★PCゲームレビュー★
圧倒的表現力で描き出される米ソ全面戦争
競技性の高いゲームシステムを搭載した局地戦RTS
「ワールド イン コンフリクト」 |
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株式会社ズーは、4月25日にPC向けRTS「ワールド イン コンフリクト 日本語版」を発売する。同作品は昨年9月に英語版が欧米でリリースされており、DirectX 10にも対応したリアルなグラフィックスが話題を呼んだタイトルだ。兵士一人一人の装備がわかるほど細かく描かれた表現はRTSとして破格の臨場感であり、それと同時に広大な都市を再現するスケール感、爆発で崩壊するビルの様子など、美しいエフェクトで描き出されるゲーム世界はプレーヤーの目を奪わずには居られないほどだ。
また、世界設定として米ソの全面戦争を描いた本作は、ゲームシステム面ではカジュアル風味で手軽に楽しめるという側面も持ち合わせており、PC用にリリースされたRTSタイトルとしては独特なポジションにある。マルチプレイのゲームルールもユニークで、これまで沢山のRTSをプレイしてきたユーザーにも新鮮な印象を与える作品だ。日本語版の発売にあたり、本稿では本作のユニークな側面をご紹介していく。また、DirectX 10への対応も本作の大きなトピックであり、本稿ではその点についても取り上げた。
■ ダイナミックに展開する現代戦闘をディテール豊かに描いた局地戦RTS
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'89年冬。シアトル湾に突如現れたソ連軍の襲撃。この奇襲にアメリカは全く対応できず、国家存亡の危機に陥る |
史実ではソ連崩壊直前の'89年、経済的に破綻をきたし初めていたソ連はヨーロッパへの侵攻を開始する。アメリカはこの動きに介入し、全面戦争状態に突入。フランス、ドイツなどヨーロッパの地では同盟国を巻き込んだ激戦が展開されたものの、戦況はアメリカ有利に推移しているかに思えた。アメリカ西海岸の都市、シアトルに、ソ連の大戦力を積載した偽装タンカーが大挙侵入してくるまでは……。
本作はこのような世界設定を舞台とする現代戦のRTSだ。シングルプレイとマルチプレイをサポートしており、一般プレーヤー向けのメインフィーチャーとなるシングルプレイキャンペーンモードでは、プレーヤーはシアトルに配属された部隊指揮官パーカー中尉として局地戦を展開していく。プレーヤーが指揮する部隊の規模は最大で20ユニット程度のRTSとしては小規模なもので、その分、各ユニットあたりの操作量はかなり大きなものとなっているのが特徴だ。
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本作は部隊指揮に特化した戦術級のゲームだ。リアルで迫力ある映像が臨場感を盛り上げてくれる |
「Age of Empire」シリーズのような戦略級のRTSは異なり、現場レベルの作戦遂行をテーマとする本作には、施設の建設や資源集めといった生産要素の概念はない。本作では1地域での局地戦をリアルタイムで再現するスタイルをとっており、歩兵、戦車、装甲車、戦闘ヘリなどの各ユニットの配備は、「増援ポイント」と呼ばれるポイントを使ってユニットを選択し、輸送機から投下するというスタイルをとっている。プレーヤーが直接戦力の配置と指揮に集中してプレイするという点で、現場指揮官レベルの戦術級のゲームとなっているのだ。
また一般的な見下ろし型視点のRTSとも異なり、本作の視点操作はWSADキーで平行移動を操作し、マウスでカメラ方向を操作するFPS風のスタイルだ。視点は上空300メートルから1兵士の目線まで自由自在に移動させることができ、リアルに描かれた戦場の風景を臨場感たっぷりに味わうことができる。そして、何よりも独特なのがユニット操作まわりのシステムである。
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地面スレスレから高度300メートルまで、視点は自由に移動できる。豊かな質感で細部まで描かれるグラフィックは圧巻の一言だ。 |
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ユニットの選択、移動などは標準的な操作方法だ。各ユニットは画面下部のアイコンからも選択ができる |
