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★Xbox 360ゲームレビュー★

傑作FPS 5タイトルをいちどに楽しめる!
やりごたえ抜群のオトクすぎるパッケージ

「The Orange Box」

  • ジャンル:アクションシューティング
  • 開発元:Valve Corporation
  • 発売元:エレクトロニック・アーツ
  • プラットフォーム:Xbox 360
  • レーティング:CERO:Z(18歳以上対象)
  • 価格:7,140円(税込)
  • 発売日:発売中(2008年5月22日)



 エレクトロニック・アーツより5月22日に発売されたXbox 360用「The Orange Box」は、FPSファンなら注目のパッケージだ。PCで一時代を築いた「Half-Life 2」をはじめ、その続編である「Half-Life 2: Episode One」および「同 Episode Two」、さらにチーム戦FPSの決定版「Team Fortress 2」、そして今年GDCゲームオブザイヤーを受賞したFPSパズルの「Portal」と、高い完成度が約束された5タイトルをワンパッケージに同梱。FPSの全部入りパッケージがPCに続いてXbox 360でも実現したわけである。


■ FPS界の金字塔「Half-Life 2」シリーズの魅力をXbox 360で

 「The Orange Box」を起動すると、タイトル画面で5つのゲームを選択することができる。「Half-Life 2」、「Half-Life 2: Episode One」、「Half-Life 2: Episode Two」、「Team Fotress 2」、「Portal」だ。まずここでは、「Half-Life 2」フランチャイズの3タイトルについてご紹介しておきたい。

 2004年は、海外ゲームといえばPCプラットフォームがまだまだ強い時代だったが、当時、「Half-Life 2」がゲーム業界全体にもたらしたインパクトは非常に大きかった。当時の3Dゲームグラフィックスの水準を一気に引き上げただけでなく、FPSのゲーム性に本格的に物理処理を取り入れて成功させた最初の作品でもあり、その後のゲームに多大な影響を与えているからだ。

 それだけでなく、2004年にこのタイトルが登場したことはValveが誇るゲームエンジン「Source Engine」が世に出たことも意味している。「Source」エンジンは非常に柔軟性のある汎用ゲームエンジンで、FPSのみならず2Dアクションまで実現可能というものだ。

 今やPCでは無数のゲームで採用されており、Epic Gamesの「UnrealEngine 3.0」と並んで現在のゲームテクノロジーを語る上で欠かせない存在となっている。もちろん、本「The Orange Box」に含まれるタイトルは全て「Source」エンジンだ。Xbox 360で「Source」エンジンのタイトルが遊べるようになったことは、単に1タイトルのゲームが登場する以上の意味があることをおわかりいただけるだろう。

【『The Orange Box』収録タイトル】
ゴードン・フリーマンの戦いを描く「Half-Life 2」シリーズ チーム戦特化型のマルチプレイFPS「Team Fotress 2」 摩訶不思議なFPS空間パズル「Portal」


・ブラック・メサ研究所の事故から20年後の世界を描く大長編

「Half-Life 2」はFPS界に大きな影響を与えた。1本のシナリオを追うシリーズとしてはFPS界最長の作品でもある
謎に包まれた人物「G-Man」。人間ですらないかもしれない……
多彩な登場人物たちがストーリーを盛り上げていく、「Half-Life 2」ならではの表現技法が満載
 そんな一時代を築いた「Half-Life 2」は、1998年の初代作「Half-Life」から20年後の世界を描くソロプレイ専用のFPSだ。ブラック・メサ研究所で引き起こされた事故をきっかけに崩壊した世界と、主人公ゴードン・フリーマンの戦いを描くストーリー重視の作品である。

 本作の設定を理解するにあたって、初代「Half-Life」を知らなければ意味不明な部分もあるため、話の筋を簡単にご紹介しておこう。前作「Half-Life」は、理論物理学者である主人公ゴードン・フリーマンが政府系の研究機関であるブラック・メサ研究所に配属されるシーンから始まる。冒頭、そこで行なわれていた次元扉の実験が失敗し、「Xen」と呼ばれる時空から異形の怪物が侵入し、研究所は壊滅した。これが全ての始まりである。

