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会場:カプコン 東京支店
「バイオニック コマンドー マスターD復活計画」は、1988年に家庭用ゲーム機でリリースされたアクションシューティング「ヒットラーの復活」をリメイクしたもの。当時のテイストはそのままに、HD化されたグラフィックス、リミックスBGM、ふたり協力プレイや対戦モードなど数多の新要素を搭載。PS3版は「PLAYSTATION Store」、Xbox 360版は「Xbox LIVE アーケード」にてそれぞれダウンロード販売される。配信日と価格は、Xbox 360版が7月30日(800マイクロソフトポイント)、PS3版が7月31日(1,200円)。CEROレーティングはB(12歳以上対象)。 体験会では、本作の開発プロデューサーを務めるベン・ジャッド氏がプレゼンテーションを行なった。「20年前……(昔の)カプコンは難しいゲームを作ってきたという歴史があったと思います。『ロックマン』、『魔界村』。『バイオニクッコマンドー』もそのなかのひとつで、日本ではそれほどヒットしませんでしたが、海外ではかなりのヒットでカルト的な存在になっています。きっと一番難しい部分は“スウィング”を理解するまで時間がかかること。昔の定番2Dスクロールゲームにジャンプは必須要素でしたが、本作にはジャンプがない」と、その経緯と特徴を説明する。 開発に際しては「まずは普通に作り直したんです。当然、より綺麗に作ろうというところからスタートして。でも、作っているうち色々なことに気づいた。私たちは“ファン”としてゲームを作った。そういうときに一番やばいのは、初めてプレイするユーザーさんの気持ちを理解しないこと。勝手に自分の視点でワガママなゲームを作ってしまう。途中のβテストで『やったことがない』など色々な人を呼んだら、スウィングがわからなくて先に進むことができない。悩んだ末どのように改善していったかというと、まずオリジナルにはなかった『チュートリアル』の搭載。そこでスウィングの基礎をひとつひとつ教えてくれる。次は難易度の概念。これもオリジナルにはなかったが、本作はイージー、ノーマル、ハード、隠しの4段階から選べる」とコメント。 難易度の設定については「一般のイージーモードは敵のバイタリティが少なめといった調整をするんですが、本作はスウィングが一番難しい。落ちて死ぬことが非常に多いわけですが、そうならないように“アシストブロック”を入れています。PSPの『ロックマン』で使われたアイデアで、難しいと思われる部分に半透明のブロックが敷かれる。慣れるまで難しいことに変わりはないんですが、だからといってスウィングをなくしたりジャンプを入れるのは『バイオニックコマンドー』ではなくなる。とはいえ、初体験のユーザーさんも遊びやすいようには作ってあります」と説明。オリジナルを完全に崩すリメイク手法もあるが、本作については“特徴を残すべき”と判断された。他のアクションゲームとは一線を画した独特の操作系だけに、オールドファン云々を抜きにしても大正解というべきだろう。 キャラクタ、背景、エフェクトなどのグラフィックスは(一見すると地味だが)物理演算など次世代機向けの技術がきちんと使われている。注意して見ないと気づきにくいが、キャラクタが銃を撃っているとき足元に薬莢が排出されるなど細かい描写もある。全体に見栄えが良くなったわけだが、その一方でキャラクタの造作、色使いなどは“オリジナルのテイスト”が尊重されている。リメイクというとグラフィックや演出に過剰な手が加えられるケースが多々あるが、パッと見で『ずいぶん綺麗になったなぁ』と同時に「これはまさしく『ヒットラーの復活(バイオニックコマンドー)』そのものだ」と感じさせてくれるのは、オールドファンにとってうれしいの一言だ。 オリジナルのテイストを残す一方で、ジャッド氏がスウィングに関して唯一入れた新要素が“横投げ”。「空中にいるとき、真横にワイヤーを投げてスウィングできる。それ以外のスウィング操作はオリジナルそのまま。横投げがあることによって、ゲームのステージデザインを壊すことなくプラスアルファを加えることができた。ただし、十分なスキルが必要とされる動きなので、横投げがあることでゲームが簡単になるといったことはない」という。
