロチームによる対抗戦で、毎年4カ月間かけてリーグ戦を行ない、8月に釜山市クァンアンリ海水浴場で決勝戦を開催している。同所で開催される決勝戦には毎年数万人のユーザーが集い、韓国のe-Sportsシーンを代表するイベントとなっている。今年は2万人以上の観客を集め、例年どおりの盛り上がりを見せた。 今年は、昨年の覇者である「サムスン電子 KHAN」が、16勝6敗の成績で一足早く決勝戦進出を果たした。対戦相手は、「SKTelecom T1」チームとのプレイオフを制して勝ち上がった「オンゲームネット SPARKYZ」だ。 予選では5戦3本先取方式だったが、決勝戦では7戦4本先取の試合方式で行なわれた。第1ラウンド、第2ラウンドは1対1の個人戦、第3ラウンドは2対2チーム戦、第4ラウンド、第5ラウンドは1対1個人戦、第6ラウンドは2対2チーム戦、最後の第7ラウンドは両チームの監督が現場で指名した選手による1対1エース対決で勝敗が争われた。
第1ラウンドでは「オンゲームネット SPARKYZ」が1勝を手にしたが、第2ラウンドでは「サムスン電子 KHAN」のエース、Stork選手が見事に勝利し1-1で並んだ。その後、「サムスン電子 KHAN」が連勝を重ね、最終結果は4-1で優勝を成し遂げた。本稿では「新韓銀行 プロリーグ」の概要と決勝戦の第2ラウンドまでの試合を取り上げたい。
■ 「Starcraft」プロゲーミングチーム12カ所の対抗戦!「新韓銀行 プロリーグ 2008」
各プロゲーミングチームには10~20人の「SC」のプロ選手が所属しており、毎試合の前に監督はエントリー選手と出場順のオーダーを発表する。選手たちの個人の実力も重要だが、選手ごとに出場順に対する相性などもあり、監督が決めるオーダーも勝負の行方に大きく作用される。試合前のオーダーが発表されるとファンたちの間では、選手間の対戦成績や相性などを肴に「SC」談義が繰り広げられることになる。 当日は予選成績が16勝6敗で1位通過した「サムスン電子 KHAN」と、14勝8敗の3位の成績で予選通過し、準プレイオフで「STX」を、プレイオフでは「SKTelecom T1」を倒して決勝進出を果たした「オンゲームネット SPARKYZ」との頂上決戦が行なわれた。 「オンゲームネット SPARKYZ」の「SC」の選手は総勢21人、「さむすん」の「SC」の選手は22人。このうち8名ずつが登録選手として会場に登場し、エース対決となる最終試合を除く各試合で1名ずつ1回まで参戦することになる。
準プレイオフから勝ち上がって勢いに乗る「オンゲームネット SPARKYZ」がいかに王者を組み敷くかが見所の試合となった。決勝戦では最初の第1ラウンドを「オンゲームネット SPARKYZ」が勝利したものの、次の4ラウンドは「サムスン電子 KHAN」が連勝し4-1のスコアで優勝を手に入れた。決勝戦の試合結果の詳細はご覧の通りだ。
Great選手(サムスン電子 KHAN)対Leta選手(オンゲームネット SPARKYZ)、マップ「カトリナSE」、Leta選手の勝利 0-1
・第2ラウンド個人戦
・第3ラウンドチーム戦
・第4ラウンド個人戦
・第5ラウンド個人戦
■ 第1ラウンド、Great選手対Leta選手。綺麗に守りを成功させ、一気に反撃を仕掛けたLeta選手の勝利に!!
