★PCゲーミングデバイスレビュー★
DHARMAブランドのゲーミングキーボードが登場
高級キーボードを基本とするゲーマー向け製品
「DHARMA TACTICAL KEYBOARD DRTCKB91UBK BLACK」 |
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国内のPC用プリフェラルメーカーであるシグマA・P・Oシステム販売株式会社は、同社のゲーミングデバイスブランド「DHARMA POINT(ダーマポイント)」の一環としてゲーミングキーボード「DHARMA TACTICAL KEYBOARD DRTCKB91UBK BLACK」を5月23日に発売する。実売価格は22,800円程度とされ、ゲーミングデバイスのカテゴリとしては最高級クラスだ。この価格帯のライバル製品としてはSteelSeriesの「SteelSeries 7G」が思い出されるが、はたして本製品はいかなる価値をゲーマーにもたらしてくれるのか、本稿でご紹介していきたい。
■ フルピッチでありながらテンキーをバッサリ排除。
マウス操作面積を確保するシンプルな形状がうれしい
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パッケージ。「DHARMA POINT」らしい色調で統一されている |
シグマAPOが展開している「DHARMA POINT」は、国内メーカー発のPC用ゲーミングブランドとしては現在のところ唯一の存在で、その第1弾として今年1月15日に発売したゲーミングマウス「DHARMA TACTICAL MOSUE」(レビュー記事)は多くのゲーマーから高い評価を受けている。
今回発売される「DHARMA TACTICAL KEYBOARD DRTCKB91UBK BLACK(以下DRTCKB91UBKと表記)」は同ブランドの本格的ゲーミングデバイスとしては第2弾の製品だ。「DHARMA POINT」スタッフへのインタビュー記事でお伝えしたとおり、国内メーカーらしい質実剛健さを持つシグマAPOがゲーミングキーボードに求めた素性とは何か、ここで見ていきたい。
まずは本製品「DRTCKB91UBK」の外観を見てみよう。黒で統一されたボディは、一般的なフルピッチのキーボードから「テンキーだけをバッサリ切り落とした」かのような形にレイアウトされている。ほとんどのゲーミングキーボードに存在するテンキーを排除したのは、日本独特の住環境に配慮し、やや狭いデスク上にできるかぎりマウス操作のスペースを確保するため、という配慮だろう。常日頃「テンキー不要論」を口にしている筆者はこの仕様を大いに支持したい。
テンキーを排除したことにより、本製品の外形寸法は幅166mm×奥行き169mm×高さ38mmとなり、省スペースのコンパクトキーボードよりはやや大きいものの、フルサイズキーボードよりはテンキーの分だけ小型化している。それぞれのキーはフルピッチのサイズで、キーストロークも一般的なフルサイズキーボードと同等のものだ。そして重量は1.2kgもあり、少々のことでは位置がずれたりガタついたりすることがない。
また本製品のPCへの接続方式はUSBで、専用のドライバは存在せず、Windows標準のキーボードドライバで動作する。各種の「ゲーミングデバイス」にありがちな、ドライバを通じた動作設定やカスタマイズ機能などはなく、シンプルイズベストを地で行く製品仕様である。
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パッケージ内容物。テンキーを排除したシンプルなレイアウトで、マウス操作の面積を確保。カスタマイズのためのオプションパーツが付属 |
デザインは奇をてらわず、ごく一般的なキーレイアウトだ |
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側面から。キーは列ごとに傾斜しており、自然なタイピングが可能 |
テンキー部がバッサリ存在しないため、マウス操作面積をゆったり確保できる |
■ キースイッチに「静電容量無接点方式」を採用し長寿命を実現 最高級クラスの打鍵感は東プレ「RealForce」シリーズ直系
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「DHARMA POINT」を主張する左上部のロゴ。デバイスとしては「RealForce 91」とほぼ同等で、いくつかの付加機能が追加されている |
と、ここまでの外観写真を見てピンと来た読者の方も多いだろう。勘の鋭い方ならば既にお見抜きの通り、本製品は東プレ「RealForce91」をベースにした製品なのだ。外形寸法、重量ともに、ほぼ寸分違わぬ数値で、もちろんキーレイアウトやキースイッチの仕様もほぼ同じである。東プレの「RealForce」シリーズは、タイピストやゲーマーからも大きな支持を集めてきたハイエンドキーボードで、シグマAPOがこれをゲーマー向けブランドに持ってきた意図は非常に興味深い。
