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特別インタビュー
PS3「戦場のヴァルキュリア」

4月25日収録

発売中(4月24日)

価格:9,980円(リミテッドボックス)
   7,980円(通常版)


本作のプロデューサーである野中竜太郎氏
 4月24日に株式会社セガから発売になった、プレイステーション 3「戦場のヴァルキュリア」。水彩画風のグラフィックスエンジン「CANVAS」と、ターン制シミュレーション、3D視点のアクションを融合させた独特なゲームシステム「BLiTZ」が特徴の注目作だ。

 今回は発売直後に本作のプロデューサー、野中竜太郎氏に突撃インタビューを敢行。ゲームの制作秘話からプレイする際に知っておくとちょっと得する耳より情報まで、さまざまなお話をしていただいた。プレイ真っ最中の方はもちろん、本作がちょっと気になっている人にも必見だ。


■ 「ドラマ性の高い戦場モノのゲームを作る!」が原点

――野中さんの「戦場のヴァルキュリア」における役割はどんなことなのでしょう?

野中氏 :プロデューサーを務めています。具体的にいうと、プロジェクトの統括ですね。「こういったプロジェクトをやりたい!」という言い出しっぺという部分と、ゲームのクオリティチェック、あとはキャラクタデザイナーやサウンドの方に、声をかけさせていただいた、つまりスタッフ集めから具体的なクオリティにつながる部分までを統括させていただいてます。

――野中さんのこれまでの経歴や関わられたタイトルは何ですか?

野中氏 :一番わかりやすい代表作というと、ドリームキャスト版の「サクラ大戦」シリーズですね。「1」、「2」、「3」と、さらに「花組対戦コラムス 2」、「大神一郎奮闘記」もちょっとだけ関わっています。その後は、プレイステーション 2の「Kunoichi -忍-」と若干PCタイトルをやりまして、現在に至るというところです。このプロジェクトの期間が長かったので、若干間が空いていますが。

――「このプロジェクトが長かった」ということですが、具体的にはどれぐらい開発されていたのでしょう?

野中氏 :だいたい3年間ぐらいですね。といっても、その前からもともと、こういった戦争モノというか、戦場モノをやりたいという話はしていました。今まで我々が作ってきた「サクラ大戦」や「エターナルアルカディア」などにしても、やっぱりドラマ性やストーリー性の強いタイトルなので、次にどのような物語を作ろうかと考えたときに、そういったものが色濃く出るのは“人の生き死に”だろうと。そういった中で、社内の有志の中に何かほとばしり(笑)まして、「こんなゲームを作るぞー!!」とか言っていたのですが、実際に作り始めたのは3年ぐらい前、というところです。

 最初は、開発のコアとなる現在のリーダークラスのメンバー数人と、「やるとしたらこういうのをやったらどうか?」とゲームのシステム面を話し合ったり、「グラフィックス的にはこういうことをやったら面白いんじゃないか?」という形で「CANVAS」が生まれたりということがあったりしながら、開発がスタートしていきました。

 その時点では「BLiTZ」というシステムはまだなくて、普通のターン制のシミュレーションゲームに近い、アクション性はあまり高くないゲームでした。企画の方がそういう方向性で進めている間に、デザインの方で「CANVAS」というグラフィックスをプログラマと話しながら、どのようにしたらPS3というハードで動くのかという技術的なものと、表現的なものを詰めていったり、もっと良くしようと試行錯誤していた段階になります。

■ さまざまな工夫が施されたキャラクタに注目!

戦闘中のワンシーン。土嚢(どのう)にかかるものはもちろん、あらゆる影のほか、風にたなびく草も常に動いている
ムービーシーンのワンカット。背景の木から伸びる影に比べ、キャラクタの顔にかかっている影は明らかに細かいことがわかる
――「CANVAS」の話題が出たところでお伺いしたいのですが、影の部分が常にゆらゆらと動いているのはリアルタイムに計算を行なっているのでしょうか?

