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★PCゲーミングデバイスレビュー★

トップゲーマーのためのハイエンドキーボードが登場
最大のウリのひとつ、高速応答性を検証する

「SteelSeries 7G」

  • ジャンル:ゲーミングキーボード
  • 開発元:SteelSeries
  • 販売元:マスタードシード
  • 価格:22,800円(税込)
  • 対応OS:Windows XP/Vista
  • 発売日:2008年3月5日(発売中)



 マスタードシード株式会社は3月5日、ハイエンド仕様のゲーミングキーボード「SteelSeries 7G」の国内発売を開始した。キーボードの世界には安価なものから値の張る高級品まで様々なカテゴリーが存在してきたが、本製品はゲーマー向けにデザインされたキーボードの中でも最高級クラスの価格帯に位置する。標準価格は税込みで22,800円、実売価格でも2万円近くと極めて高価だ。

 言うまでもなくこの価格は、現在各社より販売されているゲーマー向けのキーボード製品の中で群を抜く値の張り方だ。それだけに、ユーザーによる選択は慎重にならざるをえず、マウスの選択には妥協しないようなPCゲーマーでも「キーボードにそこまでコストを掛ける必要があるのだろうか?」と疑問に感じる向きも少なくないだろう。これはキーボードの違いによるゲームへの影響を数値化しにくく、効果を実感しにくいからという理由もあるだろう。高級ゲーミングキーボードの価値はどこにあるか、本稿では「SteelSeries 7G」の持つパフォーマンスをトータルで考えてみたい。


■ トップゲーマーのためにデザインされた超高級キーボード

実売価格でも2万円近くになる「SteelSeries 7G」。ゲーマーのために何がどうデザインされているのかを検証したい
 一般のキーボード製品では打鍵感のよさや耐久力がウリとなることが多いが、ゲーミングデバイスでも基本は同じだ。2005年末に登場した「Steel Keys 6G(以下『6G』)」の後継としておよそ2年越しで登場した本製品「SteelSeries 7G」では、キースイッチに「6G」でも採用されたCherry Electrical Products製のメカニカルスイッチを採用している。キーの押下圧は全キーで60gとされ、ゲーミング用途としてはやや重めであり、重厚でリニアな打鍵感を実現している。

 「6G」から引き継がれたこのスイッチの最大の特徴は、キー押下が認識されるポイントが、およそ2mmという浅いポイントに設定されているということだ。実際のキーストロークはもっと長く、キーを押下すると5mmほどで底面にぶつかり、通常のフルサイズキーボードと同じ感覚で打鍵を行なえる。しかし実際の入力は2mm地点で認識されるため、ユーザーがキーボードを打鍵してコンピューターに入力が送信されるまでのタイミングが、一般的なキーボードに対してやや速い。これが高速なレスポンスを実現する一助となっている。

 またこのスイッチはハイエンドキーボードに求められる耐久性についても高いスペックを誇っており、およそ5,000万回の打鍵寿命を持つとされている。一般的なメンブレン方式のキーボードがおよそ1,000万回、ハイエンドキーボードの雄とされる東プレのRealForceシリーズ(静電容量無接点方式)がおよそ3,000万回とされているので、それをさらに超える「SteelSeries 7G」は、とても長く使えるキーボードであることは間違いない。これは、ひとつの道具を徹底的に使い込むゲーマーにとっては重要なポイントなのである。

レイアウトは標準的な英語配列で、余分なキーは無い 付属のリストサポートパッドを装着すると、寸法はかなり大きくなる 背面には高さ調節のスタンドがなく、固定のためのラバーパッドが装着されている

・前作「Steel Keys 6G」から大幅強化された3つの新機能

 このように「SteelSeries 7G」は、キースイッチ周りについては2年前の「6G」と同様のスペックを持っている。ここから、後継の製品として強化された3つのポイントについて触れていこう。

 まず第1の強化点は、同時押下可能なキー数が「6G」では9キーまでだったのに対し、「SteelSeries 7G」では無制限にまで拡張された、ということだ。同時押下キー数が増えることによるメリットは明確で、「複数の操作を同時に行なっても間違いがない」ということに尽きる。FPS系やRTS系のゲームであれば、移動操作やコマンド入力をキーボードで複数同時に行なうことが多く、少なくとも5、6キー以上の同時入力が許容されていなければ操作が不正確になる恐れがあるからだ。

 そのため、これまでのゲーマー向けのキーボード製品では同時押下可能なキー数を徐々に拡大してきた経緯があるが、今回の「SteelSeries 7G」では、これを無制限にまで拡張することで、FPSだけでなくRTSやMMORPGなど複雑なゲームでも、トップゲーマーが安心して使えるという結論に落ち着いている。この点については間違いなく「最強」と呼んでいいスペックといえる。なお、このメリットを享受するには本機をPCにPS/2端子で接続する必要がある。USB接続では一部制限があるという。最近ではPS/2端子を備えないマザーボードもあり、結果的に本機が接続先のPCを選んでしまうという点は少々残念だ。

