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PS3「PixelJunk Eden」配信開始記念!
Baiyon氏と開発者のインタビュー

7月30日 収録

会場:SME乃木坂ビル

 7月31日、有限会社キュー・ゲームスからプレイステーション 3用オーガニック・プラットフォーム・アクション「PixelJunk Eden」の配信が開始された。価格は900円で、CEROレーティングはA(全年齢対応)。

 昨日の記事で予告したとおり、GAME Watch編集部はプレス向け体験会にて本作のアート・サウンドディレクションを手がけたマルチクリエイターのBaiyon氏、キュー・ゲームスのスタジオ ディレクター吉田謙太郎氏と開発マネージャー富永彰一氏からお話をうかがう機会に恵まれた。

 すでに製品版をダウンロードして楽しんでいる人はもちろん、体験版でお試し中という人もいるだろう。さらには、カジュアルながらガッチリ遊べる本作を通して「PixelJunk」シリーズやキュー・ゲームスそのものに興味を抱く方もいらっしゃるだろう。気になる人には、ぜひ一度目を通していただきたい。


■ まずはお互いのコラボレートありきでプロジェクト開始

Baiyon氏:京都在住のマルチアーティスト。サウンド、DJ、アート、グラフィックなど多方面で才能を発揮。国内はもとより海外フェスティバルでもライブ活動を行なっている。ゲーム制作に携わるのは今回が初という
―― 本作は「企画」よりも、まずはBaiyon氏とのコラボレートありきで開始されたと聞きました。当初、Baiyonさんはどのように思われました? 元々ゲーム自体に興味は?

Baiyon ゲームは元々好きで、ずっと作りたかったんですよ。で、ディラン(キュー・ゲームス代表取締役)に会ったとき「作りたい」という話をして、それで何かやってみようと。ちょうどそのとき「PixelJunk」シリーズの企画があって「丁度いいのがあるから、一回打ち合わせをしてみましょう」みたいな話で。それで富永さんと話をして、ちょっとずつ。そんな感じですねぇ。

―― そのときには、もう「PixelJunk Eden」の基本コンセプトは決まっていたのでしょうか?

Baiyon (富永さんが)ぼくのグラフィックスのなかで気になるのがあって、植物を使ったやつなんですけど。それで一度植物のスタイルを提案して「そういう感じで、こういうのがもっと必要、ああいうのも」みたいな感じで世界的には出来ていった。

―― 正直、当初思い描いていたものと完成版で違いはありましたか? もっとアーティスティックなものがよかったとか?

Baiyon いや、逆にアーティスティックなゲームにしたくないと思っていたんですよ。そうなったら、たぶんそこまで新しいものにはならなかった気もしますね。

富永彰一氏(以下富永) ビジュアルとしてスタイリッシュ。そのうえで、かつゲームとしても成り立ってる。そういう高い次元というか、クオリティにしたいなぁと思っていました。

Baiyon そこが今回、凄く新しいのかなと思うんですよ。ゲーム自体面白くて、それにビジュアルとか世界ができているというか。

―― 今回、企画面でもだいぶ協力されているそうですが?

Baiyon キュー・ゲームス自体、そういうことに自由な雰囲気があるし。「ビジュアル的にこうしたいから、ここのゲーム性はこうしてほしい、してほしくない」という話は、ずっとやってましたねぇ。

―― ゲーム制作は、今回が初体験?

Baiyon そうですね。ただ、まぁ好きやったんです。こんなん作りたいというのはあったから、そういうのを伝えて。ここはこうしてみようとか。そういうのは常にやりとりのなかでありました。

―― 普段はどんなゲームをプレイされているんですか? 毎日さわるタイプ?

Baiyon はい、時間があれば。一番稼働率が高いのは、ファミコンとスーファミですかね。

―― 世代的にはファミコン?

