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ダレット、「“ダレット元年” 事業戦略発表会」を開催
「ダレットワールド」、「ストリートファイターオンライン」などを発表

1月16日開催

会場:ラピロス六本木

 株式会社カプコンと株式会社ゲームズアリーナの合弁会社である株式会社ダレットは、1月16日、都内にてダレットの事業戦略発表会を開催した。同社が事業戦略を発表するのは、2006年9月の東京ゲームショウカプコンブースで行なわれた設立発表会以来、1年4カ月ぶりとなる。発表会にはダレット代表取締役社長を務める稲船敬二氏が登壇し、半ば独演会のような形で、「ダレットワールド」、「ストリートファイターオンライン マウスジェネレーション」という2本の新作を中心に、ダレットの今後の事業戦略が紹介された。


■ ダレットの柱は「ダレットワールド」。ゲームポータル事業とオンラインゲーム事業も継続

カプコン常務執行役員開発統括本部長兼オンライン事業統括の稲船敬二氏。今日の発表会ではダレット代表取締役社長として登壇した
「これがやりたいために会社を立ち上げた」という稲船氏肝いりプロジェクト「ダレットワールド」
ダレットワールドの世界の一部。ゾーン切り替え式になっており、ゾーンの先はSFや古代など全く異なるテーマにすることも可能だという。将来的には電車、船、車といった移動手段で遠方にも旅することができるようになるということだ
 ダレットは、2006年10月にカプコンとゲームズアリーナ(ドワンゴの子会社)の共同出資で生まれたゲームポータル専門会社。東京ゲームショウ2006では、ローンチタイトルとして「ゲーセン・ドット・コム」と「モンスターハンターフロンティアオンライン(MHF)」が発表されたが、「ゲーセン・ドット・コム」は再開発に伴い、カプコン本体の事業として移管されている。

 現在ダレットは実質的に、「MHF」の課金決済代行業としてのみ機能しており、単体で利益を生み出すサービスは提供していないのが現状だ。今回の事業戦略発表会のテーマ“ダレット元年”には、そうした現状に対する脱却の想いが強く込められており、発表会では怒濤のように新サービスが発表された。

 事業戦略のプレゼンを担当したのは、ダレットの生みの親であり、カプコン常務執行役員としてカプコンのコンシューマゲーム事業の舵取りを担当している稲船敬二氏。発表会は、「ロックマン」のデザイナーを出発点に、「バイオハザード2」、「鬼武者」シリーズ、「デッドライジング」、「ロストプラネット」と稲船氏の代表作が紹介され、「カプコンのトップクリエイターが仕掛ける新オンラインエンターテインメント」という流れで稲船氏が登壇した。

 ダレットそのものを語るのは今回が初めてということで、やや緊張の面持ちで登場した稲船氏は、「20年のキャリアをふまえ、ゲームを使ってもっとおもしろいことがしたい。コントローラでやるだけがゲームじゃない。ゲーム作りのノウハウを使ってインターネットをもうちょっとおもしろくしたい」と切り出した。

 稲船氏自身は、現在のインターネットサービスは、まだ遊び、おもしろみの部分が十分ではなく、インターネット上のゲームの窓口であるゲームポータルも同様にまだ発展途上だという認識を持っているという。「これをゲームメーカーがやったらどうなるか、稲船がやったらどうなるか」ということを実証したサービスが「ダレットワールド」となる。

 ダレットの事業は、「ダレットワールド」を柱に、現在のダレットの公式サイト上で運営されているゲームポータル事業、そして「ストリートファイターオンライン マウスジェネレーション」のような新機軸の自社開発タイトルも含めたオンラインゲーム事業の3つが中心となる。事業形態としては親会社のカプコンやゲームズアリーナのようなゲームメーカーよりむしろ、NHN Japanやガンホーのようなオンラインゲームパブリッシャーに近い。収益モデルも、ユーザーからの売り上げだけでなく、広告モデルやアフィリエイト、ライセンス事業など幅広く手がける方針。

 ゲームポータルとしてのダレットは、現在「MHF」の登録ユーザーを中心に55万人のユーザーを抱えているが、「ダレットワールド」オープン1年後は100万人、2010年には300万人の会員を見込む。カプコングループ、ドワンゴグループと比較してもかなり規模の大きいビジネスを想定していることを伺わせる。


