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会場:ラピロス六本木
■ ダレットの柱は「ダレットワールド」。ゲームポータル事業とオンラインゲーム事業も継続
現在ダレットは実質的に、「MHF」の課金決済代行業としてのみ機能しており、単体で利益を生み出すサービスは提供していないのが現状だ。今回の事業戦略発表会のテーマ“ダレット元年”には、そうした現状に対する脱却の想いが強く込められており、発表会では怒濤のように新サービスが発表された。 事業戦略のプレゼンを担当したのは、ダレットの生みの親であり、カプコン常務執行役員としてカプコンのコンシューマゲーム事業の舵取りを担当している稲船敬二氏。発表会は、「ロックマン」のデザイナーを出発点に、「バイオハザード2」、「鬼武者」シリーズ、「デッドライジング」、「ロストプラネット」と稲船氏の代表作が紹介され、「カプコンのトップクリエイターが仕掛ける新オンラインエンターテインメント」という流れで稲船氏が登壇した。 ダレットそのものを語るのは今回が初めてということで、やや緊張の面持ちで登場した稲船氏は、「20年のキャリアをふまえ、ゲームを使ってもっとおもしろいことがしたい。コントローラでやるだけがゲームじゃない。ゲーム作りのノウハウを使ってインターネットをもうちょっとおもしろくしたい」と切り出した。 稲船氏自身は、現在のインターネットサービスは、まだ遊び、おもしろみの部分が十分ではなく、インターネット上のゲームの窓口であるゲームポータルも同様にまだ発展途上だという認識を持っているという。「これをゲームメーカーがやったらどうなるか、稲船がやったらどうなるか」ということを実証したサービスが「ダレットワールド」となる。 ダレットの事業は、「ダレットワールド」を柱に、現在のダレットの公式サイト上で運営されているゲームポータル事業、そして「ストリートファイターオンライン マウスジェネレーション」のような新機軸の自社開発タイトルも含めたオンラインゲーム事業の3つが中心となる。事業形態としては親会社のカプコンやゲームズアリーナのようなゲームメーカーよりむしろ、NHN Japanやガンホーのようなオンラインゲームパブリッシャーに近い。収益モデルも、ユーザーからの売り上げだけでなく、広告モデルやアフィリエイト、ライセンス事業など幅広く手がける方針。
ゲームポータルとしてのダレットは、現在「MHF」の登録ユーザーを中心に55万人のユーザーを抱えているが、「ダレットワールド」オープン1年後は100万人、2010年には300万人の会員を見込む。カプコングループ、ドワンゴグループと比較してもかなり規模の大きいビジネスを想定していることを伺わせる。 ■ 2.5Dの味わいのある3Dコミュニティサービス「ダレットワールド」
この空間に介在するのは、メーカーとユーザーに加え、参画企業の存在が挙げられる。ビジネスモデルは基本プレイ無料のアイテム課金制を想定しているが、カジュアルゲームやMMORPGのように、何か特定の目的に向かって大量に、あるいは定期的に有料アイテムを利用するというデザインではないため、BtoCのビジネスとしては構造的に成立しにくい宿命を抱えている。 そこで「ダレットワールド」では、企画当初からメーカー、ユーザー、参画企業の三位一体での展開を想定し、アフィリエイト広告や実在商品のアバターアイテム化、マーケットリサーチといったBtoBのビジネスを積極的に展開していく方針としている。 BtoBといってももちろんユーザーにもメリットがあり、モノを買ったり、チケットを予約したりといったEコマース的なサービスや、アパレルの新製品のアバターを先行試着できたり、メーカーからの情報提供によりトレンドがキャッチアップできたりなど、リアルとの融合による各種サービスが無料で受けられるという。 具体的なプランとしては、ツタヤオンラインとの連携により、TSUTAYA Onlineの作品データベースを「ダレットワールド」でも参照できるようにし、作品の検索やレビューを書くことができる企画を考えているという。アプリケーションを切り替えて、Webブラウザでやればいい話とも言えるが、各人が個性的なアバターによって視覚化された空間でわいわいやるというところが稲船氏の言う「あそべるコミュニケーション」というわけである。 稲船氏は、上記のような無数のフラッシュアイデアを披露したが、最終的な目標は日本版「セカンドライフ」のような、それそのもののメディア化だという。「セカンドライフ」は参画企業のユーザー不在の強引な施策により見事に瓦解したが、「ダレットワールド」は運営元として三身のバランスをうまく取りながら、Yahoo!やGoogleを利用するような感覚で毎日使って貰えるようになればいいという。