Baiyon そうですねぇ。小学生の最初くらいにファミコン買ってもらって、それからずーっとって感じですねぇ。

富永 まぁ、そこはこだわってなくて。ゲームやってないとアカンってわけじゃないんですよ。

Baiyon たしか、アレですよね。作り出してから「俺がゲーム好き」って(わかって)後から「あっ、そう?」みたいな話しやったんですよ。で、今でもクソゲーとか掘ってるんで。いつも探してるんですよ。別にやりこむわけじゃなくて、なにかひとつアイデアをもらったりとか、色あせが面白いとか。そういうのだけでも十分なんで。こういうのあったら使えへんかなぁとか、話してたりして。

富永 (Baiyonさんは)本業のグラフィックデザインを作る際に、もうゲームのアイディアをインスピレーションとして。

―― いくらインスピレーションとはいえ、わざわざクソゲーを選ばなくても……。

Baiyon いや、クソゲーて、いいやすいからクソゲーというてるだけで。たぶんクソじゃない……ちょっと探してるとこはあるんですけど(笑)。

富永 えてして、そういうもののほうがブッ飛んでることが多い。変に奇麗にまとまってても意味がないというか。驚きが。

Baiyon そうそう! 驚きが欲しいっすねぇ。

―― そういう意味では、本作はとても遊べるものになってますが。

Baiyon 自分から作品としてクソゲーを作りたくはないです(笑)。ちゃんと体験してもらうことが大切やったんで。(驚きの)エッセンスとしてはいいかもしれないですけど。

―― ご自身のなかに、以前からゲームという栄養があったんですね。

Baiyon そうですね。インスピレーションにもなってましたし。グラフィックス、サウンド、ビジュアルと色々やってるので。総合的な部分で、ゲームって魅力的なメディアやったんですよ。なんか、自分のやりたいことを入れられるかなぁってあったし。始まりがあってクリアがあるんだとしたら、そこにもう最初からストーリーがあるじゃないですか。そういうのが魅力的やなぁと思ってて。ずっとやりたかった、というのはありますね。

―― その点、本作はいわゆる“ストーリー”的なものが盛り込まれていません。それは意図したことですか?

Baiyon 全体の大きな流れというか。こういう世界である、こういう存在である、というのはありますけど。1やってクリアして2にいかないと話がわからないとか、そういうのはないです。

富永 カジュアルゲームって何回もプレイするから、リニアなストーリーはあまり考えてなかったですね。設定レベルくらいで。

Baiyon サウンドとビジュアルに関していうと、やっぱり中盤はこうなって、後半はちょっと最後っぽい演出とかサウンドとか。そういう起承転結みたいなのは、ストーリーとして、っていうよりは全体の流れとしてやりたいなぁというのはありました。

体幹を突き動かすサウンドと浮遊感のあるプレイ感覚の融合が上質の心地よさを生む。昨日の記事でご紹介したサウンドトラックCDも要チェック
富永 そのへんの作り方は、CDのアルバム作りに近いですね。

―― ピークへの持っていきかた、みたいな?

Baiyon そうです。DJとかもそうだし。最初からちょっとずつビルドアップさせていって、ピークを作ってお客さんを引っ張っていくとか。そういうのにちょっと似ているような気はします。

富永 今回、Baiyonさんの作品を見たとき、グラフィックスにせよサウンドにせよ“ライヴ感”が凄く印象的やったんですね。そういうのを、できるだけ残したい、入れたいなぁと思っていました。

―― そういう意味では、普段のDJ活動などとは違って、羽を伸ばせる部分、伸ばせない部分が違うと思うんですが?

