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★PCゲーミングデバイスレビュー★

製品の合言葉は「誇大広告を信じるな!」
ゲーマーの為のベストを追求した新マウス

「IKARI Laser」&「IKARI Optical」

  • ジャンル:ゲーミングマウス
  • 開発元:SteelSeries
  • 発売元:マスタードシード
  • 価格:「IKARI Laser」13,800円 / 「IKARI Optical」8,800円
  • 対応OS:Windows XP/Vista/2000/98/ME 及び Mac OS
  • 発売日:12月7日(発売中)



 SteelSeries及びマスタードシードは、12月7日、ゲーミングマウスの新シリーズ「IKARI」の国内販売を開始した。ラインナップはレーザーセンサー搭載のハイエンドモデル「SteelSeries IKARI Laser」と、オプティカルセンサー搭載の「SteelSeries IKARI Optical」の2種類。これらの製品開発にあたりSteelSeriesは「誇大広告を信じるな!」をスローガンに掲げてきた。そのことを反映し、「IKARI」シリーズはシンプルながら質実剛健と呼ぶにふさわしい製品に仕上がっている。本稿では、この年末年始にかけてゲーミングマウスの本命となりうる「IKARI」シリーズのレビューをお届けしたい。


■ 無駄なものを徹底的に排除した製品仕様。
   堅牢で高級感のあるシャーシ形状は万人向け

「IKARI」はプロゲーミング仕様の新マウスシリーズだ。レーザー版の「IKARI Laser」とオプティカル版の「IKARI Optical」の2種類がある
 昨今のゲーミングマウスは高機能化が著しい。最近のトレンドとしてはボタン数やDPIの向上、マクロ機能の充実や重量調整機構の搭載など。さらに最近の傾向として、使用時に発光するLEDや状態表示のためのLCDパネルを搭載するなど、外見に凝った製品もよく見られる。そういった意味での「ゲーミング仕様」が顕著なところではロジクールやマイクロソフトの最新ゲーミングマウスが挙げられるだろう。

 「IKARI」シリーズはその流れには乗っていない。開発元のSteelSeriesは、本製品の開発にあたり、5,000人以上のPCゲームコミュニティを徹底的に調査し、FPS、RTSなど各ゲームジャンルのトッププレーヤーの意見を取り入れたという。15カ月にわたる開発努力の結果生まれたものは、驚くほどシンプルなゲーミングマウスだった。

 12月5日に行なわれたSteelSeriesの製品発表会で、開発担当者はこう語った。「ナンセンスを排除し、嘘を付かないのが製品コンセプトだ。ゲーマーが必要としない機能は付けない」。本製品には格好よく光るLEDも、重量調整機構も、凝りに凝ったマクロ機能も無い。むしろそれらを排除したことが本製品の特徴なのである。

・滑らかなシャーシ形状はクセが少なく、色々な持ち方に対応可能

曲面で構成された形状にはクセが少なく、オフィス用途のマウスとしても違和感がなさそうな雰囲気だ
 まずは外形の特徴から。「IKARI Laser」、「IKARI Optical」共に全く同じ形状だ。特徴としては全体が流麗な曲面で構成されており、握ったときに感じる違和感がほとんどない。マウス全体をホールドする形でマウスに手を密着させると、親指部分と薬指部分に設けられた段差がしっかりとフィットする。この形はいわゆる「握り持ち(Claw)」と言われる形だが、本製品はデザイン段階で他の2種類の持ち方にも対応したとされる。ひとつは、他にも指先でホールドする「摘み持ち(Swipe)」。もうひとつは、手の平で抑えるようにホールドする「被せ持ち(Palm)」だ。

 筆者は「握り」と「摘み」の形をゲームの状況に応じて切り替えるスタイルのため、この両方の持ち方でしっかりとホールドできるかどうかが「自分にとって良いマウスかどうか」という基準になる。少なくともその基準で言えば、「IKARI」シリーズの形状には満点に近い合格点を出せる。マウスの後部 (お尻の部分)がなだらかに傾斜しており、手の平への干渉が最低限に抑えられているのもポイントが高い。全体のサイズとしては決して小さくはないのだが、余分な突起のない形状のおかげで、ホールド時の動きの自由度がしっかり確保されているのだ。

 本体に搭載するボタンの総数は6個。このうち5ボタン (左右メインボタン、ホイール、サイドボタン2個) は付属ソフトウェアによってカスタマイズが可能だ。物理特性としては、左右メインボタンはかなり軽く、余分な力を必要としない。サイドボタンはホールド時に親指が来る位置のやや上方に配置されており、意識的に親指を傾ければすぐにクリックできる。