本体背面には2個のUSB1.1ポートとオーディオ端子が付いており、ヘッドセットの装着に便利だ
 第2の強化点としては、キーボード本体に2ポートのUSBポートとオーディオ出力およびマイク入力端子を装備した点だ。USBポートはUSB1.1仕様で、USB2.0を前提としたゲーミングマウスを接続する用途としてはやや心許ないが、USB端子を必要とするコントローラーやヘッドセットなどの接続に便利だろう。昨今のゲーミングシーンではヘッドセットを使わずにゲームを行なうことがむしろ少なくなっているので、多くのゲーマーがメリットを享受できるかもしれない。ヘッドフォンを繋ぐのにも最適だ。

 第3の強化点は、キーボードへのヘッドセット接続時に役立つメディアコントロールキー機能を、標準で備えたことである。本機の左下部には、通常Windowsキーが配置される場所に、「SteelSeries Mediaキー」がおかれている。このメディアキーをF1キーからF6キーと同時押しすることによってメディアコントロールの機能が操作でき、ヘッドセットのボリュームコントロールなどをキーボードから手を離さずに素早く行なうことができる。追加のキーを配置することなくシンプルなレイアウトで実現している点を評価したい。

Windowsキーの位置には特製のメディアキーが付いている F1からF6キーはメディアキーとの同時押しでメディアコントロール操作となる 接続端子はPS/2およびUSB、そしてオーディオ入出力端子と、4本に分かれている


■ 「誇大広告を信じるな!」──価格を正当化するだけのパフォーマンスはどこにある?

取り回しの悪さは本製品の弱点かもしれない。本体から伸びるケーブルは多機能を詰め込んだ代わりに太く、堅く、位置の変更もできない
 前節でご紹介したように、本製品「SteelSeries 7G」は、前作「6G」に比べ、いろいろとハードウェア的な拡張を施されている。それが価格に影響していることになるが、ユーザーが気にする最大のポイントは、本製品が価格相応のパフォーマンスを発揮してくれるのか? ということだろう。SteelSeriesの開発者自身がスローガンに掲げている「誇大広告を信じるな!」の精神に則り、人によっては役に立たないかもしれないUSB端子やオーディオ端子、メディアキーといった追加機能を敢えて無視し、ゲーム用の入力装置としての特性に注目して考えてみたい。

 まずは形状について。キーレイアウトはスタンダードな英語配列であり、奇をてらった部分はほとんどない。メディアキーの存在はやや気になるが、ゲーム中に左手親指でWindowsキーを押せなければ困る! というシチュエーションはほとんどなさそうなので、これは問題ないだろう。しかし、筆者の観点では、特にFPS系のゲームでは非常に利用頻度の低いテンキーを装備している点にやや不満がある。キーボードの横幅を10センチも広げてしまうテンキーは、マウスの操作スペースを広く取りたいユーザーにとっては、あまりありがたくないものなのだ。

本体のみを側面から見たところ。キー面までの高さが結構あり、高さ調節も効かないため、リストレストとの併用が好ましい
 また本機には着脱可能な巨大なリストレストが同梱されている。これを装着したときの形状サイズは幅480mm×奥行き250mmとなり、デスクの上を大きく占有。好みに応じて取り外せるが、これを取り外した状態では、全高がやや高いため、机上においた手首から指先のキーへの段差が大きくなりすぎ、少々チグハグな感じを受ける。もしユーザーの方が筆者と同じ違和感を感じたのならば、小型のリストレストを自前で用意して組み合わせ、ちょうど良い配置を探ってみると良いだろう。

 というわけで、本機の形状に対する筆者の評価はやや辛口に偏ってしまった。これについては個人の好みが大きく左右するところなので、異なる印象を抱くユーザーの方も多くいることと思う。ゆえに、この部分についてはしっかりと自分の目で吟味していただきたい、というのが筆者のメッセージだ。

・特製のソフトウェアで反応速度を比較。高速応答は本当だった!

キーボードの反応速度を測るにはどうすればよいか?
 さて、ゲーム用の入力装置として最も重要とも言える、反応速度について評価してみたい。本製品「SteelSeries 7G」では、反応開始位置が2mmという浅さに設定されているほか、スイッチを18金でコーティングすることにより電気抵抗を最低限に抑え、反応速度の限界を突き詰めた設計になっている。この点が本製品を評価する上で最大のポイントとなることは疑いようがない。

 しかし、冒頭で述べたように、キーボードの特性というのは「ゲームへの影響を数値化しにくい」のである。キー押下圧が60gで、反応位置が2mmで……という言い方は実にもっともらしいのだが、それが実際にどれくらい反応速度を高めてくれるのか、という問いの答えにはなってない。ただ、人間の感覚が絡む反応速度をどのように数値化するか、実のところ非常に難しい問題だ。物理的にキーを押下して画面出力を読み取る装置でもあれば正確に測れそうだが、無いものはしょうがないので次善の策をとることにした。