Baiyon 頭のなかでロジックを組み立てるっていう部分では似てると思うんですけど、根本的に違うのは「作ってリリースするまでに時間が掛かる」とか、そういうことですかねぇ。

―― DJは、その場でやってすぐリアクションがある。

Baiyon そうっすね。だから、いつも飲食店とかやっている人のことが、ずっとうらやましいと思ってて。作った目の前で食べてもらって、美味しいか不味いかすぐに判断してもらえる。ゲームは開発期間があるんで、すぐ判断してもらえないし。DJは逆に、プレイしているものがその場の時間にすぐ溶けていくじゃないですか。その“場”になるんで。速度は違いますかねぇ。

―― 逆に、作りこんでいくことに対して、改めて感じたことはありますか? メディアとしての違いでもいいんですが。

Baiyon 普段やってるものでも、当然時間がかかるものからかからないものまで色々あるんですが。長くて気づいたこと、ですか?

―― 時間がかかるゆえ、途中で変わっていくものとか。

Baiyon それは……あったでしょうねぇ。(植物とか)変わってきました。

富永 植物をデザインしても、最初のアイディアのときは画面のスクロールを考えてなかったんですよ。一画面内に収めようとしていたんです。そう考えると、植物はたいがい画面の下のほうから生えるもん、っていうふうにBaiyonさんはデザインしてはった。ただ、やっぱり一画面じゃ狭いよな、スクロールさせたほうがええん違う? となって、実際にやりだすと“地面”がないじゃないですか。空中から植物が生えることになる。そうなると、今まで作っていたあの植物では落ち着きが悪いという感覚はあった。そういう(Baiyonさんとの)タイムラグはあったと思う。


■ アーティスト、クリエイターそれぞれのこだわりが「エデン」に生命を吹き込む

吉田謙太郎氏
―― 当初一画面で収められていたというのは、ちょっと驚きました。

Baiyon その頃やったもので、実装して今のゲーム性にあわない、見た目にそぐわないものは外してくださいっていうものはありました。

富永 CDジャケットの植物(ゲームのタイトル画面で最初に表示される植物)は一番最初。そいつは地面から生えていないと収まりが悪い代表。

―― これが最初のコンセプトアートのようなもの?

Baiyon そうですね。一番最初のコンセプトアートのために作った感じですね。で、なんとなく本作を象徴するような感じでずっと進んでいって、CDのジャケットとかトップメニューに。

―― 当然、一画面から広げていくことでゲーム性も大きく変わったと思います。その点、Baiyonさんが最初に思い描いていたものとギャップが生じたときに納得されました? それともスパッとあきらめた?

Baiyon いや、それはもう。スパーッていうか。「わーっ!!」みたいなのは、そりゃ何回も。1億回くらいありましたけど。「えーっ!!」みたいな(笑)

―― その「わーっ!!」のなかで、一番きつかったのは?

Baiyon いやぁ……思い返したくないです(一同笑)。

―― 嫌な思い出なんですか? もう顔もみたくないとか(笑)。

富永 そこは産みの苦しみ(笑)。

Baiyon まぁ誰が悪いってわけじゃなくて、お互いがお互いの立場で発言して、いいものを作ろうとしてやっていったわけで。そりゃ当然ビックリすることもあったし。グラフィックス側から「これがおかしい」といっても「え、何がおかしいんですか?」というようなズレも確かにあったし。逆にいえば「なんでこれが使えないんですか?」、「ゲーム性に影響するから」っていうのを俺が理解できないとか。でも、そういうのをお互いに話で埋めていくという作業は常に、ずっとあって。「ゲームって、こうやってできていくんやなぁ」っていうのも、そういうなかではありましたね。必然として必要なものっていうのも、常に勉強しながらやったんで。なんせ初めてだから。

―― ベタは質問で恐縮ですが、そんななかでもやっぱり「ここだけは絶対に勘弁してくれないかな」みたいなことは? 「これを歪められたら、もうボクのものではなくなる」みたいな。

吉田謙太郎氏(以下吉田) カラーだけは、本当に最後の最後までこだわりぬきましたね。こっちは時間がないから変えようとしたら、すかさず。絶対ダメ! 「ちょっと(RGBを)上げていいですか?」っていうと「まてまてまて」と(笑)。

Baiyon だって、RGB数値って俺何個指定しました!? エネミーのラインからプレーヤーのワーニングっていうんですか? 全部やったんですよ。

―― そういう部分は、元々社内のデザイナーさんがやる領域ではないんですか?