第1ラウンドはGreat選手(チャ・ミョンファン、サムスン電子 KHAN)対Leta選手(シン・サンムン、オンゲームネット SPARKYZ)の個人戦。Great選手は「Zerg」の使い手で、Leta選手は「Terran」の使い手だ。マップはカスタムマップの「カトリナSE」で、最初のスタートの位置から反時計回りの方向にマルチ資源が位置するため、正反対の方向で陣営が生まれると五分五分の戦いになるが、相手陣営に対して反時計回りの方角に位置取った陣営の方がマルチ基地に攻撃を加えやすいため有利になる。 まず、ゲーム開始直後のスタート地点はGreat選手が9時方向で、Leta選手は6時方向となった。Great選手の場合7時方向に第2資源が位置するため、6時方向のLeta選手から空中ユニットを用いた攻撃などにさらされやすい。Leta選手に有利なスタートとなった。 Leta選手は守りを固めるため、建物を密着して建てた。外側から基地の内側にユニットが入りこまないように封鎖した構造だ。Leta選手の選択種族「Terran」の特徴として建物を空中へ浮かべることができ、封鎖した構造でも攻めるときには建物を浮かばせてユニットを外に出すことができる。「Terran」の守りのセオリーに沿った戦略だ。 Great選手はまず、第2資源のところに2番目の「Hatchery」を建設した。その後、ユニット生産を増加させるため3番目の「Hatchery」を建てようとしたが、ここでLeta選手が先手を打つ。「Hatchery」を建てようとするスペースに資源採集ユニットの「SCV」を巧みに移動させ、「Hatchery」をまさに建てようとするその瞬間にキャンセルさせることに成功した。建物を建てようとするとき、他のユニットがその場所に被っているとキャンセルされる「SC」の仕様を巧みに利用した手だ。時間にしてわずか数秒ほどのものだが、 この数秒間Great選手のテックツリーの進化を遅らせたことが後々に響いていくことになる。 Leta選手のテックツリーを見てみるとユニット生産建物「Barrack」は1つだけ建造して、第2資源ではマルチ用の「Command Center」を建てた。その後、メカニックユニット生産建物の「Factory」、空中ユニット生産建物「Starport」まで次々とテックツリーを上げていたのだ。「Starport」で「Science Vessel」をなるべく序盤で利用する作戦であったのだ。 「Science Vessel」は見えない敵を見ることができる「Detect」機能を持ち、さらには生態ユニットを感染させ、ユニットのHPを徐々に減らす「Irradiate」の能力を持っている。「Irradiate」は全ユニットが生態ユニットである「Zerg」にはかなり手痛いスキルで、周りのユニットまで被害を及ぼす強力な能力だ。Leta選手をそれをなるべき早く生産して利用する方針だった。 ハイテクを駆使しようとするLeta選手は当然、テックツリーの成長にリソースを取られて序盤の守りが手薄になるのは必至だった。そのため、Leta選手は少しでもGreat選手のテクツリーを妨害する必要があったのだ。建物で道を防ぐことはできるものの、ある程度防御のユニットを揃えた段階にならなければ、数で強行突破を許す結果になってしまう。 Great選手は「Zergling」を12機集め、けん制攻撃を仕掛けてみたが、既にLeta選手は数機の「Marine」や「Vulture」を備えており、そのまま強行突破までは持ち込めない状態だ。その後は「Zerg」の空中ユニット「Mutalisk」を利用してLeta選手の基地と第2資源のマルチ基地を妨害しようとしたが、Leta選手は既に対空中用の防御建物「Missile Turret」を完備していて、これと言った成果を上げられず後退した。その後はLeta選手の攻撃に備えて「Lurker」などを生産に入った。 Leta選手は守りをしながら2つ目の「Barrack」を建設し、さらに「Academy」を建設して「Marine」、「Medic」、「Sciense Vessel」を備えていく。「Marine」の攻撃スピード上昇させる「Steam Pack」と治癒ユニット「Medic」の組み合わせは「Zerg」を相手に最も多く使われる。この組み合わせで「Mutalisk」による被害ことごとく防御していった。 その後、Leta選手は輸送ユニット「Dropship」に「Marine」と「Medic」を詰めて、Great選手の第2資源の破壊工作を行なう。それと同時に超遠距離攻撃能力を持つ「Siege Tank」も組み合わせに入れこみ、Great選手の入り口を封鎖した。「Science Vessel」が持つ「Irradiate」で、徐々にGreat選手のユニットを抹殺して追い詰めていく。 Great選手は「Defiler」を生産し、範囲内では遠距離からの攻撃に強くなる「Dark Swarm」で防御しようとしたが、既にユニットの数の差がついてしまっており、一気呵成に本拠地の基地を破壊されGG宣言をした。戦力をきっちりとまとめてしっかりした攻撃の成果を上げられず、さらには「Science Vessel」の破壊が上手くできなかったのがGreat選手の敗因であった。 Leta選手は序盤の適切な防御後、相手の資源ポイントに同時に攻め込んだのが見せ場となった試合だった。これで「オンゲームネット SPARKYZ」が最初の第1ラウンドを手に入れ、1-0でリードした。
■ 第2ラウンド、Stork選手対Practice選手。「Reaver」と「Corsair」の組み合わせの戦略を見事成功!最後は「Carrier」で片付きStork選手の勝利に!!