 そしてホイールの下部に配置されている三角形のボタンはDPIスイッチだ。このボタンを押すと2種類のDPI設定「HIGH」、「LOW」を瞬時に切り替えることができる。それぞれのDPI設定は付属ソフトウェアなどの方法で変更が可能で、「IKARI Laser」ではデフォルトで3,200DPI~1DPI、「IKARI Optical」では1,600DPI~400DPIの範囲を設定できる。

3方向からのショット。全体としてなめらかな形状をしており、手の平を預けたときにどこか特定の部位が圧迫されるような事ががない。色々な持ち方に対応できる特性を持っている
左側面の前方に見えるのが「HIGH」、「LOW」インジケーター。現在選択されているDPI設定を表している ホイールのすぐ下にDPIスイッチのボタンがある。これを押すと「HIGH」、「LOW」が切り替わる 底面は大型のソールが特徴的。レーザー版にはLCDパネルがあり、DPIが表示される


■ 至ってシンプルな「IKARI Optical」は段階的なDPI調整機能のみ搭載

「IKARI Optical」。シンプルイズベストを地で行く製品で、DPI調整以外の機能は存在しない
これは「IKARI Optical」の付属ソフトウェア画面。DPIの調整が画面の表示内容の範囲で可能
「IKARI Laser」ではDPIを1単位で調整できる。DPIスイッチを長押しした後、LCDを見ながらホイールを回転させる。実に簡単だ
上が直線補正OFFで引いた線、下が直線補正最大で引いた線。同じような感覚で引いた線だが、下の線はやや直線部分が多くなっている
 ハイエンドモデル「IKARI Laser」は1単位のDPI調整、マクロ機能などFPSユーザー以外の需要も満たす。

 機能面に目を向けると、「IKARI Optical」に関してはご紹介できる機能はもうない。というのも、「IKARI Optical」にはDPI設定機能のほかに何の機能もないためだ。マクロ機能はおろか、ボタンの割り当てを変更する機能すら持っていない。ここまでシンプルだと逆にすがすがしいくらいだが、MMORPGやRTSなど最低限のボタンカスタマイズを必要とするユーザーはハイエンド版の「IKARI Laser」の機能に注目しよう。

 ハイエンドモデルである「IKARI Laser」最大の特徴は、何と言っても1単位でDPIが調整できるという柔軟性だ。DPI調整は付属ソフトウェアか、「IKARI Laser」のホイール下部にあるDPIスイッチによって行なう。DPIスイッチを1秒間長押しすると、本体底面にあるLCDパネルに現在のDPI数値が表示される。この状態でホイールを回転させると、3,200~1DPIの範囲で、1単位でDPIを調整できる。この機能により「IKARI Laser」ではゲーム中でも、細かいDPI調整を行なうことが可能というわけだ。設定は「HIGH」と「LOW」それぞれに記録することができるので、ゲーム中に想定される状況に応じて調整しておくとよいだろう。

 この機能により得られる最大の利益は、これまでゲーム側で細かく調整していたマウス感度の数値を「完全にマウス本体だけで」実現できるということだ。「IKARI Laser」を使うならば、OSとゲーム側のマウス感度設定は全てデフォルトで問題ない。必要な感度はマウスのDPIを直接調整することで実現し、ゲーム側感度は“1.0”とすることで計算誤差を最小限に抑えることができる。

 「IKARI Laser」が持つもう一つの機能は「SteelSeries FreeMoveテクノロジー」と呼ばれ、マウス操作で発生する上下左右の僅かな誤差補正を調整できるというものだ。マウスは人間が操作するものである以上、まっすぐ左右に動かしたつもりでも僅かに上下へのブレが発生する。これを避けるためマウス側で補正をかけ、正確な直線を出そうというのが直線補正と呼ばれる機能だ。

 従来型のマウスでは、この機能が搭載されている場合、ユーザーには選択の余地が無い状態でビルトインされていた。本製品ではこれを調整可能なオプションとし、付属ソフトウェアで直線補正のかかり具合を調整できる。SteelSeriesのサイト情報によると、「Counter-Strike」など、FPSのトッププレーヤーはほぼ間違いなく直線補正をOFFに、つまり完全フリーの状態で使用している。自分の操作に自信があればこその選択といえるが、自分自身がそうでない場合はある程度の補正を入れてみるのも良いだろう。