吉田 社内のデザイナーがやるのは“仮”なんです。それを彼(Baiyonさん)が全部置き換えていく作業が待っている。

―― 最初にあがってきたイメージを見てデザイナーさんが作って、それを訂正する?

吉田 最初に出してもらうんですけど、実際にやるとゲームが(カラー的に)見えないとか、このステージにこの色はまずいでしょうとか。

―― インフォメーションとして不都合が生じると。

Baiyon それも話していくなかで(納得がいった)。最初は「えーっ!!」みたいな話もあったんですけど。なんか、色々ありましたねぇ。フルHDの状態では見えるけどSDではとか、リモートプレイで見えないとか。「時間がないから変えたいんですけど」、「じゃぁ俺いってすぐ直します」みたいな。最後の最後まで全部(笑)

―― そういうのは、普段の(アーティスト)活動ではないことですよね。解像度の変化とか。

Baiyon 確かに印刷物みたいな視覚的部分ではかわりはないですけど、サウンドとか結構そうですね。その人の気分とか聴く場所とか影響しますから。ただまぁ、すごく顕著に「見えないからできない」っていうのはゲーム特有かなぁという気はしますけど。どんなに音が悪くても、無理やり聞こうと思ったら聞けるわけで。

―― 音に関する作業は、自由度は高かった?

Baiyon そうですね。音は基本おまかせで全部って感じですかね。RGBの指定をしながら自分の仕事場に戻ってサウンドを作って、持っていってまたグラフィックスの作業して、戻ってサウンドをやって……。

―― 開発側からサウンドに関する要望やすり合わせもなく?

Baiyon 富永さんの好きなアーティストで共通言語みたいなのがいくつかあったんで、最初にそういう話を若干しましたけど。基本的にはそのまま好きにっていうか。

―― 曲作りでイメージしたものはありますか。今回は植物がテーマでしたけど、イメージの膨らませ方とか?

Baiyon 正直、あんまり覚えてないんですけど(笑)。 グラフィックスからサウンドのアイデアが沸くことも当然あったし、サウンドからグラフィックスが沸くこと、当然ゲームプレイから沸くとか色々なパターンがあったんですけど。気をつけたといえば、普段どおり“格好いいこと”だけですかね。ループ感が気持ちいいとかは、やっぱり意識しましたけど。

 なんか、ほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞:コピーライターの糸井重里氏が主宰するインターネットサイト。URLはhttp://www.1101.com/)で宮本さんとすぎやまこういちさんが「ゲーム音楽はいまだにパロディでしか使われてない」っていうてはったんすよ。たとえば、今までもテクノっぽい、ミニマルっぽい、ハウスっぽい、ぽいの“ぽい”っていうのはあったと思うんですよ。ぽい、じゃない。本物っていうのが大事。テクノ風な世界観とか、そんなんもうどーでもいいんですよホントに。

 そうじゃなくて、本当にリアルな現場でやってる(音楽)。現場でエデンを鳴らしても問題ないし、クラブクオリティは全然保たれている。“ぽい”じゃないっていうのは凄く大事なんですね。

富永 イメージしていたのは、さっきもいったようにアルバムを作るような気分でやろう、と。

Baiyon すぎやまさんがいってたっていうのは(本作を)作り終わったくらいのときたまたま見て「あぁ、そういうことやったんか」って自分で思ったんですけど。

―― ゲーム音楽を担当される方のなかには、完全に○×風のスタンスでやる人がいる。その一方で(Baiyonさんは)もともとの音楽をゲームでもやっている。

Baiyon 自分の作品の延長として、いつもどおりの問題意識をもってやったっていう。それそのものがゲームとして新しいという確信もあったんで、そこはたぶんお互いに気持ちを握りあえていたんで、注文も特になくというか。