戦場に配置された各ユニットは、マウス左クリックで選択、右クリックで移動先を指定、という通常のRTSと同じ操作スキームが採用されている。ただし本作では1ユニットあたりの重要度が非常に重く、各ユニットが持つ攻防の「スキル」を自由自在に操ることがゲームの基本要素になっているのだ。「スキル」は各ユニットが兵種ごとに持つ特殊能力で、デフォルトではカメラ移動のWSADの隣に位置するQキーとEキーで呼び出す。
Qキーで呼び出せるのは「攻撃スキル」と呼ばれ、例えば装甲車(ブラッドレイ)であればTOWミサイルを発射して装甲車両に攻撃を掛ける、歩兵であればグレネードランチャーの弾幕を張る、というもの。Eキーで呼び出すのは「防御スキル」で、装甲車なら煙幕を張る、歩兵ならダッシュで移動する、というものになっている。
各スキル、特に攻撃スキルは通常攻撃を大きく凌駕する特別強力な能力が設定されている代わりに、MMORPGでは定番の「クーリングタイム」が設定されている。1度スキルを使うと一定時間が経過するまで再使用ができないというものだ。例えば装甲車のTOWミサイルのクーリングタイムは30秒だ。連発ができないため、敵の侵攻に合わせて適切に使っていく必要があるわけである。
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ブラッドレイの攻撃スキル「TOWミサイル」を発動。装甲車両に大ダメージを与える |
もうひとつのゲーム要素は、砲兵や航空部隊による近接支援攻撃を呼び出すシステムだ。画面左上のアイコンからアクセスする近接支援メニューには、広範囲の敵部隊を攻撃する弾幕射撃、ビル1個分程度の範囲に砲撃を集中する精密射撃、歩兵に対して威力を発揮するナパーム弾攻撃、広範囲の戦場に大打撃を与える絨毯爆撃など、戦場によって様々なものがある。全ての近接支援は「戦術支援ポイント」と呼ばれるポイントを消費しておこない、このポイントは自動的に充填されるほか、通常戦闘で敵を撃破するたびに大きく蓄積されていくというシステムだ。
局地戦をテーマにするゲームということもあり、ゲーム展開は非常にスピーディだ。各ユニットは現実に近いスケールとスピード感で動くため、位置的状況は見る間に変化していく。プレーヤーはそれに対応して部隊を操作しつつ、各ユニットの攻防の能力を理解し、クーリングタイムを意識しながらスキルボタンを叩き、適切なターゲットを指定しては撃破していく。
また、状況に応じて近接支援攻撃を要請することも重要な要素だ。近接支援攻撃はターゲットを指定してから実際に着弾するまでかなりのタイムラグがあるため(10秒~20秒)、常に1手先を読みながらのプレイが必要だ。そして「増援ポイント」が蓄積すれば必要な地点に部隊の投下を指示する。これらすべてがリアルタイムで同時進行となるため、極めて忙しいゲーム展開となるのが本作の特徴である。
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各ユニットの配置、スキル、支援攻撃の3要素を常に同時進行で操作していく。かなり忙しいゲームであるため、存分に楽しむ為には操作への熟練が要求される |
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複数のユニットを扱うときにはCtrl+数字キーでグループ化しておくと良い。また、移動先指定をShiftキーと同時押しでおこなえばウェイポイントの指定ができる。こういった操作を駆使して効率よくゲームを進めていきたい |
■ 戦場はアメリカからヨーロッパ、ソビエトへ。重厚な演出で展開するキャンペーン
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ソーヤー大佐は今作戦の現場司令官だ。プレーヤーは多くのミッションで彼の指示を受けることになるだろう |
本作のメインコンテンツのひとつシングルプレーヤーキャンペーンは、ヨーロッパで米ソの戦争が継続するなか、タンカーに偽装したソ連の輸送部隊がシアトルの港に大挙侵入してきた「侵攻の日」から始まる。プレーヤーが演ずるのは主人公、パーカー中尉。ヨーロッパの戦線で活躍したのちたまたまシアトルに配置されていたパーカーは、突如進入してきたソ連の大部隊を相手に、米本土で展開する戦役を戦い続けることになる。戦友の戦車長バノン中尉、直属の上官ソーヤー大佐とのエピソードを中心に、本作のストーリーが展開していく。
