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オンラインゲームとコミュニティの新しい形を考える
シリアスゲーム、次世代CGM、動画宣伝の3セッション

SGラボ制作のFlashゲーム「ウーロン茶物語 ~美味しいお茶を求めて~」
3月14日 開催

価格:ベルサール神田

 「OGC 2008 (Online Game & Community servide conference)」では、オンラインゲームと並んでコミュニティも主題とされている。中でも「ニコニコ動画」関連のセッションが高い人気を集めたが、それ以外にも新たな分野に挑戦している事例が紹介されていた。

 オンラインのエンターテイメントがゲームだけのものではなく、「ニコニコ動画」のような新しい形のものが生まれてくる中で、同時に「mixi」などのコミュニティがオンラインのサービスで欠かせない存在になりつつある。AOGCからOGCという名前になったことも、企業も単純にオンラインゲームを提供すればいいのではなく、既存のサービスに付加価値を乗せたものや、今までとは方向の異なるサービスを模索する段階に入ってきていることを示している。

 本稿では、そういった新たなチャレンジを見せている企業の講演に注目してみた。株式会社SGラボのシリアスゲーム、株式会社シグナルトークの次世代CGM(Consumer Generated Media、消費者生成メディア)、株式会社シーディーネットワークス・ジャパンの動画によるプロモーションという3つのセッションを紹介する。



■ RPG的手法により作られる、SGラボのシリアスゲーム

SGラボ代表取締役社長の前田徹哉氏
まずシリアスゲームを「ある特定の目的を持ったゲーム」と定義し、制作に必要な要素は何かという話が展開された
 SGラボは、株式会社スクウェア・エニックスと株式会社学習研究社が共同で設立した、シリアスゲーム専業メーカーである。SGラボ代表取締役社長の前田徹哉氏によるセッション「新しい学びの形をゲームから シリアスゲーム専業メーカー『SGラボ』の戦略」では、SGラボにおいて、どのような手法でシリアスゲームを制作しているかについて語られた。

 前田氏は最初に、シリアスゲームという定義について、「まだ定義が固まっていないところもあると思うが、ある特定の目的を持ったゲームと定義している」と説明。「America's Army」や「Food Force」といった海外のタイトルや、日本産の「脳トレ」などもシリアスゲームの1つとした。続いてE-Learningとの比較として、「会社に嫌々やらされて終わりというもので、聞いているだけで面白くない。ゲームはインタラクティブで飽きにくく学習効果が高い」とシリアスゲームとの違いを説明した。

 SGラボは、「学ぶ力、すなわち知力を向上し、豊かな生活を想像するためのソリューションとしてのコンテンツを提供する企業」というビジョンを掲げている。過去に敷居が高かったりしてできなかったことを取り返すという学び(Past Recovery)、やりたいことを実現するための学び(Future Making)という2つにより、学びが人生を豊かにするという。

 そのシリアスゲームの構成において気をつけていることとして、前田氏は3つのポイントを挙げた。まず1つ目は、全体像を構造的に理解すること。例えば江戸時代の日本史に関するシリアスゲームを作る際、そこにどんな要素が存在するのかということを、予めクリアにしておく。

 2つ目は、物事を関連性で捉えること。徳川綱吉という人物が、生類憐れみの令というお触れを出した、といった具合に、ロジックツリーを作っていく。これによってプレーヤーが要素を繋ぎ合わせられるようになり、理解しやすくなる。

3つ目は、当事者の立場で考えて理解すること。生類憐れみの令も、発令した徳川綱吉、異論を唱えた水戸光圀、野良犬を殺してしまった町人、殺された野良犬、それを裁く町奉行と、立場によって全く見方が変わってくる。ここには、自己をキャラクタに投影するというRPG的手法が用いられ、当事者の立場で見られるようデザインするのだという。

 この後は、同社が制作したシリアスゲームの紹介とデモを実施。サントリーに提供したFlashゲーム「ウーロン茶物語 ~美味しいお茶を求めて~」では、アドベンチャーゲーム形式で、お茶を作るプロセスを体験できる。前田氏は、「烏龍茶を知らない人はいない。サントリーはその草分けだけれども、競合も増えている。ウーロン茶のうんちくなどより深く知ってもらうことでブランディングする」とゲームの目的を説明した。