富永 「PixelJunk」シリーズを弊社でパブリッシュするとなると、社内でサウンドを作る人がいないんで発注しないといけないんですよ。で、そのときに色々なゲーム関係のサウンド会社さんから、ありますよね。「これ(サンプル)きいてください」とか。そうすると、どうしても「○×風」とか。

―― タイトルトラックに「○×風」って書いてあることも多いですよね。

富永 どれをきいても「なんか違うよなぁ」と。

Baiyon ○×風やったら、絶対にこの世界はできてなかったと思う。普段そういう音楽を聴かない人も“やばい感じ”をちょっとでも嗅ぎ取ってもらえたらうれしいなぁっていうのはあって。


■ キモい? カワイイ? 謎の主人公キャラクタたち

富永彰一氏
―― 僭越な意見で恐縮ですが、先ほどプレイさせていただいて「少人数で作ることの武器」が顕著に感じられました。凄く一体感がある。ゲーム制作が分業化されて、そのなかで失われていったものはたぶん山ほどあって。それが私のなかで楽しくて、嬉しかったです。

Baiyon そこはやれるだけやりきりたいと思いましたし。さっき言ったカラー指定にしてもそうだし。ゲーム性に変更があった場合、それで今のグラフィックスがあわないとなれば、俺はずっと近い位置で関わっていたんで、そこは「無理です」じゃなく「それなら作り直しましょう」と。そうやって、ずっとやってましたねぇ。

吉田 キャラクタも、最初はただの○(マル)やったんですよ。

―― マル……完全な記号の?

吉田 そう。一時期は「これでええやん、これでいこうや」ってなってたんやけど(Baiyonさんが)「それはいやや」と。もっとキャッチーなキャラクタにしたいということで、色々デザインして、現実にプログラム可能なフォルムにしたりとか。

―― あの……こんなことをいったらBaiyonさんが2度と口をきいてくれなくなるんじゃないかなぁ、っていうのが(体験会のときから)ひとつありまして。

Baiyon はい?

―― プレイしたとき、プレーヤーキャラクタの姿が……ちょっと遠めに見たっていうのもあるんですけど、いわゆる“ステレオタイプな魔法使い”ってあるじゃないですか。とんがり帽子の。あんなのが動いてると思ったんですよ。カワイイカワイイって。

Baiyon (実物は)全然ちゃうかったと?

富永 3人並んだやつのプリントアウトを見せたらショックを受けた。SCEAの担当者に最初アレを見せたときと同じ反応(笑)。

Baiyon え、どういうこと!?

吉田 あのキャラクタのデザインのインパクトが凄かった。

―― ああいうちっちゃいキャラは、勝手なイメージで「カワイイキャラに決まっている」と……。

Baiyon いや、カワイイと思いますよ?(真顔で)

富永 SCEAの人も、あとでだんだん慣れてきて「カワイク見えてきた」と(笑) まぁ、それくらい味というか。

Baiyon 普段から作ってるキャラクタが二面性を持ってるっていうのは、あると思うから。(自身でデザインされたTシャツの絵柄を示して)目が6つあるキャラクタとか。え、なんで目が6つあるかって? カッコイイじゃないですか! 目が2個やったのが、増えるとカッコよくなったり。それだけで面白いなぁと思うんですけど。そんな感じっすね。

―― 主人公キャラのイメージは……妖…精?