稲船氏のアプローチは現在、IT産業ではアプリケーションのWeb化という形で進められつつあるが、「ダレットワールド」は遊び、楽しみのために、そのトレンドにあえて逆行する形を取るところがユニークだ。 さて、「ダレットワールド」の肝心の中身は、パステル調の明るい3D空間に、ペーパークラフトのような2.5Dの町並みとアバターを現出させた、非常にユニークな世界観となっている。稲船氏が「リアルでもなく、オタクでもなく」というポップな雰囲気は、要求PCスペックの低減と、温故知新的な温かみを見事に両立させている。BGMは、伊藤賢治氏が担当しており、フィールドのテーマは柔らかで暖かい雰囲気の曲だった。 アバター用の衣服は、フォトアバターと呼ばれる独自のサービスを採用し、実在の服やアクセサリーをそのままアバターアイテム化することができる。デモでは、アパレルショップに入り、商品を着けていくと、稲船氏とまったく同じ格好のアバターが完成するという演出も行なわれた。なお、このフォトアバターは、衣服だけでなく、1人1部屋ずつ与えられるプライベートエリア「マイルーム」の家具、背景などにも適用できるという。 実際のプロセスは、「フォトアバターツール」と呼ばれる専用の外部アプリケーションを利用して作成を行なう。サーバーへの実装は、著作権の問題から、運営側のチェックを経て行なわれるという。個人でも利用可能で、ショップを開けるというが、どちらかというとアパレル企業の参画を意識した仕様といえる。 コミュニケーション機能は、メッセージ魚が紹介された。魚の形をした便せんにメッセージを書いて放流すると、誰かが釣り上げてそのメッセージが未知の第三者に伝わる。ほかにもメッセージ蝶々やメッセージボトルといったアイデアがあるというが、稲船氏によれば、現在のインターネットサービスに足りない部分はこうしたちょっとした遊びの部分であり、こうしたコミュニケーションのタネをいっぱい蒔くことがダレットの仕事だということだ 稲船氏のフラッシュアイデアは上記に留まらず、BGMもアバター、商品にBGMが付いてくる、12時1分から3分まで売っているアイテムがあってもいい。ショップに店員を配置することで遊びの中でマーケティングができるなどなど、時間が許せばいくらでも出てくるといった印象だった。
「ダレットワールド」のサービススケジュールは、明日1月17日よりクローズドβテスト(CBT)の募集を開始し、2月上旬に第1回CBT、2月下旬に第2回CBT、3月中にオープンβテスト、そして4月に正式サービス開始となっている。稲船氏は「殺到してくれればいいな(笑)」と抱負を述べたが、ゲームメーカーが手がける3Dコミュニティサービスのポテンシャルに期待したい。
■ 「SFO」で、「ストリートファイター」の楽しさをより多くのゲームファンに提供 ニュース記事を参照していただきたい。以下では、稲船氏の発言から「SFO」の魅力に迫ってみたい。 稲船氏は、プロモーション映像の紹介を受けて、「カプコンと言えば『ストII』の名が必ず挙がる。『ストリートファイター』を多くの人にプレイして貰うために、オンラインゲームとして復活させることを考えた。そこで単に格闘ゲームとして復活させるのではなく、カジュアルな『ストリートファイター』として復活させ、昔『ストII』をやってて『今はもう無理だよね』という人にお勧めしたい」と「SFO」の企画コンセプトを紹介した。 続けて稲船氏は、アバターの組み替えや着せ替え、そして必殺技にネコの写真をカットインするといった「SFO」のウリを紹介しながら、「普通に『ストリートファイター』を作るとなかなかふざけられないが、『SFO』ではそういうふざけかたをすることによっておもしろい『ストリートファイター』にした」と、最初からネタ化を狙っていることを告白した。 「SFO」の紹介は、「ダレットオンライン」と比較するとあっさりだったが、香港の武侠小説家金庸のキャラクタを登場させた理由について、アジア市場、具体的な目標としては中国展開を意識して実装されたことが明らかにされた。ヒコ、テイラン共にまだ必殺技が未実装という状況だが、いずれも中国では人気の高いキャラクタであり、金庸の影響力の強いアジア圏では、金庸キャラクタの実装が必要不可欠だと考えたという。
サービススケジュールは、ダレットの新たな柱となる「ダレットワールド」と歩を合わせるような形で進められる予定だという。βテストの募集開始もまもなく発表される見込みで、2月中にも最初のβテストが実施される予定。機能は限定される見込みだが、ダレットが仕掛けた遊びのタネに、カジュアルゲーマーや往年の「ストII」ファンがどのような反応を示すのか楽しみだ。
□ダレットのホームページ (2008年1月16日) [Reported by 中村聖司]
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