ハイスコアは、PS3、Xbox 360ともにオンラインランキングに対応。敵を倒すと六角形の“スコアトークン”が出現。敵のサイズなどで出現数が異なり、多くとるほどスコアが伸びる。これは後の体験プレイで身に染みたことだが、敵を倒してスコアトークンをすぐとりにいくと、その先に敵がいたりして、これがなかなか気が抜けない。放っておくとスコアトークンが消滅してしまうため、ハイスコアを狙うときは敵を倒すタイミングにも常に気を配る必要がありそうだ。
ここでジャッド氏から「ボスの戦略は、昔のゲームみたいにユーザーさんに考えて欲しいというのがあるんですけど、それぞれのステージにある“通信端末”でハッキングに成功するとボスを倒す大切なヒントが手に入ります」と注釈が加えられる。通信端末はステージの各所に設置されており、ここで通信を行なわないとボス戦の扉が開かない大切な場所。ハッキングは、ボールを緑色のゴールまで動かすパズル風のミニゲームになっており、成功するとスコアトークンが大量に出現する。 武器は、オリジナルと新規に追加されたものが半々くらいになるといい、デモプレイではロケット砲、手榴弾などが確認できた。中立ゾーンは「昔は銃を撃ったら敵がやってくるという感じでしたけど、ゲーム性としてはつまらなかった。一度わかれば(終わり)。中立ゾーンは全部で6つくらいあるんですけど、情報を収集したり、1UPを獲得したり、チャレンジルームという新モードも遊べる」という。チャレンジルームはハードコアゲーマー向けの要素で、スウィングスキルを訓練するというもの。各ルームに8つメニューが用意されており、ゴールまでの時間が短いほど多数の☆が獲得できる。デモプレイでは「ロックマン2」ラスボス戦の地形をそのまま再現したステージが披露された。チャレンジルームは、全部で50個以上がゲーム中に用意されているという。 カプコン伝統の隠しキャラクタ「ヤシチ」も登場する。全部で12個が各ステージに隠されているが、ジャッド氏いわく「トップクラスの人じゃないと、すべて見つけられないと思います」とのこと。ちなみに、1UPキャラクタのグラフィックスはオリジナルそのままのドット絵を採用。HDグラフィックスのなかにポンと出現するため、ステージ中でかなり目立つ。 ふたり同時プレイの採用は、ある開発メンバーの発案によるものだという。お互いの距離が遠ざかったときは、縦に長いステージでは画面が上下に、横に長いステージでは左右に自動分割される。ふたり同時プレイの際は、ボスのAIが変化するという。前述の難易度調整にも通じるが、単にボスの体力が増えるのではなく“協力プレイ”が戦略の鍵になるというもの。デモプレイのボス戦では、ひとりプレイでは滅多に変化しなかったバーニアの金属カバーがこまめに移動。つまり、ふたりで上下からタイミングよく狙っていかなければ上手くいかないというわけだ。各ボスにはすべてこのような調整が施されており、ふたりだから簡単といったことはないという。唯一残念なのはオンライン同時プレイに対応していないことだが、配信された暁には友人知人などと一緒にぜひチャレンジしていただきたい。
対戦プレイは、4人まで参加可能。キャラクタは主人公スペンサー、敵のリーダー・キルット、オリジナルに登場したグローダー、救出対象のスーパージョーなどが使用可能。ゲームモードは時間制限、デスマッチなど3つから選択可能。ステージ、時間、チームわけなども自由に設定できる。後述のインプレッションでも触れるが、本編はもちろん、この対戦プレイがことのほか熱い。最初は「ありがちかなぁ」と思ったが、実際やるとハンパではなく盛り上がる。「開発が進んでいたため、ネットコードへの対応など開発スケジュールの都合から実現できなかった」といい、こちらもオンラインプレイに対応していないのがちょっと残念だ。