Baiyon いや~、どうだろ? (メガネがかわいいとの指摘に)でしょ!? 俺もアイツ好きなんですよ。オキアリくん(イタリア語でメガネの意)。3人いるのは、完全なステレオタイプっていうか。主人公の男がいるんやったら、微妙な関係の女の子がいて、当然オタクのメガネがふたりにとっては邪魔やけど一緒に冒険している、みたいな。

 これいうていいんかわかんないんですけど、完全に「MOTHER」ですよね、ボクにとっては。もう「MOTHER」の世界。だからオキアリはジェフなんですよね。完全にそうです。髪型もモロにそんな感じなんですよ(笑)

―― あとは3人組のイメージですよね。こうあってほしい、みたいな。

Baiyon だから、最初たしかアレですよね? 3人マルチでやるときも全員同じキャラで色変えで、とか。「それ絶対イヤ!」っていって。そこに人間同士の関係性みたいな何かがないと、やっぱり冒険しているように見えないから嫌やって。

富永 実際入れたら、小さくて見分けがつかんかった(笑)

Baiyon ボク(本作を)やる場合は、わざわざ3P選んでやったりしますよ。

―― シングルプレイでもキャラクタを選べるんですか?

富永 ちょっと独特なんですけど、PS3のコントローラーを接続したとき、コントローラーのIDありますよね。あれを変えたらいいんです。

―― キャラクタが小さいというのがありましたが、せっかくデザインしてあるんだから、クリア後に全員がアップで「ありがとう!」って表示するとか……。

Baiyon いや! そういうの俺、嫌がります。だって「ありがとう」ってなんでいうかってところをしっかり考えないと、なんでいうかってわかんないじゃないですか。なんで「ありがとう」ってユーザーに語りかけてる奴らは、どういう性格でどういう場所に住んでるのかっていうのを、自分の気持ちのなかで整理がつかないと絶対に嫌ですかねぇ。

富永 キャラと実際のプレーヤー、この距離感なによ? とか。

Baiyon そういうのずっといってたんですよ。「あんまりそんなこといわれても」みたいなのも一杯あって。「自分て誰ですか?」、「プレーヤー1ってなんですか?」とか。結構、根本的なことで困らせた記憶はありますねぇ。

富永 いまだに「だって、なんでエネミーからポレン出るの?」って(笑)

Baiyon まぁ、そこはゲームなんでっていうのはあるんですけど。今回……前も富永さんとちょっと話をしたんだけど「倒す」とか「戦う」とか「殺す」とかって、もっともポップな表現やなぁってすごくよくわかった。暴力表現って、すごいポップなんすよね、たぶん。敵、味方、自分とかって、すごくわかりやすい。唯一それを少しずらすっていう方法は、たぶんグラフィカルな面であるとか、キャラクタの性格。それ以外、たぶんずらしようがない。

 今回も“ポレン”とかエネミーに“ポレン・プラウラー”って名前がついてますけど、たぶん普通にやってたらみんな“敵”って呼んじゃうと思う。そこは回避しようがない部分で、ゲームを作ってはじめて、自分がそういう構図に慣れていることに気がついたっていうか。だから性格的に抗いたいと思ったっていうのはありますが(笑)。何か方法はないのかなって。

 だから、そういう意味でいうとキャラクタは別にしたいとか。男と女なんで何かあるんかな、なんでメガネかけてるんかなって、そういう部分で雰囲気が変わるかな、ずらせたらいいなっていうのはありますね。

―― プログラマ的には、一緒のほうが工数とかリスク低減というか……安全ですよね。

富永 できるだけそこを簡単に、安全に入れられるようにはどうしたらいいかっていうのをプログラマと色々相談して。

Baiyon そこは富永さんが結構、俺が作業しているあいだに段取りしてくれたりして。キャラクタを作る段でも、開発期間とかプログラム部分の問題をクリアできるのかで、たとえば「こういうものがあって、こうなっていたらできるんですけど、無理ですか」で「じゃぁ前作ったやつを当てはめたら」とか。

富永 最初○でしたけど、キャラクタになると描かないとダメじゃないですか。アニメーションをさせるとなると、それだけのフレームが必要になる。キャラクタが3人なら3倍になる。これはどう考えても(期間的に)無理やなぁと。だったら手書きアニメーションをやめて、手とか足をパーツにわけて、それを植物で実現しているアルゴリズムで動かしてみよう、と。

