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会場:サンフランシスコ Moscone Convention Center
セッションの終盤には外部初公開の実機デモを行なうなど、開発の進捗も順調に推移しているようで、シリーズ初のダークサイドを扱ったストーリー、そしてダース・ベイダーの隠された弟子が主人公など、「スター・ウォーズ」ファンならずとも注目してしまうホットな話題のつきない盛りだくさんの内容となった。 ■ 組織を一から再編しなおす難しさ、次世代機への挑戦など、あらゆる困難を語る 今回の講演では、まだ開発中である「Star Wars The Force Unleashed」のチーム立ち上げとテクノロジーパイプラインの確立、特にチーム全体あるいはLucas Artsとして、どのようなことに挑戦してきたかという内容が語られた。 「Star Wars The Force Unleashedの開発はLucas Artsの組織再編と同時にスタートしました」と同社のHaden Blackman(ヘイデン・ブラックマン)氏が語り始めるところから講演が始まった。2004年後半米Lucas Artsはいったんスタジオを全て白紙に戻し「スター・ウォーズ」や「インディー・ジョーンズ」などの各IPの新規プロジェクトが再度立ち上げを行なうかなり大胆なリストラクチャを断行した。 Haden Blackman氏は新しい「スター・ウォーズ」ゲームのプロジェクトリーダーに就任し、まず最初に直面したのはゲームジャンルの模索と対応するプラットフォームの選定で、プロジェクトが立ち上がった当時は「新しい『スター・ウォーズ』ゲームをつくる」という非常に漠然とした概要のみが決まってたが、イベント重視で既存のタイトルとは異なる内容にしよう、という考えはあったようだ。 プラットフォームに関してはできるだけたくさんの機種をフォローするためPS3およびXbox 360はLucas Arts社内で、PS2・PSP・WiiはオーストラリアのデベロッパーKrome Studios(「Ty the Tasmanian Tiger」というアクションゲームで有名)に、DS版をn-Space(GC版「Geist」など)が担当するプラットフォームごとに分担をする体制を構築した。 現行機種向けの開発を外部スタジオに任せることでLucas ArtsはPS3/Xbox 360両プラットフォームに特化でき、次世代機初の「スター・ウォーズ」ゲームに集中する環境を整えることができた。2004年8月にはチームメンバーの編成がスタートしたが、新機種ということで開発機が入手できる翌2005年の夏までの約1年間は10名程度のチーム体制にせざるを得なかったことを氏は語っている。
開発は現在進行形で続いており、チームメンバーも増え続けているがPS3/Xbox 360の開発は数あるチャレンジの中でも最も大きく困難なもので、特にPS3の場合はメモリまわりの仕様がXbox 360と異なるため手を焼いたという。そのため、PS3専任のスタッフを多数外部からリクルートするため、当時でも限られていたPS3開発経験者を世界中で探しまわり、現在も引き続きリクルーティングをかけているそうで、新機種への開発はデベロッパー側にとても大きな負担がかかることを伺い知ることができた。 ■ ウーキー族の戦士を主人公に据えようとしたらルーカス氏に怒られる Lucas FilmおよびLucas Artsは2005年の夏に拠点をカリフォルニア州のプレシディオに移して映画製作部門・ゲーム部門が同じ場所で制作を行える環境が整うと、新しいゲームのコンセプトづくりに着手をした。熱心な「スター・ウォーズ」ゲームのファンだけでなく、映画のファン、そして一般のゲームファンにも受け入れられるコンセプトが必要とされ、約半年の期間をかけて様々な事例が検討されたことを、スライドでコンセプトアートを多数紹介しつつ語った。 ゲームのコンセプトの最終的な決定は全てジョージ・ルーカス氏の承認が必要で、プレーヤーがジェダイとなって、ライトセイバーを駆使したゲームをプレイしたいというユーザーからの調査結果を反映させるという路線は崩さないことにした。 