本作は、オリジナルでは容量の都合で実現できなかった“ゲームの世界観”を伝えるデータベース機能を搭載。新しい敵やステージに出会うとデータベースに新たな情報が書き加えられていき、それぞれコメントが参照できるようになる。3D版「BIONIC COMMANDO」はオリジナルの10年前が舞台となっているため、世界観やストーリー全般を理解するうえでデータベースは欠かせない重要な機能といえる。 最後に、PS3とXbox 360版の機種による違いが説明された。Xbox 360には「実績」というシステムがあるが、PS3には現状ではそれがないため代わりに「メダル」が用意される。まだ細かい仕様などは決まっていないが、中身は実績と同等のものになるといい、セーブデータがあればトロフィーが自動的に入手できるよう検討中。また、機種別の専用チャレンジルームも用意される。
このほか、PS3版はプレイステーション・ポータブルのリモートプレイに対応する。ジャッド氏によれば「PSPの液晶画面は2Dスクロールゲームに適しており、凄く綺麗に見える。今のところ、サードパーティでリモートプレイに対応しているタイトルは少ない。もしかしたらうちが初めてかも」という。PS3ユーザーでPSPをお持ちの方は、ぜひ一度試してみてはいかがだろうか。
■ 水木一郎氏が田中公平氏作曲のテーマ曲を熱唱!
ジャッド氏は「『バイオニックコマンドー』は20年前のゲーム。私にとって“ゲームらしい時代”を思い出す、懐かしい気持ち。できれば、それを日本のユーザーにも感じて欲しくて、何かアイデアがないかと。私が思いついたのはアニメ。できたら20年前の懐かしいアニメとか……。それを見て『こういう楽しいゲームがあったよねぇ』と、アニメやゲームへの懐かしい気持ちを伝えられないかと。同じチームのデザイナーに『日本で有名なアニメ歌手はいますか?』ときいたら『水木一郎さんがいますよ。兄貴と呼ばれる凄い人です』と。私も名前は存じておりまして、海外にも名前が伝わっている。まぁダメモトで聞いてみようかといったら、すごく協力的でした」と経緯を説明。 「水木さんは、実は凄いゲーマーなんですよ。『バイオハザード2』をやったときも豆腐を使って色々楽しかったよ! という話がでたとき『え~、めっちゃオタクやないですか、この人!!(一同笑)』と思ってビックリしました。本当に本当にいい人で、このタイトルに対しては非常に力を入れてくれて。そのおかげで、第1弾としてPVを作りました」と嬉しそうに語るジャッド氏。
本PVは、7月25日よりPLAYSTATION store、BIONIC COMMANDOサイトで、近日中にXbox LIVE マーケットプレイスで配信される。「いつかカラオケで歌いたいなと思います(笑)」というジャッド氏の言葉に同意する取材陣一同。1970~1980年代のヒーローアニメを彷彿とさせる熱い仕上がりは、ゲームファンならずとも必聴モノ。興味がある方はぜひチェックしていただきたい。
■ ファーストインプレッション ~対戦プレイが秀逸!~ 会場では、限られた時間ながらシングルプレイと対戦プレイが体験できた。シングルは、まずオリジナルにはなかったチュートリアルをプレイ。既存ステージの流用ではなく、ワイヤーを使ったスウィングアクションに集中できるよう、必要な要素だけをグラフィックスで示したデジタルな表現が印象的。前述のチャレンジステージは、こうしたチュートリアルの発展型といってもよく、そこで学んだ技術はゲーム本編で存分に活かすことができる。 ワイヤーは、方向キーニュートラルでキャラクタの前方斜め上に、上とボタンで垂直、真横で方向キーを押した側に、真下でしゃがんだ状態の前方にそれぞれ飛んでいく。ここで「一般的なアクションゲーム感覚だと、ニュートラルで真横に飛んでいくほうが使いやすいのでは?」と思われるかもしれないが、本作にはジャンプボタンがないため“斜め上にワイヤーを飛ばす”という用途がストレスなく繰り返せることがとても重要になってくる。ステージ構造が複雑になると、ワイヤーで空中の足場をターザンよろしく点々とスウィングで渡り歩ていかなければならない。このとき「ニュートラルで斜め上」がいかに適切かが、文字どおり身に染みる。方向キー+ボタンではなく、ボタンだけでサクッと斜め上に飛ぶ。最初は違和感があるかもしれないが、やりこむほどに熟考のうえで決められた操作系であることが理解できるはずだ。