―― それでキャラクタが“なびく”んですね。

富永 そう。それがまた逆に(奏功して)。動き、モメンタムの方向や強さとかがビジュアル的わかるようになった。そういう副産物が(笑)。

Baiyon 何か、描きましたよね。このキャラで、飛んだときはこうして、とか。ジャンプしたとき“背中”を向いてるんですよね。あれも「絶対にそうしてくれ!」って頼んだ記憶が。「前向きに飛ぶのは嫌だ!」っていったんですよ。地面を蹴って、背面飛びしているみたいに糸をもって回るようにしてほしいって。

富永 それで面白いのが、アメリカのテスターにデバッグに出したとき「キャラクタが後ろ向きに飛んでます」って(一同笑)。

Baiyon マジ? そんなんきとったんや! なんか、棒高跳びしているようなイメージかなぁ。何が嫌やったんかな? 糸を投げるのが嫌やったんかな?

富永 糸をもって、そのまま崖からヒューンて飛び降りるみたいなのが(嫌だった)。

―― レンジャーの訓練みたいに、そういうとき前には飛ばないだろうと。でも、ゲームのなかにはあまりない表現ですよね。Baiyonさんが気づかないだけで、実は自然な表現になっていることが一杯あるかもしれない(笑) そういう意味では、手書きのアニメーションパターンでやっていたというのは本当に大変な作業でしたね。

公式サイトより。アレにしてよかったの「アレ」です
Baiyon さっきいってたマルチプレイのキャラクタづけって、絶対できなかったと思うんで。そう考えると、やっぱりアレにして良かったなぁって。

富永 そもそも、最初もうちょっと(キャラクタが)縦長やったんですよ。手があって、足があって、しかもそれが……。

―― もっと人間っぽかった?

Baiyon いやいやいや、もっとフリークスっぽかった!

―― ……今、ついに言ってしまいましたね。私がずっと喉元でグッとこらえていた表現を!

Baiyon いや、それはもう(インタビューで)切ってもらっていいんで(笑)。

富永 最初、手書き感バリバリやったんですよ。なかなか実装しにくかった。そのへんも解消せなアカンなーっていうのがあって、考えたときに「もっと丸くしたら植物のアルゴリズム使ったらええんちゃうか」というのを思いついて、ちょっとリデザインして。Baiyonさんに提案したら「それくらいやったら妥協できる範疇……」って(笑)。

―― Baiyonさんのなかでは、もっとおどろおどろしい感じだったんですか?

Baiyon いえいえ、全然! そんなつもりはなくて、自分のなかでは可愛かったんですけど。なんでしょうね? 別に、今から考えたら自然な流れで変わっていったし、結果これで満足してるんですけど。一番最初のやつは、元々描いてるなかで「こんな雰囲気のどうですか?」って。

富永 最初はダミーを実装してテストするじゃないですか。それは、そのままのイラストを貼り付けてやってるから。一時期アザラシみたいなのがピョンピョン飛び跳ねてた!(笑)

Baiyon そうそう、あったあった! で「もう勘弁してくれ!」みたいな。

富永 ダミーとはいうものの、人はそれが刷り込まれて「こういうもんや」と思ってしまうんですね。で、そこから始めてしまうから、これを手書きで描くとメッチャ大変やなぁと。

Baiyon 画像素材とかを渡して「じゃぁ実装しておくんで」みたいな感じで。で、次回いったときに実装されているのを見て、しばらく「……」と。こうじゃないんですよ、みたいな。また直して渡して。伝わってないとかじゃなくて、もっといい方法はないかなと。その辺は、吉田さんとか富永さんに相当熱くいって、ポイント……ボクのこだわっている部分を探ってくれたというか。それを解消するためにプログラマの人たちと話をして、うまくいくようにやってもらったりとか。ありましたねぇ、アザラシ時代(遠い目) 頭にもクワガタみたいな……。キャラクタは今のほうが絶対かわいいと思いますよ。

