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2008年夏開始予定
両社による業務提携ではあるが、スマイルラボはスクウェア・エニックスの100%出資による完全子会社。スクウェア・エニックス側からはコンテンツ・サービスの開発支援が行なわれ、スマイルラボがカジュアルエンターテイメント・ポータルサービスを運営。ニフティ側はサーバーや決済システムなどのインフラの提供や、「@nifty」や「ココログ」等マーケティング面での支援を行なう。サービスのビジネスモデルは、基本無料でアイテム課金制を採用する。ゲームをプレイすることでポイントが発生し、アバターの服や家をポイントを消費することで購入できるようになるという。 カジュアルエンターテイメント・ポータルに関しては現状では会社が設立されたばかりで、スクリーンショットなどイメージ素材もない。スマイルラボの代表取締役社長に就任した伊藤隆博氏によれば「現在の完成度は10%程度。この夏にβテストを行なう予定」としている。ちなみに伊藤氏は、USEN、NHN Japan、リアルネットワークスといったゲーム、動画、音楽の各サービス会社を経験してきた経歴を持つ。 発表会の冒頭に挨拶のため登壇した和田洋一スクウェア・エニックス代表取締役社長は「エンターテイメント・ポータルサービスは2年ほど前から認知されていたが、スクウェア・エニックスとしていつスタートさせるんだといった話があった。今回、最良のパートナーを得て幅広いエンターテイメントコンテンツを提供していきたい」と切り出した。
同社はシリアスゲームで学研と組んでSGラボを設立し参入を果たし、ゼイヴェルと業務提携を行ないスタイルウォーカーを設立し女性ファッションサイトを立ち上げている。もう少しゲームよりの話で言えば、「コンチェルトゲート」のようにゲームの開発を行ない運営を他社に任せ、共同で進めていくことで自社の強みをうまく生かせる方法を同社は近年採用している。和田氏は「スクウェア・エニックスは作り込んだゲームは得意だが、自分たちだけで全てやるのは限界がある」とし、ニフティを質の高いメディア産業と表現し、業務提携を行なったメリットをアピール。さらに「他社と提携することで立ち上げをスピーディに行なうことができる」とその利点を挙げている。また他社と組んで行なうことで、自社にはないノウハウの蓄積にも通じるだろう。
その理由はこれまでから和田氏がよく口にしている「コミュニティをメインとしたサービスのありかた」に立脚している。つまり「ファイナルファンタジー」のコミュニティにはそれにあったサービスがあり、今回狙うユーザー層は違うのだという。 和田氏は「一言でブランドと言ってもユーザー側から見たブランドと会社側のブランドというものがある。ユーザーが考えるブランドとずれたものを出すとそれは違うという話になる。カジュアルエンターテイメント・ポータルに『ファイナルファンタジー』を持ってきても、ファイナルファンタジーのユーザーにとってみれば『おれは「ファイナルファンタジー」をプレイしたいのであって、別にポータルがやりたいわけではない』と言われるかもしれない。だから各ブランドがどういうものかわかった上でサービスを行なう」と説明した。「プラットフォームやサービスのパーツ (SNSやブログ) と、コミュニティの方向は別」とこれまでから主張する和田氏の理論がここにも働いている。 得意なブランドとは違った分野ということで不安視する質問も出たが、和田氏は「(ユーザー層が) 違うからやる」とその意義を強調した。カジュアルエンターテイメント・ポータルで狙うユーザー層とはカジュアルにネットを利用する層で、その層が楽しいと思うエンターテイメントコンテンツを徹底的に提供していく。ゲームが中心となるが、伊藤氏は「カジュアルな層でゲームだけをプレイするユーザーは20%程度」とし、ゆくゆくは様々なコンテンツがリンクして行く方向性となるだろう。ちなみに伊藤氏は「ゲーム」ではなく「遊び」と表現することで、ユーザーがより入りやすくする様にしたいようだ。ゲームと言われ身構える人もいるだろうから、そういった意味では細かい話だが面白い発想だ。 具体的には若い世代をターゲットとしており、それはサービスの設計にも現われている。同サービスでは3Dのメタバースのような技術は使用せず、2DのFlashベースの技術を採用する。これは「若い人はまだまだ低いスペックのPCを使用している人が多く、そういった人でも快適に遊べるため」としている。Flashを使用するとできることに限りがあるのではないかと思われるが、伊藤氏は「最新のテクノロジを使用すればネットワーク上での簡単な対戦や協力プレイが可能だ」としている。Flashベースのテクノロジを採用する理由のもう一つは「女性などはダウンロードと出てきた瞬間に×ボタンを押してしまう」とし、その場でプレイできるようになることが重要だとしている。 伊藤氏はさらに同ポータルサイトがプラットフォーム化することを目標としているようで、基本APIを公開することで、ゲーム制作会社に門戸を開き、ゆくゆくは「ネットのファミコン」にしたいという。自社で技術開発を行なう意義も大きく「これまでは広告ひとつとっても表示させることができなかった。自社で開発することで応用できる」としている。当初は同社やスクウェア・エニックス、タイトー、ニフティなど各ゲームの提供が考えられるが、他社からもゲームの提供をしてもらうことを考えているという。伊藤氏は「とりあえずは他のゲーム会社がコンテンツを提供してもいいと言われるようなサイトにしたい」と語っている。 和田氏は「当初はPCだが、幅広く提供していきたい」とプラットフォームは問はないようだが、伊藤氏は「初めはPCのみ。携帯電話では『モバゲー』があるかと思うが、PCとはユーザー層もサービスも違うので、携帯などではSNSを強化するなど変えていかなければならない」とプラットフォームでサービス形態を変えていく意向だ。 一方でニフティの和田氏は「ニフティは長く利用していただいているユーザーさんが多く、ユーザー層も高い。コアユーザー層の子供の世代も登場している」としながらも、10歳代から20歳代の若い世代を取り込むための起爆剤としての「新感覚のビジュアルコミュニティ」となることを期待しているようだ。そのためにインフラはもちろんの事ながら、ココログやSNSのサービスの提供については協力していくとしている。また、ゲーム内で広告を表示させるといった広告メニューについても協力していくという。ニフティとしては現状ゲーム内広告は満広 (全て広告が入った状態を言う) いうことで、インゲーム広告は盛り上がりを見せており、そういった面でも興味を持っている様だ。 1年目の獲得会員数の目標は50万IDということで、ニフティの和田氏は「結構インパクトがあると思う」とコメント。また、海外についても展開を予定しているというスクウェア・エニックスの和田氏は「何も決まっていないが今から視野に入れていきたい」と言いながらも、「(サービスは) 民族固有のものではないと考えている。地域的なカルチャライズは必要だと思うが応用は利くと思う」と自信を持っている。
今回の発表では基本的には具体的なことが発表されていないのでぼんやりとしたものしか見えてこないが、今後夏に向けて色々と発表していくとスクウェア・エニックスでは話している。 □スクウェア・エニックスのホームページ http://www.square-enix.com/ □ニュースリリース http://release.square-enix.com/news/j/2008/03/20080317_01.html □ニフティのホームページ http://www.nifty.co.jp/ □ニュースリリース http://www.nifty.co.jp/cs/07shimo/detail/080314003334/1.htm (2008年3月17日) [Reported by 船津稔]
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