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会場:Electronic Arts Asia Pacific本社
今回公開されたのはその一部だったが、そのほかにもGDC2008で公開された「BattleField Bad Campany」、「BattleField Heroes」、「SPORE」、そしてアナウンスのみのタイトルとして、「Battleforge」、「Rockband」、「Need for Speed」の新作2本、「Harry Potter」最新作、Hasbroとのコラボレーション、「FIFA09」、「NBA」最新作などなど、まさに怒濤のように新作が準備されている。 新作のアプローチとしては、3つに大別される。まず、EAの強さの源泉である有力フランチャイズの続編モノ、そして既存のゲームをベースに小額課金決済システムを取り入れてオンラインへの転用を計ったもの、最後が新規IPである。新規IPは、続編モノに比べてビジネス的なリスクが高く、大手メーカーでもなかなか踏み出せないのが現状だが、この点EAは、新規IPの投入を積極的に推進しており、攻めの姿勢をまったく崩していない。 本稿では、「MEET THE MAKERS」で実機デモを見ることができた新規IPの中でも極めてインパクトが大きかった「Mirror's Edge」、「Dead Space」の2本のプレビューをお届けしたい。
■ “フリーランニング”を大胆にゲームに取り入れたアクロバティックなアクションゲーム「Mirror's Edge」
ゲームエンジンは、「BattleField Bad Campany」にも採用されているEA DICE独自開発の「Frostbite」エンジンではなく、「Unreal Engine 3.0」を採用している。その理由について「Mirror's Edge」プロデューサーのTom Farrer氏は、「BattleField Bad Campany」のテーマであるオープンスペースでの大規模な破壊に特化して開発された「Frostbite」エンジンとはゲームのテーマが異なるため、対応することは可能だったが、あえて選ばなかったという。 確かに「Mirror's Edge」のゲームデザインは非常に個性的だ。まず武器を携行せず素手であり、主人公は兵士ではなくランナー(飛脚)である。その代わりに、蹴り、関節技をはじめとした格闘技を扱え、スライディングや前転、低い放物線を描く鋭いジャンプ、壁を使った三角跳びなどなど、人間の身体能力を限界まで引き出した超人的なアクションが行なえる。エクストリームスポーツの一種として“フリーランニング”というものがあるが、まさにそれに着想を得たゲームといっていい。 ゲームのストーリーは、ネットやメールなどがすべて盗聴され個人のプライバシーが皆無となってしまった近未来の監視社会を舞台に、そうした世の中をよしとせず、迫害されながらも生き抜くコミュニティの活動を描いている。主人公Faithは、監視社会における唯一のセキュアな情報伝達手段であるドキュメントの手渡しを行なうランナー(飛脚)として、次のランナーにドキュメントを手渡す役目を担う。世界ではまさに選挙の真っ最中であり、詳細は不明ながら、彼女らの活躍が世界の行く末に重要な役割を果たすようだ。 この世界においては、ランナー活動は情報統制の違反者であり、統制側が発見し次第、武力を持って鎮圧される運命にある。ゲームタイトル「Mirror's Edge」は、ガラス張りの世界の中で、崖っぷちに立たされた彼女らコミュニティの状況を暗喩しており、フィールドの至る所には、全面ガラスの高層ビルがそびえ、主人公はビルの端から端を跳び渡る。そうしたゲームシーンのイメージも含んでいるという。センス抜群のタイトルだ。 このゲームで驚かされるのは、主人公の身体能力の高さと、それをゲームとしてきっちり実現した表現の豊かさだ。ゲームの目的は、敵勢力の鎮圧やターゲットの暗殺ではなく、ドキュメントを目的地まで運ぶことであり、走り、逃げることがゲームの基本となる。このプレイスタイルがまず新しい。 ビルの屋上やビルの構内には、エアダクトや採光口、フェンス、工事用機器などさまざまなオブジェクトが配置されているが、彼女はありとあらゆるオブジェクトを全身を使って突破していく。低いオブジェクトならそのまま飛び越え、フェンスがあれば跳び掴んでよじ登り、多少の高度差なら前転やスライディングを駆使して、スピードを落とさないように駆け抜けていく。FPSにありがちな、不自然な引っかかりがない。これが見ていて極めて気持ちいい。 高さがあるところを落下する際も着地と同時に前転して運動エネルギーを逃がすことでダメージを受けずに進むことができる。前転アクションに失敗すると、着時時の衝撃を示すモーションブラーが画面を覆い、前身運動が一時的にストップしてしまう。着地によって死ぬことはないが、追っ手が迫っている際は、ピンチとなるシーンだ。 ゲームではこうした多彩なアクションを左手の人差し指ひとつで簡単に扱うことができる(PS3ならL1、L2ボタン、Xbox 360ならLB、LTボタン)。L1 or LBで手を使ったアクション、L2 or LTで足を使ったアクションとなる。簡単な操作でアクロバティックなアクションが楽しめるのが同作の大きな魅力のひとつだ。 グラフィックスは先述したように「Unreal Engine 3.0」による極めてハイクオリティなビジュアルを実現している。全体として白と青を基調としており、澄み切った青空と、屹立するビル群の白壁のコントラストが美しい。スウェーデン産らしいセンスの良さを感じさせる。また画面内には、ミニマップやHPバー、テキストウィンドウなど余計な表示は一切無く、まさに彼女の視点が、そのままゲーム視点となる。 この色の表現はゲームデザインにおいて重要な意味を持っている。ビルに配置されているオブジェクトの一部に、赤いオブジェクトが存在する。