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会場:Los Angeles Convention Center
1950年スタイルのブラックジョークが幾重にも織り交ぜられたセンス抜群のプロモーションムービーからスタートし、その後MicrosoftのDon Mattrick氏の紹介を受けて「Fallout 3」エグゼクティブプロデューサーのTodd Howard氏が登壇し、Howard氏自ら実機デモを実演。そしてHoward氏自身からXbox 360およびGames for Windows向けに独占的にDLCの配信の発表と、わずか10分ほどの内容ながら、非常に中身の濃い発表が行なわれた。 さて、この10分間が意味する内容が実に重大だ。Microsoftは、2008年後半のXbox 360のタイトルラインナップにおいて、サードパーティーの中でももっとも「Fallout 3」を重要視していること、そしてPS3にユーザーを1人たりとも奪われないためにDLCの独占配信契約を締結したこと。つまり、Microsoftは「Fallout 3」をそれだけの大ヒットが見込める価値のあるタイトルだと考えているということだ。 Howard氏の実演は、ゲームの舞台であるワシントンDC側のチャイナタウンからスタートした。といっても200年前に核戦争で壊滅し、がれきの山と化した廃墟であり、現実世界の面影はまったく留めていない。道なりに歩みを進めると、未知の敵が襲いかかってくる。Howard氏は、そのまま銃を構えて射撃したり、VATS(Vault-Tec Assisted Targeting System)と呼ばれるモードに切り替えて、特定の部位を狙ったりして迎撃していく。途中まで進んだところで、リアルタイムイベントに切り替わり、ヘリが到着して新手の敵が襲いかかってきた。Howard氏は、それらをVATSにおいて小型のミサイルで迎撃すると大爆発が起きて敵が消滅してしまった。「Fallout 3」の荒っぽいバトルシーンの魅力を余すところ無く見せてくれた。 「Fallout 3」は、ご存じのようにBethesda Japan(Zenimax Asia)の設立発表会で目玉タイトルとして発表されたタイトル。日時は未定だが、欧米の2008年秋とそう変わらないタイミングでの発売が予定されている。発売プラットフォームは、PS3、Xbox 360、PC。Xbox 360、PCについては独占DLCの配信が予定されている。
多くの日本人ゲームファンにとって未知の存在である「Fallout 3」とは何物なのか、また何が魅力なのか。Bethesda Softworksブースでの体験取材と、Todd Howard氏に対するインタビュー取材などの情報を織り交ぜながら、「Fallout 3」の魅力に迫ってみたい。
■ 三度目の正直でRPG界の制覇を狙う「Fallout 3」
まずは「Fallout」の成り立ちから紹介しておきたい。3というからには当然1と2が存在するが、いずれも評価は高いものの、ヒットはしていない。その理由は非常にシンプルで、初代「Fallout」がInterplayからリリースされた1997年当時、世間のPCゲーマーは「Diablo」に夢中になっていた。また、Interplay自身も、自社開発スタジオBlack Isle Studiosを立ち上げて開発していた「Baldur's Gate」の売り込みに注力していた。要はタイミングが悪かった。その後、倒産したInterplayからBethesda Softworksが「Fallout」シリーズの版権を獲得し、現在に至る。 バックグラウンドストーリーは、前作の設定をそのまま受け継いでおり、1950年代の冷戦期における“核戦争”という名の幻想世界がひとつの大きな着想となっている。人々は、核戦争による脅威から逃れるために、核シェルターへの移住を進めていく。核シェルター開発大手ディベロッパーのVault-Tecは、TVCMを通じて核シェルター移住による明るい未来を訴える。異性とのデートや妻の出産、明るいファミリーライフは、核シェルターによって実現される。底なしに明るくもどこかしら狂気が感じられる世界観だ。 CMの雰囲気は、ファッション、フォント、音楽、イラストデザインまで、核戦争にリアリティを感じていた1950年代風で綺麗に統一されているが、実は2070年代の近未来という設定になっている。そしてゲームの舞台は、その脅威が現実のものとなり、さらに200年が経過した2277年。主人公は、核シェルターVault 101で生まれ育ち、父親の謎の失踪を受けて、生まれて初めて地上に降り立つというのが、「Fallout 3」のプロローグとなる。
余談になるが、1950年代というモチーフは、2K Gamesのホラーアクション「BIOSHOCK」と共通する。もちろん、「Fallout 3」は、「Fallout」シリーズの10年ぶりの続編であり、「BIOSHOCK」との直接の関連性はないが、大作のモチーフとして立て続けに1950年代が選ばれていることは、偶然として片付けるにはできすぎた話であり、今後ちょっとしたブームになるかもしれない。