―― 今ネットで投票やったら、絶対に違う意見が山のようにくると思います。そういえば、頭から生えている触手は2本ですよね? 最初、エビというか節足動物みたいで……。

Baiyon あぁ、でも結構そういうのは好きだし。見ながらインスピレーションとかもらったりしますし。

富永 ボクはずっとエビやと思ってたけど。後ろに飛んでるし(笑)

Baiyon いや、アレなんなんやろ? だって、ツノでてるのって結構面白い生物がいるじゃないですか。ウミウシとかでもちょっと出てたりとか。あと、ウツボとかって鼻の穴のなかからマッチ棒みたいなのが出てて、先っぽだけ蛍光とかやったりするんです。カッコエエなぁと思って。

―― そのあたりにインスピレーションの源泉があるんですね。刺激されるものがある。

Baiyon そうっすね。だから、深海の映像とか見るの、凄く好きですね。変な生物を見たり。グロいのは嫌なんですけど。気持ち悪い。

―― え?

Baiyon いやぁ、グロいのは嫌いっす。嫌なんすよ。俺、グロくしたいなんて1回もいったことないすよね? 俺グロいつもりでまったくやってないっすよ!

―― ……今、物凄い言行不一致を目の当たりにした気がするんですが。

Baiyon 逆に(キャラクタを見て)「これグロくないすか?」ってもし言われたら「グロくないわぁ!!」って俺がキレ返すみたいな。なにいってるかわかんない、何がそうなんですか?(笑) みたいな。

富永 でもね、キャラクタに関しては誰もがそういうプロセス(一同笑) だって、プログラマもみんなそう。しばらくたって「……だいぶ慣れてきて、かわいく見えてきた」と(笑)。

―― そんな言い方をされるのもいかがなものかと。ちなみに、デザインされていた時期は海洋生物にハマっていたとか?

Baiyon う~ん、どうやったかなぁ? ただ、そんなにメチャクチャ一杯のパターンは描けなかったっすもんねぇ。時間的にも。

富永 たぶん、最初のキーワードは“クラゲ”みたいなのだったんですよ。ちょっと尾を引くようなもののほうが、たぶんアクションでいうとわかりやすいというか、華がある。

Baiyon あ、それ言ってた! で、糸をひくブラーみたいなのつけたら気持ちええんちゃうか、とか。

―― クラゲの動きは、現状の浮遊感にも通じるものがありますね。


一体感のある素晴らしい作り。体験版も適度なボリュームで魅力を理解するには十分。気になる人はぜひダウンロードしていただきたい
広報氏 すいません、そろそろ時間が……。

Baiyon 大丈夫なんすか?

広報氏 はい、しっかりと。

吉田 いやぁ、いい感じの座談会ができたなぁ。ようやくBaiyonさんと打ち解けた(一同大爆笑)。

Baiyon なんだこりゃ! なんだとぉ!?(笑)。

―― い、一年一緒に作り続けてきたんじゃないんですか? 心を開いてなかったと!?

吉田 いやいや、冗談冗談。

Baiyon 正直、大変やったと思うんですよ。振り返る時間もそんなになかった(笑) こんな話しないもんねぇ?

―― 頃合もよく、丁度いいオチをいただきましたので。本日はどうもありがとうございました。シリーズ今後の展開にも期待しております!


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□Baiyon氏公式サイト
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□「PixelJunk」のページ
http://pixeljunk.jp/
□関連情報
【7月30日】アニプレックスとキュー・ゲームス
PS3「PixelJunk Eden」プレス向け体験会を開催
http://watch.impress.co.jp/docs/20080730/pje.htm
【7月11日】キュー・ゲームス、PS3「PixelJunk Eden」
トロフィー機能、YouTubeへのアップロード機能に対応
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080711/pje.htm
【6月2日】キュー・ゲームス、PS3「PixelJunk Eden」
植物の世界を舞台にした独特の雰囲気のアクションゲーム
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080602/pixel.htm

(2008年7月31日)

[Reported by 豊臣和孝]



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