まず、キースイッチには「RealForce」シリーズと共通の「静電容量無接点方式」を採用している。これは一般的なキーボードが電極が接することによりキー押下を認識するのに対し、電極が接することなく一定距離で回路が接続され認識するという方式だ。この方式のため完全に押下せずともキーが反応し、約3,000万回の打鍵に耐える長寿命が実現されている。
キー寿命に関しては、「SteelSeries 7G」が誇る5,000万回に比べてやや少ないものの、筆者がここ3年間使い続けている「RealForce91 UBK」(本製品と同じく3,000万回)が今もって新品とほぼ変わらぬパフォーマンスを発揮している以上、本製品の寿命も「長期使用に耐えうる」と評して全く問題ない。
また本製品の打鍵感はまさに「RealForce」と共通のもので、クリック感のない「サクサク」系だ。日頃「RealForce91UBK」を使って作業やゲームをしている筆者は全く同じ感覚で使用することができた。これぞ高級キーボードの打鍵感、という感触は本製品でも生きている。
一般のキーボード製品では打鍵感のよさや耐久力がウリとなることが多く、それはゲーミングデバイスでも同じである、ということは、筆者がキーボードレビューの度にお伝えしていることだ。ゲーマーとはいえ、キーボードをゲームだけに使うワケではないし、また、心地よい打鍵感はゲームそのもののプレイ感覚にも好影響を与えるからだ。その点で本製品の基本レベルは相当に高く、文句のつけようがない。
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背面のディップスイッチにより、一部キーの位置の切り替え、および待機電流の変更ができる |
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CAPSLOCK、CTRL、ESC、半角/全角の各キーを入れ替えた様子 |
本製品で異なるのは、まずキートップの表面がサラサラ感の強い加工になっていることと、全キーの押下加重が30gに統一されていることだ。オリジナルの「RealForce」のほとんどの製品では、タイピング時の使用頻度に応じて30g、45g、55gの加重パターンが各キーに配置されている。ところがゲームでは日常のタイピングとは無関係にキーの使用頻度が決まるため、全キーを最も軽い加重に統一したことでプレイ感覚の向上効果が期待できるという考え方だ。
また本製品では、付属パーツによりいくつかの付加機能が実現されている。そのひとつは、背面ディップスイッチの切り替えによってキー配置を一部変更する機能だ。具体的には、「CAPSLOCK」と「左CTRL」、「半角/全角」と「ESC」をそれぞれ入れ替えることができる。これについてはゲーマー向きというよりは、どちらかというとタイピスト寄りの機能だろうか。
もうひとつは、付属の「キーストッパー」を任意のキーの下部に差し込むことで、押下を不可能にするという機能だ。これを使ってゲーム中には間違っても押したくない、例えば「Windowsキー」あたりを無効にできる。カスタマイズ内容としては微々たるものだが、シリアスな対戦に臨む前に不要なキーをロックしておけば無用の心配をする必要が無くなるのはありがたい。
最後に価格については、ベースは東プレの「RealForce91」、そしてゲーマー向けのキー加重設定、独自のカスタマイズ機能が少々という特性に22,800円という価格相応の価値があるかどうかは、判断が難しい問題だ。同じテンキーレスタイプの「RealForce91」は実売18,000円程度で手に入るため価格差はおよそ5,000円。ゲーマー向きの付加機能が弱いため、多くのタイピストやゲーマーから高く評価され続けてきた「RealForce」シリーズをそのまま使えばいい、という向きも少なくないだろう。
ではゲーマー向けの「違い」をどこで決定づけるか、その検証のため「SteelSeries 7G」のレビュー記事でも行なった、反応速度のテストを実施した。
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キーストッパーを使うには、まず隣のキーを外した後、使いたくないキーの下部にストッパーを挿入する。これでキーが固定され、不慮の操作を防げる |
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キートップは付属の工具で簡単に外せる。差し込んでツメを引っかけて、引っ張る。あと付属の交換用キートップを差し込めば配置換えが完了だ |
■ 「ゲーミングデバイス」の必須特性、反応速度を検証
ゲーミングデバイスにとって、プレーヤーの意志を即座にゲーム内へ反映する反応速度の高さは、評価基準としてほぼ絶対的なものだ。それはゲーミングデバイスにカテゴライズされるキーボードでも同じであり、したがって本製品を反応速度テストに掛けることには意味がある。例え本製品がゲーマー向けの「高速応答」をウリにしていないとしてもだ。
本製品は、製品仕様としては「RealForce」シリーズとほぼ同等、また、接続はUSBであり、専用のドライバが存在しないことから、キーボードからPCへのレポートレートは、一般的なUSBデバイスと同じ秒間125回となる。このため、反応速度については「RealForce」シリーズと同等の数値が得られることが期待される。
