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JOGA、「オンラインゲーム市場統計レポート2008発表会」を開催
日本市場規模は1,121億円!? オンラインゲームに関する様々な取り組みが報告

7月3日開催

会場:ティーズ東宝ビル別館

 有限責任中間法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)は、東京・渋谷のティーズ東宝ビル別館において、「オンラインゲーム市場統計レポート2008発表会」を開催した。

 JOGAは、経済産業省関東経済産業局により運営されてきた「オンラインゲーム研究会」とその分科会である「オンラインゲームフォーラム」での活動を前身とし、民間のオンラインゲーム運営企業が事業の発展と市場の拡大、そして業界発展のために自主的な活動を行なうことを促進するために2007年6月に設立された組織だ。

 JOGAは会長に株式会社ゲームポット代表取締役社長の植田修平氏、理事にNHN Japan株式会社代表取締役社長の森川亮氏、株式会社ゲームオン代表取締役社長の李相燁氏、株式会社ガマニアデジタルエンターテインメント取締役最高執行責任者の浅井清氏、株式会社ジークレスト代表取締役社長兼CEOの長沢潔氏が就任している。設立時の会員数は25社に対して、設立から1年が経過した現在、44社(正会員、準会員含む)と増加している。

 今回の発表会ではJOGAが分析するオンラインゲーム市場のレポートと、各理事が中心となって進めている“分科会”の活動状況が報告された。


■ 課金ユーザーの月額平均は4,676円。オンラインゲームメーカーが報告する市場の動向と様々な取り組み

JOGAの会長を務めるゲームポット代表取締役社長の植田修平氏。2007年のオンラインゲーム市場調査報告を行なった
アイテム課金のユーザーの平均値。最高金額なども気になるところだ
JOGAは海外にも積極的に働きかけている。オンラインゲームは世界でも新しいビジネスなだけに、JOGAの活動は世界、特にアジアでの影響は大きくなるのではないだろうか
 最初に報告が行なわれたのは、ゲームポットの植田修平氏による「2007年のオンラインゲーム市場調査報告」である。オンラインゲームフォーラムと、JOGAで調査したデータを使い、これまでのオンラインゲーム業界の動きを説明した。

 オンラインゲームタイトルとその推移、というデータでは、2005年では314、2006年では474、2007年では507と、2005年から2006年の急激な伸びから比べると伸び幅が鈍化している。植田氏は注目点として「サービス終了タイトルの増加」を上げる。また、オンラインゲーム会社も減少している。2006年までは増加傾向にあったが、2007年は114社、前年比の89%だという。

 この傾向について、植田氏は「あくまで個人的な見解だが、マーケットにおいて供給過多の状況になっていると思う。100社を超える会社がサービスを運営している中で、各社はサービスの“質”の向上に努めているが、正直、ユーザーの求める質に応えられなかったメーカーもあったのではないか。メーカーやタイトルが淘汰されていくのは自然の流れではないかと考えています。去年はサービスを他の事業所に移行するケースも目立った。業界の中では2極化の動きが加速していくのではないかと思う」と語った。

 続いて報告された資料で、ユーザーのアカウント数は大きく増加していることが紹介された。アイテム・アバター課金、いわゆる「アイテム課金」の1人当たりの平均売り上げは、昨年より更に増加し、1人当たり4,676円となった。月額課金のゲームは平均1,223円と大きく差がある。PCゲームの売り上げとしては、パッケージ販売が34億円で、運営サービスの売り上げは763億円と、20倍以上だ。オンラインゲームという部門では、やはり運営での売り上げが市場に大きく関わっているのがわかる。ちなみに、コンシューマゲーム市場のオンラインゲームまで含めると、市場規模は1,121億円を超える。前年と比べても10%以上成長している。

 今回はあくまで現状の報告という形だったが、オンラインゲーム各社のデータを元にしているだけに興味深いデータといえる。オンラインゲーム業界を分析する上での1つのデータとして有益である。なお、今回発表されたデータはより細かい情報を追加した形でエンターブレインより7月4日に発売される予定となっている。

 一方で、「好調」、「増加」というデータを見ることはできたものの、タイトルを休止する企業の分析や、運営移管によるユーザーの推移、最高課金ユーザーが使っている実際の金額、ユーザーのタイトルごとの移り変わりなど、もう少し突っ込んで欲しいと感じた。データを業界分析にどう使っていくかも考えたいところだ。

 植田氏の発表の後は、各理事が進めている分科会の活動状況の報告が行なわれた。ガマニアの浅井氏は「不正アクセス・RMT分科会」の活動内容を説明した。この理事会は、ユーザーが安全にプレイできる環境を求めていくと共に、企業側の不正手段への防御も模索していく。そして、企業自体が取り組むことで、企業と業界全体のイメージと意識を向上させるのが狙いだという。