野中氏 :そうですね。リアルタイムの処理で描いてます。ゆらゆらと揺れているのは、「影を動かさないと画面に動きが出ない」という表現の課題がありまして、最初から影をどうしようかと研究しているときに、「色濃くしてみたらどうだ」、「黒っぽくしてみたらどうだ」と色々試したのですが、鉛筆線でジャジャジャッと影をつけるのが一番このグラフィックスの方向性にあってるんではないか、と試行錯誤した結果ですね。

――影の濃さによってレベル分けされていて、その中でアニメーションさせているように見受けられますが

野中氏 :影は暗さによって完全にグラデーションで持っているわけではないんですけれども、何種類かのパターンというものを持っています。もうひとつ、物体の影を描く際、建物とキャラクタに入る影はそれぞれ変えています。最初、斜線の影をキャラクタに入れていったんですが、汚かったり荒っぽく見えたり、綺麗に見えないんですね。そこで、最終的には美しく見えないので変えています。

 実はキャラクタに入る影については、かなり恣意的に制御しています。アニメなどもそうなのですが、右からライトが当たっている状況でも右側に影を出したほうが可愛くなるならば、(実際に影ができる方向とは逆でも)右側に影を出すんですね。単純にライティングでやったほうが綺麗になるところはやっていませんが、極論すると顔の影と体の影の方向がまったく逆だったりすることもあります。このようにキャラクタの影に関しては、綺麗に見えるようにかなり場面ごとに制御しています。

 地味なところに労力を割いていますが(笑)、逆に言うとそれくらいしないと格好良く・可愛く見えないんですよ。キャラクタの魅力をより引き出すため、そういった細かいこともやっています。

――水彩画風の色彩が特徴的ですが、このような表現方法を採用したきっかけはありますか? またゲームに落とし込む際に苦労した点等があればお聞かせください。

野中氏 :最初に戦場モノ・人間ドラマをやりたいというテーマを決めてゲームを作り始めたのですが、それをグラフィックスで表現する際に、海外のゲームのようなリアル系のCGでいくのか、ということは話し合いを重ねました。その結果、我々がドラマを表現して感情移入してもらう際に、リアルに弾が飛んできて体の一部が吹き飛ぶ、という方向は違うだろう、ということで一致しました。そういう表現をすることで、戦争の悲惨さや凄惨さは表現できるかもしれませんが、その中で人が生きて、明日を目指すという、希望や友情を描く以前の表現として、受け入れにくい部分が出てしまうと思ったんですね。

 そこで、いわゆる写実的でないグラフィックスでゲームを表現したいという話が出てきました。結構前から、いくつかそういったグラフィックスの研究をしていまして、例えば「サクラ大戦3」の際には“ネオCG”と呼んでいたのですが、CGの質感とアニメキャラクタを合体させられないかということを研究しました。たとえば、エリカが格納庫を走ってきて光武Fに乗るシーンがあります。格納庫と光武FはCGで作って、キャラクタだけアニメで作るという、そういう融合をしていたんですね。そのときのCGもリアル系のシェーダーではなくて、色味や描線をいわゆるアニメっぽい質感にならないか? という研究をしていました。いわゆる2D的な表現と3D的な表現のいいとこ取りができないか、という研究ですね。ほかにも水墨画シェーダーのようなものとか、アメコミではない日本的なコミックの絵をリアルタイムに動かせないか、なんてこともしていたのですが、その中に水彩画風というものもあったわけです。

 そこで、水彩画風のグラフィックスと戦場ドラマを組み合わせられないかという話になりまして、結果的に牧歌的な映像と戦場の緊迫感のようなものが同時に出せれば、これは面白いものになるんじゃないか? と。そこで「作って!」と、まあ僕は頼んだだけなのですが(笑)、デザイナーのほうでデモンストレーション映像を作ったんですね。戦車と女の子がセットになっていて、なるべく止まった際には手描きの絵に見えて、でも動くと3D的に動くという。このデモの評判がよくて、社内で人に見せると「おお!」と驚いてくれるのが嬉しくて、見せまくっていました(笑)。

 ただし、ゲームで採用する以上、ムービーだけ水彩画風でゲームに入ると普通のCGというのはありえないわけです。それをリアルタイムに動かさないとならない。リアルタイムで動かす際にプログラム的な速度も含めてどうやって動かしていくかと、個別の技術をどう組み合わせて映像を作るかというところで時間がかかりました。

 というわけで、こういった水彩画風のグラフィックスで作ろう、というのは結構早めに決まったのですが、実際に動くようになるまでは長かったですね。

――プラットホームにPS3を選択されたわけですが、PS3だからここまでできたというような点はありますか?