 現在はPC向けのFlashコンテンツがほとんどだが、「今後はBtoCのビジネスにも取り組みたい。DSのプロジェクトも動いている。携帯電話なども含め、マルチプラットフォームでやっていこうと思っている」と語っていた。

 さすがは専業メーカーだけあって、学習効果があることと、楽しめることを両立させるためのプロセスが、既にある程度固まっている。作られているコンテンツもスクウェア・エニックスの関連企業に恥じないだけのクオリティを確保している。上記のサントリーのものなどは、同社のホームページからアクセスして無料でプレイできるので、興味がある人は一度触れてみてはいかがだろうか。

E-Learningにはないインタラクティブ性で楽しみながら学べるのがシリアスゲームの特徴だと述べた前田氏。その上で、ゲーム的なアプローチを用いたシリアスゲームの制作のコツを紹介した
同社が制作したコンテンツの紹介も行なわれた。サントリーのような一般企業もあれば、東京都の啓発コンテンツや、医療関係の大学での教育コンテンツまで、幅広く手がけている。「いろいろなところから引き合いをいただいており、どの分野が多いということはまだ見えない」という




■ CGMにユーザーが評価する仕組みを取り入れる「CGRM」

シグナルトーク代表取締役社長の栢孝文氏
WEB2.0で氾濫した情報から、良質なものを見つけ出す仕組みが「CGRM」
 シグナルトーク代表取締役社長の栢孝文氏による講演「STORY TREE CGMのその先へ テレビドラマ連動型ストーリーツリーの試み」では、次世代CGMとも言うべきコンテンツの解説が行なわれた。

 ユーザーが情報を発信するWEB2.0、あるいはCGM、UGC(User Generated Content、ユーザー制作コンテンツ)というものは、既にかなり広まってきている概念。しかし栢氏は、「多数のコンテンツの中から、面白いもの、役立つもの、正しいものをどうやって見つけるのか」という問題を投げかけた。

 そこで考え出されたのが、ユーザーが評価するという仕組み。ユーザーがコンテンツを作るだけでなく、そのコンテンツの価値が順位付けされたり、洗練のプロセスがシステム化されているもの。栢氏はこれをCGRM(Consumer Generated and Rifined Media、消費者生成・洗練メディア)と呼んだ。

 この実例として、シグナルトークが制作に携わった「STORY TREE 100万人で書く1つの物語」を紹介。恋愛ドラマ「オキナワ■男■逃げた」の最終章の続きを、ユーザーが作っていくというもの。ツリー型の掲示板のようなものが用意され、ユーザーが自作のストーリーを投稿できるようになっていた。

 投稿されたストーリーは、1枚の葉っぱとしてツリーに加えられる。このストーリーを他のユーザーが読み、よい内容かどうかを評価する。もし20票以上のよい評価が集まれば、葉っぱに枝がつき、さらにその続きが書けるという仕組みになっている。これによって、ユーザーが評価の高いストーリー、すなわち面白いと思われるものだけを抽出して見ることができる。

 また、いたずらや中傷のような投稿があった場合の対処として、他のユーザーの投稿を削除する機能が用意されている。これは逆にいたずらに利用されないかとも思われるが、「削除にいたる閾値の設定や、木の重み付けによるアルゴリズムは必要だが、99%は善良なユーザー。残り1%がおかしなことをしても対処できる。テストでは良好な結果が得られている」という。

 同社は今後、屈強な男が麻雀に挑むというストーリーをベースに、同様の仕組みでCGRMとして展開する「麻雀小説プロジェクト」も始めるという。これにはコンテンツそのものの面白さを見るだけでなく、同社が提供しているオンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan」のプロモーションツールとしても使いたいという。栢氏は「深く訴求するメディアとして、他にも何かできるのでは」と、今後もさらにアイデアを出していく姿勢を示した。

 栢氏はCGRMの発想について、「あまりに多くのコンテンツが作られれば、淘汰あるいは検索が必要。googleもiPodも、1つもコンテンツを作っていない。コンテンツをいかに扱い、評価し、集積して、価値ある、面白い、楽しい、正しいものを作れるかどうか。CGMが一通りいきわたった現在は転換点ではないか」と語った。

 またクリエイターに対しては、「覚悟が必要。ユーザーがハンディカメラで撮った映像のほうが面白いということも起こりうる」とし、より時代を見据えてコンテンツ制作を行なう必要があるという考えを示した。