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キーの反応速度を計測するためだけに作成したアプリケーション。「SteelSeries 7G」のレビューから引き続き使用する |
反応速度の計測方法は、前回と同じ、専用のアプリケーションを使用して行なった。このアプリケーションは、Webアプレットなどでもよくある反射神経計測の機能をキーボードに対応させたものである。テストを開始すると、黒い画面がしばらく表示され、突然赤にカラーチェンジする。その瞬間、被験者がキーボードのキーを叩き、それがアプリケーションに伝わった時点での時間をミリ秒単位で表示する、という内容だ。
この方式は人間が媒介するため計測値のゆらぎが発生する。それを抑えるため5回1セットの平均計測値を多数割り出した後、全体の平均から大きくはずれた計測値を排除することで、人間由来のゆらぎの影響を最小限に止めるという方式を採っている。それでも多少の誤差はあるが、比較検討用の指標としては十分であると判断してご紹介するものだ。
前回の結果に、今回の「DRTCKB91UBK」での計測結果を加えたも結果は次のようになった。
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SteelSeries 7G |
RealForce 91 |
DRTCKB91UBK |
サンプル1 |
209 |
217 |
212 |
サンプル2 |
202 |
219 |
218 |
サンプル3 |
203 |
220 |
213 |
サンプル4 |
193 |
207 |
212 |
サンプル5 |
201 |
212 |
215 |
平均 |
201.6 |
215.0 |
214.0 |
(※単位:ミリ秒)
数値を見ると「RealForce」に比べて「DRTCKB91UBK」では1ミリ秒良くなっているようにも見えるが、これはほぼ誤差の範囲と見ていい。全キーが30gの低加重に統一されたことが影響していることも考えられるが、有意の違いとは言えず、ここでは「DRTCKB91UBK」の反応速度は「RealForce91」と同等と見ておきたい。
こうして見比べてみるとやはり「SteelSeries 7G」の好成績が印象に残る。その差およそ13ミリ秒。ほぼ1フレーム速くゲームが反応するという特性は、どこから生まれているのか。それはレビューでもお伝えしたことだが、まず専用のドライバによって秒間1,000回のレポートレートを実現していることと、キーの反応開始地点が浅く設定されていること、の2点に集約されるだろう。
シグマAPOに聞いたところ、やはり本製品「DRTCKB91UBK」は、標準的なUSBデバイスのレポートレートである秒間125回で駆動しているとのこと。つまり1回のレポートにつき8ミリ秒だ。秒間1,000回で駆動する「SteelSereis 7G」に比べると、それだけで最大7ミリ秒の差が生まれる。残りの数ミリ秒の差がキーの反応地点の違いに起因するものだろう。
反応速度という1点での比較を行なったため、この点では本製品に対してやや厳しい評価となってしまったが、やはりゲーマーにとって気にせざるを得ない数値だ。国内発のゲーミングデバイスメーカーに掛ける思いは大きく、それだけに、海外製品に負けない仕様実現を期待したい。今後、専用ドライバの投入や、製品のマイナーバージョンアップ、もしくは完全新製品での改善などを通じて、全ての面で「ゲーマー向け」なデバイス作りを期待したいところである。
以上、本製品のウリではない部分を直撃してしまっただけに、少々厳しいレビューとなってしまった。ただ読者の皆さんにお伝えしたいのはそれだけでなく、本製品「DRTCKB91UBK」が、多くのユーザーから長く支持されてきた高級キーボードをベースにする製品であるだけに、キーボードとしての基本が極めて高い水準にあるということである。軽快な打鍵感、シンプルなデザイン、堅牢な作り、その価値と価格をどう評価するか、本稿が参考になれば幸いである。
□「DHARMA POINT」のページ
http://www.dharmapoint.com/
□「シグマAPOシステム販売」のページ
http://www.sigma-apo.co.jp/index.html
□関連情報
【1月22日】日本メーカー発のゲーミングマウスが遂に登場
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「DHARMA TACTICAL MOUSE」
http://watch.impress.co.jp/docs/20080123/dp.htm
【2月6日】DHARMA TACTICAL MOUSE」開発者インタビュー
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http://watch.impress.co.jp/docs/20080206/dharma.htm
(2008年5月19日)
[Reported by 佐藤“KAF”耕司]
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