本作のストーリーテリングの手法は、RTSとしては極めて豪華だ。兵士ひとりひとりを詳細に描画できるグラフィックスエンジンを生かし、ゲーム展開の各所でリアルタイムレンダリングされたカットシーンが挿入され、まるで映画のような演出が続く。ソビエト領内での作戦中、戦友のバノン中尉は思わず民間人を射殺してしまい、それをソーヤー大佐に見咎められて罵倒される。このようなエピソードは、戦争の背後に潜む陰鬱な恐ろしさをよく表現しており、思わず引き込まれた。
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ミッション内の小目標の多くは「特定の地点を確保せよ」というもの。円内に留まれば条件クリアとなる |
シアトルからの撤退から始まるシングルプレーヤーキャンペーンは、1ミッションあたりおよそ30分程度のプレイ時間で十数ミッションが用意されている。各ミッションのゲーム展開は通常のRTSとは毛色が異なり、自由に戦力を配置して敵を撃滅する、というものではない。あらかじめ決められた戦術目標をバノン中尉やソーヤー大佐が指示してくるのに従い、その都度条件を満たしていくという形で構成されているのが特徴だ。
条件とは、特定地点に行く、特定の敵を撃破する、ある地点を一定時間確保する、などである。各条件をクリアするごとに新たな条件が提示され、シナリオ上の「クリア地点」に達するまでそれが続くという按配だ。あらかじめ決められたシナリオ通りに展開するというものであるため、プレイ感覚はかなりリニアな印象だ。このシナリオに従い、戦場はアメリカからヨーロッパへ、そしてソ連、そして再びアメリカ本土の戦いへ描写が移っていく。
このあたり、基本のゲームシステムはRTSではあるものの、ゲーム構造としては「Call of Duty」や「Medal of Honor」など、映画的展開を重視するFPSにも似ているかもしれない。大戦を描くストーリーは時系列的に前後しつつドラマティックに展開し、プレーヤーを引き込む魅力がある。それはそれでありだと思うが、本作のシングルプレーヤーモードにRTS本来の自由さを期待しているとアテが外れてしまうかもしれない。ここはゲームファンの指向によって評価のわかれるところだろう。
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ミッションは特定の地点を確保するものから敵を撃破するものなど様々。複数の地点を同時確保するタイプのものは、戦力を分散する必要があり、敵が多い場合は対応に苦労するだろう。このあたりはプレーヤーごとに解決策が分かれそうだ |
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戦いの部隊はアメリカ本土からヨーロッパ、ソ連領内へ。戦いの内容はより大規模に苛烈になっていき、ミッション内容も困難になっていく。その場その場で適切な判断をしていこう |
・戦場の各局面で試されるRTS的思考
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主力戦車は効果だが装甲車両に絶大な強さを誇る。ソ連領内では最も役に立つユニットだ |
とはいえ、ミッション中の諸条件を満たすための具体的な作戦展開そのものにはRTS的な自由がある。ひとつは「増援ポイント」を使って、どの地点にどの部隊を配置するかという問題だ(シナリオによってはできないこともある)。ゲーム開始時に一定数与えられる「増援ポイント」は、多くの場合ミッション内の条件をクリアすることで増やすこともできるが、基本的には有限だ。
配置するユニットの種類に応じて必要となるポイントは異なり、例えば重戦車は1,200ポイント、中戦車は800ポイント、軽戦車は600ポイント、対戦車歩兵は800ポイント、歩兵戦闘車は650ポイント…という按配で、グレードの高いユニットを配置するほどユニットの総数は少なくなり、また、1種類のユニットにこだわれば対応できない局面もでてくるなど、ちょっとした面白い意思決定の要素として機能している。また、ユニットが失われた場合はその分のポイントが徐々に充填されるという仕組みもあり、不利な戦いをしている場合は部隊の補充をどのタイミングでおこなうか、という判断も重要だ。
