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Blizzard Entertainmentは、3月10日、韓国ソウル市内のグランドインターコンチネタルホテルで、現在開発中のリアルタイムストラテジー「Starcraft II」の体験イベント「『Starcraft II』 Zerg種族の公開及び試演会」を開いた。 本イベントは、招待されたメディア及びe-Sports関係者向けに開かれたクローズドイベントで、「Starcraft II」(以下、SC2)の「Zerg」のユニットが初めて公開された。「SC2」の試遊台も設置され、メディア関係者にとっても「SC2」を直接触れることができる貴重なイベントだった。 「SC2」は'98年に発売された前作「Starcraft(以下SC1)」の後継タイトルとしてBlizzard Entertainmentが開発している最新作。前作「SC1」と同様、「Protoss」、「Terran」、「Zerg」の3種族が宇宙を舞台に戦争を行なうリアルタイムストラテジーゲームだ。プレーヤーは建物を建てながら、ユニットを生産していき、敵勢力を滅ぼすのがこのゲームの目的である。 「SC2」は、昨年韓国で開催された「Blizzard World Wide Invitational 2007」で、世界初公開を果たしており、本連載でも取り上げた。発表後は、「SC2」の対戦の要となる3つの種族やゲームバランスを中心に情報公開が進み、今回のイベントでは3つの種族のうち、最後まで詳細な情報が明らかにされてこなかった「Zerg」のユニット群が初公開され、ようやく3種族の全貌が明らかになった。さっそくZergの魅力をたっぷり紹介したい。
なお、Blizzardは今回の発表に合わせ、Zergの生態を余すことなく表現したプロモーションムービーを公開したので、ここに掲載する。まずはムービーをじっくり堪能して欲しい。
■ 多数のプロゲーマーが招待され、「SC2」の試遊台は大盛況
Blizzard Entertainmentはこうした韓国市場の特にe-Sports展開に関しては強く関心を持っており、本イベントでは多くの「SC1」や「WarcraftⅢ」のプロゲーマーたちが招待されていた。今後の活動にも繋がる為、プロゲーマー達にとっても「SC2」は最重要タイトルであることを伺わせたイベントだった。 本イベントは「Zerg」の紹介を始め、「SC2」の体験プレイが目玉だった。多数のユニットが追加された「Zerg」だが、韓国のプロゲーマーの支持がもっとも厚い種族でもある。「Zerg」の紹介が終わるやいなや、メディア向けのQ&A時間から、プロゲーマーたちが我先と試遊台に向かい、早速自ら新「Zerg」の使い心地を確かめていた。 本イベントでは短い時間だったが筆者も設置された試遊台で「SC2」に触れることができた。それぞれの種族の個性がハッキリとして、スピーディな展開は「SC2」もそのまま継承しており、プレイスタイルは「SC」に非常に近い作品になっている。これはBlizzard Entertainmentも狙っていたことでもあり、それを見事に実現していた。
試遊台のプレイ画面は撮影が禁止されていたが、プレイムービーや最新スクリーンショットが公開された。本稿ではプレイムービーの内容を踏まえながら、「Zerg」の新ユニットを中心にお伝えしたい。
■ 自爆地上ユニット「Baneling」や敵を転向させる「Corruptor」、「Infestor」が追加
まず、ムービの最初に登場する「Zerg」の新ユニット「Baneling」から紹介したい。「Zerg」の最初の地上兵ユニット「Zergling」を進化させることで生産可能な緑色のユニットだ。生産まではまず「Zergling」の生産建物「Spawning Pool」を建設した後、さらに「Nest」を建設し「Baneling進化」をアップグレードすることで使用可能となる。 「Baneling」は「Scourge」のように自爆によって敵にダメージを与える地上用の自爆ユニットだ。自爆ユニットだと、普通は自爆する代わりに大きいなダメージを与えるユニットかのように思われがちだが、実際はそれほど大きいダメージではない。「Zergling」からの変異コストも安く設定されており、それなりの序盤から生産可能だ。「Terran」の「Bunker」に5機突っ込ませてようやく破壊することができた。 「SC」では「Zergling」を12機連れて「Bunker」を攻撃しても、「Terran」の資源採集ユニット「SCV」よる修理能力でなかなか破壊することが難しかった。多数の「SCV」が修理に回れば、建物の修復時間は短くなるため、「SCV」3~4機でだけで「Zergling」の攻撃は防げたのだ。しかし、たったの「Baneling」5機で「Bunker」を完全に破壊できるのは効率がいい。