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会場:Los Angeles Convention Center
EAのCEO、John Riccitiello氏は「我々のEA史上最大規模のプレスカンファレンスにようこそ。我々のプレスカンファレンスは非常にシンプルだ。シェアが何パーセントだとか、ライバルより多く売ったとかの話は一切しない。今後、ゲームがたくさん出てくるので、それらを紹介するだけだ」と述べ、早々に舞台から退散、最初のタイトル紹介に移った。
■ 老若男女に大人気のシムシリーズ。最新作は「シムアニマル」と「シムピープル3」 最初に壇上に登場したのはThe Sims StudioのRod Humble氏。The Sims Studioは「シムピープル」などをはじめとしたシムシリーズを製作しているEA傘下のゲームスタジオだ。
「シムシティは街を作る楽しみを味わい、シムピープルは人生を楽しむゲームだ。このようにシムシリーズは老若男女に人気のあるゲームシリーズだが、今回のE3で、新しいシリーズのアナウンスをしたい。『シムアニマル』だ」(Humble氏)
シムアニマルは、リアル志向ではあるが完全リアルには振らない独特なタッチで描かれる、神の視点で動物の生活を観察したり繁殖を楽しんだりするゲームだ。初公開となったコンセプト映像では、プレーヤーが幼い小熊をつまみ、いたずら好きなリスに引き合わせるが、このリスが餌を食べようとしている狐の餌を横取りしたものだから、三種の動物の睨み合いが勃発し、さらに追いかけっこに発展してしまう……という様子が描かれていた。
「木を植えたり、川を作ったり、動物の雄と雌を引き合わせて繁殖を行なったり……といったことができる」とHumble氏は説明するが、ゲームの目的はあまりよくわからない。これまでのシムしリーズと同じく、おそらくチャレンジングなゲームモードとただただ動物の繁殖と観察を楽しむだけの箱庭モードの双方が搭載されるのであろう。「シムアニマル」は2009年1月発売予定でプラットフォームはWiiとニンテンドーDSになる。Wiiは3Dグラフィックスベースだが、DS版は2Dグラフィックスベースとなる。
公開されたデモ映像では、ロックスターの来訪が、街に済む人々に伝わっていき、最後には、そのロックスターとともに町中の人が歌い踊る……という様が描かれていた。「街の端っこで起きた事件が、リアルタイムに街の中の人々に影響を及ぼしていく様を楽しめる」(Humble氏)とのことで、今作は、いうなれば、「シムピープル視点で楽しむ町内シミュレーション」といった感じになっているようだ。なお、すでに、日本語もサポートされているオフィシャルサイトもオープンしているので興味のある人は見てみよう。
■ 切断ビームで生き延びろ! ありそうでなかった無重力ホラー「DEAD SPACE」
宇宙船を舞台にしたホラーといえば名作「エイリアン」があるわけだが、シチュエーションとしては、本作はかなりこれに近い。プレーヤー扮するはシステムエンジニアISAAC CLARKE。CLARKEは宇宙船の通信回線の修理に船内に入るのだが、その宇宙船内は通信回線の故障どころではないほど荒れ果てていることに気づく。船内には乗組員の姿もなく、得体の知れない生物の巣窟と化しているこの宇宙船内で、生き延びるための戦いを強いられることになる。 ゲームは基本的に3人称視点で進行し、銃器でモンスターを打ち倒していくという、オーソドックスな3人称視点シューティングのスタイルとなっている。ただ、インベントリー画面や各種インジケータ等の補助グラフィックスはホログラムで描かれているという設定で、こういったものを操作している最中も常にゲームは進行しているというシビアなインターフェイスがユニークだ。 そして本作独自のゲーム性のポイントとしては2点が挙げられている。 1つは敵モンスターを戦略的に破壊するという要素。敵モンスターはものすごい生命力を持っているため、ちょっとやそっとの攻撃ではびくともしない。プレーヤーは、所持している切断レーザー光線を出す銃器で、敵モンスターの各部位を戦略的に切断していき行動不能にさせる必要があるのだ。たとえば、4本の足を持つモンスターならば、足を最初切り落としていき、歩けなくしてから、敵モンスターの死角から一方的に攻撃して撃ち倒す……といった戦略をとることができる。切断レーザー銃は縦斬り、横切り、斜め斬りといった具合の、切断ビームの軌道をリアルタイムに変更できるようになっており、正しい形状の切断レーザーを撃たないと敵の部位を切断できなくなっている。ここも、独特なゲーム性になっているといえよう。 もう1つのゲーム性のポイントは無重力という要素。本作は舞台が宇宙船ということで、室内ながらも、無重力空間のシーンがあり、そこで与えられる無重力を応用したパズル的ゲーム進行に挑んだり、無重力ならではの独特な戦略性を要求される戦闘に遭遇したりすることになるのだ。