野中氏 :開発の初期段階ではPS3もなかったので、最初は漠然とPS2で、と考えていました。その頃我々は「サクラ大戦 ~熱き血潮に~」や「Kunoichi -忍-」など、PS2をメインに作っていたので。「CANVAS」というよりは、戦場ドラマをどうやってゲームにしていこうかと考えていた時期の話ですね。そういった意味ではグラフィックスパフォーマンスにこだわらないという考え方だったので、一時期はPSPを考えたりもしました。そんな中、PS3でやるのはどうか、という話が出てきて、PS3ならどういう表現をするか?リアル系CGでいくのか?という先ほどお話した時期があって、「PS3だったら『CANVAS』ができるだろう」ということでPS3に決まった、という感じですね。

 PS3ならではという部分では、そうですね……本作は720pなんですが、単純にPS2の性能だと720pでは動かせない。基本的にグラフィックスの繊細なタッチというのは解像度の影響が大きいんです。グラフィックスRAMの容量からしても処理能力からしても無理なので、そういう意味ではPS3の能力が必須でした。

――ロード時間が短くて快適にプレイできたのですが、どのような工夫をされているのでしょうか?

野中氏 :社内には、我々のチーム以外にもPS3のタイトルを作っているセクションがあり、そういうところと技術交流はありました。そこで出た話として、どうしてもロード時間というのはかかってしまうものなんですね。単純にメモリの量がこれくらいで、ディスクからの転送量がこれくらいなら、ロード時間がこれくらいかかります、というのは簡単に減らせるものではない。

 では、どうやってロード時間を感じさせない作りにするか? というのを研究しています。プログラムというよりは、演出等も含めてなるべく体感で感じさせないように気を配っているわけです。やはり「NOW LOADING」の画面はなるべく出ないようにしたかったものですから。本当はもっと短くしたかったんですがね。


■ 戦場の恐怖を体感させる過程で生まれた“迎撃”システム

――本格的な開発が始まったのはいつごろでしょうか?

野中氏 :だんだんと人が増えていったのは2007年ですね。その前も本格的に作ってはいたのですが、ベースとなる部分を作るときには人数は絞っていました。「CANVAS」やゲームシステムを作っているときですね。最初はゲームシステムも普通のターン制のシミュレーションゲームRPGだったのですが、そこにアクション性を入れるという段階のときには人数も多くなかったんですよ。アクション性が入ったシミュレーションゲームというアイデアが出た際に、本当に面白いのかを一度検証しました。単なるポリゴンにテクスチャも何も貼ってないけど、一応隠れるような建物をいくつか配置して。ゲームルールだけを検証するためのバージョンですね。あとは並列してストーリーや世界観を詰めている間はそれほど人数は多くなかったです。

猛烈な迎撃を受けるアリシア。実際にこのような状況の中を飛び出すのはかなり勇気がいることだろう
建物の陰から様子を伺うロージー。敵はいないように見えるが未発見の敵は表示されない。緊張の一瞬だ
――ゲームシステムの話が出てきたところで、本作の戦闘システム「BLiTZ」の最大のウリは自分のフェーズであっても敵がリアルタイムに迎撃してくるところだと思うのですが、「BLiTZ」を作る際に苦労した点などがあればお聞かせください。

野中氏 :「ヴァルキュリア」などのファンタジックな要素もあるのですが、一番最初に考えたのが1930年代の戦闘なんですね。それをゲームに落とし込む際に、戦略とか戦術ではなく、作戦級のゲームを作るときに、どのような見え方・ロジックを持つか、もう一度検証しなくてはならないというのは開発の最初の段階にありました。

 ファンタジーRPGのロジックはよくできてますし、我々も慣れ親しんでますよね。いわゆるファイタータイプは近接戦闘が得意で、魔法使いや僧侶は攻撃や回復の魔法で支援していくという。役割がはっきりしているじゃないですか。でも1930年代の戦場って、接近して殴るというのは、あまり多くないわけですね。なのでファンタジーRPGのロジックで作っては良くないんだろうなというのはありました。先ほど話したターン制のシミュレーションだったときは、接近して攻撃するという、ファンタジーRPGのロジックを残した内容だったんですね。