■ 2.5Dの味わいのある3Dコミュニティサービス「ダレットワールド」

「ダレットワールド」のアバター“ダレオ”と“ダレコ”に囲まれながら、内容の紹介を行なう稲船氏
デモでは、稲船氏とまったく同じ衣装のアバターを披露。アクセサリーから、重ね着の下に服まで同じになっている。現実世界同様、シャツをズボンから出したり、入れたりといったことまでできる
フォトアバターシステムで、非常に個性的なアバター達。実装はダレットの許可性となるが、写真を取り込めることで無限のバリエーションがうまれる
ダレットワールドの目的のひとつとなる遊べるコミュニケーション機能のひとつ「メッセージ魚」。これらの工夫により、未知の人とのコミュニケーションのハードルを下げていくという
 ダレットワールドは、稲船氏自ら「これがやりたくてダレットを立ち上げた。3年掛かっている」というほどの肝いりプロジェクトで、ダレットのビジネスのコアとなるエンターテインメントサービスとなる。基本的なデザインは、仮想世界と無数のアバターが存在する3Dコミュニティスペースであり、そこから他のオンラインゲームに行くための待合室のようなビジュアルロビーではない。「ダレットワールド」はポータルビジネスの延長線ではなく、純粋なエンターテインメントサービスとなる。

 この空間に介在するのは、メーカーとユーザーに加え、参画企業の存在が挙げられる。ビジネスモデルは基本プレイ無料のアイテム課金制を想定しているが、カジュアルゲームやMMORPGのように、何か特定の目的に向かって大量に、あるいは定期的に有料アイテムを利用するというデザインではないため、BtoCのビジネスとしては構造的に成立しにくい宿命を抱えている。

 そこで「ダレットワールド」では、企画当初からメーカー、ユーザー、参画企業の三位一体での展開を想定し、アフィリエイト広告や実在商品のアバターアイテム化、マーケットリサーチといったBtoBのビジネスを積極的に展開していく方針としている。

 BtoBといってももちろんユーザーにもメリットがあり、モノを買ったり、チケットを予約したりといったEコマース的なサービスや、アパレルの新製品のアバターを先行試着できたり、メーカーからの情報提供によりトレンドがキャッチアップできたりなど、リアルとの融合による各種サービスが無料で受けられるという。

 具体的なプランとしては、ツタヤオンラインとの連携により、TSUTAYA Onlineの作品データベースを「ダレットワールド」でも参照できるようにし、作品の検索やレビューを書くことができる企画を考えているという。アプリケーションを切り替えて、Webブラウザでやればいい話とも言えるが、各人が個性的なアバターによって視覚化された空間でわいわいやるというところが稲船氏の言う「あそべるコミュニケーション」というわけである。

 稲船氏は、上記のような無数のフラッシュアイデアを披露したが、最終的な目標は日本版「セカンドライフ」のような、それそのもののメディア化だという。「セカンドライフ」は参画企業のユーザー不在の強引な施策により見事に瓦解したが、「ダレットワールド」は運営元として三身のバランスをうまく取りながら、Yahoo!やGoogleを利用するような感覚で毎日使って貰えるようになればいいという。稲船氏のアプローチは現在、IT産業ではアプリケーションのWeb化という形で進められつつあるが、「ダレットワールド」は遊び、楽しみのために、そのトレンドにあえて逆行する形を取るところがユニークだ。

 さて、「ダレットワールド」の肝心の中身は、パステル調の明るい3D空間に、ペーパークラフトのような2.5Dの町並みとアバターを現出させた、非常にユニークな世界観となっている。稲船氏が「リアルでもなく、オタクでもなく」というポップな雰囲気は、要求PCスペックの低減と、温故知新的な温かみを見事に両立させている。BGMは、伊藤賢治氏が担当しており、フィールドのテーマは柔らかで暖かい雰囲気の曲だった。

 アバター用の衣服は、フォトアバターと呼ばれる独自のサービスを採用し、実在の服やアクセサリーをそのままアバターアイテム化することができる。デモでは、アパレルショップに入り、商品を着けていくと、稲船氏とまったく同じ格好のアバターが完成するという演出も行なわれた。なお、このフォトアバターは、衣服だけでなく、1人1部屋ずつ与えられるプライベートエリア「マイルーム」の家具、背景などにも適用できるという。

 実際のプロセスは、「フォトアバターツール」と呼ばれる専用の外部アプリケーションを利用して作成を行なう。サーバーへの実装は、著作権の問題から、運営側のチェックを経て行なわれるという。個人でも利用可能で、ショップを開けるというが、どちらかというとアパレル企業の参画を意識した仕様といえる。

 コミュニケーション機能は、メッセージ魚が紹介された。魚の形をした便せんにメッセージを書いて放流すると、誰かが釣り上げてそのメッセージが未知の第三者に伝わる。ほかにもメッセージ蝶々やメッセージボトルといったアイデアがあるというが、稲船氏によれば、現在のインターネットサービスに足りない部分はこうしたちょっとした遊びの部分であり、こうしたコミュニケーションのタネをいっぱい蒔くことがダレットの仕事だということだ

 稲船氏のフラッシュアイデアは上記に留まらず、BGMもアバター、商品にBGMが付いてくる、12時1分から3分まで売っているアイテムがあってもいい。ショップに店員を配置することで遊びの中でマーケティングができるなどなど、時間が許せばいくらでも出てくるといった印象だった。