グラフィックスは「DOOM III」を彷彿とさせるコントラスト感の強い色調が特徴でホラーな世界観を見事に表現している。3Dグラフィックス的には、細かな微細凹凸表現とデプスシャドウ技法ベースのセルフシャドウがバリバリのリアルタイム影生成なども見所になりそうだ。アニメーション表現も見事で、人間もモンスターも動きの堅いところがなく、複雑なアクションも自然に体や手足の動きが紡がれていて気持ちがいい。
■ 飛んで回って滑って登る1人称系ヤマカシ・アクション「Mirrors' Edge」
7年間、EA DICEに所属、2006年よりEA Games European Studiosに所属するPatrick Soderlund氏が手がける最新作は、今年のEAの一押しとしているタイトルである「Mirror's Edge」だ。
「Mirror's Edge」は1人称視点の3Dアクションゲームで、一見するとよくある1人称シューティングゲーム(FPS)のように見えるが、「銃器を持つことはできるが、一発の銃弾をも発射せずにクリアできる3Dゲームである」(Soderlund氏)と説明するように、その重きを銃撃においていない。
ゲームは、情報が統制管理された近未来都市が舞台で、プレーヤーは秘密情報を物理的なハンドトゥハンドでやりとりする情報の運び屋「ランナー」に扮することになる。ランナー達は監視カメラが設置されていない都市の高層建造物の屋根や空中回廊を飛び渡ることで情報を運ぶという設定で、プレーヤーは1人称視点で描かれるおしりがすぼみそうな眼下の景色にひるまず、ビルからビルへ飛び移りながら移動していく。
縦横無尽に立体的に走り飛び回るゲームプレイは「Prince of Persia」や「Assassin's Creed」を思い起こさせるが、これを1人称視点で、しかも現代風の世界観でやらせるのが本作ならではの特徴だといえる。 ゲームエンジンは「Unreal Engine3.0」(UE3)を採用。UE3ベースの他ゲームとは違い、描かれる高層世界の情景は白基調で、アクセントで赤や青の色が使われる程度の、なにやら無機質な面持ちとなっているのが特徴的だ。これはゲームをゲームらしくプレイさせるためのインターフェイス上の工夫となっている。ゲームシーン中、赤で描かれるオブジェクト群はプレーヤーがインタラクトできる対象物であり、そこに向かってジャンプしたり走ったりすれば、別のビルへ飛び移ったり、敵の攻撃を回避したり……という具合に、ゲーム展開に転機をもたらすことにつながる。 ゲームは、指定された場所へ赴いて荷物(情報)を獲得して、それをさらに別の目的地へ運ぶ、というのが基本的な流れとなる。敵は警察組織などの国家権力で、ゲームを進めていくことで、この架空世界の謎が徐々に明らかとなり、ストーリーも進行していく。
プレーヤーはFaithという女ランナーに扮するのだが、このキャラクタラフィックスをプレーヤーに見せない切り口は、日本では受けいられるのは難しそうだが、広大な3D空間を直にインタラクトして進んでいくゲームプレイ自体には強い次世代感を感じる。最も3人称視点だと、プレーヤーと背景とのバランスがつかみやすくなる反面、ゲーム自体が「TOMB RAIDER」っぽくなってしまうことが予想され、ゲームデザインとしては、これは避けたかったのだろう。
■ その広がり、現実の宇宙を超えるか「SPORE」
そして過去のSims関連のツールでの実績から、Wright氏の見積もりでは9月の「SPORE」本編のリリースまでに10万種類の生物が集まればいいな……という風に考えていたようなのだが、発売後、わずか22時間後に10万種が超え、1週間後には100万種を超えて驚いたのだそうだ。
この大人気ぶりは、「SPORE」が、人間の大好きな科学(SCIENCE)と創造(CREATIVITY)の両要素を持っているからではないか、と自己分析する。そして現在までに175万種がサーバーアップロードされ、「SPORE」のデータベースに登録されたのだという。これについてWright氏は「SPOREの生物種の種類数は、SCC発売後18日後に地球上の生物種の総計を超えちゃいました(笑)」と茶目っ気たっぷりに報告した。