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戦術支援の有効活用も重要なポイントだ。敵が集結する前に爆撃で叩いてしまえば、あとの処理は非常に楽になる |
ユニットに関しては、万能兵器として活躍するのが、対戦車ミサイルを搭載する歩兵戦闘車である。この種のユニットは主砲が小口径で連射が効くため歩兵や軽装甲車両に対して強く、またミサイルのスキルを発動すれば戦車など装甲車両に対してもなかなかの打撃力を誇る。そのうえ機動力がよく、歩兵を搭載して移動できるという特性もあるため、戦場のあらゆる局面で活躍できるのだ。
敵に装甲車両が多すぎる場合は重戦車(M1A1)を一定数確保しておきたいところだが、攻撃スキルのHEAT弾は歩兵や装甲のないユニットには使えないため、活躍できる局面はぐっと限られる。戦車にも強く歩兵にも強いのは対戦車ヘリコプターだが、こちらは対空攻撃に対して極めて脆弱であり、ちょっと目を離した隙に死んでいるという体たらく。細かな操作が必須となるため、その点で自身がなければ選びにくいというユニットもあるのだ。
敵に装甲車両が多い場合に意外と活躍するのが対戦車歩兵である。800ポイントと意外に高価ではあるが、歩兵は適当な建物に篭らせることで鉄壁の防御効果を得ることができ、砲撃で建物が破壊されない限りは装甲車両を迎え撃つ要塞のような活躍ができる。通常の歩兵も建物か森林に篭らせれば撃ち減らされにくいので、防衛ミッションでは非常に重宝するのだ。とはいえ、全てのユニットを一度に投入することは、「増援ポイント」の枯渇によりほぼ不可能だ。部隊構成をどうするか、ミッション内容と敵の構成とよく相談し、適切な戦術判断をしていく必要があり、なかなか面白い。
増援に並ぶもうひとつの「ポイント」である「戦術支援ポイント」もRTS的判断の一大要素だ。ミッションによって呼び出せる支援攻撃の種類は異なり、例えば超強力なB-52による絨毯爆撃をいつでも呼び出せるわけではない。広範囲にダメージを与える弾幕砲撃か、1箇所に打撃を集中する精密砲撃か、という判断も面白い要素である。広範囲の攻撃は確実にダメージを与える可能性があるものの、致命傷には至らないことが多い。反面、精密な攻撃は範囲が狭いため移動するユニットを外してしまう恐れが大きいが、当たれば即致命傷、部隊単位で壊滅させることもできる。
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地形がよければ意外と万能選手なのが歩兵各種だ。対戦車歩兵を森や建物に潜ませればほとんど一方的に攻撃でき、防衛戦闘では絶大な威力を発揮する。平地では打たれ弱いので、移動は慎重に行なう必要があるが |
・RTS的ゲームシステムのコンセプトは良し。但し操作の煩雑さに難アリ
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戦車に修理車両を随伴させておいたが、操作が間に合わず撃破されてしまった。スキルが使用可能な状態でも積極的な操作が無ければ無駄になってしまう |
戦略的な展開という、大局的な意味では「自由」のない本作のシングルプレーヤーモードではあるが、各局面においての判断については十分にRTS的な面白さを実現しようとしている。ただし、本作のゲームプレイに大きな不満点があるとすれば、それは各ユニットのスキル使用や想定内の動作もプレーヤーの操作をいちいち必要としてしまう点だ。
例えば歩兵戦闘車に装甲ユニットが迫ってきたとき、TOWミサイルを発射するには攻撃スキルボタンを押して対象を指定する必要がある。また、ユニットの修理ができる修理車両は、修理ボタンを押して対象を選択する必要がある。逆に言えば、プレーヤーが操作しなければ何もしてくれず、ただやられるままなのである。特に修理など比較的パッシブなアクションについては、ある程度でも良いので自動化して欲しかった。例えば特定のスキルに自動化オプションをつけ、それをアクティブにした場合、各ユニットの判断である程度勝手に使用するというものである。