 「ダレットワールド」のサービススケジュールは、明日1月17日よりクローズドβテスト(CBT)の募集を開始し、2月上旬に第1回CBT、2月下旬に第2回CBT、3月中にオープンβテスト、そして4月に正式サービス開始となっている。稲船氏は「殺到してくれればいいな(笑)」と抱負を述べたが、ゲームメーカーが手がける3Dコミュニティサービスのポテンシャルに期待したい。

【ダレットワールド】
「ダレットワールド」のプロモーションムービーより。オンボードのグラフィックスチップでも動作する軽さがウリだが、ライティングとシャドウイングはしっかりしており、フォトリアルなトゥーンレンダリングといったセンスのいい3Dグラフィックスになっている

【フォトアバター】
写真でも対象がペーパークラフトなら加工せずにそのままアバターアイテムとなる。コロンブスのタマゴ的な発想のアイデアといえるが、「フォトアバターツール」がどのような形でユーザーに提供されるのかが気になるところだ

【マイルーム】
自宅を真横から覗いたような漫画チックな「マイルーム」。壁紙やアクセサリーを変えるだけでマイルームの雰囲気を丸ごと変えることができるのがユニーク。3D空間ではないのは寂しいところだが、コミュニティ機能としては必要十分と言える


■ 「SFO」で、「ストリートファイター」の楽しさをより多くのゲームファンに提供

必殺技に写真を入れたり、コメントを挿入したりして相手を威嚇する。「吹き出しコンテスト」的な楽しさから、ウケ狙いなど、楽しい方向に無限のバリエーションが考えられそうなアイデアだ
胴体だけ春麗で、頭と腕と脚はリュウ。ボーンは男女共通なので、前キャラクタ、全部位を自由に組み合わせられる
登場キャラクタたち。左から順にリュウ、春麗、ヒコ、テイラン。金庸キャラクタはいわゆる“燃え”系のキャラ。「ストリートファイター」の世界観にもすんなりとけ込めそうだ
 続いて紹介された「ストリートファイターオンライン マウス」は、ダレットの「ダレットワールド」に並ぶもうひとつの柱であるオンラインゲーム事業の待望の自社開発タイトルとなる。ゲームの概要については、本日掲載したニュース記事を参照していただきたい。以下では、稲船氏の発言から「SFO」の魅力に迫ってみたい。

 稲船氏は、プロモーション映像の紹介を受けて、「カプコンと言えば『ストII』の名が必ず挙がる。『ストリートファイター』を多くの人にプレイして貰うために、オンラインゲームとして復活させることを考えた。そこで単に格闘ゲームとして復活させるのではなく、カジュアルな『ストリートファイター』として復活させ、昔『ストII』をやってて『今はもう無理だよね』という人にお勧めしたい」と「SFO」の企画コンセプトを紹介した。

 続けて稲船氏は、アバターの組み替えや着せ替え、そして必殺技にネコの写真をカットインするといった「SFO」のウリを紹介しながら、「普通に『ストリートファイター』を作るとなかなかふざけられないが、『SFO』ではそういうふざけかたをすることによっておもしろい『ストリートファイター』にした」と、最初からネタ化を狙っていることを告白した。

 「SFO」の紹介は、「ダレットオンライン」と比較するとあっさりだったが、香港の武侠小説家金庸のキャラクタを登場させた理由について、アジア市場、具体的な目標としては中国展開を意識して実装されたことが明らかにされた。ヒコ、テイラン共にまだ必殺技が未実装という状況だが、いずれも中国では人気の高いキャラクタであり、金庸の影響力の強いアジア圏では、金庸キャラクタの実装が必要不可欠だと考えたという。

 サービススケジュールは、ダレットの新たな柱となる「ダレットワールド」と歩を合わせるような形で進められる予定だという。βテストの募集開始もまもなく発表される見込みで、2月中にも最初のβテストが実施される予定。機能は限定される見込みだが、ダレットが仕掛けた遊びのタネに、カジュアルゲーマーや往年の「ストII」ファンがどのような反応を示すのか楽しみだ。

(C)2008 CAPCOM U.S.A. INC (C)DALETTO CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

□ダレットのホームページ
http://www.daletto.com/
□「ダレットワールド」の公式サイト(1月17日オープン予定)
http://dwpc.jp/
□「ストリートファイターオンライン マウスジェネレーション」の公式サイト
http://daletto.jp/sfo/
□関連情報
【1月16日】ダレット、「ストリートファイターオンライン マウスジェネレーション」を正式発表
マウスだけでプレイする新世代の「SF」、今春正式サービス開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080116/sfo.htm
【1月16日】「ストリートファイター オンライン マウスジェネレーション」体験レポート
ボタン連打でも本気の対戦でも楽しめる異色の対戦格闘
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080116/sfo2.htm

(2008年1月16日)

[Reported by 中村聖司]



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