 そこで、ゲームシステムを検証していくと、いろいろな問題点が浮き彫りになっていきました。一番問題だったのは、戦争している感じがまったくしない点ですね。敵がたくさんいるのに、弾を1発も撃ってこない中を自分が移動できて、近づけてしまう、という……。ゲームのロジックからいうと、遠くからバンバン撃ちあうだけだと、それはそれでゲームが成り立たなくなってしまうのですが、ある程度近寄って撃つようにはしたい。でも密着して銃で撃つ、というのは違和感があるだろうと。人が立っているけれどシーンと静まっている中を近寄っていき、撃って、反撃を受けて……、というゲームシステムでは戦争状態であるという気がまったくしないわけです。そうしたときに、戦場の弾が飛び交う中を伏せたり建物や土嚢(どのう)に隠れながら移動していく、というのをゲームの中に落とし込まないと、戦争って感じがしないんじゃないか、と思いました。

 銃を使ったゲームなので、まず距離感という部分で近寄って殴るファンタジーRPGのロジックから一度離れる必要があり、もうひとつは弾が飛び交う中を移動する恐怖感みたいなものを入れたかった。じゃあ、弾がたくさん飛んでいる中を実際に進むというゲームはどうなんだ? ということになりまして。検証してみたところ、「これは怖い!」と。ここで、自分が銃弾が飛び交う中に飛び出していく際の恐怖感を表現できたわけです。ゲームとしては今までにない感覚ながら、シミュレーションのルールでいうと、近づいて目の前を通れば撃たれて体力は減りますよ、行動もしにくくなりますよ、というロジックですね。このようにしてできたのが、“迎撃”の基本システムになります。

 自分のフェーズなのに、ものすごいダメージを食らうのはいいのか? という話もあったのですが、これは面白い、ものすごい緊張感がある(笑)。ダメージを食らう点については、迎撃範囲を決めて、なるべくそこに近寄らないようにすることでフォローできるだろうと。迎撃範囲に入ってしまったら自分のフェーズでも痛い、それはロジックとしては面白いんじゃないか? ということで、今の“迎撃”に近いシステムになりました。そこからさらに迎撃範囲などを決めて、ゲーム的に落とし込んでいったのが、今の“迎撃”システムですね。

戦車が初めて登場するムービーより。レンガの壁をものともせず突き崩しながらアップで映し出される。戦車に対するこだわりが感じられるだろう1シーンだろう
――「BLiTZ」だとCP(コマンドポイント)の数によって行動回数が決まっていて、同じキャラクタを連続して行動させたり、戦車はCPが2必要だったりと調整の際にいろいろと葛藤があったのではないかと思いますが?

野中氏 :根本的な考え方として、自由度は高くしてユーザーさんに楽しんでもらいたいな、というのがありました。キャラクタが一般兵50人ということもあり、自分の好きなキャラクタで自分の部隊を編成して戦っていくので。人によっては狙撃兵が好きだったり、突撃兵が好きな人もいるので、ある程度ユーザーさんが任意に決められるシステムにしたかったです。また、「サクラ大戦」シリーズではキャラクタごとに素早さが決められていて、行動順は敵味方が入り乱れていたのですが、今回は自分の行動の直後に敵が行動すると作戦の連動性が薄れるので、自分のフェーズですべて行動させてから敵のフェーズが始まる、というシステムにしました。そのような中で自由度を上げていくために、どのキャラクタをどれだけ動かしてもいいじゃないか、そこは隊長であるプレーヤー次第ですよね。と、比較的早い段階からこのような設計思想で作っていました。

 CPに関しては、何をもとにユニットを動かせるのかと考えたときに、指揮力のようなものがあるだろうと。そして成長すると指揮力が上がって、たくさんユニットが行動できるようになるんじゃないか? というのが最初の考え方ですね。

 戦車のCPが2というのは、戦車は強くなければいけないだろうというのがありました。三すくみっていってますけれども、あの中では戦車は相当強いんですね。戦争映画の中で戦車が出てくるときの圧倒的な恐怖感がほしい! でも戦車が強すぎると戦車だけで勝てるゲームになってしまうので、現状では戦車では拠点は制圧できず、CPを2使うようになっています。戦車砲を1発撃つよりも対戦車兵に2回撃つほうがいいじゃないか、というような考え方もあるので、そこは微妙に迷うようにしました。少なくとも戦車だけ動かせれば勝てるようなゲームにはしたくなかったわけです。でも、その中で「戦車強い!」という部分はなくならないように注意しました。