これは赤色に塗られているわけではなく、彼女だけにそう見えているだけであり、これら赤いオブジェクトは、彼女に取って追っ手から逃れる、あるいは一見行き止まりの地点から先に進む際に、重要な役目を果たしてくれる。感覚的には、絶体絶命の危機の最中に、冷静に周囲を観察して、追ってから逃れる方法を編み出すといった感じで、それをゲーム内で赤色で表現しているわけだ。 Farrer氏の説明によれば、赤いオブジェクト等を活用してアクロバティックな移動を行なっていくパズルパートと、敵に発見され彼女の身体能力を駆使して難所を逃れるバトルパートが交互にやってくるようなデザインになっているという。デモではその一連のシーンを見せてくれたが、パズルパートではビルの屋上で赤いオブジェクトを探して先へ進むという謎解き要素が楽しく、バトルモードでは自動的にBGMが変わり、全方位から銃撃されながら逃げまくるという緊迫感のある展開が印象的だった。最後は、隣のビルにいるランナーにドキュメントを投げ渡し、自分は銃撃をくぐり抜けながら、大ジャンプしてヘリに飛び移るという劇的なシーンで幕を閉じた。極めてイノベーティブな野心作だ。
発売プラットフォームはPS3、Xbox 360、PCで、発売時期は未定。未定とはいえ、すでにかなり高い水準でできあがっているため、そう遠くはなさそうな手応えを持った。また日本発売についても未定としているが、海外タイトルの日本展開の判断基準は、日本ユーザーに対する適合性、過度な残虐表現の有無、ローカライズの難度の3点で、日本での発売はまず間違いないと思われる。EAのイメージを一新する極めて有力な新IPと言えそうだ。続報に期待したい。
■ 無重力世界の極限の恐怖。EA自社開発のSFサバイバルホラーアクション「Dead Space」
ゲームの舞台は、地球の資源が枯渇し、宇宙に活路を求め、各国は宇宙開拓へと乗り出していった遙かな未来で、USG Ishimuraという名の企業の鉱石採掘船が救難信号を発したことから、エンジニアである主人公Isaac Clarkeが調査に乗り出すことになる。そこにはウィルスに冒されて死に絶えたクルー達と、無数のむごたらしい姿をしたエイリアン達がうごめく世界に変わっていた。Clarkeは生き残りを掛けて、エイリアン達と戦っていくことになる、というストーリー。 サバイバルホラーというと2007年8月に欧米で発売された2K Gamesの「BIOSHOCK」が挙げられる。「BIOSHOCK」も水中都市の中での生存をかけた戦いという設定のユニークさが際だっていたが、「Dead Space」も孤立無援の宇宙空間という設定のユニークさがあり、これが作品の個性に繋がっている。シングルプレイ専用のゲームという点でも共通している。 「Dead Space」では、宇宙の無重力世界という設定を活かし、重力制御装置を駆使したパズル(「ゼルダの伝説」における磁力装置と磁力床のパズルに近い)や、宇宙船の外郭における、無重力空間を飛翔して次のエリアに渡るといった演出もある。飛ぶ先を誤ると宇宙空間に投げ出されるため、慎重に飛ぶ必要がある。この無重力空間では、機材や死体が浮遊しており、基本的に無音の世界となっている。重力空間に移ると、機械の騒音や物音が聞こえ、それとわかるようになっている。このあたりの演出は同作の大きな魅力と言える。 ただ、ゲームプレイの基本となるのは、大小様々な容姿をした異形の生命体とのバトルだ。エイリアン達は人型をしたものもいれば、四肢を地面に着けた動物型、群がってまとわりついてくるコウモリ型、船内をぶち破って一部を露出させてくる大型までさまざまな容姿をしたものがいる。 彼らに共通しているのは、船内の数少ない生息者である主人公を執拗に狙ってくるところだ。捕食するためなのか、寄生するためなのか、そのへんはよくわからないが、逃げ切ったと思っても、彼らだけが利用できるエアダクトを通じて襲いかかってきたり、とにかく執拗である。そしてこの“執拗さ”の表現がもの凄いのだ。 エイリアン達は、主人公の攻撃を受けて体の一部が欠損しても、死に絶えるまで決して襲いかかるのを辞めようとしない。エイリアン達の攻撃本能を止めるためには、首を飛ばし、四肢を切断し、足で粉砕するなど、徹底的にバラバラにする必要がある。首が飛び、片足が切れても、這いずりながら襲いかかってくる敵の執拗さと、生き残るために敵の四肢を切断し、足で踏みつぶして粉々にする徹底的な表現は、目を背けたくなるような凄惨さに満ちている。 2006年11月に欧米で発売された「Gears of War」では、チェンソーで五体をバラバラにするという残虐表現が話題を集めたが、「Dead Space」はその衝撃を遙かに上回る。この点について「Dead Space」プロデューサーのRich Briggs氏に聞いたところ、「極限の恐怖を表現した結果こうなった。肯定的に捉えて欲しい」と答えてくれたが、今の日本のレーティングのレギュレーションでは、ゲームコンセプト的に発売は至難と言えそうなタイトルだ。 ちなみに同作についてはまだ謎が多い。船内に生存者はいるのかどうか、なぜ1人で調査しているのか、そもそも何が原因でこのような事態になったのか。こうしたストーリーのカギを握る要素は、今後発売に向けて順次公開していくという。 発売プラットフォームはPS3、Xbox 360、PC。発売日は欧米で10月30日を予定。先述したように人体の欠損表現を認めない日本では、発売は難しいが、「Gears of War」が発売できたようにZ指定で発売される可能性はある。同作の残虐性は、猟奇性を煽るものではなく、ホラーゲームには欠かせない恐怖表現であり、ぜひ発売にこぎ着けてほしいものだ。
(C) 2008 Electronic Arts Inc.
□Electronic Arts(英語)のホームページ (2008年3月10日) [Reported by 中村聖司]
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