ゲーム本編リリース前に、ユーザーがゲームコンテンツのクリエイションにシステマティックに参加できるという試みは未だかつて試みられたことがない。この異様な盛り上がりぶりはWright氏のカリスマ性とEAのマーケティングのうまさの賜といったところだろうか。
「SPORE」のゲーム本編の発売日は2008年9月7日と決定。今度は、Wright氏の予想を上回るユーザー宇宙同士の相互接続が起こり、現実の宇宙以上にゲームコミュニティが広がっていくかが見物だ。
■ NBAプロバスケットボールリーグのチームデータ、選手データが毎日更新される「NBA LIVE 09」 昨年のE3まではMicrosoft「Xbox 360の顔」という存在だったPeter Moore氏も、昨年のE3直後のEAへの電撃移籍で、今や「EA SPORTSの顔」となった。
Moore氏と言えばやはり、毎年ビッグタイトル発売を記念して入れるゲームタイトルの入れ墨パフォーマンスなわけだが、EAのMooreとして登壇したMoore氏はステージに上がるなり、腕をまくるそぶりを見せて笑いながら首を振り「今年はやりません」のジェスチャーで会場の笑いを誘った。
NBAといえばアメリカが世界に誇る最強のプロバスケットボールリーグで、これを題材にしたスポーツゲームも当然大人気ゲームジャンルとなっている。この最新版NBAゲーム「NBA LIVE 09」では、「Dynamic DNA」と命名された新しいオンラインゲームフィーチャーが搭載される。Dynamic DNAとは、NBAシーズン期間中のチーム、選手の行動方針データやポジションデータなどが毎日、最新のものにアップデートできるというフィーチャーだ。
実在選手のプレイスタイルはその日のうちに分析、データ化され、翌日には最新選手データにアップデートが可能となる。もちろんシーズン中の選手の故障やトレードといった自体にも対応している。
そのシーズンの最新状態のデータをもとにプレイすれば、ゲームとはいえゲーム内選手の行動がさらにリアルに見え、全体としてのプレイ感覚にもリアリティが生まれることになる。
「NBA LIVE 09」は2008年10月にPS3、Xbox 360に発売予定となっている。
■ John Carmackのid softwareがEAと提携
プレゼンテーション最後には、John Riccitiello氏が再び登壇し、新しいデベロッパスタジオとの提携を発表。そのお相手とは、なんとJohn Carmack氏率いるid softwareであった。
EAは「HalfLife」シリーズを有するVALVEのパブリッシャとしての契約も獲得しているため、アメリカのFPS系スタジオ御三家のEPIC GAMES、VALVE、id softwareの3分の2を傘下におさめたことになる。なお、長らくACTIVISIONを専任パブリッシャとして組んできたid softwareが、ACTIVISIONを離れてEAと組んだという視点で見てもこの発表は意味深い。
「我々のような独立系ゲームスタジオにとって、EAのようなワールドワイド企業と組むことには大きな意味があります。それは、我々の作品をワールドワイドに効率よく届けてくれるからです」(Carmack氏)。
「RAGE」はFPSゲーム要素とオフロードレーシング要素を織り交ぜた新スタイルのゲームだそうで、公開された予告編映像だけでは詳細内容がよくわからなかった。
3Dグラフィックスエンジンは「DOOM3」エンジンの次期バージョン、一部では「DOOM4」エンジンと呼ばれていたこともある「id Tech5」エンジンを採用する。id Tech5は「第5世代のid softwareのゲームエンジン」という意味合いのネーミングで、「RAGE」が事実上の初採用タイトルとなっている。開発中の「DOOM4」よりも「RAGE」の方が開発が先行しているため、今世代はむしろRAGEエンジンの俗称が定着するかもしれない。
Carmack氏は、「RAGE」についてのより詳細な情報については2008年7月31日より開催されるQUAKECONで公開する、と予告した。 (2008年7月15日) [Reported by トライゼット西川善司]
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