 そこで今回、反応速度の測定のためだけに専用のソフトウェアを用意してみた。このソフトウェアは反射神経を計測するゲームによく似たものだ。まず、画面を黒で塗りつぶしておく。そして、予測できないランダムなタイミングで画面を黒から赤に書き換える。操作者はそれを見てキーを素早く押し、その入力がコンピュータに伝わった時点までの時間経過を計測するというものだ。この手のソフトウェアにはマウスクリックを用いるものがあるが、キーボードを直に読み取ってくれるものは見あたらなかったため、今回のレビューにあたってプログラムを自作してみた。

今回作成したソフトウェアの画面。文字のみで地味だが、中身は正確な計測機能を目指した。5回1セットの計測を数限りなく行ない、ノイズを減らす……
 今回作成したソフトウェアでは、測定を正確にするため、計測を開始するタイミングを、画面を書き換える命令を発した時点ではなく、画面をフリップしてイメージが実際に表示された地点とした。また、内部処理の速度は秒間1,000回として、ミリ秒単位の測定ができる仕様とした。なお、作成にはXNA Game Studio 2.0を用い、Windows上で実行している。この環境では、キーボード入力はデバイスドライバに限りなく近い部分から読み取られるため、ある程度正確な測定が期待できるはずである。

 ただし最大の問題点は、被験者が筆者自身であるという点だ。画面の書き換えを目で確認して反射的にキーボードを押すという計測を繰り返すわけだが、慣れれば速くなっていくし、疲れれば遅くなってしまうという、人間ならではのバラツキがある。そこで、実験を2日間にわけ、数十回ずつ行ない、その中で最良だった結果順に5セットづつサンプルし、平均値をとるという形で、肉体疲労によるバラツキを極力抑えた。今回、比較のためのリファレンスとしたのは東プレの「RealForce 91BK」である。「SteelSeries 7G」とほぼ同価格帯であり、ゲーミングキーボードとしては人気上位の製品だ。

 結果は次のようになった。数値のそれぞれは、5回1セットの計測平均値である。

  SteelSeries 7G RealForce 91
サンプル1 209 217
サンプル2 202 219
サンプル3 203 220
サンプル4 193 207
サンプル5 201 212
平均 201.6 215.0

(※単位:ミリ秒)

 結果を見てみると、「RealForce 91」に比べて「SteelSeries 7G」の数値がおよそ10ミリ秒強ほど良いということがわかった。両方のキーボードは交互に使ってテストし、数十セット行なったテストの中から最良のものをそれぞれ抽出したため、調子の良さや疲労といった不確定要素はほぼ排除されているはずだ。そこで上記のデータを信用するならば、「SteelSeries 7G」の反応速度が速いという決定的な結論を導くことができる。

 計測条件によって異なる結果が導かれることは容易に想像されるが、平均で13.4ミリ秒という差が出た上記の数値を用いるならば、60fpsで動作するゲームで言えば、1フレームは16.66...ミリ秒であるため、「SteelSeries 7G」は1フレーム速く入力を行なえる、ということになる。

 果たして一般のゲーマーが、その差に気づくかどうか、その差を生かせるかどうか、という点については疑問もあるが、トップクラスのゲーマーにとっては、無視できない特性と言える。「あのシーンで撃ち負けたのはデバイスのせいだ!」と、責任転嫁をする余地を与えず、腕を磨く努力に集中するきっかけを作ってくれることだろう。

 筆者としては、この実験によって、プロゲーミンググレードのハイエンドキーボードを標榜する「SteelSeries 7G」が唱っている高速応答性が誇大広告ではない、ということに確信を持つことができた。このことは、多くの一般的なゲーマーにとっては取るに足らない差なのかもしれないし、むしろキーレイアウトや打鍵感によって他のキーボードを選択することも自然なことだろう。しかし、最良、最善のデバイスを持って対戦に臨みたいという志向をもつトップクラスのゲーマーにとって、「SteelSeries 7G」は値段は張るがその価値のある道具だと言えるだろう。




□「SteelSeries 7G」の製品情報
http://steelseries.jp/?p=294
□SteelSeriesのホームページ(英語)
http://www.steelseries.com/
□「FragYou!」(SteelSeriesの日本公式ブログ)のページ
http://steelseries.jp/
□関連情報
【12月7日】SteelSeries、ゲーミングハードウェア新製品発表会を開催
http://watch.impress.co.jp/docs/20071207/ikari.htm
【11月13日】SteelSeries、プロフェッショナルゲーミングキーボード
「SteelSeries 7G」発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071113/7g.htm
【8月24日】SteelSeries、ゲーミングマウス市場への参入を発表
プロゲーマー協力のもとに誕生「SteelSeries Ikari」シリーズ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070824/gm.htm

(2008年3月28日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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