ストーリー設定は、打ち合わせの席上でルーカス氏は2人のキャラクタが語らい、良い関係を保つということを提案してきたが、後日ブラックマン氏は戦闘力が非常に高いウーキー族のスーパーウォーリアーが活躍する話を提案したところ、ルーカス氏から1時間あまり懇々と「いかにメインキャラクタが話しをすることが重要だと言ったのに、どうしてそういうコンセプトを出すのか、キャラクタが話をできなきゃ困るじゃないか」と言われてしまったそうだ。 ちなみに補足をするとウーキー族というのは「スター・ウォーズ」で登場する種族のひとつで映画の登場人物としては「チューバッカ」が有名だ。一度でも映画を観たことのある人であれば、ウーキー族の主人公が会話をしてストーリーを進めていくことは、「スター・ウォーズ」の世界観を作り出す側として採用することが難しいのは理解いただけるだろう。 そこでブラックマン氏は、いかにして戦士として強い力を持ったジェダイが活躍するゲームにするか再びコンセプトを練ったところ、映画のエピソード3と4の間をつなぐ話として、ダース・ベイダーの隠された弟子を主人公にしたコンセプトを考え付き、内心ルーカス氏に却下されるのを覚悟しつつ、更にコンセプトを練りこみ、限られたスタッフでプロトタイプの開発を大急ぎで進めることになった。 プロトタイプの完成後、ルーカス氏に提案を行なったところ、最終的には2005年の夏に、「Star Wars The Force Unleashed」のゲームコンセプトが承認され、現在も開発中である本作の基本的な土台ができあがった。この時点で初めてチームづくりとスタジオづくりが本格的に稼動し、会社のトップがリクルーティングのマネージャを兼ねて毎朝8時半から各部門とミーティングを行ない、つぶさに状況確認をして各分野のスタッフの増強を適宜進めている。この時期は会社の第一目標が「人材の確保」だったという。
2007年の時点では221人をスタジオ全体で採用し、現在もリクルーターを通してスタッフを集めており、現在進行形でスタジオの増強を行なっており、場合によっては国内外を問わず出張し、必要な人材確保に努めていると語った。
■ フォース・プッシュで新時代の「スター・ウォーズ」ゲームを! チームとしては「今までとは違った趣向の『スター・ウォーズ』にしよう」という明確な意思があり、ダークサイド、フォースの暗黒面を取り扱った話から、ゲームをスタートさせ展開することになった。ダース・ベイダーが若い頃から誰かを弟子として選んでいて、公にはされなかったという設定がつくられ、それに伴いストーリーやキャラクタがつくられることになった。 ゲームデザインに関してはフォースの力をツールとして使おう、ということで主人公が使えるフォースに「フォース・プッシュ」という能力を設定した。これは単に目の前にいる敵を跳ね飛ばすだけでなく、主人公の全方位にあらゆるものを持ち上げて押し出すパワーで、開発途中のインゲーム映像が公開されたが、ストームトルーパーを吹き飛ばして飛来してきたタイファイターにぶつけたり、AT-ATを横倒しに倒したりとプレーヤーの機転で敵に多彩な攻撃を仕掛けられるシステムになっている。 攻撃以外にも敵の施設内に潜入し、敵兵士を殲滅するミッションが実演された際には施設の分厚い扉をフォース・プッシュで押し曲げることで先に進んだり、押し曲げた扉から敵の追っ手がこないよう、更に反対側に押して扉を塞ぐといったアクションも可能になっており、まさに「フォースの力をツールとして使う」を具体的に実践した例を実機で動いている物として見ることができた。 このフォースプッシュは物理効果を取り入れており、Havokの物理エンジンとPixelux Entertainmentと共同で開発したDigital Molecular Matter (DMM) という技術を組み込むことで、フォースプッシュ発動に伴う様々な物の壊れ方を表現している。 このDMMがどのような視覚的効果をもたらすかは「Star Wars The Force Unleashed」公式サイトのTech Infoページから動画で確認をすることができる。板が真っ二つになったり、ベリっとささくれができた状態で割れたりと、DMMの持つ能力の一端が収録されているので、参考にしていただきたい。
