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「ライラの冒険 黄金の羅針盤」は、同タイトルの映画を題材にしたアクションゲーム。ニューラインシネマとタッグを組むことで、映画の世界がリアルに再現されている。PS3版では、合計で15分以上にも及ぶ映画のシーンがそのまま流れる場面もあるという。2008年春発売予定。 ■ ダコタ・ブルー・リチャーズさんのインタビュー(12月11日 ザ・ペニンシュラ東京にて)
ダコタ・ブルー・リチャーズさん(以下、ダコタさん):はい、よろしくお願いします。 セガ:それでは早速ですが、普段、友達や家族などとゲームで遊びますか? ダコタさん:私はあまりゲーム好き、というわけではありませんが、ニンテンドー64の「ゴールデンアイ」だけは友達と良く遊びます。 セガ:どんなジャンルのゲームが好きですか? ダコタさん:具体的に好きなジャンルというのはありませんが、最近だと脳をトレーニングするタイプのゲームが面白いと思いました。あと、Xbox 360の「ソニック」も遊びましたよ。 セガ:ゲーム版の「ライラの冒険」をプレイする機会はありましたか? ダコタさん:はい、少しだけですが遊びました。イギリスでセガ主催のプレスイベントがあったので、そこで。でも、あまり上手にはプレイできませんでした(笑)。 セガ:ゲームの中で自分が登場しているのを見てどのように感じましたか? ダコタさん:自分自身が画面の中にいるのは奇妙な感じでした。そして、しばらく迷っていたら、ゲームの中から自分の声で次に何をするべきかの指示が出て、これも不思議な感じがしたけど面白かったです。 セガ:映画の撮影とは別に、ゲームのための追加録音やゲーム中のライラのモデルを作るための撮影があったと聞きましたが? ダコタさん:はい、映画の撮影が始まる前でした。特殊なボディスーツを着て、カメラの前で色々なポーズを取ったりしました。あと、座っている私の顔の周りを大きな機械がグルッと回って、何かを撮っていたみたいです。 顔の撮影が終わってからデータを少しだけ見せてもらいましたが、何だかとても奇妙なものが見えました。 【訳者注:撮影を終えたばかりの、モデルに貼り付ける前の顔のテクスチャデータは、いわば頭蓋骨から剥いだ顔の皮を平面に伸ばしたようなものなので、予備知識無しで見るとちょっと気味の悪いものなのです】 そして、それが終わってから音声の収録もしました。セリフのアテレコとか、「右に行って、左に行って」などの(プレーヤーに対する)ガイド音声とかです。 セガ:では、ゲーム用素材の収録と映画の撮影はあまり時期が離れていなかったのですね? 映画の撮影の一部のような感じだったのですか? ダコタさん:はい、ゲーム素材の収録からそのまま映画の撮影に入った感じでした。ただ、映画の撮影とゲーム用素材の収録は全く異なる体験でした。 セガ:ゲームの開発スタジオを訪れたり、開発スタッフと会う機会はありましたか? ダコタさん:ゲームが半分ほど完成した頃、セガが私と友達をスタジオに招待してくれた事がありました。開発スタッフがゲームを作っている様子を見ることができましたし、その時はまだ未完成でしたが少しだけゲームを遊ぶこともできました。 セガ:これから映画の第二部の撮影があると思いますが、当然ゲームの第二部も作られるでしょう。次回のゲームの中でやってみたい、と思う事はありますか? 映画ではできないような事で。 ダコタさん:原作ではライラは異世界への扉を探すのに苦労していたので、自分で自由に作りだせたりしたら楽しいと思います。 【訳者注:「ライラの冒険」第2部では、2つの異なる世界をつなぐ小さな扉のようなものがあり、それは 普通の人はなかなか見つけることはできないのです】 セガ:最後に、このゲームをプレイしてくれる日本のゲームプレーヤーのために一言メッセージをいただけませんか? ダコタさん:このゲームを楽しんでくれたらうれしいです。 セガ:本日はありがとうございました。
ダコタさん:ありがとうございました。
■ クリス・ワイツ監督とゲームのプロデューサー長谷川亮一氏の対談(12月13日 ザ・ペニンシュラ東京にて)
クリス・ワイツ監督(以下、クリス氏):仕事がある時はなるべく遊ばないように努力はしているんだけど、実はゲームが大好きなんだ(笑)。時として厳しい現実世界よりも楽しい事が起こるしね。ハマってしまうと仕事が進まなくなるのは目に見えているんだよ。 長谷川氏:という事は、子供の頃はゲームで遊んでたんですね? クリス氏:あぁ、もうそりゃぁね。アタリとかインテレビジョンとか、そんな頃からずっとだよ。最近だと、これは言って良いのかどうかわからないけど……。 【訳者注:この時彼は机の上のパッケージをチラッと見て、PS3とDS、つまりソニーと任天堂のものしか無いのを確認した上でこう言っています。