まったく操作できないものの、第7小隊にとって欠かせない存在である衛生兵。仮にまったく攻撃できない兵科だとしても、操作してみたかったと思うのは筆者だけだろうか?
――5つの兵科と戦車という6種類のユニットがあるわけですが、そのほかに採用を検討した兵科があったり、逆にもっと少なかったというようなことはあったのでしょうか?

野中氏 :概ね6種類に決まっていたのですが、衛生兵をどうするかで少し話しあった部分はありますね。最終的には今のように完全にNPCになっているのですが、衛生兵をユニットで使うという話もありました。でも、そうすると衛生兵を入れないということはありえないじゃないですか。そうなると逆に部隊編成の自由度がなくなってしまう。あと衛生兵と離れると死にやすいということになると、マップに対するユニットの展開も縛りを受けてしまう。そういった理由で衛生兵をユニットにするのはやめました。やることがユニットの救出だけですし。衛生兵は銃を撃てないじゃないですか、条約違反になってしまうので(笑)。

――強敵の側で瀕死になってしまったキャラクタを助けにいって、助けた直後にそいつも瀕死にされて次のキャラクタで助けに行く……という瀕死ループを繰り返して死亡を回避したりと、衛生兵にはお世話になってます(笑)。

野中氏 :意外とキャラクタは死亡しづらいですよね。瀕死で敵に触られてしまうとどうしようもないですけど、基本的には瀕死になっても衛生兵を呼べばなんとかなるので。しかも3ターンって長いじゃないですか。死亡すると知ってから燃えてるユーザーさんもいるとは思いますが(笑)。

 死亡してしまうのが怖くて積極的な攻めができずに、戦績画面でCランクでクリアーとか残りターン数がギリギリでという方は、思い切ってつっこんでみてほしいですね。衛生兵のおかげでリカバリーできますので、瀕死になっても大丈夫です! そこから新たな境地が開くこともあるかと思います。

――初心者さんは、迎撃範囲内に入った際に撃たれるのがイヤなので、迎撃されるとすぐターゲットモードに入って攻撃して、攻撃後も撃たれるのがイヤでAPが残っているのに行動終了を選択しちゃう、っていうのがありますよね。落ち着いて、引き返してから物陰に隠れると死亡率とか全然変わるんですけど。

野中氏 :そうですね。ターンごとに少しずつHPが回復していますし。敵の迎撃も崩せるじゃないですか。攻撃して当たるとこちらを向くので、そのスキに違うユニットで後ろを通るとか。そういうのをうまく使うと、迎撃もなんとか崩せるかなと思いますね。

――敵が横一列に並んでいる場所には、最初に戦車で中央に突っ込んで、敵を内側に向かせておいてほかのユニットで外側から撃破していくとか有効ですよね。

野中氏 :後ろから攻撃すれば基本的に不意打ちなので回避されることもないですからね。相手が偵察兵でない限りは多少斜め後ろでも迎撃してこないので。そのあたりの駆け引きが見えてくると死ににくくなるかなと思います。

 あとは、無理に敵を全滅させなければいけないゲームではないので、まずはミッションクリアーを目指して遊んでもらいたいですね。一通り遊んでいただいて、もっとやり込みたいなという方は、オールSランククリアとかを狙っていただけるとやり甲斐もあるかなと思います。結構パズルゲームっぽいところがあって、建物の曲がり角など、射線が通らないような場所にいる敵でも手榴弾を投げると倒せたりとか、ちょっとしたことでCPが節約できたりとかするので。

 あとは遊撃戦闘も楽しんでいただきたいですね。基本的には詰まったときのレベルアップ用っていうのもありますが、こちらも少ないターンでクリアしようと思うと、いろいろと考えなければいけなくなっているので、違った楽しみ方ができると思います。

櫓(やぐら)の上から獲物を探す狙撃兵のマリーナ。高所から索敵すれば、偵察兵を走らせることなく、敵の配置を丸裸にできる
――アクションモードが3D視点ならではの要素として、高低差があるマップがいろいろとありますが、ゲームに落とし込む際に工夫した点などはありますか?