物理効果を意欲的に取り入れたゲームとしては既に「Half-Life 2」などの先駆者がいる訳だが、これが「スター・ウォーズ」の世界に取り入れられたところを実際に見てみると、なかなか面白そうだ。映画でも複数のシーンでフォースの力によって人が飛ばされる個所が出てくるが、より派手に、そしてライトセーバーを使い敵を倒す様子は、ブラックマン氏が当初想定したスーパーウォーリアーの思想は、基本的な設定として残されていることがよくわかる。
■ 成功するんだという統一する目標が組織を強くする そしてブラックマン氏が本セッションにて強調していたことが明確な意識統一だ。ゲームの開発を進めるにはマーケティングやパブリシティ、営業、ファイナンスなど開発者以外のゲームを消費者に売り込むために必要なスタッフ達に「Star Wars The Force Unleashed」とはどういうゲームなのか、コンセプトの理解と開発プロセスを共有することで、 開発・非開発職の分け隔てなく各部門が本作を成功させるための責任を担って業務を遂行するようなシステムづくりを行なっている。 氏は更にチームが大きくなり、またLucas Artsの次世代ゲームタイトルのトップバッターとなる本作の開発に携わることで、スタッフが受けるプレッシャーも比例して大きくなるため、2~3週間に一度各部門が集まりミーティングを実施しており、そこでは各部門の進捗報告だけではなく、今何がうまくいってないのかという点の洗い出しや、課題に基づいて突っ込んだ話し合いをすることで、意思決定をしていくと語っている。
このミーティングは、何か克服しなければいけない時に、他のチームから様々な意見を受けたり、ミーティングごとにデモなどの何かしらの成果を報告しなければならず、バグなど大きな問題を抱えている時もみんなに見てもらわなければいけないため、最初は戦々恐々としていたが、結局のところ何かを解決して円滑に開発を進めるには良いことも悪いことも隠さず、仕事内容の透明性を常に確保することが一番確実ということだった。
■ 外部初公開の開発途中版による実機デモを公開!! 最後に本セッションで初めて開発途中のバージョンの実機によるデモが行なわれた。舞台は、ある帝国軍施設にダース・ベイダーが主人公を呼び、この施設にいるジェダイを殺すように命令する。しかし主人公がジェダイを殺害したところを帝国軍に見られる訳にはいかないため、施設にいる全兵士をも抹殺しなければならないという過酷なミッションだ。 画面はライティング効果などがまだ完成していないため、本来の画面とは異なるものにはなっていたが、HDクォリティで展開される新しい「スター・ウォーズ」ゲームの一端を直接見ることができた。カメラワークは主人公の戦いぶりが強調されるように効果的に設定されており、タイファイターが目前に飛来してくるなど、演出面もなかなかのもの。 今までのシリーズ中、バウンティーハンターのジャンゴ・フェットが活躍する「Star Wars Bounty Hunter」や共和国のクローン兵士が活躍する「Star Wars Republic Commando」など映画中どちらかというと悪役側になるキャラクタを主役に据えたゲームはいくつか存在しているが、何よりも今作はシリーズ初となるダークサイドの主人公が活躍するゲームであり、しかも主人公の師匠がダース・ベイダーとなると、非常に注目度が高く、会場も最も広い部屋で行なわれたにも関わらず、ほとんど満席で立ち見が出る程だった。
どちらかというと開発者寄りというよりは万人が聞いて理解できる話の内容で、スタジオの再立ち上げや次世代機への対応がいかに困難かが、よく理解できるセッションだった。特にPS3対応に関しては現状はXbox 360と変わらない環境になっているという話だが、開発着手当初は、外から経験者を雇わないとお手上げ状態だったようで、現在PS3専任スタッフがスタジオ内に組織されているらしく、異なるアーキテクチャのプラットフォームで並行して解析・開発を進める大変さが強く印象に残るセッションだ。 (2008年2月25日) [Reported by Game Dude]
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