 惨事を生き延びたフリーマンは、事態のもみ消しに乗り出した政府の特殊部隊と、「Xen」由来の生命体、それによってゾンビに変えられた人間たちと三つ巴の死闘を演ずる。戦いの末フリーマンは「Xen」に乗り込み、諸悪の根源を見事撃破したかに見えたが、そのラストで謎の人物「G-Man」に出会い、「私のために働くか、さもなくば死か」と選択を迫られる。

 そこで「YES」を選択した未来が「Half-Life 2」の設定だ。フリーマンが特殊な時空に拘束されている間、地上はすでに20年の月日が経過し、異世界の軍勢「コンバイン」に支配されていた。ブラック・メサ研究所の所長であったブリーン博士は彼らと契約を結び、代表者として人類を統治している。フリーマンは「G-Man」によりこの世界に「投下」され、レジスタンスとともに「コンバイン」への戦いを挑むのだ。

 「Half-Life 2」シリーズの主要登場人物は、元ブラック・メサの研究部長イーライ・バンス博士やその娘アリックス・バンス、ブラック・メサの元警備員で拡張パックの主人公になったこともあるバーニィ、愛すべき研究者のクライナー博士、そして彼らの元に集まったレジスタンス達など、非常に個性豊かだ。ゲーム中一言もしゃべらず「無口な人」と揶揄される主人公ゴードン・フリーマンは、彼らと共に長い長い戦いを繰り広げていく。

 なお、「Half-Life 2」から「Episode Two」までの各ゲームの詳しい紹介についてはPC版のレビューを参考にしていただくとよいだろう(「Half-Life 2」レビュー「Episode One」レビュー「Episode Two」レビュー)。Xbox 360でも全く同じ内容が楽しめるので、参考にしていただければ幸いである。

「Half-Life 2」では、G-Manによって「City 17」に投下されたフリーマンが、ブリーン博士のアジトである「要塞」へ突入するまでが描かれる

「Half-Life 2: Episode One」はアリックスとの共闘が主題。要塞から「データパケット」奪い、シティを脱出するまでが描かれる

最新作「Half-Life 2: Episode Two」では急転直下の新展開が待つ。ゴードンとアリックスの間には特別な絆が生まれ、異次元の者との戦いは佳境へ突入


・オリジナル武器「グラヴィティガン」がもたらすユニークなゲーム性。
 ゲーム難易度は高く、繰り返しチャレンジする根気が必要

ゲームの各所で大活躍する「グラヴィティガン」。本作の魂ともいえる武器だ
「グラヴィティガン」を使ったパズルは本作の謎解きで主要な役割を占める
敵との戦闘も大切なゲーム要素。静と動の落差が強烈な、抑揚に富むゲーム展開が魅力である
 本作最大の特徴は「グラヴィティガン(正式名称『零点エネルギー銃』)」という武器が全編を通して登場することだ。物体を引き寄せたりはじき飛ばしたりできるこの銃は、ゲーム中のあらゆる場所に配置されている物理パズルを解いたり、物をぶつけて敵を倒すなど様々な局面でインパクトのある役割を果たし、「Half-Life 2」シリーズのゲーム性を他に例をみないほどユニークなものにしている。

 その活用範囲たるや、まさにゲーム全編にわたる大活躍をみせてくれる。ある場面では足場を作って高い壁を乗り越える手段に使われ、またある場面では装置を稼働させるために使われる。戦闘全般でも主要武器として数多の敵への対抗手段となり、場面によってはどんな銃器よりも心強い味方となる。

 もちろん本作では通常の武器も充実しており、ハンドガンやサブマシンガン、そしてロケットランチャーまで、FPSとして基本的なつくりは堅牢だ。「グラヴィティガン」はその上でゲーム展開に精妙な抑揚を作り出すものとして存在しており、大長編のストーリーラインをゲームプレイ面でも長く楽しめるものにしている。

 ゲーム全般の難易度で言うと、本作はかなり難しい部類に入る。PC版をほぼそのまま移植した作品であることにその理由を見つけられそうだが、特に難しいのは戦闘だ。銃器類の照準についてはXbox 360版向けの自動補正が若干加えられているものの、敵の能力や出現構成はオリジナル版と全く同じ。この影響からか、本作の戦闘は一瞬の隙も許されない厳しさで、PC版より難しい。Xbox 360版ならではの攻略法を見つけるまで、プレーヤーは何度も再挑戦することになるだろう。