「Baneling」1体あたりのダメージは大きくないが、大量の「Baneling」をぶつけることで即時に破壊できるわけだ。真っ先に破壊が必要な建物やユニットには「Baneling」を送り込むのが定石となるだろう。 次に登場するユニットは「Corruptor」という対空のみ攻撃可能な飛行ユニットだ。「Corruptor」が敵のユニットに対して一定時間攻撃を加えると、被害を受けた敵の飛行ユニットはそのまま着地して味方の防御用の建物として近くの敵を攻撃し始める。味方の防御建物化してからの正確な性能は不明だが、現段階では全ての敵飛行ユニットに対して有効とのことだ。また、敵ユニット別の防御建物としての性能は同じようだ。 「Corruptor」をある程度数を集めると、どんな飛行ユニットでもことごとく防御建物化していくため、能力だけで言えば空中戦最強とも言える。一方で、攻撃速度は遅く攻撃力もそれほど高く設定されていないようで、多数の「Corruptor」を集められないと効果的でなさそうだ。 次は「Infestor」だ。「Infestor」は敵のユニットを攻撃できない対建物専用のユニットだ。敵の建物にヘドロのような液体をかけることで毒のようなものに感染させ、味方の建物とすることができる。感染させられた建物からは「Infested Marine」という歩兵ユニットを次々に生産させる。「Infested Marine」は移動速度こそ遅いが、ほかの性能は「Terran」の「Marine」とほぼ同じだ。「Infestor」で変化できる建物はなんでもありとのことで、多彩な戦略が生まれそうだ。
本ユニットは「Infestor」は「Zerg」のステルス能力である「Burrow」を使用可能で、地面に潜って敵のユニットが接近した際に隠れてやり過ごすことができる。相手はディテクト機能のユニットがない限り見破ることができない。「Infestor」はさらに「Burrow」の状態のまま移動をでき、敵地内部に侵入しての破壊工作が可能だ。
■ より凶暴になった「Ultralisk」と「SC」とはまったく異なる「Queen」が登場
最後に地面から登場する新巨大ユニットは「Queen」だ。「SC1」の「Queen」とは全くの別物だと考えていただきたい。「SC2」の「Queen」は「Protoss」の「Mothership」同様、1機しか生産できない地上ユニットであり、そのスキルがベースの防御能力に特化されたユニットである。 「Queen」は、「Swarm Infestation」と呼ばれるスキルを使用して一時的に防御建物を建てることが可能だ。マナさえあれば、短時間で多くの防御建物を建てることができる。また「Regeneration」というスキルは建物の被害を素早く回復させてくれる。さらにカーペット上にいる敵に毒ダメージを与え続ける「Toxic Creep」といった多彩なスキルを持っている。 「Swarm Infestation」、「Regeneration」、「Toxic Creep」を上手く使いこなすと非常に堅い防御拠点を築くことができる。更に「Deep Tunnel」というスキルで自分の建物がある場所ならどこにでもテレポートすることもできる。「SC」では「Marine」数機で「Hatchery」が破壊される場面が多く見られたが、新生「Queen」の登場で、そうしたシーンはもはや過去のものとなった印象だ。 ムービーでは登場してないが、「Roach」や「Swarm Guardian」といった新ユニットも追加された。まず、「Roach」は防御力とHPの回復が凄まじく、集中攻撃で挑まない限り倒せるのはなかなか難しい。「SC」では遠距離攻撃ユニット「Hydralisk」の盾役として「Zergling」を使用していたが「SC2」の「Zergling」では弱すぎて、盾役としては物足りない。「SC2」では「Roach」を盾役として使用することで、より安定感のあるユニットの組み合わせができる。 もうひとつの「Swarm Guardian」は、「SC」の「Guardian」を改良した飛行ユニットだ。「Guardian」と同じく長い射撃距離を持つユニットだが、直接ダメージを与えるものではなく「Broodling」という「Zergling」に似た小さなユニットを攻撃時に召喚し、敵のところに飛ばすことで攻撃する。 「Broodling」は「Swarm Guardian」が攻撃するたびに召喚され、徐々に「Broodling」で目標を囲むように攻撃していた。もっとも「Broodling」のHPや活動時間は少ないため、「Marine」や「Goliath」など攻撃速度が速いユニットが多いと効果が薄そうだ。 「Zerg」は優れた生産能力からの物量攻勢が得意な種族だ。「SC」では優れた生産能力を持つものの戦略的なユニットが少ないため、防御の面ではユニットの数任せの戦略でしか対応できなかった。しかし、「SC2」では新生「Queen」の登場で、より戦略的で優れた防御能力を見せてくれるだろう。