 ユーザーが発信者となったことで膨大になった情報の中から、よりよいコンテンツを見つけ出すには、やはりユーザー自身が評価を下すべきだというのがCGRMも思想である。こうなると、プロもアマチュアも関係なく、ただユーザーが下した評価が絶対的なものとなる。確かに今後はCGRM的なコンテンツが増えてくる可能性は高いだろう。その上で、プロであるクリエイターに対して危機感をあおることが、実は今回の講演の主題だったのかもしれない。

ユーザーが投稿し、それを評価する仕組みを取り入れた「STORY TREE 100万人で書く1つの物語」。良質なコンテンツは自動的に生き残り、目立っていくという仕掛けだ。同様の仕組みで、シリアスだけどどこか笑えるストーリーの「麻雀小説プロジェクト」も行なうという




■ オンライン動画配信とゲームの親和性の高さを利用したプロモーション

株式会社シーディーネットワークス・ジャパン ゲーム支援事業部の久保田克彦氏
 株式会社シーディーネットワークス・ジャパン ゲーム支援事業部の久保田克彦氏によるセッション「オンラインゲームの動画を利用したプロモーション手法」では、同社が取り組んでいる、動画のストリーミング配信を利用したオンラインゲームのプロモーションの実例が紹介された。

 株式会社シーディーネットワークス・ジャパンは、親会社のCDNetworksが2000年に韓国で設立され、2005年に日本支社として誕生した。元々はインターネットインフラを扱う企業で、日本では「リネージュ II」などのゲームクライアントダウンロードサービスも行なっている。

 そのシーディーネットワークス・ジャパンが現在取り組んでいるのが、動画コンテンツの提供である。同社は社内にスタジオを持っており、動画の企画から制作・編集、そして配信までを全て自社で行なえる体制を整えている。これを用いて、コンシューマゲームを扱う番組「ゲッチャTV」がスタートし、さらに先日、オンラインゲームを専門に扱う番組「ネットゲッチャ」もスタートした。

 「ネットゲッチャ」では、声優・タレントの井上直美さんをパーソナリティとして招き、実際にオンラインゲームをプレイしたり、1週間分のオンラインゲームの情報をダイジェストで紹介するなどして、オンラインゲームの紹介をしている。

 その番組の例として、JC Global株式会社が提供しているオンラインバスケットボールゲーム「フリスタ!」の番組収録の様子が紹介された。シーディーネットワークス・ジャパンの社員で、長年「フリスタ!」を遊んできたというプレーヤーがコーナーを企画し、実際にゲームをプレイするとともに、スーパープレイを収録した動画を見せながらゲームの内容を解説するというもの。ゲームの動きが見えるとともに、井上さんらが楽しそうにゲームをプレイする姿を見せることで、ゲームの面白さを伝えている。

 エンタドライブ株式会社の「モンスタートレイルオンライン」においては、クローズドβテストの開始前日に番組を配信した。しかし実際にゲームを収録した1週間前には、まだバグが多く残っており、ゲームができていない状態だった。そこで映像を編集し、実際プレイしているように見せた動画を編集したという。こういう対処ができるのも、同社の強みのひとつだというアピールだろう。

 もう1つの面白い点は、リアルタイムエンコーディングによるストリーミング配信を行なっていること。ゲームヤロウ株式会社の「サドンアタック」の番組では、同作の公式インストラクターで、プロゲーマーでもあるKenny氏が出演し、ユーザーとリアルタイムで対戦した。有名プレーヤーであるKenny氏とプレイできるということで、大量のプレーヤーが殺到したという。

 同社は今後も映像制作を行なうとともに、携帯電話での動画配信も考えていくという。日本のテレビでは、生放送のゲーム番組というのは難しいだけに、このようなアプローチはユーザーにとってもメーカーにとっても面白い。もちろん、番組自体を面白くすることが大前提として必要だが、オンラインゲームとの親和性の高さを生かしたユニークな企画には今後期待が集まりそうだ。

オンラインゲーム情報配信番組「ネットゲッチャ」。「フリスタ!」の番組制作を例に、同社の取り組みを紹介した


□OGC 2008のホームページ
http://www.bba.or.jp/ogc/2008/
□SGラボのホームページ
http://www.sg-lab.net/
□シグナルトークのホームページ
http://www.signaltalk.com/
□シーディーネットワークス・ジャパンのホームページ
http://www.jp.cdnetworks.com/

(2008年3月15日)

[Reported by 石田賀津男]



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