ただでさえ増援、砲撃、移動操作と極めて忙しい操作になるゲームなので、ここまでマイクロマネージを要求されると、戦略や戦術を競う感じではなく、単位時間の操作量を競わされている気になり、RTSにショートカットキーの使いこなしよりも戦術思考の面白さを求めるプレーヤーとしては極めてナンセンスに感じる。操作が遅れたばかりに無用な損害をこうむるのは、ゲーム的な面白さとはほとんど関連がないのだ。このことが、本作の持つ面白さのポテンシャルをかなりの程度殺いでいる気がし、残念ではある。
■ DirectX 10対応のグラフィックエンジン。その実力を検証
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「DIRECTX 10のレンダリングを使用」オプションはWindows Vista上でのみ使用可能。ONにすると「雲の影」が選択できるようになる |
本作を語る上で外せないのはやはりグラフィックの表現についてだろう。都市や農村、森や雪原、詳細に描かれたフィールドのグラフィックは単に見た目だけでなく、爆風で建物は瓦礫の山となり、ナパームで森がなぎ払われるなど、極めてダイナミックな映像表現がゲームプレイにも強い影響を与えている。
この優れた表現を支えているのが本作の優れたグラフィックスエンジンだ。兵士ひとりの姿から戦場全体までをシームレスに表示できるスケーラビリティと共に、最新のシェーダー技術による見事な質感を両立しており、さらに最高の画質設定においても現実的なフレームレートを実現している点で、RTS用グラフィックエンジンとしては最高傑作のひとつと言っても過言ではない。
対応するプラットフォームはDirectX 9世代以上のPCで、筆者の環境(Core2Duo 3.3GHz、GeForce8800 GTX)では1,920×1,080ドットのフルHD解像度、最高画質の設定で常時30fps以上の快適な動作ができた。今回のレビューにあたり、ほとんどのプレイはWindows XP SP2(DirectX 9)にて行なったが、本作のウリのひとつはWindows VistaのDirectX 10に対応しているということである。そこで、DirectX 9とDirectX 10モードにおける違いを簡単に検証してみた。
まず画質について。DirectX 10モードでは大きく3つの改善が行なわれている。ひとつは、ボリュームライティング。雲の間から太陽光線の帯が落ちる様子(サンシャフト)が描かれる。2つめは、ソフトパーティクル。爆発の煙などのエフェクトが他の3Dオブジェクトと重なる部分に、エッジが目立たなくなるようブレンディングするというものだ。3つめは、オブジェクトが作る影のレンダリング方法の変化。DirectX 10に最適化を図ることでシャドウイングのパフォーマンスが向上することは他のゲームでも実証されており、本作ではDirectX 10モードにより、「雲がフィールドに影を落とす」という表現を実現している。
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DirectX 10モードでの映像。雲の間から太陽光線が延びるサンシャフトの効果が現れている。また、地面には雲の影が落ち、フィールドの陰影が増している |
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左がDirectX 9、右がDirectX 10。影の質感はほとんど変わらないが、DirectX 10モードのほうは全体が雲の影に入っているためシーンの印象が異なるものになっている |
さて、気になるのは、Windows VistaとDirectX 10という構成で実際どれくらいのパフォーマンスが出るのか、ということになるだろう。そこで今回は、本作のグラフィックオプション画面にある「ベンチマークを実行」ボタンの機能を使って、Windows XP SP2(DirectX 9)とWindows Vista 64bit SP1(DirectX 10)でのフレームレートを計測してみた。それぞれの画質設定はDirectX 10専用のオプションを外して同等状態としている。また、ドライバはNVIDIA GeForce 8800シリーズ用のForceware 163 WHQLバージョンを使用した。なお、最新の169 WHQLはWindows Vistaではゲームの起動ができなかったので使用していない)。