ゲーム会社向けのインタビューの発言として問題ないか気にしているワケで、これは監督が非ゲーム業界人である事を考えれば相当空気読めてます(笑)】 ……「HALO」が大好きで、1や2の頃は、それこそ友達と徹夜でハマっていたよ。 長谷川氏:特に好きなジャンルとかはありますか? クリス氏:SFが好きだったので、PC版の「ウイングコマンダー」は相当遊んだよ。あとは初期の「ウルティマ」とか、「ポン」、「スペースインベーダー」とかね。オールドゲーマーなんだ(笑)。 長谷川氏:(マニアックな名前がポンポン出てくるので)相当ゲームがお好きなんですね(笑)。 クリス氏:ただ、ちょっとしたこだわりみたいなものもあって、例えば「HALO」だったら協力プレイはするけど対戦プレイは絶対しないんだ。負けるとすごく不機嫌になるんでね(笑)。 長谷川氏:ゲーム版の「ライラの冒険」をプレイする機会はありましたか? クリス氏:実はまだ完成版では遊んだことが無いんだけど、開発途中のバージョンは何度か遊ばせてもらったよ。イオレクがオオカミのダイモンと戦うシーンとか、トロールサンドでのライラのシーンとか。ライラとパンタライモンが協力してパズルを解くシーンは良く出来てるなぁ、と思ったよ。 長谷川氏:映画とゲームとの違いは感じられましたか? クリス氏:例えば、イオレクの大きさ、力強さ、勇気、戦うシーンの迫力、そしてライラの小ささ、賢さ、狡猾さなどといった、キャラクタ達の最も重要な部分がゲームでもキチンと再現されていたので、特に違和感のようなものは感じなかったよ。 長谷川氏:映画の初期段階からゲームのプロジェクトも同時に動いていたと聞きましたが。 クリス氏:その通り。そして、それはとても良いことだと思ったよ。ゲームの開発スタッフは良く映画の撮影現場に来ていて、シナリオをチェックしたり、セットのあちこちを歩いて細かく写真を撮ったりしていた。ただ、彼らにはあまり台本にもセットにも縛られすぎないようにしてもらった。オリジナル要素もOKにしたよ。単に映画を再現するだけのゲームならあまり面白く無いからね。 長谷川氏:その話が決まったときはどのようにお感じになりましたか? クリス氏:この話が決まったのは、まだ撮影も始まっていない、プリプロダクションの頃だったんだ。そして、それはとても嬉しかったよ。自分の作品が多方面に広がっていくのを見られるワケだからね。それに、【訳者注:監督がかつて制作に関わった】「アメリカン・パイ」の時はゲーム化なんてあり得なかったしね(笑)。セガからオファーがあった時は嬉しかったよ。 長谷川氏:ゲームの制作にはある程度関わられたのですか? クリス氏:もちろん私はゲームのプログラムはできないけど(笑)。開発スタッフと何回か打ち合わせをしたよ。さっきも話したけど、この映画の肝になる部分をキチンとゲームにも反映させて欲しい、というお願いをしたんだ。映画版でのライラには、機転が利いて、賢くて、そして自立心があるという、ある意味子供にとっての1つのお手本になって欲しい、という願いを込めているんだけど、その部分はしっかりゲームに反映されていると思うよ。 長谷川氏:実際にゲーム内では、ライラが大人と会話するシーンでちょっとしたウソをついてみたり、あるいはワザと怒らせたりして、だけどそれによって守衛をドアの前からどけてその間にパンが部屋に侵入したり、とパズル的なシーンがいくつも登場します。 クリス氏:そこはゲーム版でとても良く出来てる、と思ったよ。実は原作者のフィリップ・プルマンは元教師で、子供の行動にはとても詳しいんだ。だから彼は、子供がいつも本当の事だけを言わないこと、時にはびっくりするぐらいズル賢くなれることも良く知っている。だから、それがゲームでも再現されるのは重要な事なんだ。 長谷川氏:ライラ、ビリー、パンタライモン(の声)など、一部のキャラクタには映画の撮影とは別に、ゲームのための音声録音があったと聞いています。それらをディレクションされる機会はありましたか? クリス氏:いや。だけど、音声収録の時までに子供達はそれぞれのキャラクタを自分達で完全に理解していたので、特に心配はしていなかったんだ。 長谷川氏:ちなみに、先日インタビューしたダコタさんが言っていたのですが、ゲームをプレイしていて迷ってしまったときに、「右に行って」、「左に行って」と彼女自身の声に指示された時は妙な気分になった、と言っていましたよ。 クリス氏:(笑)そりゃそう思うだろうね。 長谷川氏:先ほどもお聞きしましたが、そうするとゲームの開発スタジオに実際に行くことはできなかったんですね? クリス氏:残念ながら。とても行きたかったんだけどね。 長谷川氏:ゲームの中で見た要素で、映画に影響を与えたものはありましたか? クリス氏:ゲームの開発スタッフが使っていた「Massive」という群集演算ソフトがあったんだけど、これのおかげで映画の中でもとても多彩な表現をできるようになったんだ。 