 また、「IKARI Laser」は各ボタンへのコマンド割り当てを変更できるシンプルなマクロ機能を搭載する。こちらのカスタマイズは付属ソフトウェアで行ない、各ボタンごとに5ストロークまでのキー操作を記録することが可能だ。FPSユーザーにはあまりピンと来ないかもしれないが、MMORPGやRTSユーザーには必要最低限の機能といえる。対する「IKARI Optical」にはボタンカスタマイズの機能が無いため注意されたい。

付属ソフトウェアからもDPI設定が可能。直接入力で1単位の設定が可能だ マクロ設定は全てのボタンに行なえる。キーストロークは5個までのようだ 「FreeMove」の設定画面。ハイスキルなプレーヤーなら“補正なし”がいいだろう

・「IKARI Laser」、「IKARI Optical」ともに完全ドライバレスを実現

 レーザー版、オプティカル版の両方に共通する特徴として、本製品が「完全ドライバレス」を実現している点が挙げられる。昨今のゲーミングマウスというとドライバに多種多様な機能があり、ドライバの無い環境ではまともに使えないというのが常になっていた。特筆しておきたいのは、マクロ機能を持つ「IKARI Laser」でも、ドライバレスで使用可能であるということだ。

 つまり、こういうことだ。マウスをPCに接続すると「標準HID準拠マウス」として認識され、Windows標準のドライバが駆動する。この点は他の一般マウスや「IKARI Optical」と同じだ。「IKARI Laser」ではこれに加えて、接続時に「HIDキーボードデバイス」が認識され、Windows標準のキーボードドライバが駆動する。つまり、「IKARI Laser」はマウスに見えるがキーボード機能も内蔵しているわけだ。キーマクロ機能はこれを通じて実現している。DPI設定など他の部分についても、設定はマウス本体に記録され、他のPCに持ち込んでもそのまま使うことができる。

 「IKARI」シリーズではドライバレスの動作が実現しているため、付属ソフトウェアは「マウスの設定を調整するため」だけに存在している。LANパーティやネットカフェでゲームをプレイするなど、色々な環境でプレイすることが多いユーザーにとって非常にありがたい機能といえるだろう。もちろん1台のPCに複数のマウスを接続するときに、従来有り得た「ドライバのバッティング」などの問題も無い。その意味でも安心して使えるというわけだ。

ちなみに「IKARI Optical」はレーザー版よりもやや軽く、本体のみの重量は100gを切る。レーザー版はおそらく、キーボードデバイス機能などのチップで重量が増しているのだろう。とはいえその差は2g以下だ


■ 「IKARI Laser」はマウスパッドとの合性を選ぶ。
   「IKARI Optical」は万能型ながらリフトオフが高め

やや気になる点はこの形状による「持ち上げ」操作のやり辛さ。もう少し引っかかりになる部分があってもよかったかもしれない
「SteelSeries SP」と「IKARI Laser」の組み合わせは合性が悪かった。新製品同士の組み合わせだけに残念
 実際の使用感覚としては「IKARI Laser」、「IKARI Optical」ともにトラッキング性能に不満点はなく、気分よくゲームをプレイできた。高速操作時の追従性もばっちり。

 やや気になるのは、共通の形状特性として「持ち上げ」操作が少しやりにくいところ。縦方向の動きを行なうときに「とっかかり」になる部分が欲しいのだが、全体的に上に向かって狭まっていく形状のため、つまみ上げるという形では操作しにくいというわけだ。この点は「握り持ち」のように全体をしっかりホールドすることで改善できる。

 「IKARI Laser」で気になったのは、レーザーセンサーとマウスパッドの合性問題だ。筆者はまず、SteelSeriesのマウスパッド新製品「SteelSeries SP」で「IKARI Laser」を試してみた。「SP」は大理石のような模様をしているが、表面にガラス的な反射特性をもつ硬質の樹脂が細かく凹凸を作っているという構造だ。「IKARI」シリーズの大型マウスソールと非常に相性がよく、これまで体感したことのないレベルの滑り心地を体感できる。問題は、この表面上で「IKARI Laser」のセンサーがほとんど反応しないという点だ。オプティカル版では全く問題なく使用できたので、これは確実にセンサー側の相性問題である。