 筆者も、戦闘後にヘルスポイントが一桁となり、次の戦闘ではセーブ・ロードを何十回と繰り返しつつだましだましで進んでいく、ということもあった。これはなかなかFPS上級者向けのセッティングと言えるかもしれない。難易度が一番高いのが初代「Half-Life 2」で、それを乗り越えて「Episode One」、「Episode Two」に進むに従って、プレイ難易度が下がっていく。最新作になるほどスムーズにプレイできるのは、本作のゲームプレイ進化の方向を示していて、おもしろい現象かもしれない。

 とはいえ、この難しさを克服すれば、「Half-Life 2」はおおいに楽しめる。1シナリオとしてはFPS界最長のシリーズである本作を、ゲーマーのたしなみとしてプレイしておく価値は大いにあるだろう。「Half-Life 2」から「Episode Two」まで3作、たっぷりプレイできるはずである。

「グラヴィティガン」をはじめ、各種の乗り物、物理ギミック、そして個性ある敵キャラクタにより多彩な展開をみせる「Half-Life 2」シリーズ。FPSの楽しみを凝縮した作品として、ゲームファンならば外せない一本である


■ チームプレー特化型マルチプレイFPSの大傑作「Team Fortress 2」

コミカルな風貌の「Team Fotress 2」は、その実ストイックなスポーツ系FPSのDNAを色濃く持つ奥深い作品だ
占領ポイントを巡って戦う瞬間、プレーヤーの緊張感が最高潮に達する
 FPS尽くしの「The Orange Box」で、対戦派のプレーヤーが最も長く遊べるのがマルチプレイ専用の「Team Fortress 2」だ。初代「Team Fortress」は、1996年にリリースされたDOS/V用「Quake」のMODで、これもまた歴史の長い作品である。本作のPC版は2007年10月に登場して大人気を博し、マルチプレイ対戦FPSとして定番の地位を確立。いまも日夜たくさんのプレーヤーが楽しんでいる作品である。(PC版『Team Fortress 2』レビュー)

 「Team Fortress 2」の特徴は、イラスト風のコミカルなグラフィックスもさることながら、シンプル・イズ・ベストとでもいうべきFPSとしての基本に忠実なゲーム性にある。昨今のFPSでは、沢山の武器や乗り物などゲームに登場するリソースの豊富さを誇るものが少なくないが、本作においては9個のプレーヤークラスがあり、各ひとつのメインウェポンが存在するだけだ。あとはチーム戦でご自由にやりあってください、という素朴な内容なのである。

 基本ルールは、REDチーム、BLUチームによる陣取り合戦だ。典型的なマップにおいては、占領の対象となるポイントは両陣営の本陣を挟んで対称形に配置されており、ひとつの陣地を占領すれば次の陣地の占領が可能になる。この仕組みでいわゆる「前線」の概念が生まれており、プレーヤー間の戦闘がひとつの地点に集中するのが特徴である。占領そのものは、ポイントの上にプレーヤーが存在すれば自動的に進むシンプルなもので、いかに敵を押し込んで地点を確保するかが基本である。

 登場クラスは「スカウト」、「ソルジャー」、「ヘビー」、「パイロ」、「デモマン」、「メディック」、「エンジニア」、「スナイパー」、「スパイ」の9種類。キャラクタの特徴は移動速度や体力、メインウェポンによって特徴付けられており、たとえばゲーム中最速の「スカウト」は体力が125しかないが、3倍の体力を持つ「ヘビー」の数倍素早く移動でき、ポイントの占領を2倍早く進行できる。「メディック」、「エンジニア」などのサポートクラスは単独戦闘には滅法弱いが、味方を支援してチーム力を大幅に上げることができ、チームプレイに欠かすことのできない存在だ。

 以上が本作の全ゲーム要素である。シンプルすぎるほどシンプル。だからこそ本作は面白い。ゲーム上の多彩な選択肢はマップの構成やクラス毎の強烈な個性によって作り出されており、無類のシンプルさを持ちながら、絶妙なゲームバランスによって展開は無限のひろがりを見せる。典型的スポーツ系FPSのスピーディな挙動と素直な反応性を持ち、ハイテンポで進むゲームはお祭り騒ぎのような面白さ。これが「Team Fortress 2」の持つ魅力である。

個性溢れるプレーヤークラス。戦況に合わせてプレイクラスを選択するという戦略要素も奥深いものがある。初心者には万能タイプの「ソルジャー」がお勧めだ。さて、PC版では芸術的とまで言えたゲームバランスだが、Xbox 360ではどうだろうか?


