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連結事業別セグメントの売上高を見ると、ゲーム事業は415億8,800万円、オンラインゲーム事業は120億9,800万円、モバイル・コンテンツ事業は65億7,900万円、AM等事業が691億400万円となっている。 2008年3月期におけるゲームソフトの販売本数は、ニンテンドーDS用の「ドラゴンクエストIV」が日本で115万本、「ファイナルファンタジーIV」が59万本、ファイナルファンタジーXII レヴァナント・ウイング」が54万本 (北米で22万本、欧州で28万本)、「いただきストリートDS」が43万本などとなっている。PSP用タイトルとしては「クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-」が80万本 (北米で45万本)、Wii用では「ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔」が日本で49万本 (北米で11万本)となっている。日本での販売合計本数は752万本で、北米は379万本、欧州が302万本、アジアなどで8万本の、全世界合計1,441万本となっている。 今回の決算説明会で壇上に立った和田洋一代表取締役社長は、決算内容を説明するとともに、2009年3月期の事業計画の説明、そして社内の改革についての説明などの多くの時間を費やした。 直接ユーザーに関連する話題のひとつとしては「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」の発売時期が挙げられる。2007年11月に行なわれた中間決算説明会では「『ドラゴンクエストIX』の発売日は決めていない。まだ粘っている」と和田氏はコメントしていたが、「外に出せるレベルに達しなかったため発売を見送った。当年度は出そうと思って作っています。今は思っています。……でも、昨年も同じことを言ったのですが」と、当然だが“出したい”意向ではあるようだ。 しかし大作タイトルであるだけにリリースされた場合と見送られた場合では、売上げに与える影響は大きい。2009年3月期の事業計画に「ドラゴンクエストIX」の売上高が織り込まれているかどうかの質問については前述のコメントが繰り返されただけだった。この歯切れの悪さは和田氏は自覚しており「質問と答えがかみ合っていませんが」とフォローしている。 「ドラゴンクエストIX」が発売されるかどうかは株価を左右する大きな要素であるだけに慎重になるのもうなずける。ただ販売本数についてどれほどの本数を見込んでいるのかについては、「ニンテンドーDSで発売されるということで、ひょっとするとひょっとするかもしれない。1,000万本もあり得るかもしれない。『ドラゴンクエストIV』が国内でミリオンを達成しているので、下は鉄板だと思う」と自信の程をみせた。 ネットワークゲーム部門については、「そろそろ次のゲームタイトルにスイッチするタイミングになる。当期か来年度なのかは見えないが」と時期は別として次世代ネットワークタイトルの導入が近いことを伺わせる発言が飛び出した。「ファイナルファンタジーXI」が6周年ということで、これまでから開発中であるとされている次期タイトルがヴェールを脱ぐ時が近いのかもしれない。非常に楽しみなところだ。 後述するが、開発中のタイトルの評価損を30億計上しており、開発体制の見直しが行なわれている。この改革はモバイル部門でも行なわれており、「家庭用ゲームと連動した大作タイトルについては、時代にそぐわないので製作をやめることにした (和田氏)」と製作を中断したことを明かしている。 また、前回の説明会で大きく時間を割いて説明されたタイトーに関しては、「一通り処理は終わり、飛躍する段階になった」と説明。アーケードゲームの分野について和田氏は「国内で言えば、家庭用より市場は大きい。キチンとやれば収益もいい。海外市場は“無い”といった言われ方をしているが、一時期縮小していたが最近では復活の兆しがある。アーケードゲーム分野の収益の貢献は大きい」と期待している分野であると説明。 スクウェア・エニックスが企画し、タイトーが制作中の案件は「ドラゴンクエスト モンスターバトルロード」、「悠久の車輪~Eternal Wheel~」、「ロード オブ ヴァーミリオン」の3件があり、タイトー側の収益はAM等事業に落ち、スクウェア・エニックス側の収益は「その他事業」のセグメントに収められる。今期の数値ではこの「その他事業」が大きく成長しており、アーケード事業が堅調であるという事の証明となっている。 和田氏はこのAM事業については自社が後発であると説明。「ファミリーコンピュータが登場し家庭用ゲーム機市場が立ち上がった時、多くのメーカーはアーケードゲームを家庭用ゲーム機で発売した。アーケードゲームをやっていない大手ゲームメーカーはスクウェアとエニックス、コーエーくらいではないか。この3社はパソコンでゲームを作っていた。パソコンでゲームを作る大きな特長のひとつはセーブデータを持ってこれるという点。それはゲームを長く楽しめるということ」と長い歴史から自社の成り立ちを振り返り、「それゆえにゲームデザインに偏りがある。業務用のゲームなんて考えたこともなかった。アーケードゲームも家庭用ゲームも両方作り方がわかっていて企画を立てるのであれば問題ないが、そうではないので偏りができてしまう」と自社のゲームについて反省点を挙げた。