野中氏 :グラフィックスに関しては限りなく1/1でやろうという話になったときに、隠れるという要素や索敵・視界というのを考えまして、高い場所は有利であるようにしました。実際、単に見つけやすいだけではなくて、上からだと若干補正をかけてあり、上から攻撃すると、強くなっています。

 なぜかというと、索敵という要素をこのゲームにどうしても入れたかった。戦場ではどこに敵がいるのかわからないし、何人いるかもわからない。三すくみもあるので、敵の兵科がわかっていると対応策が練れるのですが、索敵しないとわからないようにしたい。そうすることで、偵察兵のAPが高い・索敵能力が高いという特長が生きてくるので、高低差のあるマップを作って、高い場所から敵を見つける・攻撃するという要素は自然と入っていきましたね。


■ 約50人いる一般兵にもそれぞれの物語が用意されている

――50人ぐらい一般兵がいて個性的なキャラクタがいますが、設定を作成する際に苦労した部分などはありますか?

野中氏 :一般兵に関してはストーリーとは関わりがないので、担当者の趣味が出ていますね。物語に関わるキャラクタはどうしても特殊なキャラクタが出しにくいので、その分のほとばしり(笑)が一般兵に向かった部分はあると思います。基本的には一般人が戦うというお話なので、いわゆる職業軍人みたいな人はほとんどいないですね。そういう意味では極端なキャラクタが多いかなと思います。メインのキャラクタはキャラクタ原案の本庄雷太さんにやっていただいたのですが、一般兵に関しては現場のデザイナーのほうで突っ走って(笑)作りました。

 例えば、対戦車兵のウォルターと突撃兵のイーディは同じデザイナーが作ったりしてるんですよ。どういう振り幅なんだ! という(笑)。

対戦車兵の中でもたくましいウォルターと、可愛らしい外見で人気のイーディ。この2人を同じ人がデザインしているとは……


――それはちょっと想像できませんね(笑) 。あと、細かい設定が一般兵にもあったりしますよね。

野中氏 :そうですね、やっぱり気になるじゃないですか。色々なことをしゃべったりしてますし。ユーノのポテンシャルがウェルキンと関係するのも、設定的にはウェルキンの大学の同級生だったり、ノーチェもブルール出身でアリシアと同じく自警団の隊長だった、というのがあります。キャラクタは使っていくと人物総覧のプロフィールが増えていくので、たくさん使うことで「コイツこんな物語があったんだ!」というのが見えてくることでしょう。ゲーム中に少しずつ更新されていくので、ときどきでもいいので見ていただきたいですね。

共に偵察兵のユーノとノーチェ。本作の主人公とヒロインであるウェルキン、アリシアと以前から交流のあった2人。どのような物語が綴られていくのか気になるところだ


――ヴァイスとかアイカはDCおよびGCで発売されたRPG「エターナルアルカディア」のキャラクタだと思うのですが、彼らを登場させた際のいきさつなどはありますか?

野中氏 :平たく言うと、ディレクターが「エターナルアルカディア」も担当していたというのがあります。さらに言ってしまうと、50人出すときに、自分達が今まで作ってきたゲームのキャラクタも入れたいな、というのがありました。その中で、「エターナルアルカディア」が世界観的にも入れやすかったですね。「ぐるぐる温泉」の仲居さんとかは入れづらいですし(笑)。「Kunoichi -忍-」もスーパーキャラなので世界観的にちょっと違うかなという部分があったので外しました。

 というわけで、「エターナルアルカディア」ファンの皆さんは、この2人をぜひ使っていただけたらと思います。ヴァイスとアイカはお互いに相性のパラメータもよくなっているので、組ませていただければ使いやすいですし。使っていただいた後に人物総覧をチェックしていただけると、ファンの方はより楽しめると思います(笑)。

こっそり「エターナルアルカディア」から参戦していたヴァイスとアイカ。「エターナルアルカディア」ファンは、彼らが参戦した理由を自分の手で確かめてみよう



■ 過去から現在、現在から未来へ受け継いでいくものがテーマ

――メッセージ性の高いストーリーだなと思ったですが、ストーリーを作成する際に決めたテーマなどがありましたらお話いただけますか?