・シンプルかつスピーディなゲーム内容は悪くないが、クラスバランスの悪さが難点として浮上

最大16名とはいえ、本作の手狭なマップでは各所で激闘が繰り広げられる
 本作はマルチプレイ専用タイトルであり、マッチホストがサーバーを兼任する、Xbox LIVEでは標準的な対戦形式をサポートする。同時参加人数は最大16名で、最大8対8のチーム戦のみ。シングルプレイモードの要素を完全に排除してしまったのは凄い割り切りである。

 対戦マップは「2Fort」、「Dustbowl」、「Granary」、「Well」、「Gravel Pit」、「Hydro」の6種類を搭載。これはPC版の初期バージョンと同じ構成で、数が少なめなのは「オンラインFPSのプレーヤーは、6種類くらいのマップを繰り返し遊ぶ傾向がある」ことを見抜いた開発元の考えによる。それだけに、洗練に洗練を重ねた傑作マップばかりだ。各マップにおけるゲームルールはそれぞれ微妙に異なっており、両チームが平等に攻撃しあうもの、攻撃・防御に分かれるもの、そしてCTF系のルールなど、多彩である。

 肝心のゲーム性について触れたいが、「Team Fortress 2」は、対戦専用のゲームであるだけに、ゲームに登場するクラス性能や武器のバランスが命となるゲームだ。ところが、実際にプレイしていて大きな違和感を感じたのが正直なところである。というのも、一部クラスの存在があまりにも強い一方で、相対的に他のクラスが活躍しにくい構造を、ほとんどのゲームセッションで体験したからだ。

速いぞスカウト。ただでさえハイテンポな本作の中でも圧倒的スピードを誇るスカウトは、回避に専念するとほぼ補足不可能
 詳しく解説しよう。まず、本作はキャラクタの移動速度が他のFPSに比べて非常に速い。本作でノロマ扱いされるソルジャーが他のFPS基準では標準くらいで、高速なスカウトはその倍速で動く。このため、しっかりと回避運動をおこなうプレーヤー同士の撃ち合いはなかなか決着しにくく、特に回避に専念するスカウトはほとんど捕捉不能な存在だ。

 特に12名以下の少人数のゲームセッションでは、そのスカウトが戦闘を無視していきなり占領ポイントを確保してしまうことがたびたびある。スカウトに正面衝突でまともに対抗できるクラスは、火炎放射器を使うパイロか、セントリーガンに頼れるエンジニアくらい。ソルジャーの主武装であるロケットランチャーは弾速が遅く、接触寸前の近距離以外では、滅多に命中弾を得られないバランスである。

 エンジニアのセントリーガンもかなり凶暴だ。かなりの遠距離でも素早い反応速度で照準・射撃してくるセントリーガンは、多くのマップで大量のスコアを稼ぎ出す悪魔のような存在である。セントリーガンを多数設置して防御戦を築いた結果、戦線が膠着してしまうことも多く、これを背後から撃破できるクラスであるスパイが必然的に重要な存在となる。そして戦闘全般で「活躍しすぎる」感があるのが、スパイのアンチクラスであるパイロだ。

強いぞパイロ。照準するというよりは敵に炎を重ねる形なので、早い移動速度と相まって強力すぎるほどに戦える
 パイロの主武器は、いわゆる範囲攻撃の判定を持つ火炎放射器。トリガーを押している間、リーチは短いもののかなりの広範囲を焼き尽くす火炎が出続けるので、他のクラスに比べて敵に有効打を与えることが容易だ。高速なスカウトを効率的に撃退できるのもこのクラスで、また、最大の体力を誇るヘビーに対しても、横や後ろを取れば簡単に焼き尽くせる。全クラス中上位の移動速度も相まって、戦闘によるスコア上位を占めることが多く、人気の戦闘クラスとなっている。