■ 「Fallout 3」を初体験。「Oblivion」を彷彿とさせる圧倒的な自由度に大興奮
街の中は、犯罪を犯さない限り、安全地帯となっており、街の住人達と自由に情報交換が行なえる。1本のストーリーが展開されるメインクエストと、任意で受けられる無数のサブクエスト。街人にひととおり話しかけるだけで溢れんばかりのクエストが受けられ、父の行方を捜すという目的にたどり着くことを願いながら、様々な依頼を遂行していくことになる。 プレーヤーは、核シェルターから外界に出たときは、善でも悪でもなく単なる一個の人間に過ぎない。プレーヤーの意思により善行も悪行も行なうことができ、その結果、善人、悪人の区分けができる。どういう生き方を選ぶかはプレーヤー次第だ。このゲームでは悪人プレイも楽しめるように、人のアイテムを盗んだり、テーブルのモノを採ったり、カギを開けたりといった選択肢が用意されている。 いずれにしても行なった行為に対して自ら責任を持つというところがポイントであり、「ドラゴンクエスト」シリーズのように、リスクを負わずに他人の家のタンスを開けまくるような行為はできない。行為そのものの成功率は、自分のスキル値によってパーセンテージで判定が行なわれ、成功すれば何事も起こらず、失敗すればその行為に対するペナルティが発生する。 今回、体験プレイ中に、家の中の机の上のアイテムを何気なく取ったところ、盗んだと判定されて街の住人全員から命を狙われるハメになった。無抵抗だとそのまま袋だたきにされてしまうため、街から逃げざるを得ない。ちなみに、1度の過失や悪行で永久出入り禁止になるわけではなく、ゲーム内時間で数日を経ることで、敵対状態は解かれることになるようだ。
Howard氏は、「Fallout 3」のクエストの特徴について、「明確な答えがないこと」を挙げた。例を挙げると、1つのクエストに複数の解法があったり、どちらを選ぶかが難しかったりする。実際に、最初の拠点Megatonでは、街の中心部に配置された核爆弾の爆破を依頼するクエストと、解除を依頼するクエストの両方が発生する。爆破すれば、街は吹き飛び、住人達は消滅する。解除すればしたで、新たな火種となる。繰り返しになるが、自らの行動に責任を持つという点が大きな魅力と言えそうだ。
■ VATSシステムによるタクティカルバトル。バトルの先にあるものとは何か?
ただし、“PIP-BOY”は極めて高機能な端末で、プレーヤーの人体のデータやスキル、アイテム、マップなどを一元管理してくれる。何か困ったらとりあえず“PIP-BOY”を開くという感じだ。 敵とのバトルは、FPSスタイル、あるいはTPSスタイルによるオーソドックスな銃撃戦と、もうひとつは「Fallout 3」独自システムであるVATS(Vault-Tec Assisted Targeting System)が用意されている。VATSは、バレットタイムのように一瞬時を止めて、特定部位を狙い撃ちすることができるという特殊攻撃。AP(Action Point)を消費し、左足、右手、頭部と言った具合にスタックして連続して狙う先を指定することができる。 このVATSを採用した理由についてHoward氏は、キャラクタのスキルやステータスがゲームに大きく影響するのを実感させるためという点と、タクティクスの要素を盛り込みたかったためだという。また、このVATSについては、欧米のユーザーより日本のユーザーに好まれるのではないかという観測も示してくれた。 ちなみに、敵のAIは「Oblivion」と比較しても格段に進化しているという。街のNPCは、移動したり、会話したり、イスに座るだけでなく、イスに座って食事を始めるなど、実際的な行動を行なうところまで作り込んだと自信満々に語ってくれた。屋外では、個々のNPCがマップとオブジェクトの位置を把握しており、オブジェクトに隠れながら銃撃戦を行なうということだ。 ゲームのボリュームについては「Oblivion」と同等水準の100時間以上になるという。Xbox 360で独占配信するDLCについては、具体的な内容については明らかにされなかったが、「Oblivion」の「ナイツオブナイン」(5~6時間のボリュームのクエスト)ぐらいのボリュームを想定しているという回答が得られた。 最後にHoward氏に、「Fallout 3」を通じて、「この世界で表現したかったことは何か?」という質問をしたところ、彼は少し沈思したあと、「この世界で生き残るために、あなたは何を失う覚悟があるのか。世界は必ずしも完璧な場所ではなく、得るものがあれば失うものがある。このテーマを表現したかった」と明確な回答を寄せてくれた。
一般論としてクリエイターが明確なビジョンと哲学を持つ作品には傑作が多い。「Fallout 3」がそうだと断言できるほど十分にプレイできたわけではないが、1時間のプレイと1時間のインタビューを経て、その手応えはある程度感じ取ることができたことはご報告しておきたい。マスターアップする日を心待ちにしたい。
□Bethesda Softworksのホームページ(英語) (2008年7月20日) [Reported by 中村聖司]
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