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Windows XP、DirectX 9での計測結果は37fps |
Windows Vista、DirectX 9での計測結果は32fps |
Windows XP、DirectX 10での計測結果は30fps |
結果としてはWindows XPでのDirectX 9が最速、次にWindows VistaにおけるDirectX 9となり、DirectX 10モードは最も悪い数値となってしまった。同じDirectX 9モードでOSの違いにより差が出るというのが意外だった。OS以外の環境が同じになるよう何度も確認したが、結果は変わらず。理屈でいうと、同等の画質設定であればシャドウイングのパフォーマンスが改善されているはずのDirectX 10モードが最速になるはずだ。しかし結果がそうなっていないということは、ドライバに問題があるか、ゲームの実装に問題があるかのいずれかだろう。今回その原因を突き止めるまではできなかったが、同じWindows Vista上のDirectX 9とDirectX 10において差があるため、本作のDirectX 10モードはまだ最適化が十分ではないということは言えそうだ。
最新OSのエクスクルーシブ機能として鳴り物入りでデビューしたDirectX 10であるだけに、実際にはパフォーマンスが出ておらずゲーマーの利益になっていない現状については悩ましい限りだ。新しいプラットフォームの能力向上と普及にはOS側の努力とアプリケーション側の努力が一体とならねば達成できず、現在のところそれは十分に成されていないと評価せざるを得ない。もちろん、今回のベンチマーク結果が筆者の環境に由来して特殊な数字になってしまった可能性もあるため、今後新たな事実が判明すれば機会を見つけてお知らせしたいと思う。
■ 多人数による協調RTSというユニークな対戦システムを採用。
競技性の高いマルチプレーヤーモードに大きな可能性
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本作のオンライン対戦は、FPS系ゲームのようなユーザーサーバに参加する形式を取る。最大参戦人数は16名だ |
前節で本作の持つ操作性について難点を述べたが、細かい制御を必要とする点について裏を返せば、本作はプレーヤーの持つ操作スキルがもろに反映されるゲームということでもある。そのことを反映し、本作はアメリカのプロゲーマーリーグCPL(Cyberathlete Professional League)にて競技種目に採用されている。CPLでのルールは5人1チームのクラン戦形式で、本作独自のマルチプレイルールを色濃く反映したものだ。
というのは、本作はRTSとしては珍しく、チーム戦ができるシステムを採用している。1プレーヤーが操作できるユニット数が少ない代わりに、ひとつの陣営を複数のプレーヤーが分担操作して、ひとつの大きな戦場を作り出そうというのがそのコンセプトだ。インターネット対戦では最大16名のプレーヤーが8対8のチームにわかれ、それぞれのプレーヤーが歩兵部門、機甲部門、支援部門、航空部門の4つの部門のなかからひとつを担当し、協調して戦闘を進めていくというシステムを採用している。
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RTSでは珍しく最大8名づつのチーム戦が基本。4部門から好きなものを選んで参戦、ひとつの軍を分担してプレイする |
参加人数は最大16人で、ひとりのプレーヤーが最大20程度のユニットを操るので、戦場全体では300近いユニットがひしめき、かつ有機的に連動して戦場が作り上げられるという、非常にユニークな戦場が形成される。マルチプレイにおけるゲームルールの基本は、マップ中に複数存在する占領ポイントを確保、維持し、ゲームモード毎に設定された勝利条件を達成するというものだ。敵軍の殲滅ではなく拠点の占領が基本になっている点は、FPSの「Battlefield」シリーズを想像すると適切だろう。