 そのワリを食った、というべき格好になるのがソルジャーやヘビーという、本来は前線を支えるはずのクラスたちだ。1チーム5~8名という人数で、パイロとスカウトとエンジニアが各1、2名づつを占めると、残りはスパイ、万能型のデモマン、マップによってはスナイパー、戦闘以外で活躍できるメディック、次いでメディックの友達ヘビー、そしてソルジャー、という割合で、純粋戦闘クラスの人気が非常に低いのが実情である。

 「ソルジャーのほとんど居ない『Team Fotress 2』っていったい何だ?」という話になってしまうが、本作のチームバランスは上記のような理由で、あまりよくない。実のところ、これはPC版では見られなかった風景だ。その違いについては後述したいと思うが、少なくともXbox 360用のチーム戦FPSとして、「Team Fotress 2」の魅力はそれほど大きくなさそうである。移植作ゆえのデメリットが大きく出てしまった形である。

Xbox 360版ではパイロとエンジニアが一番人気。ついでスカウト、スパイ、デモマン、メディック、ヘビー、と続く感じだが、肝心の主戦力であるソルジャーの形見が狭いのがもったいない。強めの自動照準機能がついていれば、もう少し本来のバランスでプレイできた印象


■ 異色の次元扉FPSパズル「Portal」。
 ゲーム産業界から最高の栄誉を受けた話題作で空間の科学を楽しもう

「ポータルで考えよう」。空間を結ぶ2つの「ポータル」を使って、いかにステージを解いていくか。とても面白いFPSパズルだ
ポータルを2個隣り合わせに開き、箱を投入してみるとこんな感じに。最初はなにがなにやらわからないが、物理法則には忠実
 FPSは撃って敵を倒すばかりではない、ということを鮮烈に証明してみせたのが「Portal」だ。本パッケージ「The Orange Box」の中でも異様な雰囲気を放つ本作は、2008年2月に行なわれたGDC08にて、ゲーム開発者から送られる最高の栄誉、ゲームオブザイヤーを受賞した作品だ。(PC版『Portal』レビュー記事)

 「Portal」のルールは単純。ひとりの敵も出てこないステージでひたすらゴールを目指すというものだ。但し、「ポータルデバイス」と呼ばれる、次元扉を開く銃を使うのがキモである。「ポータルデバイス」はプライマリファイアで射撃箇所に青いポータルを、セカンダリファイアで黄色いポータルを開くというもので、青と黄色のポータルの距離がどれほど離れていても、入り口と出口として機能し、瞬間移動が可能になる。

 この装置を使い、徒歩では無理な場所に次々と進んでいくのが本作の基本となる。メインモードとなるストーリーモードでは、「Half-Life」後の世界のどこかにある研究施設「Aperture Science」の訓練コースが舞台。全11チャプター、19ステージで構成される訓練所にはプレーヤーひとりとマザーコンピューター「GLaDOS」しかおらず、プレーヤーは「GLaDOS」の不気味なおしゃべりに付き合いながら施設の脱出を目指す。

 序盤の簡単なチュートリアルをクリアしていくとゲームはどんどん難しくなっていく。完全版の「ポータルデバイス」を手にした後のステージは、初回のプレイなら30分から1時間は頭をひねり続けるような難物ばかりだ。空間把握の能力が問われるパズルが満載で、しかも特定の攻略法というのが存在しないのが面白いところ。壁に出口のポータルを開いて、足元に入り口のポータルを開き、飛び込んで壁から飛び出し、落下の勢いを維持したままもうちど飛び込んで大ジャンプ、なんてアクションも基本テクニックだ。

 ポータルの概念に慣れないうちは、ひとまず2つのポータルを隣合う位置に開いてみて、そこに飛び込み、永久に「落下」し続ける体験をしてみるのも面白いだろう。物理法則には従いつつ、空間がポータルで接続されることにより不可思議な現象が起こる、このおもしろさは「Portal」だけのものだ。

基本テクニック、「ダブルフリング」の仕組み。まず高い壁に「出口」を開き、床に「入り口」を開く。ジャンプして床に飛び込むと壁から飛びだすので、すばやく床の「入り口」に合わせ、落下速度を維持したまま壁から飛び出す。これで大ジャンプに成功だ