野中氏 :ストーリー中では、ラグナイトという資源をめぐって起こったということになっていますけども、実際の戦争においても資源というのはひとつ大きいもので、資源をめぐっての争いもありますが、ほかにもいろいろと根深いものがあったりするわけです。民族的なものであったり、感情的なものであったり、そういったものが積み重なって戦争って起きるじゃないですか。そういうものをきちんと入れたかったというのはあります。

 今というのは、昔からのいろいろなものの流れでできているんじゃないか、と思うんですよね。この世界でもダルクス人とヴァルキュリア人というのが昔からいて、ダルクス人も当時あったことによって迫害を受けていたり。ガリア軍も一枚岩ではないですし、過去にいろいろなことがあって、現在があって、今起こっていることが未来につながっていく、というところは描きたかったですね。そういったところから歴史が生まれてきているんじゃないかということを、クリアーした後にでもプレーヤーの皆さんにも考えていただけたらと思います。

■ 70人のフルオーケストラが奏でるBGMに耳を傾けてみよう

――崎元仁さんの楽曲が印象的ですが、打ち合わせの際のエピソードなどはありますか?

野中氏 :一番最初に崎元さんにお願いしようとお話したときには、ファンタジックな部分もありますが基本的にはミリタリーなんですよ、とお話しました。ですが、ミリタリーに寄せるとマーチっぽくなってしまいファンタジー感がなくなるんですよね。1930年代のヨーロッパをベースにしているのは、適度に現代っぽいんですが、ある種のファンタジー感があったりとか架空の部分が入れやすい世界観だというのもありました。そのため、サウンドを作る際には、あまりにも現代戦寄りのBGMになるのは避けたいと思っていました。

 ちょうど崎元さんからも「どこまでやりましょうか?」というお話があったので、あまりにもミリタリー優先で現代戦っぽくなるよりは、ある種のファンタジー感を引きずった形でゲームのトーンを決めたいと話しました。その結果、今のようなリズム的にはマーチっぽいのが入っていたり、トランペットのソロとかミリタリーを想起させる部分はあるんですけども、全体としては歴史の重厚感がある、ミリタリーとは違うイメージの曲を作っていただきました。

――オーケストラがオーストラリアのエミネンス交響楽団とのことですが、録音した際のエピソードなどはありますか?

野中氏 :崎元さんはエミネンス交響楽団さんと何度か演奏されているのと、エミネンスのリーダー、由良さんが日本人なので、そこは話は速かったですね。70人くらいのフルオーケストラという、厚みのある素晴らしい音でやっていただいたので、打ち込みとはちょっと違う迫力が出たと思います。

 5月21日発売のサウンドトラックは、オープニングからエンディングまで網羅していますので、「こんなシーンあったなぁ」というのを、思い返していただけたらと思います。ゲーム中では聞けない未使用曲も入っていますよ!


■ 見ただけではわからない魅力を体感してみよう!

4月19日に秋葉原で行なわれた店頭体験会の一コマ。秋葉原を訪れたこの外国人2人組も興味深そうにプレイしていた
――最後にユーザーの皆さんに向けてメッセージをお願いします。

野中氏 :いろいろな見方があると思うのですが、かなり変わったというか(笑)、新しいゲームになったと思います。グラフィックスもそうですし、ゲームシステムもですね。なので、ちょっと面白そうだなと思ったら、ぜひ遊んで体感していただきたいなと思います。ストーリーやゲームシステムの部分でも面白いものになった手ごたえがあるので、時間があるゴールデンウィークのうちに楽しんでいただけたらと思いますね。すごく難しいゲームでもないですし。

――そうですね。割と安全策をとろうと思えばとれるし、かといってSランクを狙うと特殊な攻略が必要だったり、やり甲斐もありますし……。

野中氏 :そういう意味では難易度も自分で決められると思うんですよ。遊び方によってはすごいハードな部分もありつつ、まず第7小隊を勝たせてストーリーを進めていくってこともできますし。そういう意味では実際に遊んでみるとまた印象が違う部分もあるかと思いますので、まずは手にとって遊んでいただけたらと思います。

――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

(C)SEGA

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(2008年5月1日)

[Reported by 菅原哲二]



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