Stork選手はまず、資源採取ユニット「Probe」で5時方向の偵察に向かったが、効果を上げることができなかった。間違った方向への偵察により、相手のテックツリーを早期に判別できなかったStork選手は、入り口に防御建物「Photon Cannon」を建て始めた。その後、第2資源のところに2つ目の「Nexus」を建て、中後半戦に持ち込もうとした。 一方、Practice選手は「Hatchery」1つの状態で「Spawning Pool」を建て、「Zergling」6機を生産し、攻撃に向かった。しかし、Stork選手の入り口は「Photon Cannon」2つがあったため、突破はあきらめてすぐマルチ基地建設に戦略を切り替えた。2番目、3番目の「Hatchery」を各資源ポイントに建て、資源確保が安定させてから、さらに生産能力増加のための「Hatchery」を2つ立て、計5つまで増やした。Stork選手がすぐには攻勢に転じえないことを確認したため、その隙に「Hatchery」を増やして、「Hydralisk」の物量による攻撃で一気にこの試合を制しようとする戦略だ。 対するStork選手の戦略は、「SC」最高の破壊力を持つ「Reaver」と空中ユニット「Corsair」の組み合わせだ。「Reaver」は移動速度、攻撃速度は遅いが、一回の攻撃力が「SC」最強で、攻撃にスプラッシュ能力も持っている。移動速度が非常に遅いため、輸送ユニット「Shuttle」に乗せて使用するのが一般的だ。 「Corsair」は対空のみ攻撃可能だが、アップグレードを通じて、範囲内の地上ユニットの遠距離攻撃機能を停止させることができる「Disruption Web」を使用できる。「Hydralisk」などを「Disruption Web」で封じ、「Reaver」で処理していく戦術である。 「Zerg」を相手に組み合わせとしては非常に強いが、手数が多く、一歩間違って「Shuttle」を失ったら移動がほぼ不可能になってしまう上に、「Reaver」を失っても火力が大きく落ちてしまう。運用に少しのミスが許されない戦略である。 Practice選手はStork選手の戦略を読み取り、守りを固めていた。Stork選手は「Corsair」で偵察しながら、隙を探っていた。そのとき、9時方向に新しく建てた第4資源のマルチ基地を発見する。さらに、Stork選手は相手がまだ本格的なユニット生産に入ってないことを察知した。これはチャンスだと思ったStork選手はすぐに「Reaver」4機と「Corsair」数機の組み合わせで攻撃に入った。 その判断は的中した。Practice選手は本格的にユニット生産に入っておらず、未だマルチ基地を増やしていた。Stork選手は「Reaver」と「Corsair」の組み合わせで次々とPractice選手のマルチ基地を破壊していく。Practice選手はマルチ基地を守ろうと「Hydralisk」を送るが、「Disruption Web」によって攻撃が封じられ、なす術が無く倒された。 その後、Stork選手は対「Zerg」戦では珍しく巨大空中ユニット「Carrier」を投入する。一般的な「Protoss」対「Zerg」の試合では「Carrier」を生産する間が無く、地上ユニットで最終決戦をむかえるが、Stork選手は「Carrier」を選んだ。既に立てた空中ユニット生産建物「Stargate」をそのまま利用するつもりだ。 次々と破壊されたマルチ基地で、相当な被害を受けたPractice選手は「Carrier」に対抗し、Zergの対空専用のユニット「Devourer」を備える。しかし、Stork選手はそのほかにも周りのユニットを隠し、範囲内の敵ユニットを凍らせる能力を持つ「Arbiter」や「Corsair」などのユニットの組み合わせを隙間なくを完成させていた。 当然、Practice選手も範囲内のユニットのHPを徐々に減らす能力「Plague」を持つ、「Defiler」といったユニットを組み合わせた編成が必要となったが、対応が間に合わず、各地域で負け戦が続いた結果投了のGG(Good Game)宣言。これで「サムスン電子 KHAN」と「オンゲームネット SPARKYZ」は1-1で原点に戻った。 その後のチーム戦、続いて個人戦2つを全て「サムスン電子 KHAN」が勝利し、4-1のスコアで「新韓銀行 プロリーグ 2008」の優勝チームになった。「サムスン電子 KHAN」は去年もこの場所で優勝を手に入れており、2連覇の快挙を達成した。
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□新韓銀行のホームページ(韓国語) (2008年9月2日) [Reported by Dong Soo “Luie” Han / 三浦尋一]
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