・高く評価されたシナリオ、演出、そしてやりこみ要素

ステージを通して無駄口を叩き続ける「GLaDOS」。彼女(?)の犠牲になった被験者は数知れない……
上級チャンバーは「落ちたら即死」、「ほとんどの壁がポータル無効」、「足場なし」など、当初は頭を抱えるしかない難しさ
 本作はボリューム的には小粒な作品だが、プレイの濃密さでいえば、「The Orange Box」に収録されている他のどの作品にもひけをとらない。まず秀逸なのが、ストーリーモードの世界が秀逸な演出で溢れている点だ。ゲームプレイを学びつつ、同時に「Aperture Science」で何が起こったのかを薄々感づかせてくれるステージ構成。マッドサイエンティストのDNAが色濃い「GLaDOS」のおしゃべりもスパイスが効いていて強烈だ。プレイしていくうちに、プレーヤーは施設を脱出することに否応無く「焦り」を感じ始める。強烈な動機がパズル攻略に拍車をかける。

 もしゲームをひととおりクリアしており、ネタバレも覚悟の上であれば、GDC08のラストに行なわれた「Portal」セッションに目を通してみよう。本作の本当のおもしろさに新たな発見があるかもしれない。

 そして本作はやりこみ要素も楽しい。むしろ、本編を全てクリアしてからが本作の本番である。全11チャプター+αで構成されるストーリーモードをクリアすると、6つのステージでプレイできる「上級チャンバー」および「ポータルチャレンジ」がアンロックされるのだ。そして本作における「実績」のスコアはこのモードに集中している。ゲーマー魂を少なからずもつプレーヤーなら是非ともチャレンジするべきだ。

 「上級チャンバー」は既存のステージをはるかに難しくしたもので、各所の壁がポータル無効になっていたり、足場が減らされたりするなど、一筋縄の解法ではとてもクリアできない代物。これを全て攻略できれば、もはや解けないパズルはない! という意味で「ポータルをクリアした」と言えるだろう。これだけでもやりこみ度はかなりのもの。

「最小ポータル」をクリアするには、タイムアタックにも通じる効率的な解法の発見が必須だ
 さらなるやりこみを要求するのが「ポータルチャレンジ」だ。こちらはストーリーモードと同様のステージを、「最小ポータル」、「最小歩数」、「最短時間」の各チャレンジ条件でクリアせよ、というもの。普通にクリアすればポータルを10個以上も使うステージを、「ポータル2個でクリア」せよというものから、攻略に30分かかったステージを「30秒で」という鬼のような条件だ。まずは解法を見つけるだけでも大変なやりこみが必要となる。

 特に「最短時間」のチャレンジは、解法がわかったとしても的確に実行できなければクリアできない世界である。ノンストップで移動しつつ、すべてのポータルを的確な場所に開き、箱を正確にボタンの上に置いて……と、FPSプレーヤーとしての基礎能力をこれでもかというほどに要求する。何度もチャレンジしてうまくいったときには、えもいわれぬ達成感を味わえることうけあいだ。

 本作「Portal」は、「The Orange Box」の中ではPC版と変わらずスムーズにプレイできる作品だ。タイムアタックをやりだすと嫌でも差を感じることはあるが、本作の魅力は余すことなく楽しめるはずである。


■ ユニークなFPSを3種類まとめて楽しめる「The Orange Box」
とはいえベタ移植ゆえの難点が目立つ。「HL2」、「TF2」はPC版のプレイをお勧めしたい心境

 最後に触れておきたいのが、PC用としてデザインされた「The Orange Box」各タイトルが、そのままXbox 360に移植されたことで否応なくゲーム性が変化したことについてである。PC版は当然ながらマウスとキーボードを使う。一方のXbox 360版ではゲームコントローラを使う。ここで最も大きく影響を受けるのは、照準のスピードと正確性だが、その意味では「Half-Life 2」および「Team Fotress 2」は典型的なPC向けFPSで、ゲーム中のあらゆる局面が、マウスによる素早く正確な照準動作を基準にデザインされているため、ゲーム感覚がかなり異なるものになったのが実情である。