 不正アクセスと、RMT(リアルマネートレード)はひとくくりにされることも多いが、全く別の問題だ。分科会は1つ1つの案件に対してワーキンググループを作り、個別の対策を取っている。不正アクセスに関しては、クレジットカード会社やオンラインゲーム事業者、サービスプロバイダにセキュリティの啓蒙活動を行ったり、協力体制を取っているという。その中で、最も良い方法を研究している。「問題を考え、フィードバックしていく上で、現在、かなり具体的に固まりつつある」と浅井氏は語る。知識を共有していくシステムも検討中だという。

 RMTに関しては、現在は実態調査の段階だという。是非という価値観の問題ではなく、ワーキンググループで個別の問題を取り組み分析を行なっている。2006年にオンラインゲームフォーラムでガイドラインを提示しているが、今後、ユーザーに対して示し、メーカーに対して基準を提示できるような双方に対してのガイドラインを作成中とのことだ。

 続いてはジークレストの長沢氏による「ゲーム広告分科会」の報告である。ゲーム内広告や、広告を目的としたゲームを新しいビジネスモデルとして提示する方法を模索するために設立された。これらのビジネスは北米や中国で盛んだが、日本でどうするかを考えていくという。分科会にはゲームメーカーだけでなく、広告代理店からクライアントの要求を吸い上げるなど、知識の共有と検討をしている。

 現在は可能性の模索と、価値観の共有、どうすればビジネスへ繋げられるかの検討が主な活動で、現在、“だいぶ具体化している段階”。分科会の活動の中で最も早く具体的に見えてくる活動になる予定だ。バナーなどのインターネット広告との違いに関して、広告代理店との認識のズレも大きく、この問題に対して考え、可能性を提示していくとのことだ。

 NHN Japanの森川氏は「人材育成・マッチング分科会」についての報告を行なった。急成長するオンラインゲーム業界では人材の育成と確保が急務である。人事担当者がディスカッションを行なっている。経験者が少なく、どんな仕事をしていくか、どのようにキャリアを積んでいくかもまだ確立されていないオンラインゲーム業界において、現在はオンラインゲーム業界で必要な人材への教育と、オンラインゲーム業界ならではの組織作りに関する資料を作っていくことが求められている。

 分科会はこの資料を作り、専門学校や大学で人材を募集できるような資料を作成している。森川氏はこの資料作成の上で見えてきたものがあると語る。開発よりもパブリッシング会社が多いオンラインゲーム企業においては、サービスの比重が大きい。そうなると求められる経験者は「物作り」経験者よりも、サービスの経験者に対して募集していきたいとのこと。現場の教育に対しても、マニュアル作りなどをこれからの課題にしているという。

 今回は、各分科会の途中報告という印象で、今後どうなるのか、というところに興味が惹かれた。オンラインゲーム業界は、新興であるだけに、新しいビジネスモデル、ユーザーへの提示、サービス形態、そして不正問題など、従来とは全く違う問題に多く直面している。企業としても運営経験が浅く、ノウハウが確立されていない。その状況の中で方法を模索しているのをアピールし、協力者を募る活動は有意義なものであるだろう。方法論の確立は、より一層の認知をもたらすと思う。JOGAの活動に注目していきたい。

不正アクセス・RMT分科会の活動を報告するガマニアデジタルエンターテインメント取締役最高執行責任者の浅井清氏 ジークレスト代表取締役社長兼CEOの長沢潔氏は、広告分科会を説明 人材育成・マッチング分科会での取り組みを語るNHN Japan株式会社代表取締役社長の森川亮氏
最初に挨拶した経済産業省関東経済産業局情報政策課課長の梶田昌幸氏 JOGA事務局長の川口洋司氏はゲーム輸出分科会の活動を説明 オンラインゲームは2006年に比べてタイトルの伸びは鈍化している
2007年は終了したタイトルが目立った。今年は更に増加するだろうか 一方でユーザーアカウントは大きく増加している 市場としては、運営サービスの売り上げが大きい
会社もまた減っているが、売り上げは増している オンラインゲーム業界においては運営での売り上げが大きい。これはアイテム課金によるものだろう JOGAの不正アクセス・RMTへの取り組み。現在はガイドライン作りと言うところだ
ゲーム広告分科会。クライアントの理解がまだまだというのも大きいようだ 人材育成・マッチング。求められる人材というのは、現在まだ模索の部分も大きいようだ 今後重要性を増してくるゲーム輸出。日本のコンテンツは海外で成功するだろうか

□日本オンラインゲーム協会のホームページ
http://www.japanonlinegame.org/
□エフイズムネットのページ
http://www.f-ism.net/
□関連情報
【3月14日】JOGA会長の植田氏、オンラインゲーム市場の最新データを公開
「市場は成熟期を迎え、淘汰が始まっている」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080314/joga.htm
【2007年6月28日】OGF、「日本オンラインゲーム協会(JOGA)」設立発表会を開催
初代会長にはゲームポット植田氏が就任、国内25社でスタート
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070628/joga.htm
【2007年2月22日】植田氏が語る、ゲームポットのコミュニティへの取り組み
「パンヤ」、「CABAL」、「君主」、3つのタイトルの“秘策”とは?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070222/gamepot.htm

(2008年7月3日)

[Reported by 勝田哲也]



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