さらにはハードウェアも考えに入れて製作するアーケードゲームには、インターフェイスの多様化にも対応できるとその良さを挙げた。また、リアルな店舗でのコミュニティについては「ネットのコミュニティとは違う。スクウェア・エニックスにはこれを作ることはできない」とし、タイトーの役割を大きく評価してみせた。そして最後に「アーケードゲームは難しくなりコア層が中心になっている。もっとライトでカジュアルにしていく。そうなれば大きくなる」と今後の展望を述べた。店舗についてもフランチャイズやレンタルなども今後手がけ、他業態も巻き込む形で大きく変革を目指していくとしている。
今回の説明会で注目されるのは、より長期における展望について触れられた点だ。これまでからも何度か、和田社長はゲーム業界の変革について危機感を口にしてきたが、今回もその変革に対する危機感から家庭用ゲームの製作について大きくナタを振るう自社の改革を行なっているという。 和田氏は「ゲーム事業については苦戦です。抜本的に変えないと戦い抜けない。ということで現在はリフォーム中。現状でも利益は出ているので、方向転換がしきれていないという想いから、ゲーム事業を見直すということで大なたを振るっている。もう少しかかるので、今期も横ばいを見込んでいる」と自社のゲーム製作状況について厳しい評価を行なった。 さらに「ゲームは段階、段階で大きく変わってきた。第1段階ではハードウェアメーカーによる一極集中・垂直統合が行なわれ、2000年以降、多極化、ネットワーク化が進んだ」とこれまでの流れをまとめた。多極化については「様々な多極化がある。ゲームが子供だけではなく親の世代にまでの広がったことや、普通の人もゲームをするようになった。また、世界に大きな市場ができ、日本の市場が相対的に小さくなったことなどが挙げられる。この多様化の波に乗り結果を出したメーカーは調子が良い」と説明。 では第2段階の多極化の次に来るのは何かというと、和田氏は「2010年以降はメディア・コンテンツ市場がひとつになる」と分析。本も映画も音楽も全てのメディアコンテンツが同等の選択肢の元に選ばれるような世界になるとした。そうなったときにゲーム業界だけで閉じていては勝負にならず、ゲームの製作も業界内で閉じたものでは完結せず開かれたものとなると判断。海外では既にそういった観点での業界再編が行なわれており、「これは、ゲーム業界が考えている以上の衝撃かもしれない (和田氏)」という変革を迎えると指摘。 ただし、今後どうなるかは誰にもわからず和田氏も掴めていないため「あえてそういった方向性にハンドルを切る」という。そういった中でもっとも重要なのはIPを作る能力という実にシンプルな答えで、「インタラクティブな作品を作っているのはゲーム業界だけ。ここは徹底的にこだわる (和田氏)」としている。 こういった大きな話では、実際にどのような動きが社内で繰り広げられているのかわかりにくい部分がある。「具体的な例を教えて欲しい」といった質問が和田氏に向けられた。これに対して和田氏は「これから話す例が実際に社内のどこかの部署で起こっているわけではない」と断わりながらも面白い例を披露した。 「旧スクウェアで言えば、スーパーファミコンの後期からプレイステーションの前期に作り上げたすばらしい映像の作品を中心とした作品が企業文化に影響している。こういった作品を作る場合は分業体制が効率的で、そうなるとどんどん各分野が専門化していく。ゲーム制作の初期から数十人のチームでスタートし、迷走し始めると大きなチームが果てしなく迷走してしまう」とマイナス面があることを認めた。 そして「RPGもアクションも事の本質ではない。次世代機になり格段に処理能力がアップしたことで、グラフィックスにかけるリソースは大きく増えた。そうなると考えるのは自動生成という点だ。これまで全て人間が製作してきたものをどれだけ自動で作り出せるか。そういった点でミドルウェアなどが発展してきた」と現状を説明し、「たとえばシャンデリアが爆発した場合、バラバラに砕け散ったらカッコイイと考え一番綺麗な見せ方はどうなるか……その見せ方・演出を追求する。ところが3Dで自由度が増せばどんな場合でも美しく見せることは難しくなる。かっこ悪い場合も出てくるわけで、割り切ればいいがどこからでも美しく見せるために物理演算を考えたり、シャンデリアの下に行ったらいけないとなればそこまでカバーされたAIを作るのが大変だったり、スクリプトで処理した方が良いかと悩んだりする」とそのせめぎ合いが難しいとの見解を示した。そこまでこだわるのがスクウェア・エニックスの良さであるとも言えるわけで、まさに企業文化、ゲーム制作における理念の戦いである。
和田氏は「今までやってきたことを潰すのはダメ」とその舵取りと方向転換の難しさをにじます発言を残している。 SQUARE ENIX CO., LTD
□スクウェア・エニックスのホームページ (2008年5月23日) [Reported by 船津稔]
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