 たとえば「Half-Life 2」のパズルシーンで、箱を3段に積み上げて、その上に乗って移動する」ような場面はPC版ではスムーズにプレイできるところだが、実際のところXbox 360コントローラーでこの手の操作をするのは結構難しい。掴んだ箱を正確に載せていくような基本作業が、アナログスティックでは案外難しい操作であるためだ。

 また「Half-Life 2」では狭い足場を歩かされる場面も多いのだが、これもまたアナログスティックでは難しい。ゲームコントローラの特性を考えれば、そういったシーンは無くても良かった気がする。むしろ、うまくこなせずにイライラしてしまうことも多くあった。例えば「Gears of War」や「Halo」シリーズのように、Xbox 360で万全に楽しめるゲームデザインを施されたタイトルに比べ、本作はPC版からの「ベタ移植」ゆえの弊害が顕著であるのが残念だ。もう少しXbox 360コントローラに合わせたゲームデザインを導入していたならば、さらなる傑作として楽しめた可能性があるだけに、もったいない話である。

「開発者による解説」モードでは、ゲームデザインの裏話をみることができる
 また「Team Fortress 2」についてはクラスバランスの悪さを難点として挙げたが、これもまたPC版をほぼそのまま移植した弊害である。「TF2」のクラスシステムは、PC版のプレイバランスの上にデザインされている。それがいかに微妙なバランスの上に構築されているかは、本作の「開発者による解説」で見ることができるが、これをXbox 360に「そのまま」持ってきてしまったのでは、精巧なパズルの最終ピースの形が変わってしまったようなもので、全体がおかしくなってしまう。少なくとも、セントリーガンへの対処はPC版のほうがずっと簡単で速い。

 結果的に、元々主戦力であるはずのソルジャーやヘビーが静まりかえり、スカウトが戦闘を無視してポイントを占領しまくり、火炎放射器をもったパイロが無双の活躍をする。さらにはセントリーガンに手を焼いてゲームがなかなか進行しないという防御的なゲーム展開は、PC版ではありえなかった風景だ。「Team Fortress 2」の魅力であったはずのテンポのよさは形を潜め、それを前提にデザインされたマップを巡る戦いは全く異なる風景に変貌してしまった。

 移植作のレビューでこのようなことを言うのは異例だが、「Team Fortress 2」のXbox 360版とPC版は、全く同じ内容であるがゆえに、プラットフォームの違いが顕著に出てしまい、本質的な意味で異なるゲームとなった。できることならば、「Team Fotress 2」は是非いちどでもPCでプレイしていただきたい。ゲーム用のPCが無ければ、ネットカフェでもいい。Xbox 360でも楽しめることは確かだが、本来の魅力はPC版に最適化されたものであることが明らかだからだ。


 「Half-Life 2」3部作、「Team Fotress 2」、「Portal」と、最高峰級の個性あるFPS3種類をいちどに楽しめてしまう「The Orange Box」は、ゲームファンならば間違いなくお得なパッケージである。各タイトルの説明で述べたように、Xbox 360版として登場するにあたって、そのままの移植であるために本来の輝きを失ってしまった部分も否めないが、いずれもPCで最高の評価を受けたタイトルであり、どのタイトルもプレイする価値は大きい。

 そこそこのスペックを持つPCをお持ちの読者の方に対してはPCでのプレイをお勧めしたいのが正直なところではあるので、お持ちの環境を検討してみて、Xbox 360で楽しむか、PCで遊ぶか、どちらかコストパフォーマンスの良い方を選択していただきたいところだ。

 もちろん、Xbox LIVEプレーヤープロフィールのゲームスコアを限界まで上げていきたい方にとって本作は避けることのできない1本である。3種類5タイトルに用意された「実績」は、小さいものは1項目5点、大きいものは1項目50点など大小さまざまに多数用意されている。高得点のものはベテランプレーヤーでも達成が難しい内容なので、「やりこみ」を証明するにはうってつけのパッケージでもある。チャレンジ精神豊富なプレーヤーならば是非挑戦してみよう。

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□エレクトロニック・アーツのホームページ
http://www.eajapan.co.jp/ja-jp/
□「The Orange Box」製品情報ページ
http://theorangebox.jp/
□Valve Corporationのホームページ
http://www.valvesoftware.com/
□「Steam」公式サイト
http://steampowered.com/

(2008年5月29日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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