思い通りにキャラクタを動かせるようになってくると、ワイヤーアクションとスウィングが俄然楽しくなってくる。ドラム缶に隠れている敵兵がいたら、ドラム缶を引っ剥がして撃ち倒したり、ドラム缶をそのままぶつけたり、あるいはドラム缶を盾がわりに使うのもいい。射出はそれほど素早くないため活用は難しいが、ワイヤーで敵弾を跳ね返すことも可能。正直「アクションゲーム苦手なんだよねぇ」という人にはオススメしづらいが、向上心のあるゲーマーなら必ず“プレイするごとに上達していく快感”が味わえる。誰でも絶対にクリアできるようなヌルイい代物ではないが、そのぶん一山超えるごとにジワッとくる達成感は格別だ。
ストーリーを進めていく本編もさることながら、さらに秀逸なのが最大4人まで参加可能な対戦プレイ。前述のとおり、ゲームモードは3つから選択可能。デスマッチと制限時間では、一定サイクルで画面上からアイテムが降ってくる。標準装備の銃をはるかに上回る威力のショットガン、ロケット砲などの武器はもちろん、ダメージを無効化するバリアなどは、降ってきたとたんに敵味方の争奪戦が勃発。いつどんなタイミングで降ってくるかわからず、ワイヤーでキャッチするため近くにいた人が必ず取れるとは限らない。ちなみに、アイテムはすべて一定時間で効果が消失。有効時間と次にアイテムが登場するまでのサジ加減が絶妙で、アイテムだけに頼っていてはなかなか勝てないゲームバランスに仕上がっている。 残されたもうひとつのゲームモードは、アイテム類が一切登場しない特殊なもの。武器によるダメージは一切受けないが、弾が直撃するとキャラクタが“ノックバック”し、少しずつ押されていく。キャラクタがステージ最下層に落下するとミスになる仕掛けで、要は弾を当ててライバルを足場から叩き落していくわけだ。最初は「ん~、ちょっと地味かな?」と思ったが、ゲームが始まった途端にそんなユルい気分は一瞬で吹き飛んでしまう。全員がライバルの状態でプレイしていると、どこからともなく飛んでくる弾に気を抜く暇がなく、当然すべてを避けることなど不可能。よほどうまく立ち回っていても、ワイヤーを伸ばした隙にヒットしてあっけなく奈落の底へ、というケースも珍しくない。共謀されたときなどは悲惨の一言で、一発くらってしまうと数の暴力であっさりと足場から「ガガガガガガガッ」っと押し出される。体験会では全員ライバル状態でしかプレイできなかったが、2vs2などのチーム戦も連携次第で壮絶な戦いになることが予想される。
繰り返しになって恐縮だが、個人的には4人でプレイする対戦モードが強烈にツボに入ってしまった。やっていることは極めてシンプルだが、それだけに勝敗がハッキリして遺恨を残す余地さえない。これまた繰り返しとなり恐縮だが、惜しむらくは対戦プレイがオンライン未対応という1点。学生さんはともかく、社会人ともなれば4人集ってゲームをする機会などそう簡単に作れるものではない。とはいえ、もし時間と場所の都合がつくなら、配信されたあかつきには是が非でも4人対戦をプレイしていただきたい。もしあなたがアクションゲーム好きなら、人数分のコントローラーを買い揃えておくだけの価値は絶対にあるはずだ。
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□カプコンのホームページ (2008年7月23日) [Reported by 豊臣和孝]
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