【訳者注:「Massive」とは、キャラクタにアニメーションをつけるためソフトウェアですが、AI(人工知能)を搭載しており、簡単な操作で複数のキャラクタをバラバラに動かすことができます。例えば100体のキャラクタを配置し、1つをリーダーに設定、残りのキャラクタには「他のキャラクタにぶつかるな」、「前のキャラクタに付いていけ」という命令だけを与えておき、後はリーダーを動かすと、残りの全員が自然に、そしてバラバラの動きでついていきます。今までは100体を動かすためには全員同じアニメーションで動かすか、あるいは100種類のアニメーションを手作りするしか無かったので、このソフトの登場は画期的でした】 例えば映画の中で、100体のオオカミのダイモンと子供達のダイモンが戦うシーンがあったんだけど、これを全て手作業で動かすだけのスタッフがいなかったのが、「Massive」のおかげで実現できたんだ。これは大きかったよ。 他にも、ゲームではNPC(non player character: プレーヤーが操作しない、独立して動いているキャラクタ)という存在があって、彼らは彼らなりにキチンと行動しているけど、この映画のダイモンたちもそれぞれ独立してそれぞれのダイモンの形に合った動きをしているし、空から降ってくる雪やアクションの時にはじけ飛ぶ氷の粒などがそれぞれバラバラに動くのもこのソフトの恩恵を受けている。全ての雪を手で1コマずつ動かすなんて無理だよね(笑)。 長谷川氏:ちなみに、2体のクマが戦っているシーンは格闘ゲームを思い出させました。画面上に体力ゲージが見えそうでしたよ(笑)。 クリス氏:そうそう、あのシーンはちょっと意識してたよ(笑)。 あと、さっきはゲームが映画に与えた、親和性の高い要素の話をしたけれど、映画とゲームで圧倒的に違う部分もある。映画だと、例えば5秒のカットを納得行くまで作りこもうとしたら撮影と編集に2年かかってしまう場合もあり得るんだ。だけど、ゲームなら(事前に決められたアルゴリズムに沿って動くだけなので)その場ですぐにできてしまうし、気に入らなければちょっとアルゴリズムを変えてやり直せばいい。 長谷川氏:個人的には、原作で読んでいてどんな映像になるのかと期待していた、ライラが真理計を読むシーンでの演出は素晴らしいと思いました。 クリス氏:実は、あのシーンはもっとシンプルになる予定だったんだ。だけど、編集スタッフの1人が映像が次々にモーフィングするアイデアを出してきて、その後パーティクル(粒子)のアニメーションをさせるプログラムが出来て、最終的にああいった形になったんだよ。実はこのプログラムは、人間が死んでそのダイモンが消滅する時の演出用に作られたものだったんだけど、それがさらに強化されたんだ。ちなみに、ダイモンが消滅する時のパーティクルの動きは消滅する直前の動きによってそれぞれ違っているんだよ。 長谷川氏:ゲーム版で、映画ではできなかった事ができて満足している部分などはありますか? クリス氏:もちろんライラが大人と話すときに【訳者注:3択から正しい答えを選んだり、ミニゲームをクリアしたりして】上手く切り抜けるシーンもそうなんだけど、実は2匹のクマが戦うシーンも気に入っているんだ。 映画だと、この戦闘のシーンの中に可能な限りの様々なショットを入れたり、さらにエフェクトを付けたりしたけど(そのエフェクト付けのためだけにアメリカからロンドンに飛んだCGスタッフもいたほど)、でも完成してしまったらそれまで。 だけど、ゲーム版だと戦闘のたびに異なるアングルからシーンを見られたり、戦い方が変わったりするので新鮮な気分で観られるんだ。 長谷川氏:これから映画の第2部の撮影があると思いますが、当然ゲームの第2部も作られるでしょう。次回のゲームの中でやりたい事はありますか? 特に映画ではできないような事で。 クリス氏:実は第2部にはゲーム向きの要素があるんだよ。この章には「神秘の短剣」という、今の世界と、隣あう別次元の世界をつなぐ扉を切り開ける短剣があるんだけど、映画だと何回かそのシーンを使ったら終わりになってしまう。 だけどゲームなら、プレーヤーの意思で好きなタイミングで別のステージに移動できるんだ。そんな機能をもったアイテムは今までのゲームにも無いんじゃないかな? 長谷川氏:最後に、このゲームをプレイしてくれる日本のゲームプレーヤーのために一言メッセージをいただけませんか? クリス氏:皆さんこんにちは、監督のクリス・ワイツです。この「ライラの冒険 黄金の羅針盤」のゲームを皆さんに遊んで頂けるのを楽しみにしています。私自身は開発途中のバージョンを遊んだのですが、とても良く出来ていましたよ。 長谷川氏:本日はどうもありがとうございました。
クリス氏:(日本語で)どうもありがとうございました。
□セガのホームページ (2007年12月14日) [Reported by 中野信二/インタビュー原稿・写真提供 セガ]
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