また、追加された新ユニットには特殊能力が多く実装されており、物量攻勢をしながらも、繊細なユニットコントロールが要求されることになる。実戦でどういう活躍を見せてくれるか楽しみなところだ。
■ スピーディな展開は「SC」のまま! 強力なユニットが続々と登場する中、気になるのはゲームバランスか
筆者は本イベントの目玉だった「Zerg」をプレイしてみたが、まずなんといっても、ゲーム画面の美しさが印象的だった。攻撃や破壊などのエフェックトはシンプルながらも色が鮮やかでRTSが初めてのプレイでもとてもわかりやすいようになっている。角度を変えたり拡大したりすることも可能で、「WarcraftⅢ」のように好きな視野でプレイすることも可能だ。 インターフェイスの面では1つのグループで32機のユニットを設定できる。他にも「Zerg」の場合、「Hatchery」から生産されたユニットが自動的に選択した場所へ移動してくれる「Waypoint」機能を「Drone」用とそれ外のユニット用の2つに分類しており、プレーヤーの使い勝手を随所に意識して改良が加えられた印象だ。 資源の採取からビルドの上げ方は「SC」とほぼ似ていた。注目したいのは「SC2」はスタート時、基地の建物と資源採集ユニット6機で始まることだろう。「SC」では資源採集ユニット4機からスタートされたが、「SC2」では6機に設定されている。序盤から豊かな資源確保が可能で、よりテンポの速い展開が予想される。 資源採集基地を増やしながら大量の物量で敵を殲滅するという基本的な戦闘の仕方も「SC」を踏襲している。特に「Zerg」は建物の機能が改良されていないため、極めて「SC」に近い戦い方になりそうだ。 この点、「Protoss」は「SC」と「SC2」で大きく戦い方が変わりそうだ。なぜなら「SC2」では、地上ユニット生産建物「Gateway」を「Warp Gate」へアップグレードすることで、任意の「Pylon」へ直接テレポートできるようになるからだ。しかし、「Zerg」はそういった改良がなく、新ユニットの能力によって独自の細かい戦略の変化は予想できるが、「他種族よりユニットを多く建設し物量で勝負」という基本的な戦略コンセプトは「SC」のままだった。 「Zerg」の全種類のユニットを存分に試したわけではないので、新ユニットが実際にどれほどの強さなのかなかなか判別が難しかった。とりわけ多数追加された特殊な能力が使い慣れず、このあたりの判断はかなり難しかった。「Ultralisk」の強さはよりパワーアップしていたのは確かだったが、それ外のユニットの素の攻撃能力は他種族より劣っているようで、初心者のユーザーには苦戦を強いられる種族となるだろう。 試遊台で遊んでいるプレーヤーを見てみると、最もよく遊ばれていたのは「Protoss」だった。「Zealot」と「Colossus」の組み合わせは硬く凄まじい破壊力で地上では最強の組み合わせのようだった。特に「Mothership」のスキルは凶暴そのもので、一時強力過ぎて削除されたスキル「Vortex」(「Black Hole」から改名)が再実装されていた。「Vortex」はどんなユニットも吸い込んでいくスキルで、さらに敵の基地の前に「Pylon」を建設して、生産されたユニットをどんどん送り込むことが可能だ。現バージョンでは最強と思われる戦いぶりだった。 短時間のプレイだったが、「SC2」は「SC」のスピーディな展開をそのまま実現していると感じた。特に大量のユニットが素早く敵ユニットや建物を破壊して行く様は爽快で、「SC1」の感覚そのままだ。「SC1」からのファンには嬉しい動きに違いない。 さらに、スタート時の資源採集ユニット数の増加などの工夫で、よりスピーディな展開を指向している。一方、新ユニットが多く追加されたため、種族間のバランスをどうやって取っていくかが気になるところだ。ユーザーの反応ではバランスに対する声が既に大きくなっているのが、e-Sportsの盛んな市場のニーズに対して、Blizzardはどのように答えてくれるのか注目したい。
「SC2」は今後、韓国で一般のゲームファン向けにも試遊会を検討中だという。多くのプレーヤーたちからのフィードバックも気になるところだ。「SC1」のスピーディーな展開で、戦略性によりボリューム感を増す「SC2」の今後の展開に注目したい。
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□Blizzard Entertainmentのホームページ (2008年3月18日) [Reported by Dong Soo “Luie” Han / 三浦尋一]
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