実装されているゲームモードは占領ポイントの数を競う「Domination」、攻守にわかれ非対称のプレイを行なう「Assault」、占領ポイントからなる戦線を押し合う「Tug of War」の3種類だ。ゲームサーバーは専用サーバーをユーザーが各自に立ち上げるというFPS的な方式をとっており、一般プレーヤーはサーバー検索画面から適切なゲームを選択して参加する。RTSでありながら途中参加も可能で、参加した時点でチーム内の各部門を何人がプレイしているかが表示される。プレーヤーは人が少ない部門を埋めるもよし、強いところをさらに増強するもよし、自由に選択してプレイできる。
レビュー時点では日本語版が未発売のため海外サーバーしか見つけることはできなかったが、最も人気のあるゲームモードは「Domination」だった。最も標準的で遊びやすいルールということだろう。各プレーヤーが担当する歩兵、機甲、支援、航空の各部門のうち、筆者が気に入ったのは支援部門だ。後背の重砲部隊を指揮して超長距離から大火力を叩き込むことに特化したプレイは、当たれば大活躍、失敗すれば味方を巻き込んで大迷惑と、明暗がはっきりと分かれて面白い。敵の占領地に攻撃を集中したあと、機甲部門や歩兵部門のプレーヤーに占領を合図するようなチームプレイも楽しめ、RTSでありながらFPS的な風味が濃く、本当にユニークだ。
日本語版が発売され、マルチプレイがどれほど人気になるかは全く未知数だが、この手のゲームプレイを実現したRTSはほとんど例がなく、コアなゲームファンにも新鮮な体験が期待できるだろう。細かな操作が多量に必要なことから競技性も高く、CPLに採用されたこともあり、日本国内でもオフラインのゲーム大会にお目見えする可能性がある。現在のところ大会などでプレイされるRTSは「Warcraft 3」か「Age of Empire III」か、というレパートリーの少なさなので、「World in Conflict」により、そこに新たな一味が追加されるかも、というのは楽しみなことだ。
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「Domination」ルールをプレイ中。戦場各地で戦いが発生しており、奥地からは長距離砲の射撃が行なわれ、戦線に弾幕を注いでいる。チーム戦における役割分担と連携が非常に楽しいものになりそうだ |
本作はオーソドックスなRTSの方程式から脱却し、独自路線のシステムを採用していることもあり、必ずしも全てのRTSファンを満足させ得るとは限らないが、迫力あるグラフィックス、重厚な演出、シングルプレイのストーリー展開などは現在における最高水準にあると言える。そこを楽しむことができれば大満足の1本になることだろう。このため、オーソドックスなスタイルのRTSを好む層には強くお勧めしない。むしろ逆に、「Call of Duty」シリーズなど戦場のドラマに力点を入れたFPSを好むプレーヤーの方には是非プレイしていただきたいと思う。戦争で紡がれる重厚な物語を、RTSという別の視点で存分に楽しめるはずである。
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【ワールド イン コンフリクト 日本語版】
- CPU:2.0GHz以上のシングルコアCPU(2.5GHz以上のデュアルコアCPUを推奨)
- メインメモリ:512MB以上(1.5GB以上を推奨)
- HDD:8.0GB以上の空き容量
- ビデオカード:DirectX 9.0c対応、ビデオメモリ128B以上(256MB以上を推奨)
- サウンド:DirectSound 100%互換サウンドカード
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□株式会社ズーのホームページ
http://www.zoo.co.jp/
□「ワールド イン コンフリクト」日本語版公式サイト
http://worldinconflict.zoo.co.jp/
□「ワールド イン コンフリクト」日本語版の製品情報
http://gamezone.zoo.co.jp/index.php?main_page=product_info&cPath=105&products_id=437
(2008年4月24日)
[Reported by 佐藤“KAF”耕司]
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