 筆者環境にて「IKARI Laser」を適正に使用することができたマウスパッドは「Razer eXact Mat」、「FATPAD」など、つやのない黒系統の表面色を持つものだ。他にもいくつか試してみたところ、共通する傾向としてはガラス質の強反射素材上ではほとんどまともに動かず、カーソルが動いたり動かなかったりといった形である。「IKARI Laser」を使う際には反射の強い素材を避けたほうがよさそうだ。

 対する「IKARI Optical」は秒間6,500サンプルの標準的なオプティカルセンサーを搭載しており、レーザー版ではダメだった「SteelSeries SP」マウスパッド上でも抜群のトラッキング特性を発揮してくれた。「SP」は非常に滑りのよいマウスパッドで、筆者がFPSを一番気分よくプレイできたのはまさにこの組み合わせである。しかし、問題が無かったわけではない。

 「IKARI Optical」最大の問題点は、センサーのリフトオフディスタンスが極端に長いという点だ。リフトオフディスタンスとは、マウスを設置面から離してカーソルが動作しなくなる距離のこと。これが短ければ短いほど、マウスを持ち上げて位置調整する操作がやりやすくなり、高速プレイに向いた設定となる。「IKARI Laser」はこの点非常に良好で、リフトオフディスタンスは2mm程度(公式スペック1.8mm)、持ち上げ操作時の誤差はほとんどない。対する「IKARI Optical」は、体感だが優に10mmはありそうな印象で、マウスが相当持ち上がるまでしっかりカーソルが動いてしまい、誤差調整に苦労することになってしまう。この弱点さえなければ、「IKARI Optical」はパーフェクトなマウスといえただけに、実に惜しい。


■ 本命は「IKARI Laser」。オプティカル派には「IKARI Optical」をお勧めしたい

レーザー版(左)、オプティカル版(右)。どちらを選ぶかは難しい問題だが、必要な機能を満たしているかどうかを見て検討したい
 今回、レーザー版とオプティカル版の2つのマウスを同時にご紹介してきたが、ここでそれぞれの利点、欠点についてまとめてみよう。もちろん、共通の利点としてドライバレス動作、DPIスイッチによる即時のDPI切り替えと、形状特性からくる汎用性の高さ、といった点はあらかじめ頭に入れておきたい。

・「IKARI Laser」
 利点:マウス本体側で1単位のDPI調整が可能
 利点:各ボタンにキーマクロを割り当て可能
 利点:直線補正機能を調整可能
 利点:短いリフトオフディンスタンス。高速操作向き
 欠点:マウスパッドとの合性問題アリ

・「IKARI Optical」
 利点:マウスパッドを選ばずに性能を発揮
 欠点:リフトオフディスタンスが長く、誤差修正の意識が必要

 価格面については「IKARI Laser」が13,800円、「IKARI Optical」が8,800円と、その差は5,000円。この価格差を考えると、マクロ機能を必要としないFPSユーザーにはオプティカル版を選ぶ余地が十分にある。マウスパッドの相性問題も含めて考えればオプティカル版のほうに軍配が上がるシチュエーションも多いはずだ。

 「IKARI Laser」は機能も価格もハイエンドということで、選択にあたってはじっくりと吟味していただきたい。ドライバレスで利用できるマクロ機能はMMORPGやRTSユーザーに大きな魅力であり、1単位で調整可能なDPI設定はFPSユーザー、特に大会でプレイするようなアスリート志向のプレーヤーに最適である。マウスパッドの相性さえ良ければ、という条件付きではあるが、本製品「IKARI Laser」は近年稀に見る「パーフェクト」なゲーミングマウスだ。

 今回のレビューを通じ、「IKARI Laser」、「IKARI Optical」ともに弱点をひとつづつ指摘する結果となったが、それを除いた部分では文句をつけようがなく、SteelSereisの掲げる「誇大広告を信じるな!」というスローガンは、しっかりと結実したと評価できる。まずは実際に手に取り、この形状が自分の手にしっかりフィットするかを確かめた上で購入を検討してみて欲しい。形状が気に入れば「これならメインを張れる」と、強い手応えを感じるはずだ。

□SteelSeriesのホームページ(英語)
http://www.steelseries.com/
□「FragYou!」(SteelSeriesの日本公式ブログ)のページ
http://steelseries.jp/
□「SteelSeries Ikari」シリーズのページ
http://steelseries.jp/?p=229
□関連情報
【8月24日】SteelSeries、ゲーミングマウス市場への参入を発表
プロゲーマー協力のもとに誕生「SteelSeries Ikari」シリーズ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070824/gm.htm

(2007年12月21日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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